

何か見つかった?

あったわ!量はそれほどないだけど、収穫はあったわ。

よし、この食料とセーフハウスの緊急用備蓄を加えれば、一週間はギリギリもてるはずじゃ。

時間もいいところだし、さっさと帰還しましょ。
(シュヴァルツが駆け寄ってくる足音)

……誰かが来ます。

人数は?

……ざっと十数人は、おそらくは傭兵かと。

連中に構ってる暇はない。はやく!セーフハウスの方に向かうんじゃ!


わしらを追跡してきているか?

……ええ。

様子が変じゃな。

連中があのまま手を引くはずもない。

ここで戦えば簡単に包囲されてしまう、引き続き撤退じゃ。
(レンジャーが走る音)

(アッシュが走る音)

どうした?

追っ手よ。戦闘配置。

……いえ。

……まだ撃たないでください……

どうした?

……彼らはさっきの傭兵ではありません。

……レプロバ軍人です……

現地の衛兵じゃと?

手を出すな!


衛兵、この建物を包囲せよ!誰一人逃すな!

おいおい、俺たち包囲されちまってないか。

……まずいのう。

領主衛兵隊がどうして私たちを包囲してるのですか?

話はあとじゃ。


中に隠れている者どもよ、よく聞け!

私はアインタウィル町衛兵隊隊長、この町の領主の娘のピジャール・トゥーラだ。

全員武器を下ろせ、そして大人しく出てこい。

私の堪忍袋の耐え性を測ろうとはするなよ、後悔するぞ。
ガッシリとしたレプロバ軍人が長槍を強く地面に叩きつけた。
その瞬間、まるで大地が震え上がったようだった。

傭兵に続き、また傭兵か。

この徳も恥も情も仁義もない賊どもが!私のあの悪行の限りを尽くした兄弟からどれだけの金銭を受け取ったのだ?

逃がしはせんぞ、貴様らを粉砕し、徹底的に叩き潰してやる。

己が行った悪行に代償を支払ってもらうからな。

貴様らは我が刃の下で死に、それからようやく理解するのだ、どれだけ薄汚い金を貰おうと第二の命は買えないとな!


おいおい!こいつら本当に「助け」にきたのか?

俺たちをさらし首にするの間違いだろ。

私が一番危惧していた状況ね。


これはきっと何かの誤解じゃ。

ピジャール様。

わしはロドスアイランドの外勤オペレーター、コードネームはレンジャー。

ロドスはそちらの一族と一連の契約を結んでいるはずじゃ。

わしらは……

黙れッ!

ロドス!君子面をした偽善者が!

我が父は貴様らと、貴様らの約定を信じ、このセーフハウスの存在を認めてやった。

だがそんな貴様らはどうやって我が父に報いた?

貴様らは町民を誘拐した!彼らの財をチリ一つ残さず略奪したッ!すべてこの目で見たぞッ!

この背信棄義の賊どもがッ!
(アッシュが駆け寄ってくる足音)

そちらに脳みそがあるんだったら、そんなアホらしいことは言わないでもらいたいわね。

もし私たちの目的がこの町の略奪なら、今更こんな長い間ここに留まってるはずもないでしょ?

白々しい!

貴様は何者だ!

銃器を携えて我が父の領地に足を踏み入り、あまつさえここで詭弁を吐くか!

そんなご立派に鳴いてるくせに、今まで何をしていたの?

あなたと領主衛兵隊は暴徒による病人区域の襲撃を許してしまった、必死に救助を行ってたのは私たちよ、そっちの虎の子衛兵隊じゃないわ。

それなのにそっちもよく詭弁を吐けたものね?

落ち着け。こいつは話が通じるような相手じゃない。
(ミアーロが駆け寄ってくる足音)

ピジャール様!

感染者区域のミアーロ医師です!以前お会いになられましたよね!

……君か、憶えているぞ。

ロドスは感染者への略奪などしていません、ぼくが保証します!ぼくたちは別の暴徒によってここまで追いやられたのです。

ぼくだけじゃありません、ここにいるほかの感染者みんなが証人です。

ピジャール様、どうか信じてください。

……

……君のことなら信じよう、先生、君の話はたくさんの者たちから聞いているからな。

ありがとうございます、ピジャール様。

だがこいつらのことは信用できんッ!
ガッシリとした領主の娘は巨大な長槍を前へと突き出した。

貴様らは許可なく銃火器類を携え我が父の領地に踏み入った、それだけでも大罪に値する!

貴様らが我が父の領民を保護してくれたことに免じて――

勝手に武器を携えたことは不問としてやる。

しかしロドスよッ!貴様らが父が交わした契約は、本日をもって破棄する。

……どうか考え直してくれぬか。

これ以上考慮する価値などない!

