レンジャーの地図が描かれてるのはここまでね。
これからは自分たちで何とかするしかないわ。
この洞窟……想像よりもデカいな。
てことは、町の地下全体が空洞ってことになるのか?
爆薬は大丈夫?
……セーフハウス内にあった一番高威力のものならすべてここにあります。
Lordの計画が上手くいくといいわね。
そんな簡単なものには思えませんよ、あそこを見てください……
……私の見たくないものじゃなければいいんだけど……
ガァ……
あれは……ヒトなのか?
グゥ……
アレが何であれ、死ぬのであれば、それで十分です。
今更どんなにヤバイもんが現れても驚きはしないよ……
アレらに構うな、なるべく突破に集中して、ここで無駄にできる時間なんてないのよ!
了解
(閃光と駆け抜ける足音)
……なぜアインタウィルの地下にこんな施設が?
コーエン……ここってまさか?
クソ!※スラング※そうだと思っていたわ!
ラボの大部分もこっちに転送されていたのか。
思い返すと、私たちも油断しきっていたわね。
あの町であれだけ長い間生活してたのに、まったく気づけなかったなんて。
この一連の事件の背後には、あのイカレた野郎が……
なんか匂うな……
そりゃもちろん、死の匂いよ。
……
引き続き警戒を、離れないように。
何なんだこれは?
檻?檻がたくさんあるぞ?
全部死体ですね……人と動物が混ざり合ってる……
これはすべてレヴィ・クリチコの傑作たちよ、あの人のイカレっぷりと残忍さは人の想像をはるかに超えているわ。なんで当時の私は生け捕りなんか考えていたのかしら、一発で脳天をぶち抜いてやればよかったのに。
普通のイカレた野郎でもこんな恐ろしいことはしないもんな。
待ってください。
……檻に生存者がいます。
フッ。
どいつらのお出ましだ?
……
あのドラッジじゃないか。
このクソ野郎は灰になっても見分けがつくわ。
なんだ、お前らか、あの傭兵の。
会えて嬉しいねぇ。
俺たちの間にはたくさんのいざこざがあったが……今はとりあえず置いておこうじゃないか。
お前らはあの科学者を探しているんだろ……居場所なら知ってるぜ。
今はお互いに共通の敵を持つ同志だ、きっと協力できると思うぞ。
気持ち悪いほど厚かましいツラをしているわね。
そっちのフェリーン、お前のことなら知ってる。
お前のやり口は見分けがつきやすい、クルビアの傭兵市場からいろんな情報を耳にしたことがあるんでな。
お前殺し屋だろ、なぁ?
……
ロドスはお前を雇った、つまりロドスにもたくさんの汚れ仕事を抱えているってわけだ。
ほかの人より、お前のほうがもっと損得勘定で動いてくれるはずだ、ちょっとだけ話をしようじゃないか。
……黙ってください、それとも私が黙らせましょうか。
それは残念だ、お前ならもっと現実を見ていると思っていたんだがな。
檻を開けてちょうだい。
え……?
大丈夫、檻を開けるだけでいいから。
……
わかりました。
(檻を開ける音)
そうだそれでいい、みんな分かっているじゃないか。
そうね、ちゃんと分かっているわよ。
(殴打音)
おい、何をするつもりだ。
(殴打音)
ぐぁ!!!
(殴打音)
てめぇ!とち狂ったか……
(殴打音)
この……
(殴打音)
助け……くれ……
助け……
(殴打音)
……
(殴打音)
も……もう勘弁してくれ。
(殴打音)
フッ、まだ喋れる余力があるのね、ってことは殴り足りてないわね。
この一発は、ミアーロ先生の分だ。
(ドラッジが倒れる音)
もう十分だ、やめろ。
フゥゥ……
殴るにしても容赦なさすぎだ。
何よ……こいつに同情でもしてるの?
お前なぁ、もう殴り殺されそうになってるじゃないか。
顔だって原型を留めていない。
体力を節約しろ、こっちはまだ仕事が残ってるんだぞ。
それもそうね。
……ふふ。
どうしたの?
