

こうして会うのはいつぶりだ、俺のかわいい妹よ?

半年、一年、それとももっと前か?

ドラッジ、領主衛兵隊への襲撃、領主邸宅への攻め入り占拠、これは謀反だぞ!

謀反か、フッ、クク。

お前も知っているだろ、ピジャール。

あのジジイの腐った頭の中ではまだ自分の感染した……あぁ、劣化した資産を守り抜きたいと思っている。

だったらお前は当分そいつの席には座れそうにないぞ。

だから落ち着けよ、妹よ。

こいつを見てみろ、このオモチャはクルビアの熱心なスポンサーから頂いたものだ。
狡猾なレプロバは自分の背後にある設備を叩いてみせた。

TSW-2号超音波衝撃装置、ハイクオリティな工業製品、まだ実戦には投入されていないテスト兵器だ、ちとサイズがでかすぎるのが唯一の欠点だがな。

こいつを町に仕込ませるのに、随分と手間がかかった。

それとお前を豪邸からおびき寄せるためにも、それなりの時間を費やしてしまったもんだ。

それでかわいい妹よ、お前の素晴らしい武術は何か役に立ったか?お前の堅固の意志が何かを起こしてくれたか?

……

こっちの友人たちを見てくれ、このサルカズの友人たちを。

こいつらは融通が利かない普通の魔族野郎じゃないんだぜ、こいつらもクルビアからやってきて、金のために仕事をしている。

これがどういう意味かわかるか?

つまりこいつらはさらなる発展を意味しているんだよ、お前もジジイも永遠に理解できないもののな。

利益が十分に高ければ、金はお前の想像をはるかに超える力を集めてくれる。

ジジイが頑なに続けてきたクソみたいな理念は、今頃どこに行っちまったんだろうなぁ?

ボス、大きな部屋からこんなものを見つけた。

寄越せ。

おっ、バイエル酋長の領主委任状じゃねぇか。

ペラッペラの紙、ヒョロヒョロなサイン、レンガみたいなバイエル文字、それと黒ずんだハンコ。

フンッ。

ジジイは?

いなかった、すべての部屋を隅々まで探したが、屋内には大勢の町民しか見つかってない、お前の言うジジイはいなかった。

父はもう亡くなった、今は私がアインタウィルの領主だ。

領主に歯向かうことは、酋長に歯向かうことと同じ、お前はもうこの大罪から逃れられんぞ!

それがお前とあのジジイが考え出した策略ってわけか?

ククク……

ははははは……
(打撃音)

うぐっ!

ジジイはホントますますバカになったもんだ。お前らは酋長に頼れば俺たちをやり込めるとでも思っているのか、ホント甘っちょろくて笑いそうだぜ。

死罪だァ?

ジジイが誇りに思ってたレプロバ衛兵隊なら町に中で頭と身体がバラバラになって寝転がってるよ。

一番厄介な領主衛兵隊はもういなくなった、もう俺を止められるヤツはいないと思うぜ?

このイカレたクズめ!彼らはお前が幼いころからお前を見守ってくれた者たちなんだぞ!それをよくも……

俺の道を阻んだのがいけなかったんだ。

それはお前も同じだ。

俺たちが血の繋がってる兄妹であることに免じて、もう少し分かりやすく説明してやるよ、お前にも理解してもらうためにな、妹よ。

ああ、今のお前はサルゴンの一領主だ、それは間違いない。

じゃあ俺は?俺は一族に追い出された流浪人だ。

だがそこから数年後、お前が不慮の事故で亡くなった後、俺が再び自らバイエル王家に赴いてやる。

俺がこの血統と、鉱石産業と莫大な財をもって酋長に忠誠心を見せてやれば、また新たにアインタウィルを俺に分け与えてくれるだろ?

貴様ッ!

もう一つだけもしも話を立ててやるよ、お前がもし就任して間もない間に戦場で亡くなってしまった場合だ。

俺がお前の遺体を酋長に献上してやる、もしそれでお前が不死の軍団の一員になれたら、俺もそれでより多くのメリットを得られるだろ?

ドラッジ、この卑劣な恥さらしめ!

そうカッカすんなって、妹よ。
(シュヴァルツが裏で走る音)

当然だが、さっき話したのは全部もしもの話だ、もしもである以上事実にはならない、俺はお前と腹を割って話がしたいんだよ。

だって俺はお前に一番ふさわしい結末をもう用意してあるからな。

この身体についてる石ころが見えるだろ?

そんなに感染者を守ってやりたいのなら、お前もそいつらと一緒になるといいさ。

ドラッジィ!

