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【明日方舟】メインストーリー8章 JT8-1「恨火、原野に溢れる」前半

感染者戦士
感染者戦士

ここだ。

感染者戦士
感染者戦士

……タルラ……別にそこまでしなくてもいいだろ、この感染者の牽引車は失踪してもう数か月にもなる、きっと治安維持隊に止められたんだろ、俺たちに出来ることなんてないさ。

タルラ
タルラ

せめて遺体だけでも見つけ出して、ほかの人たちに弁明したいんだ。

感染者戦士
感染者戦士

もし偵察員の報告通りなら、あいつらが失踪した場所は、たぶんこの辺りだ。

感染者戦士
感染者戦士

……

感染者戦士
感染者戦士

タルラ!もういい。あんなデタラメを信じる必要なんてない!

タルラ
タルラ

信じていないさ。

感染者戦士
感染者戦士

あの血も涙もない奴らなんて……あんな奴らなんか放っておけ!

感染者戦士
感染者戦士

あいつらは貫き通せなかったんだ、雪原を抜ける決心を!お前と一緒に戦ったっていうのに、お前が誰よりも怖いもの知らずって知らないはずがないだろ!?

感染者戦士
感染者戦士

タルラ、俺を信じろ、俺たちはみんなお前についていくって!

感染者戦士
感染者戦士

ボジョカスティ大尉だってウルサス帝国の軍人だったじゃねぇか?それでも彼こそが俺たちの中でも最も確固とした戦士だってみんな知ってる!みんな彼を信じてるじゃねぇか!

タルラ
タルラ

それはどうだろうな。彼は強すぎるあまり、確固しすぎるあまり、彼を信じない人たちがそれを口に出せないだけなのかもしれないぞ。

タルラ
タルラ

信頼というのは一瞬で崩壊しうるものだ。仮にいつか、パトリオット殿を信じる者が全員死んでしまえば、その後の者たちは以前の追随者のように彼を信じると思うか?

タルラ
タルラ

根も葉もない噂は人々を崩す。流言飛語が飛び交う以前は、潔白な人はもちろん潔白だし、信じる人も疑う人もみな潔白なんだ。

タルラ
タルラ

しかしそれが飛び交えば、人々は潔白ではなくなる。

感染者戦士
感染者戦士

でも、でもお前の出身がどう関係してくるっていうんだよ!?お前はあんな奴らのためにどれだけ血を無駄にした!?

タルラ
タルラ

大丈夫だ。落ち着け。

タルラ
タルラ

それに血を流すにも間に合わなかったさ。

感染者戦士
感染者戦士

はぁ……そんなこと言わないでくれ。

感染者戦士
感染者戦士

本当に一人で行くのか?ファウストは最近いつもボウガン使いの連中とくっついている、だから伸びも早い、遊撃隊が不在の今、あいつらと一緒に行くこともできるが……

タルラ
タルラ

同行してるほかの感染者の保護が最重要だ。我々は戦争をするために戦争しているのではない、同胞たちに生きていける世の中を創り上げるために戦っているんだ、それでは本末転倒じゃないか。

タルラ
タルラ

彼らの命こそがもっとも重要であることを忘れないでくれ。

タルラ
タルラ

この考えを絶対に途絶えさせてはならない。

感染者戦士
感染者戦士

じゃあ……気を付けるんだぞ。

タルラ
タルラ

安心してくれ。現地の人たちと交渉しに行くだけだ。何も問題はない。


付近の小さな村落

タルラ
タルラ

……

タルラ
タルラ

昔の私だったら、何の躊躇もなくガツガツ入っていっただろうな。

タルラ
タルラ

いつからこんな感じに変わってしまったんだろうか?

タルラ
タルラ

コソコソと、身を潜めながら……疑念とそれへの警戒が徐々に敵意と変わっていってしまった。

タルラ
タルラ

私は予想外が起こることを恐れているのか、それとも悲劇の再演か……?

タルラ
タルラ

貧しい村だな。きっと今年の収穫も良くなかったのだろう。それにみんな疲労困憊した顔をしてる。

(タルラが村を歩き回る足音)

タルラ
タルラ

おかしい、村は長らく転移していないはずなのに、村の入口に牽引車が走った痕跡がたくさん見られる。

タルラ
タルラ

組み立て場に廃材がある……村が捨てた牽引車のものではなさそうだ。チェックボックスも見当たらない。村の車両だったら、ボックスを外す必要なんてないはずなのに……

タルラ
タルラ

もうすぐ夜になってしまうな。ゴミ捨て場でもう少し様子を見にいこう。

(タルラが村を歩き回る足音)

タルラ
タルラ

おかしい。日常のゴミ以外に、ほかのゴミがまったく見当たらない。

タルラ
タルラ

消耗した源石を処理する機器も一つもない。ゴミ捨て場に設置していないとすれば、どこにあるんだ?

