
……
(ビックマウスモブが歩いてくる足音)

なんだなんだぁ?クスザイツ警備んとこのニュースター選手じゃないか?お早いご登壇だな。

観客も未入場、今日の一試合目は二時間後だってのに、事前の準備でもしに来たのか?

こういう場所で試合するのは久しぶりだ……懐かしいな。

ああそうだな、オレも気になってたんだ、騎士の称号は「プラスチック」だけどよ、これはあんたの売りの一つでもあるもんな……

先月の試合スケジュール終了後、あんたのポイントは騎士団の中でも断トツだったろ。まだそんなに張り切る必要があんのか?

……雇い主の要求なんでな、仕方がない、おかげで俺の休暇は全部パーだ。

あっ、やっぱりアレなのか?

知ってるくせに聞いてくるのか。

へぇ、やっぱり?じゃあ今日はいいモンが見れそうだぜ。
(???が歩いてくる足音)

面白いものが見れるのは確かです……ただその前に、私と「プラスチック」のミスターシェブチックと二人っきりにさせて頂きます。

あんたは……?

直接選抜トーナメントのスタッフでございます、こちら私の名刺でございます、ミスターシェブチック。

……「スタッフ」だと、何の用だ?

あなたのもとへご通達に参りました。

クスザイツ警備会社があなたとマリア・ニアールとのマンツーマン総合競技、俗にいう「決闘試合」で、最新のJack2タイプアーマーを装着して、試合時間をなるべき伸ばすようとのご要求です。

なんだと?その新アーマーの材質は騎士競技のためのものじゃないんだぞ――

問題ございません。「ニアールの再臨」で多くのメディアが注目しております、これは絶好のチャンスなのです。

あの長期貿易契約を入札するため、彼らはすでに多くの代償を払ってきました。なので一度合理的な賭けをする必要があるのです、即ちこれはテストであり、宣伝でもあるのです。

クスザイツ警備宣伝執行部門があなたに用意した手付金については……あなたの去年の手取りの三倍を約束してくれます。

この一試合だけで、あなたの故郷でなら村をまるごと買い取れるほどですよ、ミスターシェブチック。

……そこまでする必要があるのか?

注目度と実物宣伝は二の次でございます、ホットな話題とトーナメント収益でクスザイツ警備が商業連合会で多くの……そうですね……発言権が得られますからね。

発言権はとても重要です、違いますか?

雇い主からの要求だ……それに金ももらえるんだ、喜んで承ろう。

ご協力感謝致します、こちらもミスターシェブチックには特別な需要があることは理解しておりますから……

ところで、ニアール家の次女はご存じで?

彼女ならデビュー戦で見た、悪くはないが、耀騎士と比べたら、あまりにもガッカリだったよ。

……俺が負ける心配をしているのか?

いいえ……そのようなことは、失礼致しました。新型アーマーの注意事項に関しましては、すでに装備一式と共にそちらの住所に送っておりますので、お目通しを……

……

……お前さんら今集まる必要があるのか?

何を言う!あと一時間半でお嬢ちゃんが出場するんじゃぞ!特訓後の初戦じゃからな!見送って当然じゃろ!

ハハハ、その通りだ、だから今日は俺が奢ってやるよ。

はぁ、まったくうるさいったらありゃしない……

ほらよ、「ソーンティアドロップ」だ、こんなに強い酒を飲むなんて珍しいな、心配してんのか?

ゾフィアが最初にわしから剣を習って初戦に漕ぎつくまで、まる四年はかかった……だがマリアはたったの四週間じゃ。

わしらがしっかり目を配らんといかん、手を引くべき時は引かせる、絶対に無茶をさせてはならん。

ハハハ……血を熱く滾らせた若き騎士か、本当にマーガレットが試合に参加したいと言った時を思い出す。

だが二人は違うんじゃぞ。

とにかく、あの子を信じよう。

賢い方法でポイントを稼げば、トーナメント参加資格の獲得もそう難しくはない。

普通の選手なら、可能じゃろうな、だがマリアにとっちゃあ……わしにはわからん。

胸騒ぎがする……疫病神が憑きに来そうじゃ。

どうした、フォーゲル?冷やかしばかりしおって?嫉妬しておるんか?お前にはメンツというものがないのか?

