
もう終わりだ、トミミ。

……まだ、まだ終わっていません!

ヌル、ペーター!

ドクター!

ドクター様――!

仲間を傷つけたくなければ……

アタシを怒らせるんじゃねぇぞ、トミミ!

……ガヴィルさんが残ってくれないのなら、手加減しませんから!

助けてくれ、ドクター!

ドクター様、怖いですうううぅ……

・任せた任務は達成できたのか?
・……
・大丈夫だ!今すぐ助けてやるからな!

ドクター、空気を呼んでくれよ、お嬢ちゃん、強い想いを無駄にしないでくれ、少しぐらい協力したって死にゃしないだろ。

はぁ、ここのみなさんはどなたもすごく純粋ですから、正直に言うと、彼らを騙していると私の良心が痛んでしまいますよ、私に心はありませんけど。

おいおい、ドクター、そんな目で俺を見ないでくれよ。

安心してくれ、俺だってまがりなりにもロドスのオペレーターだ、こんなこともできないならロドスの名が聞いて呆れるぜ。

ドクター様――!

Lancet-2!

ドクター様――!

うわぁ、迫真すぎだろお前らの演技。

あれ?

いつの間に縄を!

はっはー、すまねぇな、実は最初から縛られてねぇんだ。

ドクター、まさか最初からトミミがこんなことをするって予想してたのか?

・もちろん。
・……
・予想できないほうがおかしい。

どどど、どうやって!?

・まず、君はズーママの名を最初に聞かれたときに躊躇いを見せた。

あ?躊躇い?

・そして、祭典のとき、君はガヴィルの突然の行動に驚き慌てた。

……

・そして最後に、ディロン、例のブツは?

おう、Lancet-2の中に入れてあるぜ。

ううぅ……ドクター様のためじゃなければ、そう簡単に自分の身体の中に他人のモノを入れたりはしないんですからね。

……

これは、ロケット砲?

そうだ、トミミの部族んとこで見つけたものだ。

まさか……

そうだ、俺たちを撃ち墜とした元凶が、このお嬢ちゃんだ。

トミミ。

うううぅ、ごめんなさいぃ、ガヴィルさん。

こっち来い。

うううぅ……

アタシの太ももに乗れ。

ガヴィルさん、ぶたないでください、反省してますから……

ダメだ。

話を聞かない悪ガキには、当然お仕置きとして尻尾ペンペンだ!

うううぅ……
(尻尾を叩く音)

尻尾ペンペン、すごく痛そう……

これで懲りたか?

懲りました、うううぅ……

懲りたんならよし。

とりあえず、これで万事解決だな、ドクター。

・疲れた。
・……
・あの大技の大風車を使わないとは。

ははは、確かに立て続けにいろいろ起こったからな。

おい、ドクター、まさか立ったまま寝ちまったってわけねぇよな?

トミミを傷つけるわけにはいかねぇだろ。ん~、アタシも疲れてきたな。

この大きなロボット……一見すると確かにブサイクですけど、でもこの鋭角、荒々しい設計、乱雑だけど配線の効率的な配置、細かく見れば独特な美すら感じ取れます。

うん、これは結婚向けのタイプですね。

おい、Lancet-2、エンジンがまだ生きてるか早く診てやってくれ。

え?まさかエンジンはこのロボットの中にあるんですか!?

そうだよ、アタシらがボコボコにしちまったけど。

あわわ、可哀そうなエンジンちゃん、可哀そうな大きな子供。

ディロンさん、手伝って頂けませんか?

おうよ。

……

おい、ズーママ、どうしたんだ、ボケーっとして。

ガヴィル、ガヴィル!

あ?なんだよ?

あれ、あれって!

どれだよ?

あれだよ、あの動けて話せるロボットはなんなんだ!

ああ、Lancet-2のことを言ってんのか、彼女はアタシの仲間だ。

は、話しかけてもいいか?

ダメなわけないだろ?

あの、こんにちは。

こんにちは?

お前はロボットなのか?

私の生産名はレイジアンイグジスターシリーズS―Typer62六輪作業プラットフォームです。ロドスに所属しており、コードネームはLancet-2です。

おお!

はい、私は一定の知能が備わっておりますので、もし何かお困りのようでしたら、私が回答して差し上げます。

ついでにですけど、医療用の作業プラットフォームなため、私の知識データバンクは医療方面に偏重しておりますので、ご注意してくださいね。

^%&$*#(#……!!!!!

どうかされましたか?

ハグしてもいいか?

え?

何やってんだあいつ、頭でもイカれちまったのか?

見ればかわるじゃろ、彼女はあのロボットに仰天しておるのじゃ。

あ?

彼女が初めて移動都市を目にしたときのように、自分で動き、なおかつ喋れる機械が彼女に与えた衝撃は、あのときより比べ物にならんのじゃよ!

