

Lancet-2、ちょっと大事な質問があるんだが。

なんでしょうか。

お前バッテリー切れとかならないよな?

あー、それについてはご心配いりません、出発前に、クロージャお姉さまが超長持続の新型バッテリーに換えて頂きましたから。

理論上一週間はどんなエネルギーも補給しなくて大丈夫です。

それに飛行機にも予備のバッテリーがあるますので、ご心配はいりませんよ。

そうか。

ケーちゃんのやつ今頃どうしてんのかな、俺たちが戻ってくる途中にいきなりジタバタし出してどっかに行っちまったからな。

確かにそうですね、ケオベさんの現状を考えると少し心配になってしまいます、でも彼女の旺盛な生命力を考慮すると、おそらくあまり心配はいらないかと。

それもそうか。

あーあ、暇だなぁ。

飛行機の修理も終わってるし、ガヴィルが運んできた病人の病状も安定してるし、しばらくやることがないなぁ。

それにここの人と言葉が通じないし、ドクターについて行ってその祭典なんちゃらを見に行けばよかった。

飛行機はロドスの非常に重要な財産なんですから、しっかり守らないといけませんよ。

言ってみただけだよ、俺はパイロットだからな、その点に関しちゃ誰よりもわかっているさ。

お前はいいよな、Lancet-2、暇なときはスリープモードに切り替えれるから、俺は昨日12時間も寝ちまったから、今はちっとも寝付けらんねぇ。

うーん、確かに、私には、「暇」という概念は持ち合わせていません。

ディロンさんの現在の感情は理解できますよ、クロージャお姉さまもよくそういった感情を吐露するときがありますから、それに通常こういった状況下では彼女は変なことをし始めるんですよ。

……こう思うのはもう初めてじゃないんだけどよ、Lancet-2、お前とほかのロボットは本当に中に人が入ってんじゃねぇの?

入ってませんよぉ、中は精巧な電子構造で詰まってますから、見てみますか?

私のデフォルト性格は女性として設定されていますが、異性に身体を見せるような行為については、私自身でも予測できない行動をしちゃう可能性が出てきてしまいますよ。

うっ、やめとくわ。

そういうときはやっぱ見るんだったら、水着姿が見たいもんだぜ。

水着ですか?

ああ、今は夏だぜ、みんな水着に着替えて水遊びしてもおかしくないだろ。

でしたら、波の音のBGMを流してあげましょうか?

やめてくれよ、俺がもっと哀れなヤツになっちまうだろうが。

……まさか、ディロンさんは私の水着姿が見たいのですか?

んなわけないだろ!

そうですよね、申し訳ありません、私はただの機械ですもんね。

いや、すまん、そういう意味じゃなくて。

お気になさらず。そういえば、ディロンさんは海を見たことがありますか?

あー、あるっちゃあるかな、たぶん去年の夏のときに、シルバーアッシュの旦那のスケジュールに変更があったからロドスの飛行機を借りたんだ、そのときのパイロットが俺だったんだ。

目的地に到着したらどうやらそこはバカンススポットらしくてな、そしてシルバーアッシュの旦那に招待されてVIPの生活を体験させてもらったんだ。

いや~、あのときようやく理解した、俺の金持ちへの先入観は貧乏が阻害してたんだってな。

ほらっ、これがあの時の写真。

ディロンさんはこういう生活に憧れているのですか?

ん?憧れか……確かにあの数日はめっちゃよかったけど、でもずっとあの生活を送るって言われたら、きっと慣れないな。

やっぱ操縦室でカップ麺をすすって、毎日昼夜逆転してるような生活のほうが俺に似合ってるんだよ。

そんなんじゃいけませんよ、ディロンさん、私が科学的で健康な生活スケジュールを設計してあげましょう。

じゃあやっぱあっちのほうがいいかな!

残念です。クロージャお姉さまが私のためにこの機能を設計してくださいましたが、彼女自身もドクター様でも、一度もこの機能を利用してくださらないんです。

はは、あの二人なら確かに避けるだろうな。

ふぅ、でも、話を戻すけど、ここにいる部族たちの生活は俺の想像よりはるかにいいもんだな、必要なものは一応揃ってるし。

そうですね。ここは外の生活に比べて便利さと快適さには大きな差がありますけど、でも不便と感じるようなところはありませんもんね。

私の記録によりますと、ここ二日、ディロンさんの身体の健康水準も戻りつつありますよ。

マジで?

マジです。

]これがいわゆる大自然に帰るってことか?へっ、確かに、そりゃそうだよな、みんなこういった暮らしから始まったんだもんな。

そうだ、確かガヴィルが、あっちのジャングルにでかい滝があるって言ってたよな、ドクターが戻ってきたら、そこで遊ぶのも悪くねぇな。

もしかしたらもう行かれてるかもしれませんよ。

ドクターはいつも公平だ、俺たちを置いて先に遊びにいくような真似はしないって俺は絶対に信じてるぜ!

そうですね、じゃあそれまでに、信じて待ち続けましょう。

ここにディロンっていう人はいるかしら?

俺だ!