なんじゃと!?
(大歓声)

レディ――ス&ジェントルマン!騎士競技へ――ようこそ!

お前たちは運がいいぜ、今日この日はなんだってクスザイツ警備会社が全額出資してるクスザイツ競技場に来れたんだからな!「クスザイツ警備、狂風すらもあなたにひれ伏す。」ってな!

みんなお財布を空っぽにしてやれるような独立騎士は見つかったかな?もしないのなら、本日、またもう一度紹介させてもらうぜ――

前回の彗星が突如と現れてはや一か月、デビュー戦の時点で大盛り上がり、今日はどんな鍛錬を経て返り咲くのか!

さあ熱烈に歓迎しよう、クスザイツ競技場でもっともキュートな面立ち、レジェンドの妹、二アール家最年少の競技騎士!

マ――リ――ア、ニアール――!!
(大歓声)

俺の全財産をお前につぎ込んでやったからな!ニアール!

※口笛※耀騎士ジュニア!耀騎士ジュニア!

相変わらず大げさな雰囲気ね……ちょっと!見えないじゃない!座ってなさい!

(どれくらい経ったんだろう……観客席で試合を見なくなったのは。)

(マリア……絶対に緊張しちゃダメよ。)

(深呼吸……深呼吸よ。)

(うぅ……す、すごい人数から見られてる……)

(ま、周りを気にしちゃダメよ、深呼吸、深呼吸……)

へい!へい!みんなの強い気持ちはよーく理解してるぜ、でも今は、ちょっとだけ抑えてくれよな!

どうかこのお嬢さんに少しだけ息抜きのスペースを開けてやってくれ、もし驚かせて投降させちゃっても、クスザイツ警備からのチケットの返金はないから注意してくれよな。

その通り!歓声よりも、お前たちの財布の中身で彼女を応援してやってくれ!お前たちの気に入った少女の騎士が優勝者になることこそが、もっとも喜ばれることだろうからな!

ビッグマウスのモブ、クスザイツ警備に買われたか。

低俗なヤツめ、ペッ。

ハッ、クスザイツ警備なんざ、ゴミしか生みだせない生産ラインにすぎんわい、自分の身の程も知らずに、レイジアン工業と商売を競うつもりでいやがる。

わしがガキの頃にこねたおもちゃの泥のほうがやつらのアーマーよりよっぽど堅牢じゃわい。

そう言ってるくせにお前さんが大企業に入ったところを一度も見かけんかったが?

入りたくなかっただけじゃ!わしは二度とあの騎士装備なんちゃらには触れんと誓ったんじゃ!

だから去年は一年中酒代すら払えなかったわけか、働こうとしなかったわけじゃな、結果どうなった?

やむを得なかっただけじゃ!でなければ配管修理なんかするわけないだろ!わしは配管工ではないんじゃぞ!

ハハハ……そのことだが、ライラのおばさんからの言伝だが、お前に彼女の息子のランプを修理してほしいと言ってたぞ……

ハッ、行くんか?

わしは……はぁ、マリアの相手は誰じゃ?
(大歓声)

よぉし――!みんながこんなにハイになってんだ、クスザイツ警備会社全額出資のクスザイツ競技場がみんなを失望させるわけねぇもんな!

クスザイツ警備がメインスポンサーを務める、前回トーナメントでトップ100騎士団に入ったクスザイツ騎士団――彼らの大先鋒が耀騎士の妹と雌雄を決ることに決意した!

ヘイ、オレへの罵声が聞こえたぞ!謳い文句だって騎士競技の一環だからな!だから――

焦んな、焦んなって、オレたちの美しい少女が間もなく嵐の審判とご対面だ!