タルラ
タルラ

冬に入る頃には麦藁のカスや暖草の草ガラも見当たるはずだがそれすらない。食料に問題でも起こったのか?

タルラ
タルラ

……いや……違う。一緒に焼却したんだ。食糧庫を見に行ってみよう。

タルラ
タルラ

なんだこれは?一体……何が起こったんだ?

タルラ
タルラ

源石の破片が積もっている……それに地面がえぐられている。

タルラ
タルラ

なっ、引っ掻きの痕だ、食糧庫の門に引っ掻きの痕が――

タルラ
タルラ

あ――!

???
???

そこで何をやっている!?

タルラは後ろを向いた。

そこにウルサスの農民が構えていた、タルラの装いを見るなり手に持っている鍬を下ろした。

ウルサス農民
ウルサス農民

お代官様でしたか……何のご用でしょうか?声もかけられず村に入られて……

タルラ
タルラ

……

ウルサス農民
ウルサス農民

何のご用で村に?はじめてお見掛けしますが……憲兵の方でしょうか?

ウルサス農民
ウルサス農民

それとも、徴税の方でしょうか?源石税も食料も、全部徴税官様に納めたはずです!これ以上何も納められません。

タルラ
タルラ

私は感染者を調べにきた。

ウルサス農民
ウルサス農民

え、感染者ですか?わしらの村に感染者などおりませんが。

タルラ
タルラ

通った感染者を見かけなかったか?

ウルサス農民
ウルサス農民

いいえ、そのような人は。

タルラ
タルラ

情報が入ってるんだ。感染者がここを通ったのは確かだ。教えろ。

ウルサス農民
ウルサス農民

いやはや、さすがはお代官様、隠し通せられませぬな!

ウルサス農民
ウルサス農民

あの役立たず共め、誰もここを通らなかったと言ったはずだろうに。

タルラ
タルラ

……

タルラ
タルラ

なら本当なんだな。

ウルサス農民
ウルサス農民

そうですとも、奴らはみな恐ろしい武器を持っていました、まったく度肝を抜かれましたよ!

ウルサス農民
ウルサス農民

わしらは奴らに反抗することも、止めることもできませんでした。

ウルサス農民
ウルサス農民

そしてあろうことかわしらの食料を奪ったんです。よくもわしらの食料を、あの人間のクズどもめ、お代官様、どうかあの悪逆非道な感染者どもをとっ捕まえてくださいませ……

タルラ
タルラ

違う。

タルラ
タルラ

違う……

タルラ
タルラ

違う!

タルラ
タルラ

よくもそんなことが言えるな?

タルラ
タルラ

よくもそんなことを……

タルラ
タルラ

よくもそんなことを口に出せたな!

ウルサス農民
ウルサス農民

あ?

ウルサス農民
ウルサス農民

お代官様……?どうかなされましたか?

タルラ
タルラ

お前は彼らの泣き叫ぶ声が聞こえなかったのか!

タルラ
タルラ

彼らが助けてくれと……

タルラ
タルラ

彼らが食糧庫の門を引っ掻く音が聞こえたはずだろ!

ウルサス農民
ウルサス農民

ど、どうしたのですか……お代官様……

ウルサス農民
ウルサス農民

何かに憑りつかれたんですかい?

ウルサス農民
ウルサス農民

おーい、お前たち来てくれ!

ウルサス農民
ウルサス農民

このお代官様を見たことはあるか?どこから来たか分かるか?

ウルサス農民
ウルサス農民

ああ、わしも思った、喋り方がまったく違う!

ウルサス農民
ウルサス農民

……お前の言う通りだ!彼女は防護マスクをしていない……感染者を調査する役人がマスクをつけないことなんてないもんな?

ウルサス農民
ウルサス農民

お前は一体何者だ!?

タルラ
タルラ

……

ウルサス農民
ウルサス農民

早く答えろ!

タルラ
タルラ

感染者だ。

ウルサス農民
ウルサス農民

ん?

タルラ
タルラ

お前たちが殺した人たちと同じ、感染者だ。

ウルサス農民
ウルサス農民

……

ウルサス農民
ウルサス農民

確かに殺しはした、だがわしらに間違いはない。

タルラ
タルラ

お前は彼らをここに閉じ込めた。閉じ込めて死なせたんだな。

ウルサス農民
ウルサス農民

だったらなんだ?こちとら食料も尽きてしまっているんだぞ!

