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【明日方舟】サイドストーリー「画中人 WR-10 シー」後半

(アーツの音)

(アーツの音)

(アーツの音)

ニェン
ニェン

お前はそういう性格のおかげで、人のことなんかどうでもよくて、急に癇癪起こして、いっつもそんなしかめっ面してるから、お前の優しい姉さんの私がお前の面倒を見てやるっきゃねぇんだよ。

シー
シー

……

ニェン
ニェン

お前はあの文字書きと関係が悪い、お互い字と絵は同じ起源を辿ることを死んでも認めねぇし、そんで私とも仲が悪い、あの少しだけ辛い火鍋すらも受け付けられないんだもんな――

ニェン
ニェン

はぁ、もしまた盤蟹のアイスクリーム鍋なんてものを持ち出して来たら、今度こそ私はお手上げだよ。

シー
シー

……よくもまあベラベラと喋れるわね。

シー
シー

力がもう残ってないから、適当に喋って時間でも稼いでいるのかしら?

ニェン
ニェン

……なぁ、お前ってさ……本当にずっと眠ってないのか?

シー
シー

……

ニェン
ニェン

徹夜作業は一二時間仮眠を取った場合と比べて目は覚めるかもしれねぇ、だが蓄積された疲労によってお前はいずれ倒れちまうんだぞ。

ニェン
ニェン

あぁ、わかった、怖いんだろ。

シー
シー

あんた……

ニェン
ニェン

自分のことなんて誰よりもわかっているもんな、自分だって所詮は画中の人だって、夢から目を覚めてしまえば、自分はもう存在しなくなるって――

シー
シー

うるさい!

ニェン
ニェン

まあまあ、そうカッカすんな。

ニェン
ニェン

私らはみんなそれを直視しなきゃならねぇんだ、誰だって自我の真理からは逃れられないからな。

シー
シー

チッ。

シー
シー

……そんなに感性的になってどうしたの、寝ぼけてる?

(アーツの音)

ニェン
ニェン

「私ら」が目を覚まして、この大地をもう一度俯瞰する時になれば、今の私らは消えちまう。綺麗さっぱりな。

ニェン
ニェン

それだけじゃねぇ、「私ら」はきっと天に衝くほど激怒するだろうな。「私ら」が関係を断つ直前まで、私はずっと屈辱と憤りを感じていたんだ……

ニェン
ニェン

かく言う私も、悔しさに満ちているけどな。

シー
シー

……アレに……抗うつもりなの?

シー
シー

馬鹿馬鹿しい。身体の一部がどうやって身体全体に挑むっていうの?

ニェン
ニェン

その例え、私も使ったことがある気がするぞ。

シー
シー

話をそらさないで、もう時間が――

ニェン
ニェン

わーってるって。これは私だけが思ってることじゃねぇよ、「私ら」が――いや、私らと関係を断ち切った狂ったアレらはもう「私ら」とは呼べねぇ――

ニェン
ニェン

――「アレ」が目を覚ます前に、私らも万全の準備をしなくちゃならねぇ、どんな力を借りようとも、私らでなんとかするっきゃねぇんだ。

ニェン
ニェン

何者のためでもなく、ただ私ら自分のために、私らが愛したもののためにな。

ニェン
ニェン

それと、私らの兄弟姉妹の間にあるもの……お前も感じたろ。私ら側に立つ人、何も気にしてない人がいる一方、徹底的に狂った人も、いるってことをよ。

シー
シー

……ありえないわ。

ニェン
ニェン

そうか?本当は心の内で何人か怪しい人選があるんだろ?

シー
シー

彼らはみな真龍の傍にいるのよ、チャンスなんて……いや……違うか……

ニェン
ニェン

お前が私よりボケてちゃまずいだろ、この悠久な歴史を振り返ってみろ、あいつらの影が何回現れたと思う?

ニェン
ニェン

今日に至るまで、あの朝廷の力を我が物にした大宦官だって、トランスポーターをあんな小さな寺の局に遣わしたんだぞ……私の目は誤魔化されねぇよ。ほかの連中なんてもってのほかだ。

ニェン
ニェン

お前は枷なんかじゃ囚われられないんだろ?じゃあ尚更他人を捕らえられるはずがないだろ?

シー
シー

……

ニェン
ニェン

確かにもう時間がねぇな、誰だろうと私らをここまで追いやれるヤツなんて、そうそういねぇ。

ニェン
ニェン

憶えているか、お前が最後に安眠できた頃が、いつだったのかを?

