(自動車のエンジン音とタイヤが鳴る音)

烈日、荒野、黄砂、熱風!wohoo!さっそく新曲が思いついたぜ!

(solo)

二人ともうるさい。

そうよ。せっかくの誰もいない広々とした場所で、追われる心配がないんだから、少しは静かに休ませてもらえないかしら?

でもさ、Alty、ここでも海の気配が匂うんだけど、ホントに安全なの?

Ayaったら、天然なところは相変わらずね。

この大地に安全な場所なんてないわよ、でもたまにはリラックスしないと息が詰まっちゃうわ、そうでしょ?

そうかもだけどさ。

じゃあこれからは、どうやって道を切り拓いていけばいいの、また手ぶらで帰るわけにはいかないでしょ。

少なくとも、今回ばかりはあの医者から答えを得ているわ。
Altyは手に持っている「鍵」に目を向けた。

\ホントかホントか?普通のカギには見えねぇが、彼女がまさかお前にくれてやったのか?何で交換したんだよ?

知識よ。

知識とこれの価値は同じなのか?

さあね、でもあの医者は私たちにその知識を使いなさいって促してるんだと思うわ。

彼女は知らないと思う?

私たちが何を知ってるかなんて、彼女からしてみれば……

……よくよく考えてみると、本当のトレードした内容って、私たちの好奇心で私たちの行動を交換したんだと思う。

えっ、じゃあ彼女は何も出してねぇじゃん?

だよね……

そうね……

騙されたね。

いいや、誘導されたって言うべきね。

操られたのか?

導かれたんだ。

ホントにそんなに重要な人物なの、あの医者って?

重要ではないわね。あの医者が私たちに伝えたい本当のことは、彼女のふるまいはそんな重要ではないこと。

重要なのは私たちが何を考え、何をするか。

じゃあこの鍵は?行かなきゃならないの?

え~、めんどくせー。行きたくねぇ。

音楽と一緒ね……私たちは人を強制的に変えさせる力を持つべきではなかった、ただ歌を歌っていればよかったのよ。

人々に歌を歌ってあげよう、もしいいと思ってくれたのなら――

人々も自然と歌い出す。

(solo)

ふふ、じゃあさらなる知識とこの鍵をしかるべき人に渡してあげないとね。

一体誰なんだろう?

さあね。

まだ生まれてきてないのかもしれないね。

そいつぁいい、まだ生まれてませんように!

そんなこと期待しちゃだめよ、Dan、私たちは……あら?

どうしたの、Alty?

車のエネルギーが切れちゃったわ。

準備してこなかったの?

したわよ、寄り道で余分にエネルギーを使っちゃったのかもね。

それに、こういう車道も標識もない荒野で運転すると、簡単に方向を失っちゃうって、素直に認めないとね。

つまり、迷子になっちゃった?

そうとも言い切れないわ、大まかな方向からすれば、私たちはただ道から少しズレただけ、今は新しい道を切り開いているのよ。

道に迷った。

迷子!こりゃあいい題材になるぞ!

正直に言うと、Dan、こういう時はアンタのポジティブを見習いたいよ。これからどうする?

あっちの方向にジャングルがあるらしいわ、行ってみましょう。

じゃあ、誰が車を押すの?

順番に押しましょっか。

Alty。

なにかしら。

周りに人がたくさん集まってたんだけど。

そうね。

言葉が通じないんだからしょうがないでしょ。

だからこうやって彼らについていってるの?

もっといい方法があれば教えてくれる?

全員やっつけちゃうとか?

FrostとDanを説得できればね。

(弾きながら歌う)

&*……%\……&(な、なんだぁこの音は、めっちゃいい歌じゃねぇか!?)

&%……%(私今までこんな音聞いたことない……)

ハァイ、こんにちは!

お前らなんの言葉を話してるんだ、教えてくれよ!

あっ、話してもわかんねぇけど。

……%&\(この人達どこからやってきたの!?)

