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【明日方舟】シナリオ翻訳 マリア・二アール MN-8「商業連合」前半

マリア
マリア

チーム戦?

ゾフィア
ゾフィア

二対二のタッグマッチよ、めったに見ない形式だわ、本来は騎士団の役割分担を顕著にさせるためにも、せめて三対三もしくは四対四であるべきなんだけれども。

ゾフィア
ゾフィア

でもたとえ何対何だとしても、あなたは騎士団に所属していていないから、助っ人が必要になるわ。

マリア
マリア

えぇ……相手は誰なの?

ゾフィア
ゾフィア

スケジュールにスノウイーヒール騎士団って書いてるわね。

ハゲのマーチン
ハゲのマーチン

……弓使いのやり手が数人と、モーニングスター使いが一人いるな、誰と組むんだろうな。

ハゲのマーチン
ハゲのマーチン

マリアもついに相手の名前を聞いただけで誰かが分かるところまで来たな。

マリア
マリア

あはは……

ゾフィア
ゾフィア

いいんだが悪いんだか……

ハゲのマーチン
ハゲのマーチン

マリア、タイタスに勝ったことは喜ばしいことだ、だが今以上に多くの目に晒されることも意味する。

ハゲのマーチン
ハゲのマーチン

フレイムテイルとグレートグレイがその戒めを示してくれた、才華や力を誇示するのもあまりいいこととは言えない。

ハゲのマーチン
ハゲのマーチン

必要なときに企業に妥協するのも重要なことだ、もう時代は変わったんだ、純粋な勝利だけでは栄誉は取り戻せないんだよ。

マリア
マリア

……

ゾフィア
ゾフィア

……なんであの時言ってあげなかったのよ?

ハゲのマーチン
ハゲのマーチン

あんたが怒って出て行ったあとにちゃんと言ってあげたさ――それと、あのときまたドアを壊してくれたな。

ゾフィア
ゾフィア

うっ。弁償します……

ゾフィア
ゾフィア

ところでフォーゲルとコワルは?

ハゲのマーチン
ハゲのマーチン

今日はあの日だ、まだ帰ってきていないよ。

ゾフィア
ゾフィア

あ……お墓参りの日ね、まずいわね、マリアの装備を修理してくれないか聞きたかったんだけど……

ハゲのマーチン
ハゲのマーチン

あいつの工房を借りればいいさ。

ハゲのマーチン
ハゲのマーチン

それに去年ある日あいつが酔っ払ったついでに、もしマリアにその気があれば、いつでも喜んで工房を継がせてやるって言ってたぞ。

マリア
マリア

えっほんと!?私全然聞かされてなかったんだけど?

ハゲのマーチン
ハゲのマーチン

とにかくあいつはもう二度と金床には触れないと誓ったんだ。

ゾフィア
ゾフィア

はぁ……もう随分経ったもんね……

ハゲのマーチン
ハゲのマーチン

過去を完全に受け止めきれる人はそういないさ、尚更オレたちみたいなジジイ連中はその過去に取り残されちまった。

ゾフィア
ゾフィア

なら彼らのことはひとまず放っておきましょ、マリア、自分で装備をなんとかしなさい。

ゾフィア
ゾフィア

それと、チームメンバーのことは……宛てはあるの?

マリア
マリア

宛て?うーん……

マリア
マリア

……

マリア
マリア

ほらっ、私ってそんなに騎士の友だちいないでしょ?

ゾフィア
ゾフィア

そうだと思って私が探してあげたわ、私の知り合いよ、当日協会が適当に埋め合わせた人よりよっぽど安心でしょ。

マリア
マリア

え、誰?

