アークナイツストーリー翻訳

【明日方舟】遺塵を歩む WD-7「我が家」行動後

現代
4:14p.m. 天気/晴れ
サルゴン中部、イバテー地区、戦域

サンドソルジャー
サンドソルジャー

……最も苦しかった日々の中、私は常にあの情景を思い出していました。

サンドソルジャー
サンドソルジャー

批判、それと質の悪い原材料で理想的な道具を作れないことに嫌気がさした時――私はあの日見たもの聞いたものすべてを思い出すんです。

シェーシャ
シェーシャ

――お前は一人であの傭兵を全員――

ヘビーレイン
ヘビーレイン

いや、彼は先に……武器を配備させたんです、自滅するように……

シェーシャ
シェーシャ

よくそんなことができたな……あれは全部お前が作ったものなんだろ……

サンドソルジャー
サンドソルジャー

どのような職人なら自分の創造物に未練を抱くのですか?感情を注がせるのはより完璧な道具を創り上げるためにあります、感情によって束縛されるためにではなくてね。

シェーシャ
シェーシャ

とっくに図っていたのか。

サンドソルジャー
サンドソルジャー

みなに対する不利な要素を排除したまでです、何がおかしいのですか?

シェーシャ
シェーシャ

――うえっ、焦げた匂い……

サンドソルジャー
サンドソルジャー

ロドスは平和主義者だなんて言わないでくださいね。

サンドソルジャー
サンドソルジャー

ふっ……もっともあなた方は違うと思いますが。

シェーシャ
シェーシャ

……あの日見たもの聞いたものって何だ?

サンドソルジャー
サンドソルジャー

ああ、あなた方は彼女が戦ったところを見たことがありますか?

サンドソルジャー
サンドソルジャー

彼女はまるで自分の目を雲の上に置いたかのように局面を操っていましたよ。

イシン
イシン

……近い。近いぞ。

イシン
イシン

サルカズ……魔族、彼女が勝った。彼女が勝ったぞ。この結末もイシンは予想済みだ……

エリオット
エリオット

ゴホッ、どうしてもぼくについて行くんですか?

イシン
イシン

ケルシー嬢からお願いされたことなんでね、彼女がサルゴンを出るまで、彼女の言葉は即ちイシンの責務なのだよ。

エリオット
エリオット

……ええっと、彼女はどこに……?

丘を越え、徐々に見慣れた風砂が、源石火薬と血の匂いを帯びてきた。
風が砂霧を晴らし、異形なバケモノが太陽の光を歪ませながら姿を現した。
ケルシーもそこに立っていた。
とても落ち着きながら。

サルカズ傭兵
サルカズ傭兵

――ゴホッ、ごふっ――

ケルシー
ケルシー

君は戦士になり得たはずだ、サルカズの戦士にな、名もなき者よ。

サルカズ傭兵
サルカズ傭兵

……望まれた死だ、術師。

サルカズ傭兵
サルカズ傭兵

俺を殺さないのか?

ケルシー
ケルシー

私は――

(斬撃音)

Mon3tr
Mon3tr

(怒りが籠った唸り声)

サルカズ傭兵
サルカズ傭兵

チッ、このバケモノめ……俺の命はいらねぇってか、この傷が見えねぇのかよ?

Mon3tr
Mon3tr

(咆哮)

(打撃音)

ケルシー
ケルシー

Mon3tr、もういい。

ケルシー
ケルシー

すでに重傷を負って瀕死だ。

Mon3tr
Mon3tr

(不満げな嘶き)

サルカズ傭兵
サルカズ傭兵

はぁ……はぁ……チッ、ペッ、これでパーディシャの手を煩わせることもなくなったな……

ケルシー
ケルシー

サルカズ、君の名は?

サルカズ傭兵
サルカズ傭兵

ぺっ……どっちが聞きたい?

サルカズ傭兵
サルカズ傭兵

教えてくれ、術師、お前が言うその――カズデルは――今どうなってる?