タルラ
タルラ

彼らを追い払うことはできた。村に入らせないようにすることも……お前が彼らを直接攻撃しようと、殺そうと、それだけだったら私もこう咎めはしなかった。

タルラ
タルラ

しかしお前たちは彼らを騙した、もぬけの空の倉庫に閉じ込め、門に鍵をかけ、彼らを餓死させた。

タルラ
タルラ

アーツも使えないほどに飢えていた……一文無しでここにやってきたというのに。お前たちを攻撃するつもりはなかったというのに、反撃する気力もなかったというのに、彼らだって普通の人間だというのに。

ウルサス農民
ウルサス農民

感染者のどこが普通の人間なんだ!?

ウルサス農民
ウルサス農民

よく聞け、この感染した人間もどきが……お前も道理を弁えているとは驚きだ!自分がどんな奴なのか理解しているのか?

タルラ
タルラ

お前たちは倉庫を封鎖して、源石結晶が安定するまで待ち、彼らの死体と干からびた源石もろとも処理した……

タルラ
タルラ

彼らだって家族がいた、親しい人も、行きたい場所もあった……だが今はもう骨すら残っていない。感染者の骨が残らないことは当たり前だ、だが今は、彼らの灰がどこに散ってしまったのかすら、もう知る由もなくなってしまった。

ウルサス農民
ウルサス農民

ならほかに方法があると?わしらだって食えずにいるんだ、わしらだって惨い生活を過ごしているんだぞ!

タルラ
タルラ

なぜ彼らを騙した?

ウルサス農民
ウルサス農民

……

ウルサス農民
ウルサス農民

何を言っているんだ?

ウルサス農民
ウルサス農民

感染者がどんな奴かなんて知れるわけがないだろ?それでどうすればいいというんだ?

タルラ
タルラ

言い訳だ。お前は彼らの飢えている姿を見た……手に何も持っていない姿を見たはずだ。

タルラ
タルラ

お前があんなことをしたのは……都合がよかったからだ。

タルラ
タルラ

お前たちは最初から……いや違うな。ハッ。

タルラ
タルラ

たとえここにやってきたのが感染者じゃない普通の人間だとしても、お前たちは同じ事をしただろうな。

ウルサス農民
ウルサス農民

……

ウルサス農民
ウルサス農民

(こいつも処理しなければならん。哨兵を呼べ!)

タルラ
タルラ

――

“お前も見ただろう、お前が何もかもを投げ売ったこの大地はお前の事を望んではいない”

やめろ。やめろ。

タルラ
タルラ

――

ウルサス農民
ウルサス農民

なら一体なんのご用だ?もう過ぎたことだ、誠に申し訳ございませんね、感染者様よ。

ウルサス農民
ウルサス農民

ただまあ、お前が村に来なかったことにしといてやらんでもない、前の奴らが来ていないようにな……ここから出て行けば許してやろう。

タルラ
タルラ

お前は彼らをどんな目で見た?

ウルサス農民
ウルサス農民

あ?そんなの、お前を見る目と同じように見ていたさ。

タルラ
タルラ

彼らを弱者として見ていたんだな、なら私はどう反抗すればいいかわからない弱者というわけか。

ウルサス農民
ウルサス農民

……チッ……感染者め!わかったならもう行け、わしらだって面倒ごとはごめんだからな!

タルラ
タルラ

なら彼らが許しを乞っていたときのお前たちは、どう答えてやったんだ?

(雷鳴とフラッシュバック)

“お前が考えている事が何もかも無くなっていくさまが見えるぞ”

やめろ。

タルラ
タルラ

貴様らのような卑劣な人間が憎い。

タルラ
タルラ

貴様らのような奴らがのうのうと生きている限り、この大地に安寧は決して訪れない。

タルラ
タルラ

感染者治安維持隊はもう三年も貴様らの村にはやって来ていない。

タルラ
タルラ

この村落を所有していた貴族も大反乱で死んだ、情勢が混沌を極める中、貴様らの村落はもう何年も管理されずにいる。

タルラ
タルラ

そういった状況下にも関わらず……貴様らは……あたかも自然と……貴様らとまったく関係のない人たちを殺した。

タルラ
タルラ

もし貴様らの心にほんの少しの善意があれば……彼らを見逃すこともできたはずだ。だが村中に彼らのわめき声が響こうと貴様らは微動だにせず、みすみす餓死させた。

タルラ
タルラ

ほんの少しの善意さえあれば、貴様らだろうとこれほど悪辣にはなりえなかったはずだというのに。

タルラ
タルラ

貴様らが憎い。

(雷鳴と燃え盛る音)

“お前は彼らがお前の尊敬する全てを捨て去る様を見ることになる、生命、尊厳、そして理念に意味はない”

やめろォォォォ!!

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