ゾフィア
ゾフィア

ファーファングナイト、弓の達人よ。

ゾフィア
ゾフィア

あなたと同じ、独立騎士始まりよ、それに企業のスポンサーも受けなかったわ、今は確か完全自立した騎士団を立ち上げようとしてたわね。

ゾフィア
ゾフィア

たぶんあなたたちなら相性はいいと思うわ、戦術のほうもお互い補えそうだし、チームタッグ戦はバトルロワイヤル戦やシングルマッチ戦とはまったく違うものだから、その時が来たら分かるわ。

ゾフィア
ゾフィア

本来時間があれば、訓練所でお互いを把握しておいてほうがよかったんだけど、こんな状況だし、本番で力を発揮するしかなさそうね。

マリア
マリア

……わ、分かった。

ハゲのマーチン
ハゲのマーチン

これが独立騎士のデメリットだ……臨時で組んだメンバーと歴戦の相手チームと対戦しても、必ず劣勢に陥ってしまうんだ。

マリア
マリア

どんな人なんだろう……ちょっと緊張しちゃうなぁ……

チェルネー
チェルネー

この街道を通るのも本日で三回目になってしまいましたね。

企業職員
企業職員

ええ、そうですねチェルネーさん……

チェルネー
チェルネー

こういう仕事には慣れているのですね、各競技場を行ったり来たり、無数の電話会議に参加することが。

企業職員
企業職員

い、いえそんなことは……私みたいな人はこれといった得意不得意はありませんので……

チェルネー
チェルネー

ただその恰好はいささか場に不釣り合いですね、見た目も交渉するために必要な重要なファクターですよ、そうは思いませんか?

企業職員
企業職員

も、申し訳ありません……実はついこの間まで職を失った状態だったので……それで……

チェルネー
チェルネー

ふむ……それとなんの関係が?

チェルネー
チェルネー

私はあなたみたいな方は嫌いではありませんよ、谷底に落ちてしまった人でしか我々が直面しているすべてがいかに残酷かを知ることができませんからね、それにそれを知ったあとでしか、人に満足して頂ける決断も下せませんからね。

企業職員
企業職員

……

チェルネー
チェルネー

私の言った一文一句、やってきた全ての仕事をどうか覚えておいてください。

企業職員
企業職員

え?あっ、スノウイーヒール騎士団の議事録作成ですね、分かりました、すぐにご用意――

チェルネー
チェルネー

いえいえいえ結構です、彼らのスポンサーは私の古い友人ですので、そんな面倒臭いことはしなくて結構ですよ。

チェルネー
チェルネー

ただ私の取るに足らない……仕事のスタイルをどうか覚えておいてください。

ゾフィア
ゾフィア

……マリア。

マリア
マリア

ん?

ゾフィア
ゾフィア

実は最初から、私はあなたが騎士競技に参加することは反対していたのは知ってるわね。

マリア
マリア

えっ、うん、どうしたの急に?それならよく知ってるけど。

ゾフィア
ゾフィア

でもあなたは自分を証明してみせた。

マリア
マリア

毎回ギリギリだったけどね……

ゾフィア
ゾフィア

いくらたいそうな動機や、大義や、誓いがあったとしても……あなたの覚悟を証明してくれるのは試合での成績だけよ。

ゾフィア
ゾフィア

まだまだ甘っちょろいけど。

マリア
マリア

あはは……

ゾフィア
ゾフィア

でも……その「ニアールのために栄誉を取り戻す」という純粋な想いが、あなたを強くしていったんでしょうね。

ゾフィア
ゾフィア

――勝てたのは確かに幸運だったのかもしれない、でもあのタイタスから一点でも奪い取れたんだから、これからの相手と対戦してもなんとも思わないでしょうね。

ゾフィア
ゾフィア

あなたは自分でアーツの使い方を見出してきた、でも残念ながら、今ではまだ、あなたのその戦術は真の強敵には通用しないわ。

ゾフィア
ゾフィア

たとえば、レフトハンドナイトが本気を出していたら、マリアが三人かかっても彼には勝てなかったでしょうね。

ゾフィア
ゾフィア

剣術も、戦術も、私ができるだけ教えてあげるわ、射撃だったら、フォーゲルに聞いてみるのもいいわ、普段はあんな調子だけど、当時の彼はあなたのお爺様を唸らせた名手だったのよ。

ゾフィア
ゾフィア

――でもアーツだけは、あなたの光は、あなた自身で掴み取らなければならないわ。

ゾフィア
ゾフィア

――分かった?