ケルシー
ケルシー

依然として混沌を極めている。

ケルシー
ケルシー

だがサルカズたちはそこに故郷を築こうとしている。

サルカズ傭兵
サルカズ傭兵

故……郷?俺たち魔族が、感染者が、そんな夢を持つことなんざ……ごふっ……

サルカズ傭兵
サルカズ傭兵

俺はサルゴンから一歩も出たことがないってのに……

ケルシー
ケルシー

……幾百幾千年来、サルカズは幾度も“カズデル”を、彼らの我が家を築こうと試みてきた、だがそのほとんどは失敗に終わった。

ケルシー
ケルシー

“我が家”の定義は人それぞれだ、だが今のカズデルは、この言葉本来の定義に最も近しいのかもな。

ケルシー
ケルシー

“ティカズ”たちも故郷を持つべきだ。

サルカズ傭兵
サルカズ傭兵

チッ、そいつぁ……

サルカズ傭兵
サルカズ傭兵

……いいねぇ……

ケルシー
ケルシー

……

(イシンの足音)

イシン
イシン

哀れな魔族、哀れな魔族、彼は死んでしまったのだな。

ケルシー
ケルシー

君たちはここに来るべきじゃない。

イシン
イシン

騒ぎが大きかったのでな、イシンもここは少し処置しておいたほうがいいと思うぞ、あまり人目につかれては厄介だ……

エリオット
エリオット

……あなたは一人でこいつら全員を……

Mon3tr
Mon3tr

(不満げに頭を振る)

エリオット
エリオット

えっ、あっはい、二人で……傭兵の一個小隊に勝った?どのくらいの人数だったんですか?

ケルシー
ケルシー

少し骨が折れるほどだった。もし彼らがMon3trをあまり警戒していなかったら、私も危うかった。

ケルシー
ケルシー

急ごう。赤角町を出てから、すでに七回も小規模な襲撃を受けている。

ケルシー
ケルシー

今に至っては、もはやサルカズ傭兵の一個小隊の規模まで膨れ上がった、その後は、おそらく王族の衛兵隊、パーディシャの精鋭部隊にまで発展するかもしれん、何はともあれ、私たちが逃れるべき勢力は徐々に拡大していっている。

イシン
イシン

あまり彼らを殺したがらなかったように見えるが?

ケルシー
ケルシー

否定はしない。

イシン
イシン

そなたはサルカズに何やら特別な感情を抱いているな……ふむ、これ以上は追究しないでおこう、失礼をしたな。

イシン
イシン

もうじき日が暮れる、ケルシー嬢、すぐにこの死体たちを片付けなければならん、それに、彼らのバギーがこちらの労力をかなり省いてくれそうだ……

ケルシー
ケルシー

急ごう。

知識は人の心を掴むための手段になり得るか?エリオットは一度もそんなことを考えたことはなかった

以前はそれを考えることすら少なかった。かつての彼はとても純粋で、かつとても才能に溢れていた。当然彼はイシンがケルシーの僅かな話を聞いただけで彼女に従うことに理解できずにいた――

彼はまるではるか遠い過去に生きているようだった。サルゴンの黄砂の向こうを眺めながら、彼はただただ待ち続けていた、彼が欲している答えを教えてくれる人を。

答えを知るだけで果たして十分なのだろうか?

イシン
イシン

ここだ……古の市場の入口、ここが沁礁の町だ。

エリオット
エリオット

またサルゴンの町じゃないですか……

イシン
イシン

イシンは入口を知っておる……古の市場は秘密でも何でもない、誰だろうとここで自分が求めるものを探す資格はある。

イシン
イシン

イシンについてきておくれ。

黒市の町民
黒市の町民

……イシンじゃないの?黄砂でおっ死んじまってなかったのか?

イシン
イシン

運が良かっただけだ。

黒市の町民
黒市の町民

えっと、後ろにいる二人って、もしかしてクルビア人……?亡命してきたクルビア人ねぇ、その箱もさぞかし金になるんでしょうね。

エリオット
エリオット

……!

黒市の町民
黒市の町民

そう警戒しないで、大丈夫だってば、金貨四百枚でどうかしら、その箱を買いたいの。

ケルシー
ケルシー

申し訳ないが、非売品だ。

黒市の町民
黒市の町民

……それは残念。

黒市の町民
黒市の町民

でも大丈夫、この先パートナーになれる機会なんて幾らでもあるんだし、だよね、イシン、はは。

イシン
イシン

あまり気にしないでくれ、お嬢さん、ここじゃよくあることだ。

イシン
イシン

彼女も実際それほどそれに興味は持っておらんのよ……

ケルシー
ケルシー

もし彼女が本当にその気があれば、おそらく今後は、ロクに眠ることも叶わないだろうな。

エリオット
エリオット

初値から四百枚でしたけど……?

イシン
イシン

沁礁闇市とはそういう場所だ……活力に満ちたイバテーの心臓でもあるからな。

エリオット
エリオット

……どのくらいここに滞在するんですか?