ん?お前サルゴン語が話せるのか?
(イナームが歩いてくる音)

ええ。ロボットと一緒にいる人って聞いたけど。うん、あなたで間違いないようね。

ドクターって人から手紙を預かっているわ。

ん?どれどれ。

……Lancet-2、どうやら一仕事できたようだ。


わぁ、遠くから水音が聞こえてたけど、こんなにおっきな滝だとは思わなかったよ!


な、言っただろ。

そうね、今回はガヴィルを許したげる~

はは、確かにすごい壮観な滝ね。

トミミはまだ来てないようだな、ひとまずここでちょっくら休憩しよう。

やったー、水着が無駄にならなくて済んだ~

……

戦う気まんまね、お嬢ちゃん。

……
言葉が通じないと悟ったのか、クマールは喋らずに、身体を構えた。

そうね、どうせやることもないし、もういっちょ付き合ってあげる。

ブレイズの姐さんとあの女の子めっちゃ激しくバトってるね。


せやなぁ。

ほんっとケンカって何が楽しいのかちっともわかんないわ。

……戦ってるときと言ってることがまるっきり違うで、ウタゲはん。

アハハ、そりゃそっか。

それよりさ、クロワッサンが着てるのって水着じゃないよね。

あはは、バレてもうたか。これ実はウチが買ったアウトドア用の服やねん、防水性もなかなかええから、ギリギリ水着として使えるかなーって着てきたんや。

本当に見た目より実用性のあるものが好きだよね。

でも、海辺ではないけど、滝で水遊びするもの悪くないじゃん!大自然に帰ったって感じ、カメラ持ってこればよかったなぁ。

せやなぁ、ウチもこういう野外に来たのは初めてやさかい、想像してたのよりよっぽど楽しいわ~

あれ……

どないしたん?

見間違いかな?

ん?

あれってまさかケーちゃん?


ドクター、いい滝だろ。

・すごくいい。
・……
・普通かな。

はは、昔ここで水浴びするのアタシ好きだったんだよな。

何か考え事してるようだな、ドクター。

言うじゃねぇか、ドクター。

ここを渡ったあと、もうしばらく道を歩いたら、ズーママの部族に辿り着けるだろう。

トミミの手紙を受け取ったときは、こんなことになるとは思いもしなかったぜ。

……はぁ、ドクター、ここ数日ずっと悩んでることがあるんだ、アタシら付き合いも悪くないし、そのぉ、お前に訊きたいことがあるんだが。

お前はどう思うんだ……

ド――ク――タ――!

なんだよ?今ドクターと話してる途中だろうが。

あそこを見て!

あれは……ケーちゃん?

見つけた、キノコの海だぁ!

お風呂にしようっと!

どうやらまだ症状が収まっていないようだな。

でも水の中でローリングしてる姿がかわいいなぁ。

はぁ、まったくこのおバカさんは。

しばらくそこで遊ばせてやるか……

そんなことより、ドクター、アタシがさっき言いたかったのは――

アタシの尻尾、前より太くなってるように見えるか?

・太くなったな。
・……
・分からない

え?それ本当か?やべぇな、帰ったら食事を抑えないと。

なんだよ、ドクター、そんな目でアタシを見やがって、尻尾はアダクリスの命なんだからな!

チェッ、お前に期待したのがバカだった。

お前は知らないだろうが、トミミの尻尾だって昔はあんなに太くなかったんだぜ、はぁ、あんなでかい尻尾にはなりたくないもんだ。

・ズーママに何か思うところはあるか?
・……
・尻尾について語ってくれ。

ん?それってどういう意味だ?

あいつは結構すごいとは思ってるぞ、あんなでかい機械をイジれるんだからな。


ドクター、きっと興味を持ってくれるって信じてたぞ!
(トミミが駆け寄ってくる足音)

ガヴィルさん!

やっと来たか、トミミ。やることは終わったのか?

はい!

んんん?

な、なんですか?

この子かっわいいいい!ガヴィル、こういうお友だちがいたんだね、てっきりガヴィルの友だちって頭ン中まで筋肉が詰まってる人しかいないと思ってたよ。

失礼だなこの野郎!

キメ細やかな肌に、整った顔立ち、ダーク系の着こなしもすっごい似合ってるよ。

ダーク系?それって流行ってるんですか?

流行ってはいないかな、でも一部の人の間では結構モテてるよ。

わ、私雑誌で勉強してきたんです、外の人たちはみんなこういう恰好をしてるんだって。

あー、たぶんそれファッションに大きな誤解をしてるっぽいね、でもしょうがないか、こういう場所だし、そういう誤解が生じても仕方がないもんね!

でも大丈夫、ウタゲお姉さんが正しいファッション知識を教えてあげる!

ガヴィル、この子ちょっと借りるよ!

え?えええ?

おう、好きにしていいぞ。

とりあえず、これで人が揃ったな。

そろそろケーちゃんも元に戻すか……

休憩終わりー!ケーちゃんまだまだ戦いつづけるぞ!

ガヴィルはん、またどっかに行ってまうで!

なんだと?

チッ、みんなはやく着替えろ!追うぞ!

あっちの方向って、ズーママの部族がある方向……

ちょっと待って!着替え早すぎでしょ!?

待ってよぉ!

着替える必要なんかないでしょ!ここまま出発よ!