\……&#(こいつらなんでこんな変な恰好をしてるんだ?)

まあいいや、少なくとも人が住んでるってことで。

もし補給させてくれる場所があればもっといいんだけどね。

目覚ましたほうがいいよ。
(ユーネクテスが歩いてくる足音)

異郷の者たちか?

あら?あなたサルゴン語が話せるの?

ああ、どうやら確かに外の人のようだな。

どうしてここにやってきたんだ?

私たちの車のエネルギーが尽きちゃったのよ、ここに来たのはアーツがわかる人を探して補給させてほしかったからよ。

……ついてこい。

ほらぁ、Aya、希望が見えてきたじゃない?

そうね、この大地ってホントになんでもアリだね。

おいおいおい、おいおいおいおいおい、どういうことだ、どういうことだよ!

こんな原始的なジャングルの中に、村みたいなのがあるぞ!

(鼻ずさむ)

確かに驚いた、大部分の建物は現代建築の面影が見えるけど、原始的な美も保たれてるね。

ちょっと変だけど、でも独特ね。

私はこの部族の族長、ズーママだ、私の部族の人は大体お前たちの言葉が理解できる。

部族の祭司たちに交通ツールにエネルギーを補給するよう頼んでやろう、ただし条件がある。

なにかしら?

お前たちの車の内部構造が見たい。

……それだけでいいの?

ああ。

アタシたちの車を壊さないって約束してくれる?

たぶんしない。

Alty?

ほかに選択肢はないようね。

それでどうなんだ?

OKよ。

よし。大祭司のじいや。

なんじゃ!……ん?

んんん?

お前たちは……

あなたは……

まさかこんなところであなたみたいな人に出会えるなんてね。

うむ、そうじゃな、わしもそう思うてた。

じゃが今はお前たちより、お前たちの車のほうに興味があるんでな!

お好きなように。

もう一回言うけど、この大地ってホントになんでもアリだね。

そればかりは同意見よ。
ちょうどその頃、Frostはギターを祭祀用のスピーカーにつなげ、即興のソロ演奏を始めた。

やるじゃない、Frost。

この独特な村からインスピレーションを受けた。

かっけー、Frost、メロディに少しだけ変化を加えてるな。

灼熱、抑圧……

この曲を……『D』、と名付ける!

どっからか音が流れてるぞ?

なんだこの音は?全身に力が湧いてきてるようだぞ!

さっきの異郷人が出してるらしい!行ってみようぜ!

どんどん人が集まってきてるよ、Alty……

まずいわね。

ここの命たちは音楽を渇望している!力を渇望している!それと……

この音って!

異郷の方よ、もっとその音を奏でてくれ!

Alty……急だとは思うけど、ちょうど今の雰囲気もマッチしてるからさ。

私たちも自分たちのスピーカーを出してさ、一緒に一曲ぐらい演奏しようよ。

異論はないわ。

いいじゃんいいじゃん、Frostだけいいとこ取りはずるいぜ!

こんなマジ最高な編曲に、アタシが参加しないでどうするってんだ!

じゃあここにいる人たちに私たちAUSのミュージックを感じてもらいましょ!

ただの音なのに、なんで俺の興奮が止まないんだ!

これってまさか祭司たちが使ってる祭楽と同じ、いわゆる「楽曲」ってやつなんじゃねぇのか?

俺今までこんな楽曲聞いたことねぇぜ!彼女らは一体何モンなんだ!

わかったぞ、きっと彼女らは「クイカトル」なんだ!

「クイカトル」?なんだそりゃ?

うむ、それはそいつらの言葉で「歌う人」という意味じゃ。

ここは長い間「クイカトル」が出現してこなかったもんでな、お前たちの音楽がここのみんなを虜にしたんじゃよ。

正直に言うとな、お前たちの音楽はわしが過去に聞いたクイカトルの音楽とまったく異なっておるけどな!

じゃが問題ない、お前たちの音楽のほうがよっぽど面白くて興味深いわい!