アインタウィルにほかの武装人員は必要ない、それがロドスだろうとな!

ここにいる感染者は私が連れて行く、彼らを適切な場所へと安置しよう。

その他のことについては貴様らが知る必要はない。

しかし……

もういい、よすんじゃ。

現地の領主に逆らってはならん、ここはサルゴンじゃ、今のわしらがロドスの代表であることを忘れるな。

……


四十一、四十二……

ほかの者は?

これだけです……

問題ない、君たちはもう安全だ。

コーエンさん、アレキサンドルさん。

今まで、ありがとうございました。

そんな、ありがとうを言いたいのはこっちのほうよ。

これからどうするつもりですか?

まだ決まっていないわ。

そんなお通夜みたいな顔をするな。

これからまた会えるかもしれないんだぞ。

今度会ったらお前に物語を……

?

オホン……コボルドの話をしてやるからな。

あはは……わかりました。

先生、これを。

これは……源石錠剤、頂けません……

報酬じゃ、おぬしはオックフェンの足を治療してくれた、ロドスからの報酬として受け取ってほしい。

あれはただ簡単な応急措置です……これを貰うに値するようなことは……

わしは値すると考えておる、だから受け取っておくれ。

ありがとうございます、レンジャーさん。

それに……皆さんもありがとうございました。

さようなら。

……

……

何かがおかしいです。

わかっておる。

はぁ、慎重に行けば問題ないと思っていたが、まさかかえって誤解を生みだしてしまったとは。

ここの衛兵隊長があんなに話が通じない人だったなんて誰も予想できませんでしたよ。

あのマヌケ女、間違いなく頭ん中まで筋肉だらけね、ああいう人はブラックスチール内だけで結構だっつーの。

これからどうします?

セーフハウス内の物品は……基本的に全部押収されちまったしなぁ。

少なくともみんな無傷じゃ、これだけでも不幸中の幸いよ。

オックフェンさんはわしらと一緒に出発しよう、先に事務所のところで登録して、わしらが本艦に連絡を入れたあと、もう一度相談を受けてから行動するといい。

そうするしかなさそうだな。

……少し心配です。

何がじゃ。

……あのピジャールという人……彼女がこの一連の首謀者という可能性があるのではないでしょうか?

領主はずっと顔を出さず、傭兵もただただここの感染者を誘拐しようとしていた。

……そして今衛兵の隊長が現れ、大義名分に従い全員を連れて行った。

あまりにも都合がよすぎませんか?

……言われてみればそれもそうじゃな。

……私が尾行して……見てきます。

私も行くわ。

いや、人数が多いとバレやすくなる。

ほかの者は待機していよう。

……

どうした?

あなたなら反対するかと思っていました。

状況が状況じゃ、現地の領主と衝突を起こさないからといって、わしらが何もしないというわけではない。

いついかなる時も、小細工は必要じゃろうて。

……そうですね。


お前は先に全員を避難所に連れて行け、それから三人連れて私と共に来い。

坑道で何かが起こったかかもしれん。

了解しました。

避難所にまだスペースは空いてるか?

もうあまり空いてません、町の半分の人口が避難所で避難しておりますので。

どうしても入れないのであれば上の階に泊まらせろ、私の父の部屋を使わせてやっても構わん。

それは……よろしいのですか?

よろしくないことなどない、もし父が生きていたら彼もそうしたはずだ。

……了解しました。

とにかく、警戒を緩めるな。

……待て、私たちが出向いた時ランプはすべて消してあったか?

あまり覚えてはおりません……

!!

避けろォッ!
(爆発音)

うわぁ!

ガァ……

敵襲ゥ―ッ!町民を保護せよッ!

どっから湧いてきたんだ!

このままでは包囲されてしまう、包囲突破用意ッ!
(爆発音)

数が多すぎます!

お前たちは一般人を連れて先に行け!私が殿を務める!
(斬撃音)

来るがいい、無礼な賊ども!

(斬撃音)

ハァ……これで何匹目だ?

やっとついたか。

ピジャール様!

さっきの医者か!なぜここにいる?
(ミアーロの駆け寄ってくる足音)

この先に行ってはダメです!領主邸宅はもう……
(爆発音)

ミアーロ医師!

……

ドラッジィィ!

姿を見せろッ!その首を叩き斬ってやるッッ!
(ドラッジの足音)

ははは……相変わらずうるさいこった、俺の愛しい妹よ。

貴様……このゲス野郎が……絶対に許さんぞ。

ならお前の実力を見せてもらおうか。