イシン
イシン

道は遠い、イシンにも準備する時間が必要だ、おそらく半月以上はかかるだろうな。

ケルシー
ケルシー

イシン、頼んだぞ。

イシン
イシン

む、これは何の真似だ……金銭だと?イシンは金銭など必要ない……

ケルシー
ケルシー

なるべくはやく準備を済ませてほしい。こちらの敵は今でも私たちを追いかけて回しているのでな。

イシン
イシン

わかっておる、だがその金貨は仕舞っておくれ、イシンは貰えぬ……それにそなたにまだほかに聞いてみたいことがある。

ケルシー
ケルシー

……そうか、わかった。ならいつでも聞いてくれ、なんなら今でもいいぞ。

イシン
イシン

……感謝するよ、イシンはあまりにも老いた……大切なことをたくさん忘れてしまった。

イシン
イシン

不幸にも、それらを憶えていた人もみな消え去ってしまった、だから、イシンは手がかりが知りたいんだ……

イシン
イシン

お嬢さん、そなたはまだ若い、このイシンなんぞがそなたに望みを抱くべきではないかもしれんが……だがそなたはあの町のことを、あの風の中に消えた秘密を知っておるのだろう。

ケルシー
ケルシー

……何を知りたい?老齢のサヴラよ?

イシン
イシン

イシンはかつてあるパーディシャに仕えておったのだ……沁礁の地のパーディシャに。そのパーディシャはイシンを気に入ってくれて、わしを知己としてくれた、一生を費やしてでも償え切らない栄誉を賜ったよ……

イシン
イシン

しかし……歳月が経って久しい、このイシンはなんて罪深いことか、パーディシャが語ってくれた話をよもや忘れてしまったのだ。イシンはパーディシャが語ってくれた言葉たちを思い出すまで、死にたくはないのだ……

ケルシー
ケルシー

町を滅ぼしたあの災難の後、あなたは方向を見失ってしまったのだな。

イシン
イシン

もう遠い昔のことだ、お嬢さんや、そなたはあの天災すらも覚えておるのだな――

ケルシー
ケルシー

……沁礁の地を統治していたパーディシャは歴史でもそう多くはない。だが少なくとも書き記された歴史と童謡の中に、サヴラの占い師の記述はなかった。

ケルシー
ケルシー

もし自分が何者なのかを明確したのであれば、それなりに時間を有すると思うぞ。

イシン
イシン

ああ、それなら問題はない――お嬢さんがここを出ようと、また待つことになろうと、イシンはジッと待っていよう。

イシン
イシン

それまでイシンは死ねぬ、そなたもこのことをどうか忘れないで頂きたい。

ケルシー
ケルシー

約束しよう。

イシン
イシン

イシンについてきてくれ、ここに家を持っておるのだ、古い家だがな……

エリオット
エリオット

え……?

エリオット
エリオット

どうみても普通の――待って、これはなんですか?

エリオット
エリオット

――純金?

エリオット
エリオット

ここに、純金の山が積まれている!?

イシン
イシン

これはイシンの財だ……イシンにはもう用はない、しかし今は、これらを使うことができてイシンも嬉しい。

ケルシー
ケルシー

これほどの資産を所有しているのに、他者から奪われることはないのか?

イシン
イシン

イシンは旧日の弄臣だからな、一文も値しなくとも、イシンを庇ってくれる人はおる。

イシン
イシン

すぐに準備をしてこよう。

ケルシー
ケルシー

それであなたは何を知りたい?

イシン
イシン

たくさんある、お嬢さん……

イシン
イシン

すべてそなたの知ってることだ。

エリオット
エリオット

……地上がやけに寂しくなりましたね。

ケルシー
ケルシー

地下闇市が俗に言う“闇市”と呼ばれる前は、ただの普通の地下市場だった。常に天災の危機に晒されている地区からすれば、珍しくもない。

ケルシー
ケルシー

……夜の帳が下りた後、灯火は地下へと移る。

エリオット
エリオット

……

ケルシー
ケルシー

何か言いたいことでもあるのか?