「クイカトル」よ、俺たちにもう一曲奏でてくれ!

欲しいものがあれば何でもあげよう、だからもう一曲頼むよ!

どうする、Alty?

私たちの目的を忘れないでって言いたいところだけど……

まっ、しょうがないわね、時間はたっぷりあるし。

こんなところにもトランスポーターがいるんだ。

こっちもまさか雑誌でしか見ないAUSがこんなところに来るとは思わなかったわ。

ズーママはどこかしら?

あなたたちからお願いされたスピーカーを今作ってるところよ、だから私が道案内にきたわけ。

あなたたちはここでどのくらい滞在するつもりかしら?

一週間かもしれないし、一か月かもしれない、あるいは一年かもしれないわね。

ここは私たちのハートを熱く燃やしてくれたわ、だったら思う存分ここを楽しまないとね。

だったらあなたたちにとってもお似合いな場所があるわ。

超クールな場所じゃんここ!

ここは……神殿かしら?

その通り、ここは前まで全部族が集まって「マーウィゾッティア」が行われた場所よ、でもガヴィルって子がここから出て行ってから、すっかり使われなくなっちゃった。

「マーウィゾッティア」?

ガヴィル?ロドスでその名前を見たような……まあいいわ、きっと同名なんでしょう。

ここで好きに演奏して構わないわよ。

ここの人たちに最高のミュージックを楽しんでもらおう。

ハハ、そうだな、ここにAUSの爪痕を残してやろうぜ!
二か月後

AUSって本当に不思議な人たちね……

まさか二か月もここに滞在してるだなんて。

こりゃいつかガヴィルが戻ってきたらきっとビックリしちゃうかもしれないわね、こんな辺鄙な場所にも、ミュージックがあっただなんて。

ここの人たちがまさかロックにハマっちゃっただなんてね。

さてさて、今日はまたどんな演奏をしてくれるのかしら?

AUSのみなさーん……

あれ?
部屋の中はもぬけの殻だった、各種の日用品と寝具はきれいに整頓されていて、中央の簡易机に、一枚の手紙が置いてあった。

まさか出て行っちゃったのかしら?

机に手紙がある、どれどれ……

「とても惜しい気持ちではあるけれど、もう行きます。私たちの音楽がここのみんなを楽しませてあげていれば幸いです。それと、私たちのアルバムを全部残してあります、いっぱい楽しんでね。――AUSより」

……ふふっ、ほんっと不思議な人たちね。

アカフラって場所は一生忘れることはないわ。

(鼻ずさむ)忘れがたい思い出になった。

でもそこの人ってやっぱちょっとうるさかったかな、それにちょっと野蛮だったし。

そうか?アタシは好きだけどな!

そりゃあ好きでしょうよ、アンタをそこに置いていっても文句言わなさそうだし。

確かに残るか残らないかすげー迷ったぜ。

あそこの人たちにはなんつーかナチュラルで、原始的な活力があるって思わねぇか?

アタシらは今までいろんな国とか都市に行ってきたけどよ、あんなところは初めてだったぜ。

アタシはあいつらが大好きだ!

彼らは私たちの音楽を理解してくれた、最高の観客だ。

Frostも彼らを気に入ったようね。

やっぱり他人の生きざまをあれこれ弄んじゃうのはよくないわね、私たちは歌を歌っていればいいのよ。

人々に歌を歌ってあげよう、もしいいと思ってくれたのなら――

人々も自然と歌い出す。

これ前にも話さなかったっけ?

さあね、今まで知らないだけで何度も同じ話をしてるかもよ。

さっ、私たちの旅を続けましょ。

はたして大地は私たちの歌声に、耳を傾けてくれるのかしらね?
彼女らは車内で、少しだけ冗談を交わした。
Altyは手中の鍵を見てこう思った、ケルシー先生、あなたたちロドスはこの大地が欲しがっている答えを導き出せるのかしら?