(R8-8の特殊条件達成でクリア後解放)
タルラ。
……どうした、めったにしない表情をして、私の友よ、どうかしたのか?
決めたよ。
俺たちはここに残る。
あ、いや……言い方が悪かったな。俺たちの一部の人がここに残りたいって言ってるんだ。ほかにも、ウルサスから脱出しようと試みる人もいる。
そうか、わかった。
理由を聞かないのか?
お前は俺たちに戦い方を教え、俺たちを今日まで連れてきたんだろう――
だから必ず私に服従しないといけない、己の命を刃に乗せなければならない、ウルサスと死ぬまで戦わなければならないのか?
そんなこと今まで一度たりともないかった、一度も、友よ、そんなの本末転倒じゃないか。
はは……そうだな、お前はそういうやつだもんな。
私は決して君たちの統治者などではない。その上かつてのここは君たちが所有すべき土地だ、ここに屍が積み重ねようと、不幸な記憶を纏おうと、凍原は間違いなく君たちの故郷だ。
君たちは強い。君たちなら必ずすべてに勝利できる方法を見つけると信じているよ。
もし必要なら、途中まで送るよ。
いや、いいんだ、ていうか絶対しないでくれ、そんなことをしたら俺たちの覚悟が揺らいじまう……
はぁ、振り返ると、俺もお前の仲間だったんだな。この先新しい仲間にお前の物語を語っても尽きそうにねぇや。
そのときは容赦してくれると助かる。
タルラ、焚き火が上がったぞ!
わかった、あとで行くよ!
友よ、私たちが晩餐を共にするのも今晩で最後になるのか?
あとで……あとでまたほかの連中もお前にこのことを相談しに来ると思う、みんな来ると思うぜ。
そうか。
……タルラ。
全員心を揃えてお前側に立ってくれる保証はあるのか?裏切りはもう起こらないってどうしてそうはっきりと言える?
いや……お前には分かるもんな、お前は頭もいいし、強い、それに博識だ、少し傷を負おうが血を流そうが、お前は歩む足を決して止めない、そうだろ?
……褒めてるって受け止めるとしよう、でも頼むから私をそんなモンスターみたいに言わないでくれないか?
はは、誤解しないでくれ、俺たちだって一二回驚かされて腰を抜かすような臆病者じゃない……
ただ急に思いついたんだ、みんながみんな……お前が頭で思い描いたような人じゃないってことをな。きっとそうだ。
たとえば俺、どうせどっちに行っても死ぬんだったら、飯が食えて、少しでも長く生きられるほうを選んでお前たちについていっただけだ。
自分の腹が膨れたあとに、ほかにも俺と同じ考えを持つ人がたくさんいるって分かったんだ、あいつらも腹が膨れればいいやってな。
強さも善意も、どっちも得られ難いものだ。
そうだな、得られ難い、だからみんながみんな同じ考えを持ってるわけじゃねぇ。
俺たちがこの先も歩み続けられることも、より残酷な結末にならないことを誰が保証してくれるんだ?貴族の連中が俺たちを皆殺しせず、無関係な貧乏人と子供も巻き込もうとしないことも?
俺は……俺は別にどうだっていいんだ、でもほかの可能性があるって知ったときに、怖くなっちまったんだ。
自分の腹さえ満たせればいいって考えるやつもいる……自分の腹を満足させる方法なんて、俺でも色々思いつく、例えば……そうだなぁ。
裏切りがそれだ。
俺たちの大事なものを差し出すんだ。大勢の人が俺たちを殺そうとしている、そこでどうでもいい感染者を見過ごすかわりに残ったすべての裏切者を解決する、これ以上儲かるやり方なんてない。
……
だからよ……そういうことだから、俺たちは尚更ここを離れるわけにはいかねぇんだ。
タルラ、俺たちは全員を連れて行くことはできない、そうだろ?
それは……認めざるを得ない。
だったらよ、俺たちが南に向かって、お前の言う理想を勝ち取る前に、あー、凍原はどうするんだ?凍原に残された感染者はどうするんだ?
凍原だけじゃねぇ……この大地は広大だ、これを機会にここから脱出しようと考える人もきっと出てくるだろう。
ほかの場所で苦しみ喘いでいる同胞を見つけに行こう、ほかの場所を見に行こう……もしかしたら感染者の安息の地が見つかるかもしれねぇって。
そう考えだす人も出てくるだろうよ。
君は……
君がそう考えてくれて、実を言うと……嬉しいんだ。
あー……なんか俺の頭で理解できる話じゃなさそうだから、聞かないでおくよ。
と、ところでよ……俺たちがこんな節目に隊を抜けたら、敵前逃亡として扱われるんじゃねぇか?こういうのはよく分からねぇからさ、だからお前に聞きに来たんだ。
フッ、そんなことあるわけないじゃないか。
タルラにしかり、遊撃隊にしかり、それらはただの「名前」に過ぎない。
君たちはその名の下にあるもの……考え方、精神、崇高さを帯びた反逆の炎を連れて、大地の各所にそれらを蒔こうとしてるんだ、なぜそれで自分を責める必要がある?
そうだな!
実を言うと半分ぐらいしか理解できていねぇが、タルラがそう言うんだったら、安心だ。
不安に思うことなんて一切しなくても大丈夫だ。
さあ……狩人たちの努力を無駄にしちゃいけない。君たちが仕掛けた罠には本当に目から鱗が落ちるよ。
お前たちとこうして飯を食えた日々をいつまでも大切に思うよ。タルラ、俺たちは必ずこの大地の隅々まで踏破してやるからな。
おーい、晩飯を仕留めたぞ、飯にしよう!