(爆発音)

ニェン
ニェン

おおっと、危ねぇ危ねぇ、お前って全然自分の作品を大切にしないんだな。全部自分が描いた画なんだろ、私を説教できる口かよ?

シー
シー

根も葉もない話ばっかり……

ニェン
ニェン

認めたくねぇのか?

シー
シー

……そういうわけではないわよ。あんたが言ったこと、私もちょっとは考えさせられるわ。

シー
シー

でもこれらと、あんたがいる「ロドス」となんの関係があるの?あんたがやろうとしていることとなんの関係があるの?

ニェン
ニェン

行けばわかるさ、あそこは楽しいぞ。

シー
シー

……この決められた運命を黙って受け入れた人は、たくさんいるのよ。

シー
シー

私たちは消えて、アレが目を覚ます、私たちはまた一からやり直して、大炎の都市が崩壊する音と共に、共倒れして死ぬのよ。

シー
シー

そんなことに一体なんの意味が……

ニェン
ニェン

こんだけの年月をかけて、出した答えがそれかよ?メソメソしやがって、あの孤高で尊大な夕はどこに行っちまったんだ?

シー
シー

……

ニェン
ニェン

やめだやめだ、これ以上戦っても、あと何枚画を無駄にしたところで止まらねぇんだし、よっと――

シー
シー

待って、あんたまさか――

ニェン
ニェン

あぁこれか、最新製品だぞ。全長八尺横三尺半、テラ大地前代未聞の物理的誘爆を採用した――私のかわいいロケット花火だ!

(打ち上げ花火の音と爆発音)

シー
シー

……チッ。

ニェン
ニェン

よぉ、戻ったぞ。

ラヴァ
ラヴァ

ニェン!

ウユウ
ウユウ

恩人様、なんか焦げたような臭いがするんだが……

クルース
クルース

……ニェンが私たちに目くばせしてる、遠くまで下がろう、絶対ロクなこと起こんないから。

シー
シー

……

ニェン
ニェン

言うことは全部言った、道理も説いた、感情でも訴えた、そんでお前はどうするんだ?

シー
シー

……

シー
シー

最初から言ったでしょ……

ニェン
ニェン

引き籠ってなにになるんだよ?

ニェン
ニェン

私と一緒にロドスに来いって、そこでも楽しく過ごせるんだしよ。ほかの連中も呼んで、そうだな、ロドスでホームパーティでも開こうじゃねぇか。

ニェン
ニェン

そんでお互いじっくり話し合おう、私らの家庭問題をな。

シー
シー

ロドス……一体何があんたをそこまで信用させているの?

シー
シー

それと、あいつらも一緒に呼ぶって?ハッ、私たちが今すぐ大炎と戦争するウソよりよっぽど荒唐無稽ね。

ニェン
ニェン

……お前が私に応えてくれないんだったら、私もお前が発狂して、声もなく消えていくとこを見るわけにはいかねぇんだよ。

シー
シー

自分勝手ね……

ニェン
ニェン

へぇ、つまり、どうしてもヤらなきゃならねぇってわけだな?

シー
シー

ヤったとしても変わらないわ。兵戈を交えることなんて、一番くだらないことよ、そんなやり口なんて数百年前から流行りはもう終わってんのよ。

シー
シー

……でもあんたが今日私を怒らせたのは確かだわ。

ニェン
ニェン

ほう。

ニェン
ニェン

ラヴァ。

ラヴァ
ラヴァ

え?

ニェン
ニェン

なるべく遠くまで下がれ、できれば山を下りて、ほかの場所に行け。

ニェン
ニェン

こっから先は、お前らが手出しできる域じゃねぇ――

(アーツの音)

サガ
サガ

うぅん?ここは……?

サガ
サガ

――うん?拙僧は戻られたのか?

サガ
サガ

ん?これはこれはラヴァ殿ではないか?それにクルース殿にウユウ殿まで?

サガ
サガ

おお、貴殿まで――ん、こちらの方は?もしや貴殿の姉上なのか?これはこれはお初お目にかかる!

サガ
サガ

拙僧は嵯峨と申しまする、東国からやってきた客僧でござる!

ニェン
ニェン

ハッ……こりゃ面白くなってきたぞ。

サガ
サガ

ん?なぜ貴殿はかような疑惑の目で拙僧を見ておるのだ?ハッ、もしや拙僧の口にまだ飯がくっ付いているのか……?

シー
シー

……あなた……

ニェン
ニェン

飯?

サガ
サガ

拙僧は先ほどまで多くの自分と精進料理を食しておったのだ、いや~、久方ぶりの味であった、満足、実に満足した!