言うまでもないが、わしも興奮がピークに達しておるわい!

オホン、そちらの美しいお嬢さんや、デートをご一緒させていただけないだろうか!

このジャングルの中で最も美しい場所を知っておる、そこで素晴らしい午後の時間を一緒に過ごそう!

えぇ、わ、私がデートに招待されてしまいました!?

どうしましょう、ちょっと嬉しいですけど……ドクター様、お受けしてもよろしいでしょうか?

・良いよ。
・……
・私のLancet-2だ、あげないぞ!

大祭司、抜け駆けするな、でないと私たちが長年築き上げてきた友情が崩れても文句言うなよ。

正直に言うと、今の私はドクターと同じよ。

笑い出しそう、ぷぷっ。

えっ、ドクター様、急にそんなことを言われましても、まだ心の準備が……

……

ガヴィル、お前のところはこういう機械が造れるのか?

ん?あー、クロージャなら造れるかもな。

よし。決めたぞ、ガヴィル。

そのロドスというところは人手が足りてるか、私も加入しよう。

あ?

そこで機械の技術を学びたい。

はぁ?

私も外に出て学んでみたかったが、部族がある関係上ずっと真剣に考えてはこなかったが、今こそが絶好のチャンスと見た。

じゃ、じゃあ私も行きます!

なに言ってんだ!?

こうなれば、最終プランで実行するしかありませんね……ガヴィルさんについていけばいいんですよ!

ガヴィルさん、私にも戦闘能力はあります、きっとガヴィルさんの力になれます!

えーっと、ドクター、どうすりゃいい?

・来てもいいが、結果は保証しないぞ。
・……
・君が引き連れてきたんだ、私は知らない。

それもそうか、オペレーターテストがまだあるもんな。

おい、ドクター、こいつをイジめるんじゃねぇぞ。

ド――ク――タ――!
【メインに戻る】

まあいいや、お前もとりあえずはドクターについていって色々学べばいいさ。

はい!

ねえ、ガヴィル、ちょっとこの子が何を言ってるのか通訳してくれない?

……

あ?クマール?

私も彼女についていく。

お前についていくってよ。

うん、いいわよ。この子割と腕っぷしはいいから、オペレーターになっても問題はないでしょうね。

いいってよ。

よし。

ん?待てよ、ズーママも行く、トミミも行く、クマールも行っちまったら、部族たちはどうするんだ?

あの時出て行ったときは考えてみなかったのか?

あはは、あんときは頭に血が上ってたからな!

確かに……自分の部族を放っておくわけにはいかないな。

うむ、それについてじゃが、心配せんでよいぞ!

ガヴィルほどじゃねぇが、このビッグアグリーもなかなか強かったな。

だよな、俺も一つ造ってみたくなってきたぜ。

どうせ神殿も崩れちゃったんだし、いっそ機械を造ったほうがいいわね、すごいのを造ったヤツが大首長になるってのはどう?

いやいや、やっぱケンカのほうがいいだろ!

あー、それもそうね、ケンカも捨てがたいわね、どうしよう。

ったく、バカかお前らは、機械を比べながらケンカすりゃいいだろ!

それだ!

ほれ見ろ、お前たちはなんの心配もいらんのじゃ。

わしの長年の観察によれば、指導者が未来のために頭を悩ましてるとき、人々はむしろ時代に適応するのが一番早いんじゃ。

実は二百年前に一人のティアカの勇士が勝手に初代大首長に就任し、それ以前は、まったく大首長を選ぶ習慣がなかったとわしが口にしたら、お前たちはどう思う?

……大祭司、そんなことなぜ今まで黙っていたんだ?

うむ、さして重要なことでもないと思っておったんでな、違うか?わしがお前たちに伝えたいのは、人は強い、一つの伝統が失ったからといって死にはしないということじゃ。

わしからすれば不思議に思うんじゃ、伝統というのはただ人々を集わせるための儀式にすぎん。

だがその伝統が何十年と続けば、お前たちは知らず知らずに勝手にそれを不可侵なもの、決して破れてはいけないと決めつけるんじゃ。

だが事実そんなものなどはないのじゃ!

じゃからお前があのとき神殿を木っ端微塵に破壊すると言い出したときは両手両足と尻尾までおっ立てて賛成したわい!

ん、違うな、両手両足を上げたら尻尾が上がらんではないか……ん?うつ伏せすればよいのでは?試してみよう!

……その通りかもな。

お前一体何歳なんだよ?

年齢か?忘れたわい。

年齢というのはお前たちの時間を記録するための方法にすぎんのじゃ、わしには関係ない!わしがいつ誕生したかについては忘れてしまったところはあるがな!

そうかよ……でも、何はともあれ、やっぱり誰かが大首長になってもらわないと困るな。

ねえ、ガヴィルとズーママが再戦するって聞いたんだけど、もう終わっちゃったの?