マリア
マリア

う、うん!

チェルネー
チェルネー

はい……事態は急変してしまいましたが、依然順調に進んでおります。

チェルネー
チェルネー

はい?いえ、私たちのユーザーを高く評価しすぎですよ、非難批判は決して観客席では起こりえません、あそこに道徳などは存在しませんから。

チェルネー
チェルネー

ええ、仰る通りです。あの二人を……遣わして頂いて誠にありがとうございます。

チェルネー
チェルネー

必ず皆さまに素晴らしい報告書をお見せいたしましょう。

???
???

……

チェルネー
チェルネー

おめでとうございます。

チェルネー
チェルネー

……今、すべての準備が整いました。

チェルネー
チェルネー

この素晴らしい試合の幕開けを共に待ちましょう。

ハゲのマーチン
ハゲのマーチン

おう……戻ってきたか。

老騎士
老騎士

雨は降らないって言ってただろう、降ってきたではないか……

老工匠
老工匠

チッ……テレビで流れるもんは全部信用ならん、ニュースも、競技も、それに天気予報もな。

老騎士
老騎士

マリアはどうだ!試合は今日なんじゃろ!

ハゲのマーチン
ハゲのマーチン

もう酒のつまみを用意してあるよ。

ハゲのマーチン
ハゲのマーチン

どうしたんだ?

老騎士
老騎士

……どうもこうも、あれから随分と経った……今年もまた人が減ってしまった。

老騎士
老騎士

隊長の墓参りに来る連中がどんどん減ってきてしまってな。

老工匠
老工匠

はぁ……わしと飲み比べしてやると言ってたくせに、乾杯する前に、人が先に居なくなってしまったとはな。

老騎士
老騎士

……まあいい、もう随分と昔の話だ。

ハゲのマーチン
ハゲのマーチン

そうだな……まさか、あんたら二人が彼女のために一生独身を貫いてきたとは誰も思わないだろうな。

老騎士
老騎士

その話はよせ、酒をくれ。

老工匠
老工匠

そうじゃ!ジジイ共の生死なんざその辺にして、マリアの試合を見ようじゃないか!

老騎士
老騎士

乾杯、コワル!

老工匠
老工匠

乾杯、フォーゲル!

ハゲのマーチン
ハゲのマーチン

今日はバーゲンセールだ、酒は自分で取ってくれ、それと店の留守番を頼む。

老騎士
老騎士

なんじゃ、タダで飲んでいいのか?

ハゲのマーチン
ハゲのマーチン

そんなわけあるか。

老騎士
老騎士

ならどこに行くんじゃ?

ハゲのマーチン
ハゲのマーチン

競技場だ。

老工匠
老工匠

あ?チケットが手に入ったのか?

ハゲのマーチン
ハゲのマーチン

……人に頼んで一枚だけ手に入ったよ、まったく今のチケット代は本当に馬鹿げてる。

老工匠
老工匠

それがここのビジネスじゃよ。

(ドアをノックする音)

???
新聞少年

こんにちは、今日の競技昼刊新聞です。

ハゲのマーチン
ハゲのマーチン

ありがとう、坊や、牛乳を一杯やろう。

???
新聞少年

はい!ありがとうございます!

ハゲのマーチン
ハゲのマーチン

午後の競技新聞か、持ってい――

ハゲのマーチン
ハゲのマーチン

――待て、何だこれは?

(大歓声)

ビックマウスモブ
ビックマウスモブ

本日もポーミェンヌーシュ競技場へ!ようこそ!

