雷鳴よ!
(閃光)
あああああ……目がああああ!
術師を呼べ!あのヴィーヴルをヤるんだ!
そうはさせないわよ。
(斬撃音とサルカズ傭兵が倒れる音)
どういう状況だ、また人が増えたぞ?
一体どうなってやがんだ!
まずいな、連中の火力が強すぎる。
ここで余計な面倒事を起こすわけにもいかないな、とりあえず撤退するぞ。
……捕らえました……
(クロスボウで射る音)
グワーッ!
スナイパーだッ!!
チクショ、どこにいやがんだッ!!
探さなくていい、とにかく撤退だ!
……逃がしません。
(クロスボウで射る音)
ガハッ……
退けッ!退けェーッ!とにかく撤退だッ!
逃げた!
状況を報告!
アレキサンドル、大丈夫か?
ああ、ただのかすり傷だ。
あいつらも少しは賢くなったな。
警戒を緩めないで!
ほかにもまだいるわよ。
……この距離でいいわ、見知らぬ方々。
そちらの支援に感謝する、けどお互い状況を整理するまで、安全距離を保っていたほうがいいわ。
緊張しなくて良いわよ、こっちに敵意はないから。
私たちはロドスの外勤小隊!あなたたちが今駐在している区域はロドスのセーフハウスに属しているわ。
私たちはセーフハウスの救援信号を受信してやってきたの。
そちらの身分を開示してくれないかしら。
落ち着いて、私たちは助けにきただけですから。
あのロドスの?
へへッ、本当に救援を呼んできやがった!
はやくオックフェンさんを呼んできて。
はいよ。
ロドスのオペレーターか?よかったぁ、助かった!助かったぜ!
状況の詳細はこんなもんだ。
つまり最後にあの四人の傭兵がここで臨時拠点を築いたと?
本当に申し訳ない、通信機は破壊され、セーフハウスも守りきれなかった……
今ここで俺が解雇されても、文句は言えねぇ……
案ずるな、わしにおぬしを解雇させる権限などない。
それにわしが見るに、ここまで守りきっただけでも立派なもんじゃ。
おぬしがいなければ、ここの感染者の命運はきっとさらに惨いことになっておったじゃろう。
感染者はどのくらい残っている?
外にいる医者を加えて、計四十三人、全員感染者です。
あちらから積極的に感染者を保護する傭兵とは、近年稀に見るのう。
感染者をまったく蔑視しないどころか、積極的に感染者を保護しに行く傭兵ねぇ。
ちょーっと疑わしいんだけど、一体どこからやってきた聖人の方々なのかしらね?
そのうえ彼らはそれを意識していないようじゃ。
あちらの言い分を聞くに、ただ無関係の一般町民を助けたようにしか聞こえん。
感染者を「蔑視していない」というより。
どちらかというと「鉱石病を気にもしていない」と言ったほうが正しいわね。
けど彼らは感染者には見えないけど?
彼らみたいな傭兵は今まで一度も見聞きしたことがありません、ましては「レインボー小隊」なんて。
みんな銃を持ってるのにさ、全ッ然サンクタ人に見えないんだけど?
もしかしてサンクタ人はすでにあの「ランプ」を隠す方法を見つけたのかも……
サンクタじゃない傭兵全員が大型銃を持っていたなんて、絶対ビックニュースになるわね。
BSWの装備開発部門の人たちがそれを知ったら、絶対発狂する。
……それより人の影でコソコソ言うのはもうやめましょう。
とにもかくにも、彼らはロドスのオペレーターを助け、感染者を保護した。
確証を得る前に、わしらも彼らの動機を疑うのはよくない。
とりあえず彼らと話をしてみよう。
あの人たち、入ってからしばらくするわね。
そのロドスなんだが、どう思う?
ずっと気になってたんだけど。
一体どんな製薬企業あるいは医療会社だったら、遠い田舎の町周辺に火薬をぎっしり詰め込んだセーフハウスなんかを設置するわけ?
あの爆薬と武器の量、一個歩兵班ぐらいはあるわよ。
それにその「製薬会社」のオペレーターさん、全員それぞれ武装人員のプロフェッショナルに見えるもんな。
この世界じゃ医者はみんなガッツリ武装しなくちゃならないのか、それか製薬会社ってのはデタラメのどっちか、あるいは両者かだな。
あの人たちも武装人員だけど、見るからに訓練されているし、態度も折り目正しい。
私たちが今まで出会ったチンピラもどきとはワケが違う。
それに……
私の勘違いかもしれないけど、あの人たちからはとても親近感ある雰囲気を感じるわ。
ああ、同感だ。
少なくともあの人らは話が通じる文明人だ、今までこの世界への印象ってもんはチンピラ連中が跋扈する終末世界だと思っていたからな。
包帯で傷口を巻いてあげました、アレキサンドルさん。
ありがとう、先生。
先生、あなたはあのロドスとかいう組織のことを知ってるかしら?
……キャラバンからちょろっと聞いたことはあります。
彼らはどうやら感染者救治を専門とする組織だとか、鉱石病を研究する科学研究機構でもあるそうです。
しかしその病は完治できないんじゃないのか?
そうです……
実は過去には「鉱石病を完全に治癒できる」と称していた人たちが結構いたんです。
ほとんどは詐欺師だったんですけど、それがバレたあとの結末なんかそれはもう悲惨なものでした。
それにごく少数のウソを言ってない人たちでも、「鉱石病の症状抑制」の効果を誇張してただけなんです、「鉱石病を抑制でする」薬品もそれによってとんでもなく高値に設定されてきました。
そうだろうな。
以前聞いたことがあるんです、とある領主の娘が鉱石病に罹ってしまって、領主は娘を救うために、クルビアから高価な抑制薬を買った話を。
数年後、その領主は財産をすべて使い果たしてしまい、娘も病の苦しみの中で死んでしまったと。
……
でもこれを見てください。
これは?