ん?

ガヴィル、何よ私をジーっと見て?

イナーム、大首長に興味ないか?

はい?

つまり、一連の事件を経て、君たちはやっとのことエンジンを取り戻し、応急処置を済ませたあと、間一髪帰りにこぎつけたと。

そ、その通りです!

ドクター、私は確か君に、飛行機は非常に貴重な交通ツールと言ったはずだが。

・状況が状況だったんだ。
・……
・私のせいじゃないぞ。

飛行機が修理可能な範疇に収まってる以上、多くは責めないでおこう。だが、修理の費用は君とブレイズの給料から差し引くことにする。

えっ、なんで私まで……

上に立つエリートオペレーターはより多くの責任を伴うためだ。

うっ、わかりました。

それと君たちが連れてきたあの三人だが、君たちがオペレーターになれる素質があると言うのであれば、彼女らのことはドクターに任せる。

ガヴィル、今回の帰省は満足したか?

ん?ああ、大満足だ、予想外の出来事の連発で楽しかったぜ。

正直に言うとドクターが君を連れて帰らなかった以降のプランを組んでいたんだ。

そりゃどうしてだ?

君が故郷に残る可能性があったからだ。

あ?おいおいケルシー、それはなんでも他人行儀がすぎるぜ。

君は外に生活に適応してこなかっただろう、今でも君自身のやり方とこの大地で毎日起こっている出来事と激しく衝突してるではないか。

こう言うべきか、もしある日君が休職もしくは離職したとしても、驚きはしない。

なあ、ドクター、よくわかんねぇんだけど、ケルシーはアタシのことを心配してくれてるんだよな?

・そうだよ。
・……
・たぶんそうだろ。

Dr.●●、用がなければ、先に退出してくれ。

チッ、ドクターはこういう時に限って死んだフリをしやがる。

じゃあアタシのことを心配してくれてると受け取るよ。

さっすがケルシー、ドクターまで目が回っちまったぜ。

ケルシー、アタシは出ていかないぜ。

あのときアタシが出て行った確かな理由は、医者になりたかったからだ。

もちろん、あのときは自分が本当に医者になれるなんて夢にも思っていなかった、だがあのときの自分の覚悟には感謝してる。

現代医学の角度から見れば、アタシの実家んとこは医者がいないようなもんだ、病気をもらえばそこでお終い、あったとしても治療がすごく簡単な病気にあてがわれる民間療法ぐらいだ。

アタシがそこから抜け出さなかったら、この大地がどんな姿をしてるかなんて一生知らずに終わってただろうな。

多くの病気は死なずにすむことを知らないまま、鉱石病が実は人から唾を吐かれる病だということを知らないまま、人を救うことが殴ることと同じようにアタシを喜ばせてくれるのを知らないまま。

外は確かに複雑だ、いつも人の目的や、なんで争ってるのかが理解出来ないことの連続だ。

だが今のアタシは医者だ、アタシの理想は鉱石病が治癒されることだ。

この大地でここよりももっと医者の勉学に適した場所があると思うか?

おそらくはないだろうな。

そういうことだ。それにお前らはアタシ以上に毎日疲れ切ってるんだろ、アタシを心配してくれる余裕なんてあんのかよ。

アタシに言わせておけば、ケルシー、心配したいのはむしろアタシのほうだぜ。

お前はアタシがいないときに勝手にアタシの仕事を持って行って自分を無理させてるんじゃねぇのか?

してないさ。

ならよし、じゃあアタシはズーママの鉱石病を検査しに行くから、あとはごゆっくり。

あっ、じゃあ私はクマールの様子を見にいこっかな、そうだ、今はフリントだったっけ、ちょっと様子を見に行ってくるね、言葉が通じないから、たぶんまたどっかでケンカでもしてるかもしれないし……

ドクター、トミミはたぶん一般教養の授業を受けてるから、終わったらちょっくら見に行ってくれ。

ガヴィル。

ん?

お帰り。

へへ。

えっ、私は!?

君の次の任務は先週からセッティングしてある、つまり先延ばししすぎだということだ。

オウ……

……

今回は君にとってはいささか常識離れな旅だっただろう。

だが、ガヴィルの性格同様、この大地にもまだまだ生気で溢れているという証明だ。

悠久の時の中で、多くのものごとはすでのその本来の色彩が擦り減り失った、過去の当たり前は現在の有難いへと変化した。

我々はそんな人々の隙間から漏れ出した微かな光を探り出し、その行いを常に怠らないようにしなければならない。

今回の旅で君と同行したオペレーターたちに、この世には手に入れないほど尊いものもあることを知ってほしい。

ケルシー、会議の時間だよ―!

わかった。

では、Dr.●●、まだまだたくさんの仕事が残っている。

今回の休暇で十分な休息が取れたことを望んでいる。