お前がそれで死んだら、山の洞窟に埋めといてやるよ。

そうすれば、お前もジジイも俺がどうやって鉱脈から源石を掘り出し、アインタウィルをバイエル鉱業の中心地に変える経緯が見えるってもんだろ。

どうした、黙りこくっちまって?

……貴様は自身の家族を、この土地を裏切った!呪ってやる、ドラッジ、苦しみながら死ぬがいいッ!

お好きにどうぞ、かわいい妹よ、いくらでも呪うがいいさ、まだ口が話せるうちにな。

まあ話はこんなもんだ。

(クルビア語)おいお前、ちょっと来い。
(サルカズ傭兵が駆け寄ってくる足音)

(クルビア)ボス、用件か。

(クルビア)この感染者どもを科学者のところに連れて行け。

ゴホッゴホッ……ゲホ……

(クルビア語)わかった、俺が科学者のところまで連れて行こう。

(クルビア語)この若いのはどうする?もうダメそうに見えるが。

(クルビア語)生きてようが死んでようが全員連れて行け。

(クルビア語)それと俺の妹だが。

(クルビア語)こいつは感染者にしちまえ、お前らサルカズ人ならやり方はわかるだろ。

(クルビア語)わかった。

(クルビア語)だがそれは契約で指定された仕事内容に含まれていない、やってほしいのなら報酬を上乗せしてくれ。

(クルビア語)黙って従え。長く見据えるんだ、俺たちの事業が成功して、鉱山の運営が始まった暁には、金をいくらでもわけてやる。

お前はいいお兄ちゃんを持ったな。

(目を閉じる)

(武器をかざす)
(矢で射たれる音とサルカズ傭兵が倒れる音)

なっ……

まだ敵がいたぞ!盾を構えろ、ボスを守るんだ!

(矢で射たれる音と傭兵が倒れる音)

ぐわぁ!

どうした!

ボス、まだ敵がいた!

領主衛兵隊は全員殺ったんじゃなかったのか!

見えた!見つけたぞ!あれは……

(矢で射たれる音と傭兵が倒れる音)

ぐあッ!

術師、はやくバケモノどもを起こせ!

ちょっと待ってください……えっと……これをこうして……

はやくしろ!
(矢で射たれる音)

ああああ!肩が!俺の肩が!

慌てるな、敵の所在は?

わ……わからねぇ!

まずは撤退だ、敵はクロスボウを持っている、開けた場所でボケっとするな!

ドラッジの旦那を守れ、傷一つつけさせるわけにはいかん!


見つけたぞ!フェリーンだ!

気を付けろ!撤退!撤退だ!

……

お前は……ロドスの……

動けますか、レプロバさん?

かたじけない……

グルル……

よし、動いたぞ。

もうあいつらに勝ち目はないぜ、ははは。

フンッ、あの老いぼれが作ったオモチャでもこういう時にゃ役に立つな。

ほかの者もバケモノと一緒にかかれ、あいつらを片付けろ。

了解した。

ここだと敵が多すぎます、あなたを無事離脱させられる保証はできかねます。

それだけでも十分だ。

私の武器はどこだ?

何をするつもりですか?

ドラッジをここまで好きにさせたのは私の落ち度だ。

眠る父に合わせる顔がない……

しかしたとえ私が死のうと、必ずあの逆徒の心臓をえぐり取ってアインタウィルへの手向けにしてやる!

落ち着てください、敵が多すぎます、そんなことをしても無駄死にするだけです、あなたはこの町のためにも生き残らなければなりません。

すでにこちらの仲間に信号を送りました、じきに到着すると思います。

ボス、例の傭兵とロドスの連中が攻めてきた。

ビビる必要はない、この邸宅は難攻不落だ、傭兵数人程度に何ができる。

それより術師にバケモノを操ってあのフェリーンを片付けさせろ。ほかの者は入口を死守するんだ。

了解した。


目標の状況を報告。

敵は敷地の壁を防衛線として展開、スナイパーも、壁の後ろにもガタイのいい傭兵がゴロゴロいる。

いつものアレをやるんだな?

あの程度の壁なんて、私たちもナメられたものね。

それじゃあ彼らにも私たちの実力を見せてやりましょうか。
(爆発音)

壁に大きな穴が開いた?そんなテクニックもあるのね。

制圧射撃!突入!

了解した!
(銃撃音)

ヤツらの侵入を許すな、やっちまえ!

邪魔!
(閃光)

まだまだァ!
(閃光)

クソ野郎が!スナイパーは!スナイパーは何をやってるんだ!

スナイパーならもうとっくに居なくなっておるぞ。
(打撃音)

ぐはッ……
(サルカズ傭兵が倒れる音)

外壁を突破!やるわね、おじいさん。

警戒を緩めるな、まだたくさん残っておるぞ。

待って、連中が何かを持ち出したわよ?