エリオット
エリオット

あなたとこんなに長く、こんなに遠く逃げ回ったのに、まだモヤモヤがたくさんあります。たとえば、あの記憶を失ったサヴラのこととか。

ケルシー
ケルシー

……はるか昔、ここにはある都市があった。イバテーの果てしない土地にあった唯一の移動都市だった。

ケルシー
ケルシー

都市を建設することは往々にして奇跡に等しい、当時の沁礁を治めていたパーディシャが精励恪勤したおかげで、イバテー地区は前代未聞の団結を見せた――その団結の象徴が、あの満天の黄砂を扇いだ町だった。

ケルシー
ケルシー

それから人々はパーディシャの下に団結するようになった、それにあの時代は今からさほど昔でもない、今でも多くの人は彼らの故郷のかつての栄光に沈んでいると、私は信じている。

ケルシー
ケルシー

だがいいことはそう長く続かなかった、天災が町を滅ぼしたんだ、伝説ではパーディシャが市民や労働者たちを避難させた後、集ってくる天災雲に声を荒げながら痛烈に叱責したと言われている、滅びを迎えるその時までな。

エリオット
エリオット

……叱責?天災にですか?

ケルシー
ケルシー

記録官がそう書き記したんだ、だが真相はそれに勝るとも劣らないものだったんだろう。

ケルシー
ケルシー

沁礁の偉業はその時に崩壊した、無数の人が一夜にして難民へと変わった。彼らは本来共に故郷を築き上げることができたが、あの町と共に……みな砂風の中で忘れ去られてしまった。

エリオット
エリオット

……

ケルシー
ケルシー

イシンはその中の一人だった。王族と新しいパーディシャは金を惜しんで都市の再建に乗り気ではなかった、であれば彼らの末裔たちはもう二度と故郷を建て直す方法を見つけられないだろうな。

ケルシー
ケルシー

それにより彼らは悲しみと怒りで満ちるようになった。それでおそらく彼らは……まだ“沁礁の地”を重んじてくれるどんな人に対しても、同様な尊重を向けてくれているのだろう。

エリオット
エリオット

だから……彼らはぼくたちを助けてくれるのですか、自分たちの同胞を助けるように?

エリオット
エリオット

だったら、ぼくたちはすぐにでもサルゴンを出られる、そうですよね?

ケルシー
ケルシー

すべて順調にいけば、今月以内にもサルゴンの国境を超えることができるだろう。

エリオット
エリオット

ウルサスに行くんですか?

ケルシー
ケルシー

そうだ。

エリオット
エリオット

どうしてですか?

エリオット
エリオット

やっぱりまだ分かりません、あなたがクルビアで何もかもを捨ててサルゴンにやってきたのは、ぼくたちの成果物を戦争の導火線にしないようにするためだけだったのですか?

ケルシー
ケルシー

君たちはその一連の連鎖反応が招く恐ろしい結末を予見できていないんだ。

エリオット
エリオット

……ならあなたはできるって言うんですか?

ケルシー
ケルシー

もしどうしても答えが欲しいのというのなら、私の答えは、“イエス”だ。

エリオット
エリオット

ぼくを殺して、その後にこの箱を破壊したほうが手っ取り早いと思いますがね……なのにあなたは今でもぼくにこれを持たせることを許している。

ケルシー
ケルシー

そうして欲しいのか?

エリオット
エリオット

……いや。

エリオット
エリオット

最初は……どうして自分はまだ独りで生きているんだって思っていました。でも今はもうそうは思っていません。

エリオット
エリオット

……ケルシー、もしぼくがこの箱をあなたに渡したら、あなたはぼくのために……ぼくたちのために何かをしてくれますか

ケルシー
ケルシー

君はイバテーの王族もそれに巻き込まれているのを知っているだろう、サルゴンからクルビアまで、どこにもこの陰謀の助太刀が潜んでいることも。

エリオット
エリオット

……それでもあいつらには代償を支払ってやりたいんです。

エリオット
エリオット

見てくださいよ、この箱を――この箱はもうぼくの唯一の交渉手段なんですよ。

ケルシー
ケルシー

だがそれを破壊した後、君は一文無しに――

エリオット
エリオット

――一文無しですって?