この廉価な称号に似合わない比類なく強力な競技騎士を迎えよう――「プラスチック」のシェブチック――!

シェブチック!シェブチック!

ぶちのめせシェブチック!こっちは何もかもつぎ込んだんだ、失望させんじゃねぇぞ!

「プラスチック」のシェブチック、身に着けているクスザイツ警備最新材質で造られたアーマーがライトの下でその輝きを放つ、クルビア産の最新アーマー技術が今回の試合で決定的なキーとなるか!?

その通り、クスザイツ警備は引き続き騎士のみんなのためにもっともフィットする装備を提供するぜ――メンテナンス、レベルアップ、嵐のような改造!

忘れんなよ、「クスザイツ警備、狂風すらもあなたにひれ伏す!」

ほう、まさかここでお前に会えるとはな……この俺が舞台上で、舞台下にいるお前を見下ろすとは思いもしなかった。

――シェブチック。

「ウィスラッシュ」のゾフィア、お前がトーナメントで怪我を負って以来、再びここに戻って自ら屈辱を味わいに来るとは思わなかったよ。

ハハハ、あんたらみたいな連中は人の弱みに付け込むのが好きよね、しかもいつも口だけ。

あの時私たちが選抜戦で出会ったとき、私にどれくらいのポイントを取られた憶えてるのかしら、プラスチックのおもちゃさん?

もしあの時お前がもっと賢ければ……まあいい、今のお前と話しても意味はないか。

だが、お前がニアール家の次女を訓練したのか?たったの一か月で……?

舞台に集中しなさい、観客と喋ってないで、でないと惨めに負けるわよ。

なるほど、なら少しは期待できるか……

あまり舐めないほうがいいわよ、プラスチックおもちゃが。

ふっ……気を付けよう。

お?おお?何やらシェブチックは台に上がる前にある観客と少し会話していたぞ、なんと「ウィスラッシュ」のゾフィアだ!間違いない!これがいわゆる「観客席サプライズ」というヤツか!?

ペッ。

今、両騎士が正式に入場した、決してほかに目移りしないように、気も緩めないようにな!

さあさ!みんな!シェブチックが身に着けてる煌めき輝く甲冑が見えるか?マリアの美しい金色の髪が見に入るか?

だがそれらはすべてすぐに血肉で覆われることになる、二人はこれから全身全霊をかけて相手を打ちのめす、ルールは――言わなくてもわかるよな、何故ならこれこそが、騎士競技だからだ!

オレたちの鈍くさい審判員が勝敗のジャッジを下す前に、お前たちは自分の好きな方法が選手を応援できる!もちろん!応援した票数が直接相手の勝敗に影響が出る仕組みだ!

タダの応援は、例えば耳障りな掛け声や叫びはなんの意味もない心理的な慰めにしかならない、もしみんなが自ら財布の中身を差し出してくれるのなら、もれなく支援物資を購入できるチップが手に入るぜ!

おう、またブーイングが聞こえてきたぜ、だが驚くなかれ、今年の競技参加人数記録更新を祝って、クスザイツ競技場でのマージンが前代未聞の50%まで下がった!

誰でも10コイン購入するだけで、5枚は選手の力になれるってわけだ!こんなに千載一遇のチャンスは、今後100年お目にかかれないかもしれないぞ!

もちろん!クスザイツ競技場だろうとただみんなから多額な手数料をしょっぴくはずがねぇ、みんなが応援する選手がいかなる「形式」で勝ったとしても、みんなには一等賞を引けるチャンスが待ってるぜ!

オッズなんざ気にするな、オッズはここにいるみんなの手中にあるんだからな!元金だって?元金はお前たちが騎士につぎ込んだ金額の分だ!迷ってる暇はないぜ!今すぐ自分の熱愛する戦士たちに千金を投じろ!

それではお待ちかね、対戦する双方、スタンバイ――!

……お爺ちゃん、お姉ちゃん、私行くよ。

マリア・ニアール、家訓は「苦暗を畏るなかれ」!!