セーフハウスで備蓄されていた鉱石病の抑制薬です。
ここ数日これを重傷患者に投与したんですが、明らかに鉱石病を抑制することができています、それに薬効も今まで見てきたどの薬品よりも高い。
こんな薬……すごく高価だろって思いますよね?
でもオックフェンさんはまったくそんなことを気にしていなかったんです、ぼくが彼に重症患者がいるんだって伝えたら、すぐに一箱ぼくに渡してくれました。
この大地にまったくいい人はいないとは信じていませんが、でも……
へぇ、そりゃ意外だ。
もうその辺にしなさい、邪推したところでメリットなんてないわ。あなたが態度を表に出そうが出さまいが、これからの交渉では不利に働くわ。
みんな目標が一致してるのであれば、直接交渉のテーブルにドカンと置いておけばいいだけの話よ。
お前の指示に従おう。
おっ、あの人たちが出てきたぞ。
申し訳ない、待たせてしまった。
世辞やあいさつは抜きにしょう。
オックフェンを助けてくれて感謝する、おぬしらがいなければ、ロドスはまた職に殉じるオペレーターを一人失うところであった。
この任務が終了した後、上に報告しよう、ロドスから諸君に見合った報酬と物資補償を渡すようにと。
報酬か……
報酬があることはいいことだ。
それともう一つ、諸君は感染者のために我が身を投げうってくれた、ここに深く感謝を申し入れたい。
私たちも今まで町の人たちからたくさん助けられてきたから、見殺しはこちらの信条に反していただけよ。
じゃああなたたちはやはり傭兵なのですか?
いや……私たちは……
ああ、そうとも。
傭兵さ、しかも高価な種類のな。
……
そちらが所属してる企業とかを開示して頂けませんか?あなたたちみたいな傭兵はあまりにも珍しいものなので。
えっ……それは……そのぉ……
(ロシア語)企業名を考えてくれ!
(ロシア語)シロクマ物流とか?
……
開示しにくいのであればしなくても結構です、理解はできますから。
俺たちはその……すごく遠い国からやってきたんだ、場所は……南のほう!
そうだ!かなり南のほうから来た。
南?サルゴンあたりかのう?
あの灼熱の大地を超えてきたのか?
しゃく……そうだ、そこから来たんだ。
あんな灼熱の大地にほかの国があったのか??
信じられん……驚きじゃ、今まで生きてきて初めて聞いたぞ。
サルゴン諸王の歴史書を見返しても、あの灼熱で干ばつした大地を超えてきた人なんていたことがないというのに。
(ロシア語)もう少しマシな話を作れ。
(ロシア語)シロクマ物流がマシに聞こえるかよ?
とにかく、ウルサスとヴィクトリアの言語を操りし戦士たちよ、諸君がどこから来たかはさして重要ではない。
諸君は感染者のために戦ってくれた、この点に関していえばわしらの目的と一致している。
少なくとも今、少なくとも我々は共に現状の困難を乗り越えられるじゃろう。
その観点には同感です、ご老人。
そういうわけで、わしらに教えてくれんか、町で一体何が起こったんじゃ?
サルカズの傭兵が……
バケモノを操っていたのは、おそらく術師でしょう。
組織的で、規則的、重要なのは不利と知れば撤退していったところ、あれは臨時的に集結した強奪行為ではないでしょうね。
彼らの装備は万全だった、それもすべてクルビア産の軍用装備、セーフハウスを囲ってた時には、めちゃくちゃすごそうなヤツもいたわね。
あの装備と戦術、おそらくは「赤標契約」の専属傭兵でしょう。
おそらくは領主に対する反乱なのじゃろ。
しかしあいつらはなぜ一般人も襲ったの?
感染者区域からずっと私たちを追っかけてここまで来たわ。
あの傭兵たちは一体なにを考えているの?
一番の可能性としては口封じでしょうね。
口封じだけじゃないかもしれないぞ。
それはどういうことですか?
あいつらが昨日感染者区域を襲撃した際、明らかに病人たちを標的していた。
連中は病人たちを連れ去ろうとしていたんだ。
それがあいつらの目的なんだろう。
感染者を……誘拐?
一体何がしたいのかしら。
敵の目的はまだまだ不明じゃな、じゃが目下それが最重要というわけではない。
今のところ、最善の策は待つことじゃな。
待つ?
現時点でまだ兆しを見せてはいないが、既成事実の観点から話を進めよう。
今のわしらは酋長の許可を得ずに、武器を携え酋長の領土に入っている。酋長の戒律だろうと現地の法律だろうと、わしらはすでにサルゴンの法を犯していることに違いはない。
町の貴族は今も混乱に陥っているが、彼らのこの地に対する統治は未だに健在じゃ。
この期間のさなかに事件に手を突っ込めば、間違いなく状況がこちらにとってさらに不利に傾いていく。
現地の領主は感染者区域を設けた、ということはその人は残虐非道な人ではないことと言えよう。
ロドスがここにセーフハウスを設けることにも同意してくれておる、つまり閉鎖的な人ではないこととも言える。
きっとわしらに正しい処置を下してくれるはずじゃ。
国家の法律……地方政府……なるほど。なら今はそうなるよう祈るしかなさそうね。
さらに状況が変化する前に、わしらでこのセーフハウスを死守し、町の騒動が収まるのを待つしかあるまい。
諸君にもぜひともご助力願いたい。
遠慮なさらず、私たちもロドスの専門支援が必要だから。
では、諸君、よろしく頼む。