ビックマウスモブ
ビックマウスモブ

前回の試合の熱は未だに冷めず、騎士「ソフトウィング」の血痕も未だ競技場の地面に残ったまま、だが大丈夫、彼の滲んだ血を今回の試合を盛り上げるスパイスにしてあげようじゃないか!

ビックマウスモブ
ビックマウスモブ

間違いなく、みんなは今日もニアールの風采を目に焼き付けようとここにやってきたんだろう――!このうら若き乙女は、オレたちにこれでもかという奇跡を見せてくれた!

ビックマウスモブ
ビックマウスモブ

ブレイクタイムももう間もなく終了する、十分後、マリア・ニアールとファーファングナイトが組んだ臨時チームが――

ビックマウスモブ
ビックマウスモブ

今年のルーキー――過去トーナメントに入選できなかったチームの精鋭たちが組んだ復讐の同盟――スノウイーヒール騎士団と対抗する!

ビックマウスモブ
ビックマウスモブ

新たなる伝説が復讐の刃に立ち向かう、斬新な二人タッグマッチ戦、前代未聞の刺激を味わおうじゃないか!試合開始までもう少しだけ待っててくれよな!

ゾフィア
ゾフィア

マリア、傷の具合はどう?

マリア
マリア

うん!もうバッチリ!叔母さんがお世話してくれたおかげだよ!

ゾフィア
ゾフィア

そう、なら信じるわ。

マリア
マリア

……うん!

ゾフィア
ゾフィア

それにしても、遅いわね……ファーファングはいつも遅刻してくるっていうけど。

マリア
マリア

大丈夫だよ、間に合ってくれれば――

???
競技場スタッフ

マリア様!マリア・ニアール閣下!選手待合室で準備をしてください!もう間もなく始まります!

マリア
マリア

あ、もうすぐ始まっちゃうか……

マリア
マリア

じゃあ先に準備してくるね、ゾフィアお姉さん。

ゾフィア
ゾフィア

……うん。

(マーチンが駆け寄ってくる足音)

ハゲのマーチン
ハゲのマーチン

……ゾフィア?マリアはどこだ?

ゾフィア
ゾフィア

マーチンおじさん、どうしてこんなところに?

ハゲのマーチン
ハゲのマーチン

ああ……実はな……まだここでファーファングナイトを待ってるのか?

ハゲのマーチン
ハゲのマーチン

彼女はもう来ないぞ。

ゾフィア
ゾフィア

――何ですって?

ハゲのマーチン
ハゲのマーチン

ほらっ、今日の競技新聞だ。

ゾフィア
ゾフィア

えっと……ファーファングナイトが……重傷!?

ハゲのマーチン
ハゲのマーチン

騎士ファンの闘争に巻き込まれて、現在失踪中、生死も不明。

ハゲのマーチン
ハゲのマーチン

表ではそう報道している。

ゾフィア
ゾフィア

ちょっと待って……闘争に巻き込まれたですって?

ゾフィア
ゾフィア

そんなのウソに決まってるわ、一体どんなファンなら闘争で百戦錬磨の騎士を「失踪」させられるっていうの?

ゾフィア
ゾフィア

ちょっと待って……それってまさか……

ハゲのマーチン
ハゲのマーチン

……今はそれどころじゃない、試合はどうする?

ハゲのマーチン
ハゲのマーチン

……何かがおかしいんだ、ゾフィア、よく考えてくれ。

ゾフィア
ゾフィア

マリアを棄権させないと!もう間に合わないわ、私についてきて――

ビックマウスモブ
ビックマウスモブ

ブレイクタイムはどうしていつもいつもこんなに短いんだろうな――なに?長すぎるって?おいおい頼むぜ、見かけだけでもステージの掃除ぐらいさせてくれよ。

ビックマウスモブ
ビックマウスモブ

一体どれだけの人がニアールのためにやってきた?一体どれだけの人がニアールの風采を一目見ようとここにやってきた?