いえ、結構スッキリしただけです。
そうね、私もスッキリしたわ。
こいつはここに閉じ込めておこう、きっとこいつもレヴィにハメられたんだろ。
意外にすら思わないわ。
(走る足音)
……人は見当たりません。
……慎重に行きましょう、罠が仕掛けてあるかもしれないので。
(レヴィの足音)
これはこれは、また私のラボに客人が来られたのかな?
久しぶりだな、レインボー小隊のみんな。
巨大な実験場の一角で明かりがついた――その一角は以前暗闇に覆われることはなかったが、時同じくして、ここにいる全員が以前では感じ取れなかった気配察知したのだ。
年老いた科学者は重厚なガラスの奥に立っていた、彼のすぐ後ろでは、巨大な培養槽が聳え立っていた。レヴィは不自然で不気味な怪しい笑みを浮かばせていた。
そして直後、培養槽内の明かりも点灯された、中では結合組織によって包まれた大きな球状結晶体が浮かんでいて、蠢き、そして鼓動していた。
ちょうどいい時期に来てくれた。
いや……君たちはいつもちょうどいい時に現れるな。
(発砲音と銃弾が弾かれる音)
チッ。
無駄だよ、このガラスは防弾仕様だからね。
素晴らしい判断力だ、躊躇なくトリガーを引く、まだあいさつが済んでいないというのに。
だがとにかく私たちの舞台に戻ろうじゃないか、素晴らしいオープニングには優秀な観客も、完璧な開幕口上も必要になってくるからね。
今日は創造主の偉業を讃える日だ、そしてその創造主とは、即ち私だ。
創造主ですって?よくもまあそんな偉そうなことが言えたものね。
この狂いに狂った狂人が。
狂人か……フッ、凡人はその言葉を使って自分たちでは理解できない思考と思想をそうやって言い表すのを一番好む。
この世界を見てみろ、見てみろ!
まったく異なる化学反応を……完全に覆された物理法則を……科学の花は探究と疑いの中で咲き誇るのだ、未知に溢れたこの世界はまさに最高の土壌と言えよう!
そして今、私は成功したのだ。
君たちは見えたかい?感じれたかい?目では類似したように見える現象でも、万物を動かしているこのまったく異質な原理を!
これは生命の進化だ、存在の繰り返しだ。
源石がこの世界の真理だったのだ、君たちはこれを受け入れるべきなのだよ、これを恐れるのではなくてね。
ようこそ未来へ。
お前は自分がしでかした行為にこれっぽっちの道徳の抵抗を感じないの?
お前は人の命をなんだと思ってるのよ?
人の本質は脆弱性だ、善悪とはその脆弱性を前提として主観的定義にすぎない、世に蔓延ってる良心の呵責など我々の大脳が産み出した無数の認知信号の一つにすぎないのだよ。
だが私が追い求め続けてきた科学は、決してそんな脆弱性とあやふやな概念に左右されるものではない。
いい加減素直になろうじゃないか、こっちの世界に来ても、君は相も変わらず君が抱いてきたまったく無意味な概念で自分の思考を束縛しているのだろ。
電子情報技術も、核エネルギーも……これらの技術の源はと言えばお互いもっと効率的に相手を殺戮するためから来てるじゃないか。
まさか君は科学にまた新たな定義を加えようとしているのかね?一切合切を君の幼稚な精神的欲求に合わせるためにかい?
愚かだな。
だが許そう。
君たちは理解できていないかもしれない、だがその不理解を許そう。思考が停滞することとは一種の普遍的な愚かさであるからな、これは君たちのせいではない、だから許そう。
私のあいさつは以上だ、許し以外にも、諸君がここまで我慢して待ってくれたことを心から感謝する。
さあ、讃えよう――この一新された命の形を讃えよう。
讃えよう――讃えよう――讃えようじゃないか!!!
(ガラスの割れる音)
鮮血があちこちに飛び散り、滑らかな無機物が培養槽を突き破ってきた、蠢く変異した四肢はあり得ない角度で釣り合わない巨大な球状の頭部を支えていた、紅く尖った骨が科学者のあばらを突き刺し、押しつぶし、変形し、一つへと融合していった。
どんな代償を払ってでもいい、絶対にアレを地上に出させるわけにはいかない。
お前たちはコイツを食い止めていてくれ、俺は爆弾を仕込んでくる!