あれって……

伏せてッ!
(爆発音)
情けの欠片もない実験兵器が強烈な衝撃波を放った、巨大な轟音は雲まで響き渡り、粉々になった建物の残骸がそこら中に飛び散った。

ゴホッゴホッ……アタシの耳が。

大丈夫?

大丈夫。

ほかのみんなは……

私は平気、まだ内蔵はズキズキするけど……

……なんなのよあの兵器は?

あいつらなんであんなものまで持ってるのよ。

ヴォルヴォドコチンスキーの実験兵器……まさかあんなものまで持ってたなんて。

こりゃ厄介じゃぞ。
(爆発音)

また来る!遮蔽物に隠れて!

あんなのを食らったら絶対お陀仏だぞ。


ボス、あ、あいつらに壁を突破されちまった。

連中が制圧されてるところが目に見えねぇのか、何をビビってやがる?

まずは俺の妹とあのフェリーンを片付けろ、それからこっちで残りを殺る。

どう見てもこっち側が有利だ、あとは数人多めにぶっ殺すだけだ。
(斬撃音)

五匹目!これがお前のバケモノとやらか?ドラッジ!私の前に出てこいッ!
(斬撃音)

六匹目!薄汚く醜いバケモノ共め、来るがいいッ!まとめて肉片にしてやるッ!

落ち着いてください、ピジャールさん、体力を無駄に消耗しすぎです。

数が……多すぎますね。

ダメです……ゴホッゴホッ……

ピジャール様……シュヴァルツさん……

先生!

みなさん……ゴホッ、ゲホッ……逃げてください!

バケモノが、来てしまいます……

……何をするつもりですか?
感染者の朝は、太陽と共に死も地平線からやってくる。
ミアーロはこの言葉を決して忘れることはなかった。

(い……痛い。)
全身が痛い。

(ここはどこ……ぼくは気絶していたのか?)

(これは……)

……貴様は自身の家族を、この土地を裏切った!呪ってやる、ドラッジ、苦しみながら死ぬがいいッ!

(ピジャール様が……地面に跪いている?)

(一体何が起こったんだ?)

(ッ……痛い……)

ゴホッゴホッ……ゲホッ……
全身が痛い。
鉱石病が発症したのかな……

(これは……血?)

(あぁ……)
ぼくはもうすぐ死ぬんだ。

(痛い……寒い。)

(クルビア)この感染者どもを科学者のところに連れて行け。

(クルビア語)わかった、俺が科学者のところまで連れて行こう。

(クルビア語)この若いのはどうする?もうダメそうに見えるが。

(クルビア語)生きてようが死んでようが全員連れて行け。

(クルビア語)それと俺の妹だが。

(クルビア語)こいつは感染者にしちまえ、お前らサルカズ人ならやり方はわかるだろ。

(この人たちは……感染者に何をするつもりなんだ?)

(立てない……)

(あれは誰だろう……)
邸宅屋敷の壁の影に、こちらを狙っているクロスボウが見えた。

(シュヴァルツさん……)

(一人だけだ……)

(ぼくも力にならないと……)

(ハッ……結局最後はやっぱりこれを使うしかないんだね。)

みなさん……逃げてください……

何をするつもりですか!

ぼくのことはいいですから!はやく逃げて!

あれは精錬された源石錠剤?

一体何を……

!!

アーツを使うのは……久しぶりだなぁ。
「源石製品を爆発させるアーツ?珍しいものだな。」
「そんなアーツを持ってるんだったら、兵隊に入ったほうがいいんじゃねぇの?なんで医者なんかになったんだ?」
「はぁ……まあ好きにしろ、俺からしたらちょっと勿体ないと思うけどな。」

(まだやりたいことがたくさん残ってるのになぁ。)

(まだ死にたくないなぁ……)

(医者の責務は命を救うこと、ぼくは今……救ってるんだよね……)
そして感染者の少年が走り出した。
(爆発音)

目がッ!目がアアアアッッ!アアアアッ!

立て!陣形を維持するんだ!

ゴホッゴホッ……ゲホッ。

一体何が……何が起こったんだァ!

変異体が、変異体がコントロールを受けなくなった!

なんだとォ?

超音波発生装置は?

あのクソガキの爆発で壊された!

何もかもコントロールが効かなくなっちまった!どうすりゃいい!?
(矢で射られる音)

ぐわッ!

あのフェリーンがまた攻撃し始めた。

盾を構えろ、ボスを守るんだ!

ドラッジィィィ!

その命で償うがいいィィッッ!

お前ら何をモタモタしてやがんだ!

今すぐこいつら全員を殺せッ!

今度はなんだァ!?

見つけました、全員ここにいます。

人員救助が先よ、撃て!