ビックマウスモブ
ビックマウスモブ

まったく自慢ではないが、このスーパーニュースターをずっと見守ってきたオレは、今の膨大な賞金プールの数字がどうやって少しずつ膨れ上がっていくところをままじかで見てきた!

ビックマウスモブ
ビックマウスモブ

バックが収集したデータによると、今この瞬間、国内の全都市、国内の全村落から、様々な方法でこの中継を見ている観客は、なんと数十万人にも達する!!

ビックマウスモブ
ビックマウスモブ

このすべてが一体誰がもたらしてくれたのか!言わずもがなオレ含めみんなはもう分かっているだろう!

ビックマウスモブ
ビックマウスモブ

だがここで、一つ残念なお知らせだ、ファーファングナイトはどうやら昨晩の事故で負傷してしまい、行方不明になってしまった!

ビックマウスモブ
ビックマウスモブ

だがしかし!マリアは棄権をしなかった!一対二の大きなリスクを背負いながらも、彼女は依然この場に足を踏み入れたのだ!!

ビックマウスモブ
ビックマウスモブ

この勇気がみんなにとってどれだけの価値があるのか、このオレに確かな形で見せてくれ!!

ビックマウスモブ
ビックマウスモブ

それではご登場願おう――今大会もっともホットなスーパールーキー!ニアール家からやってきた若き騎士の、マリア・ニアール!!

(大歓声)

マリア
マリア

うぅ、やっぱり間に合わなかったか、これからどうしよう……

マリア
マリア

……いいえ、諦めてはダメよ、まだ始まってもないのに棄権するなんて騎士に対して失礼だよね!

マリア
マリア

騎士……そうね、騎士。

ビックマウスモブ
ビックマウスモブ

そして続いて!スノウイーヒール騎士団から二人の老将がやってきた!

(大歓声)

ビックマウスモブ
ビックマウスモブ

二大会連続ともにもともとの騎士団に所属してもなおトーナメントに入選できず、その後それぞれ異なる道を歩んでいったが、最終的に再び道を共にした復讐の戦団!!

ビックマウスモブ
ビックマウスモブ

本日登場したスノウイーヒール騎士団の二人のメンバーは、共にその名を轟かせた騎士、彼らこそが――

(会場に響く轟音)

突如鳴り響く轟音は絶え間なく喋り続けていた司会者を遮った。

???
男性観客

おい、場内のあれはなんだ?俺の目がおかしくなっちまったのか?

???
女性観客

ち、違う、匂いがするわ、気持ち悪い匂いが――

???
男性観客

一体何が起こったんだ!?

(何者かの足音)

収容人数二万人以上を誇る競技場でさえ、その重い足音はとてつもなく明瞭に聞こえてきた。
気を取り戻したあと、場内のすべての人は静まりかえった。

ビックマウスモブ
ビックマウスモブ

……えっと。

騎士競技でなんとも希少な場面がそこにあった。娯楽と消費に満ち溢れたその場にいる、万を超える観光客と観客たちは、まるでその足音の出所を耳に収めようとモニターを凝視していた。
率先して真相を察知したのは、観覧席にいた騎士の貴賓たちであった。

レフトハンドナイト
レフトハンドナイト

……場内のこれは、霧?アーツか?それとも特殊装備の類か?

レフトハンドナイト
レフトハンドナイト

スノウイーヒール騎士団にはこんな……ん……?

レフトハンドナイト
レフトハンドナイト

……違う。彼らじゃない。断じて彼らなどではない。

レフトハンドナイト
レフトハンドナイト

あれは――

(何者かの足音)

???
男性観客

……

???
女性観客

……あれって、えっと、騎士なの?

老騎士
老騎士

――コワル!

老工匠
老工匠

分かっておる!急ぐぞ!

