

うわあああああ!!

ああ……あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!

……

タルラ……!あなた何を……うっ……!

あなたが火を放ったの!?あなたが彼らを焼き……うっ!

アリーナ、ごめん。これだと村にとてつもない災いをもたらしてしまうね。でも私はもう我慢できないんだ。

こんなこともう我慢できない……

……アリーナ?
タルラはアリーナを見てハッとした。アリーナはタルラが今まで見たこともない目で彼女を見ていたからだ。

あなたの目には炎が宿っているわ。

あなたがこの村にやってきたときから知ってる、あなたはいつまでもこの村には留まらないって。

あなたには自分の来たところがあるはずよ、あなたはその来たところに帰らなければならないわ、この村にあなたの居場所なんてないわ。

私はもうあそこには戻らない。だからそんな目で私を見ないで……

それでもあなたの目に炎が宿っているのは確かよ。

あなたは何かを燃やしたい、何かを焼き尽くしたい、あなたはこの世のすべてが間違っていると思っているのね、それに我慢してたけど、もう限界……

今じゃないわ、タルラ。今するべきことじゃないわ。

村人たちは無関係なのよ。あなたの一時的な怒りの炎は彼らすらも焼き尽くしてしまうわ。

何ごとだ――うわああ!一体何が起こったんだ!誰だ!誰の仕業だ!

タルラ!タルラ!!逃げて、逃げるのよ!!もうここには戻るな!!戻ってはダメよ!!

ああ陛下、どうか我が娘同然のあの子をお守りください、どうか生き延びるよう、生き残っていけるようお守りください!!

タルラ、はやく逃げるわよ!

ダメだ……あの感染者治安維持隊どもめ!

私たちは感染者だけど、村の人たちはそうじゃないのよ!

……今何て言ったの?

私も感染者よ、タルラ。あなたと一緒。


ふぅ……ふぅ……ここが……村を移す予定地ね。建物もだいぶ建ててるわね……でも……

村人たちが……お爺ちゃんたちが……

もう好きにやらせてたまるか……好きには……

お爺さんはあなたを、私を、村人全員を救おうとしたのよ。

でもあなたが……お爺さんの計画を台無しにしてしまったわ。

何を言っているの?あの村人たちが、あいつらが密告――

……ちょっと待って。つまり、お爺ちゃんを密告した、のは……

お爺さん自身よ。そうすれば、治安維持隊もこれ以上捜査を行わなかった、計画通りなら、そのはずだった。

あなたにいくら実力があろうと治安維持隊に対抗するのは無理よ。

私ならできる。

じゃあその後はどうするの?憲兵が来たらどうするの?都市に駐留してる軍と貴族たちの私兵が来たらどうするの?

私たちはただ力が足りてないだけだ、対抗できる力さえ蓄えられていれば……

あんなのは間違ってる。間違ってるんだ、あんなことを見過ごせるわけがないでしょ!

悪事が目の前で起こっているというのにそれを保身のために、見過ごすなんて、そんなの間違っている!

……あんなものはただのエゴだ、情のかけらもない行為だ。

多くの暴力によって成り立った正義など、そんなもの正義と言えるとでも?

その問いについては私ではまだ答えられないわ、タルラ。あなたは私よりもたくさん本を読んできたんでしょ、私には分かる。

でも私たちの村ではもうすでに人が一人死んだ。だからこれ以上人を死なせるべきじゃないわ。

あなたは賢い子だから、分かるわよね。

だから逃げましょう、タルラ!

……必ず戻る。

それは自分に言い聞かせて、タルラ。自分自身に問うのよ。