シー
シー

あなたどうやって……

サガ
サガ

はい?

シー
シー

どうやって……絵巻から出てこれたの?

サガ
サガ

それが拙僧にも分からないんだ、なんやかんやあって戻ってきたのでござるよ。

サガ
サガ

ただ憶えているのが、最初に今の拙僧と出会って、最後も今の拙僧と出会っただけでござる、その間の幾重の山水は、みな文字通り雲烟過眼と消え去っていった、よくよく考えてみるとあれらはきっと拙僧の数々の想いであったのだろう。

サガ
サガ

そこで拙僧は画中の拙僧と共に歩み、今日まで語り合い、大炎の野原から寺まで戻ったのだ。

サガ
サガ

そして最後に門を押して中に入ろうとした時、拙僧は急に住職様があの絵に対して、
無意識に放った感慨の一言を思い出したのだ――

シー
シー

……感慨の一言?

サガ
サガ

住職様はこう言ったのだ、「山を見てもまた山なり、水を見てもまた水なり」と。

シー
シー

――

サガ
サガ

気が付くと、目の前に化粧鏡を置かれていた、そして振り向くと、拙僧はここに戻っていたのだ!

サガ
サガ

しかしあの賭博にハマりきってしまった拙僧は誠に恐ろしく思ったな、拙僧もこれからはより一層賭博に触れぬよう気をつけねば……

シー
シー

……フッ、なるほどね、どうやらあなたの師匠も私も、あなたにたくさんヒントを教えてしまっていたようね、あの沙弥め……

シー
シー

生まれてからこの方、目にしたことはない……それで山を見て山なり、水を見て水なりってことね、フッ。

ニェン
ニェン

妹よ、そこまでの意固地は、さすがに見苦しいぞ。

シー
シー

私は……

シー
シー

あなたは以前二回ほどヒントを受けたことがあったわね……あなたの理解力は、かなり……想像よりもかなり察しがよかったのね。

ニェン
ニェン

憶えているか、かなーり昔に、私と一回賭けをしたよな?

シー
シー

……ふん……

ニェン
ニェン

お前の負けだ。

ニェン
ニェン

おっと、ズルは考えるなよ、この長い年月でお前の想像の境界から抜け出せた人間が一人だけじゃないことは私も知ってるんだからな、昔のことだからノーカンにしといてやるが、今回ばかりは私の目の前で起こったことだからな。

シー
シー

理論武装はやめて、いずれ厄介事につき纏われても知らないわよ。

ニェン
ニェン

私の言ったことは忘れないでくれよ、事によい転機がないことはない。

シー
シー

……転機。

シー
シー

このまま続けても意味はないわね……いいわ、なら私は近くで見ていてあげる、あんたがどこまでやれるのかをね。

ニェン
ニェン

ビックリさせてやるからな、私の「かわいい妹」よ。

シー
シー

ふん。

ニェン
ニェン

ラヴァ、苦労をかけたな。

ラヴァ
ラヴァ

おい、妹さんがなんか不機嫌だぞ、構ってやらなくてもいいのか?

ニェン
ニェン

……いいんだよ、あいつはずっと引き込もってたからな、こう一気に大人数と接触すると、本調子じゃなくなるってだけだ。

ニェン
ニェン

だからあいつのことはコミュ障か、あるいは人見知りとでも思ってくれれば、それでいい。

ニェン
ニェン

あ、言っとくが話しかけても癇癪を起されるだけだからな、ウユウさんよ、暇だからって話しかけたりするんじゃねぇぞ。

ウユウ
ウユウ

しょ、承知した……

クルース
クルース

……ってことで、これで任務は終了?

ラヴァ
ラヴァ

お前どうやってここに来たんだ……?

ニェン
ニェン

秘密だ。

ラヴァ
ラヴァ

これからどうするんだ?

ニェン
ニェン

車でも探してロドスに直帰するのか?

ニェン
ニェン

なら帰りは寄り道がてら美味いモンにありつけようぜ、旅行と思えばいい。

ニェン
ニェン

勾呉地区の料理は至極繊細だ、だが私にとっちゃ、やっぱり味が薄い気がするな、刺激が足りねぇっていうか――

シー
シー

――バカね、秋の終わりの鱸は、肥えに肥えて、美しい山河や、現世の絶妙なものにも引けを取らないわ。

ニェン
ニェン

…スズキも確かに美味いが、それでも酒と一緒に食う火鍋には敵わねぇよ。

シー
シー

ふふ、あんたのためにあのチビ助に腕を披露してやりたいわ、大炎料理の奥深さをね、世間の広さを知ってほしいものだわ。

シー
シー

それに火鍋だって色んなバリエーションがあるのよ、あんたみたいなただかっ食らう人からすれば、チンプンカンプンでしょうけど。

ニェン
ニェン

ほう?墨汁ばっか塗ってたヤツが、私に「世間」云々を言う資格なんてあると思ってるのか?