老工匠
老工匠

奴らめ……マリアを殺すつもりじゃ!

プラチナ
プラチナ

……

???
暗闇に潜む影

プラチナ様、小隊の準備が整いました。

プラチナ
プラチナ

そう緊張しないでよ、競技場に近づく目標を止めるってだけだからさ。

???
暗闇に潜む影

……承知致しました。。

???
暗闇に潜む影

しかしもし相手が――

プラチナ
プラチナ

もしあのマイナに手を出す度胸があるんだったら……私が相手をするよ。

プラチナ
プラチナ

まあ面倒臭いけどね……やれやれ。

マリア
マリア

……

ビックマウスモブ
ビックマウスモブ

えーっと、スノウイーヒール騎士団からやってきた……

ビックマウスモブ
ビックマウスモブ

(おい!どういうことだ、今日の商業スケジュールは――なに?はぁ?どっちがどっちかなんてオレに分かるわけ――)

ビックマウスモブ
ビックマウスモブ

……スノウイーヒール騎士団からやってきた――

ビックマウスモブ
ビックマウスモブ

「腐敗」と「凋零」だぁ!!

観客の歓声は予想に反して上がらなかった、観客席は静寂のままだった。
当然ながら、観客たちが第一に浮かび上がった印象は、恐怖であった。
そして彼らは、この恐怖が観客席にいる彼らに向けているものではなく、あの未だ状況を理解していない少女に向けているものと知ってから――
この残酷さを知ってから、彼らは万雷の拍手を場内に響かせた。

(大歓声)

???
観客

これ……ちょっとホラーすぎるんじゃないのか?

???
観客

……まさかニアールは一人で、あの二人とやり合うのか?

???
観客

おいおい……そんなに絶対面白いのに決まってるじゃねぇか!?

ビックマウスモブ
ビックマウスモブ

それでは参ろう、試合スタ――

(アーツの発動音)

マリア
マリア

なっ――

凋零の騎士
凋零の騎士

命中。

マリア
マリア

――ぐはっ!

マリア
マリア

なんでいきなり……はっ!?

腐敗の騎士
腐敗の騎士

む……盾、固いな、そう簡単にはやれそうにないか。

凋零の騎士
凋零の騎士

問題ない……奴を処理するに、そう難しくはない。

ビックマウスモブ
ビックマウスモブ

ま、まだ試合開始を宣言し終えていないというのに電光石火のような交じり合いが始まった!反則なんじゃないかって?もちろんそんなことはないぜ!騎士が舞台に立った瞬間から、試合はすでに始まっているのだ!

(大歓声)

ビックマウスモブ
ビックマウスモブ

果たしてニアールはまたもやこの絶体絶命な状況を覆せるのか!?それとも早々に投降――

ビックマウスモブ
ビックマウスモブ

(なに?棄権は許可できない……?そんなのって……分かったよ。)

ビックマウスモブ
ビックマウスモブ

この劣勢を覆す唯一の方法はお前たちの手の中にある!さあ哀れなニアールに投資しよう!もしかしたらあのつまらない小道具たちが、ニアールの勝利の足掛かりになるかもしれないぜ!

マリア
マリア

ぐふっ……この霧は……一体?

マリア
マリア

それにアーツが抑制されてる……?傷口が、治せない……?

マリア
マリア

くっ……痛い……

(アーツの発動音)

凋零の騎士
凋零の騎士

目標……徐々に抵抗力を失いかけている、殺せ、素早く、事故に見せかけるんだ。

腐敗の騎士
腐敗の騎士

分かっている……

マリア
マリア

(ダメよ、諦めることを考えちゃダメ、まず先にどう相手にすればいいかを――)

マリア
マリア

(あの二人のサルカズは……双子?二人がほぼ同じアーツを使っているのか――!)

マリア
マリア

だったら……もう一回やってみるしか!

(爆発音)

マリア
マリア

(え?)