シー
シー

いえいえ、ただあんたのその服装、実がなってすぐ土に植えられた唐辛子に見えたもんで。

シー
シー

……

ニェン
ニェン

……

ラヴァ
ラヴァ

け、ケンカはもう勘弁してくれ!せっかく収まったんだというのに、クルース、お前もこいつらの止めに入ってくれよ!

クルース
クルース

ルートの調べならとっくにできてるよ、少なくとも有名な地方料理が食べられるレストランが十七軒見つかった。これなら問題はないよね?

ラヴァ
ラヴァ

……

ニェン
ニェン

ああ、悪くはねぇ。

シー
シー

……ふん。

ウユウ
ウユウ

恩人様!恩人様!そのぉ、少し話したいことがあるんだが!

ラヴァ
ラヴァ

どうしたんだよ、改まって……

ウユウ
ウユウ

ほら、私は本来なら龍門に行って食い扶持を探す身、それ以上でもそれ以下でもない、皆さんは聞くにどうやらその「ロドス」の職員らしいじゃないか、なのでそのロドスなのだが、求人募集はかけていないだろうか?

ウユウ
ウユウ

言われたら何だってするよ!健康体で、感染者だって怖くはないぞ!良心的な値段を約束するよ!

ラヴァ
ラヴァ

まぁ……アタシらと帰ってテストを受けることはできるけど、ただアタシはどうこう言える立場じゃないけどな……

ウユウ
ウユウ

それは上々!では私もご同行させて頂こう!

ラヴァ
ラヴァ

……急に賑やかになっちまったな。

サガ
サガ

シー殿。

シー
シー

……何かしら。

サガ
サガ

絵巻で過ごした日々は決して忘れぬ。

シー
シー

忘れてくれたって構わないのに。

サガ
サガ

拙僧は貴殿と違って、人生は苦しくまた短い、忘れたくとも忘れられぬ。

シー
シー

……それはご愁傷様。

シー
シー

あなたのお師匠さんは今どうしてるの……?

サガ
サガ

住職様なら未だご健在でござる、しかしすでに百と二十歳のご高齢ではあるが。

シー
シー

そう。

シー
シー

あなたも彼らについて行くの?

サガ
サガ

いや、拙僧は……拙僧は引き続き各地を行脚したいと考えておる、炎国を離れて、もっと遠くの地へ。

サガ
サガ

拙僧は、目標ができたでござるよ。

サガ
サガ

しかし、ラヴァ殿は優しいお方だ、きっとロドスなる場所も趣深いところなのであろうな、もしいつか縁があれば、拙僧も一度は訪れたいと考えておる。

シー
シー

……フッ、それもいいわね、あなたたちの特権だもの。

サガ
サガ

戸から出ず、座して拙山万里を楽しんでいるシー殿のほうが、羨ましい限りでござるよ。

シー
シー

私みたいな拙山すら見飽きた人が、万里も各所を訪ね歩いたとしても、つまらないだけよ。

シー
シー

拙山尽起。

シー
シー

もし今後機会があれば、彼に伝えといてちょうだい、その一筆、中々悪くないわって。

ラヴァ
ラヴァ

……ウユウ、後ろに車両がつき纏っているんじゃないか、しかもかなり前から?

ラヴァ
ラヴァ

お前に用があるらしいが、手を貸そうか?

ウユウ
ウユウ

恩人様の手を煩わせるほどでもないよ……自分で片付けられるさ。

クルース
クルース

お師匠さんと約束したことはどうするの?

ウユウ
ウユウ

扇を使わないと、あいつらが倒せないって誰が言った?

ウユウ
ウユウ

真っ昼間に、都市外で凶行を働くとは、何のための王法だ!今日という今日は私がこっぴどく懲らしめて――

ラヴァ
ラヴァ

あ、また二両増えたぞ。

クルース
クルース

武器を持ってる人もいるね、大げさだなぁ。

ウユウ
ウユウ

……

ウユウ
ウユウ

……お、恩人様ぁ。

ラヴァ
ラヴァ

はぁ。

ラヴァ
ラヴァ

良からぬ連中である以上は……アタシらもヤるとするか。

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