ビックマウスモブ
ビックマウスモブ

――――!!

ビックマウスモブ
ビックマウスモブ

に、にわかには信じがたい出来事が目の前に起こった!一体何が……!?マリアの身体から突然爆発が起こったぞ、そして腐敗の騎士がすかさず一撃を与えマリアを吹っ飛ばした!

ビックマウスモブ
ビックマウスモブ

(あっちは?だったっけ?まあどっちでもいいか?)

マリア
マリア

うわ――!

マリア
マリア

ゴホッ、ゴホゴホッ……

マリア
マリア

血……?どうして、どうして私のアーツが効かないの……?

凋零の騎士
凋零の騎士

血を吐いてる……アーツが効いてるぞ。

凋零の騎士
凋零の騎士

……爛れて、凋落し、腐敗している……彼女の死の匂いがする、もう逃げ場はない。

ゾフィア
ゾフィア

マリア!早くサレンダーして!はやく!

ゾフィア
ゾフィア

チッ――

ゾフィア
ゾフィア

放して!マーチン!

ハゲのマーチン
ハゲのマーチン

一緒に死ぬつもりか!?

ゾフィア
ゾフィア

うぅ――

ゾフィア
ゾフィア

――マリアを一人で死なせるより二人で死んだほうがマシでしょ!

ハゲのマーチン
ハゲのマーチン

ゾフィア!

老騎士
老騎士

早くしろコワル!

老工匠
老工匠

ちょ、ちょっと待ってくれ、わしぁクランタじゃないんじゃぞ――

プラチナ
プラチナ

ごめんね、ここを通すわけにはいかないんだ。

老騎士
老騎士

貴様は――

プラチナ
プラチナ

前二階征戦騎士のフォーゲルヴァルデ、あるいは、バトバヤルって呼んだ方がいいかな。

プラチナ
プラチナ

アンタは自身の血統に従い四方の戦いに征き、今では誰のものではなくなった草原をその足で駆け回った。

プラチナ
プラチナ

そしてアンタは、工匠団特級工匠の、コワル。

プラチナ
プラチナ

アンタの師匠はあの銀槍の天馬にも尊敬された大鍛冶師、アンタの弟子たちは今も前線で活躍していると――

プラチナ
プラチナ

アンタたちは立派なカジミエーシュ人だ、だから大人しくここを離れてくれないかな?

老騎士
老騎士

……貴様の話口調はわしがあの時出会ったあの小娘とはまったく違うな、白金様よ。

プラチナ
プラチナ

へぇ、知ってるんだ?

老工匠
老工匠

ああ、知ってる、当然知ってるとも。

老工匠
老工匠

あんたの上の連中とは、少々私怨があってな。

プラチナ
プラチナ

……あぁ、なるほどね。

プラチナ
プラチナ

確か隊長がプラチナの位を受け継いだ最初の任務が、一人の征戦騎士の暗殺だったっけ、きれいな女性だったよね、名前は確か――

老騎士
老騎士

――黙れ、貴様がその名を口にするな。

老工匠
老工匠

――黙れ、貴様がその名を口にするな

プラチナ
プラチナ

……滑稽だね、あの隊長だ、最後はあんな女のために死んじゃったなんて。

プラチナ
プラチナ

この仕事をやり続けると、確実に精神面に影響が出るのかもしれないね、はぁ、そろそろ本当に休みを取って旅行に行ったほうがいいかな……

老騎士
老騎士

御託はいい!マリアの一連の出来事は貴様らが裏で操っておるのか!?

プラチナ
プラチナ

……引き続き周りを監視してて、ここは私が対処する。

???
暗闇に潜む声

……承知致しました。

老工匠
暗闇に潜む声

なんじゃ人を連れておるのか、全員まとめてかかってきてもいいんじゃぞ?

プラチナ
プラチナ

こっちは本当に手を出したくないんだ、お互い退いてくれないかな?

老騎士
老騎士

ハッ!珍しいな、あの無冑盟のアサシンたちが慈悲をかけてくるとはな?

老騎士
老騎士

安心せい、わしだって本気で小娘一人を手にかけたくはない、貴様が反省してる間に、真っ先にマリアを救出させてもら――

(射撃音)

老騎士
老騎士

――

老工匠
老工匠

フォーゲル――!

老騎士
老騎士

へ……平気じゃ、ただのかすり傷じゃ、ただ奴の弓を引く速さがこれほど早く、精確だったとは思わんかった……

老騎士
老騎士

ああ、見てみろ奴が黙ってしまった、いくら若かろうと、未熟だろうと――

老騎士
老騎士

彼女はあの無冑盟のクズたちの上にいる、あの「逆三角の一角」の白金の位じゃ。

プラチナ
プラチナ

うーん……褒めて頂いて光栄です?

老騎士
老騎士

準備はできたか、コワル、お前さんのパンチが衰えていないか見せてもらおうか。

老工匠
老工匠

ハッ!やはりお前はとっくにボケておるわい、フォーゲル。

プラチナ
プラチナ

そっ、わかった、じゃあ負けず嫌いのお爺さん二人は――

プラチナ
プラチナ

――ぎっくり腰に気を付けることだね。

もう行ってしまうの?

ああ、時間が迫ってきている。

なら……絶対に気を付けて、絶対に絶対に気を付けて。

そう心配せずとも大丈夫だ……あなたの隣にはまだ彼女がいるだろう?

……うん。

心配する必要はない、大丈夫だ、あなたに誓おう――騎士の名の下に。

いいえ、そんな大それたことはしなくていい、行ってらっしゃい、信じてるから。

ああ。

行ってらっしゃい。

ああ、ありがとう、リズ。

マリア
マリア

ゴホッ……ゴホゴホッ……

マリア
マリア

(傷口が爛れてる、治せないなんて……!失血してる……寒い……)

マリア
マリア

シェブチックさんよりも素早い……イングラさんよりも力強いなんて……

マリア
マリア

あの二人って――

マリア
マリア

――

ここで諦めるの?

マリア
マリア

いいえ、食いしばりなさいマリア、私はまだ――

(アーツの発動音と爆発音)

凋零の騎士
凋零の騎士

……命中、眩暈を起こしたか、おい、やれ。

腐敗の騎士
腐敗の騎士

ガァ……つまらん戦いだった……彼女の頭を砕けばいいんだな。

凋零の騎士
凋零の騎士

ああ、さっさとやれ!

腐敗の騎士
腐敗の騎士

……

……サルカズは武器を高く持ち上げた。
日の光が反射し、バランスを取り戻そうともがく少女の身を照らした。

マリア
マリア

うっ、ぐはっ……

地面に吐かれた血、口の中の血腥さ、耳鳴り、眩暈、雨が降ったあとの土の香りがした。
両手で身体を持ち上げようと試みるも、激痛により身体は再び崩れていった。

マリア
マリア

(古傷で……手が……!)

腐敗の騎士
腐敗の騎士

ガァ……終わりだ。

マリア
マリア

うっ……

地に倒れたマリアは身動き一つ取れなかった、その哀れな光景はサルカズの騎士の無情な瞳に映っていた。
しかしその時、視界が明るくなった。
太陽を遮っていた雲が散ったのか、あるいは太陽の光がちょうど建物の遮りを通り過ぎたのだろう。
しかし次の瞬間――彼の耳に轟音が響いた、彼の全員の細胞が自身に警告を出している、すぐに手を振り下ろせ、すぐにこの抵抗する力すら無い小さな騎士の脳を砕けと――
しかし視界の明るさは増していくばかりだった。

(爆発音)

それと同時に、彼の手中のハンマーは、何者かによって強く弾き飛ばれてしまった。

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