エリオット
エリオット

本当のことを言うと……ケルシー、実は最初から、ぼくはこんな箱なんか必要なかったんですよ。

エリオット
エリオット

どんな細かいところだって憶えている、ぼくならぼくたちの成果を再現することだってできますよ。

ケルシー
ケルシー

なっ……

エリオット
エリオット

もちろん、それなりに時間はかかりますし、更なる困難にもぶち当たるかもしれませんけど……でもぼくならできると思ってますよ。

エリオット
エリオット

もし本当にあなたが言うように、この源石エネルギー源は武器転用できるのなら――

ケルシー
ケルシー

……

エリオット
エリオット

……初めてぼくの顔をちゃんと見てくれましたね、ケルシー。ぼくを子供として、保護対象として見るのではなく、一人の科学者として、一人のクルビア人として。

ケルシー
ケルシー

どうやら私は君の年齢のせいで君の可能性を疎かにしてしまったのかもしれないな、エリオット。

エリオット
エリオット

安心してください、先生の成果をあの人殺し連中の好き勝手できる手段にはさませんから。絶対に。

エリオット
エリオット

ただこれを使って最後に成し遂げなきゃいけないことがありますけどね。

ケルシー
ケルシー

……君はソーン教授のこの研究の根源を理解できていない。

エリオット
エリオット

先生から聞きましたよ、技術の原型はとある考古学者隊がサルカズの古代遺跡から発見したものなんだって、移動都市に全く新しい上により便利なエネルギーを提供してくれることも――

ケルシー
ケルシー

――もう一度繰り返す、具体的な使用方法に基づけば、こいつはサルゴンの半分をも黄砂に沈めることが可能な品物だ。

エリオット
エリオット

……くっ……

エリオット
エリオット

……あなたは元から傭兵の首領でしたよね、万が一を防ぐために、まだ別の方法を考えているんじゃないですか、“顧問”?

エリオット
エリオット

例えば……今すぐここでぼくを殺すとか。あなたたちが最も得意とする手段で問題を解決できるんじゃないですか。

ケルシー
ケルシー

……

Mon3tr
Mon3tr

(嬉しそうな反応)

エリオット
エリオット

……

ケルシー
ケルシー

……

ケルシー
ケルシー

……部屋に戻れ。

エリオット
エリオット

なっ――

エリオット
エリオット

強がるな、エリオット、今の君ではそれらしい選択をすることはできない。

ケルシー
ケルシー

よく考えるんだな、一体自分は何をすべきなのかを。

イシン
イシン

どうも、感謝するよ、イシンはこれだけで十分だ。

黒市の町民
黒市の町民

そんな遠くまで行くの?

イシン
イシン

イシンは行かんよ……イシンはどこにも行かん。

黒市の町民
黒市の町民

そうかい、まあ好きにしな、そっちが金を出して、こっちがモノを出す、簡単な話さ。

黒市の町民
黒市の町民

テイクアウトもしてあげようか?

イシン
イシン

いや、必要ない、あのお嬢さんの行く先を多くの人に知られてはならんのでな……

(ケルシーの足音)

ケルシー
ケルシー

イシン。

イシン
イシン

おお、お嬢さん、準備はもうほとんど済ませた、薬品、食料、水、それと少しだが精錬された源石錠もある。

黒市の町民
黒市の町民

この車両は奪ってきた品物よ、ヴィーヴル人に四五回は改造されてるけど。

黒市の町民
黒市の町民

悪いところは、ちょっと見た目がボロいってとこかな。その代わりいいところはたくさんあるよ、性能は揃ってるし、使い勝手はいいし、おまけにグレネードランチャーだって付いてるわよ。

黒市の町民
黒市の町民

北に向かうんだってね?どこに行くの、まさかサーミかしら?わあ、本当に行けるの?

イシン
イシン

そちらへの支払いだが……

黒市の町民
黒市の町民

……直接純金で支払いたいの?だったらおつりはないよ、崩すの面倒臭いし。

イシン
イシン

イシンは支払いを惜しんだことなど一度もない、彼らが過去にわしにしたようにな。

黒市の町民
黒市の町民

へっ、なら毎度アリ!

(黒市の市民の去る足音)

ケルシー
ケルシー

今日はこのぐらいにしておこう、イシン。

イシン
イシン

わかった、お嬢さん……順調にいけば、三日以内に、出られるはずだ。

黒市の町民
黒市の町民

――リターニアのアーツユニットのパーツはそりゃ使い易いけど、邪魔くさい上に作りは雑だし、やっぱりクルビア産のほうがいいわね。

黒市の町民
黒市の町民

……モノを仕入れてきたはいいが、ミノス産の源石制武器って、彼らは……

黒市の町民
黒市の町民

――買ったのならいちいち後悔しない、ちゃんと分かってるんでしょうねアンタ――

イシン
イシン

繁盛、繁盛しておるな……イシンはここが好きだ。

ケルシー
ケルシー

あれだけの財と地位があるのに、あなたはなぜイバテーの別の場所で流浪していたんだ?

イシン
イシン

……イシンはサルゴン人を助けたいんだ、この考えがイシンを支えてくれておる、この無限に等しい命を。

ケルシー
ケルシー

サヴラ人の平均寿命からすれば、あなたは相当長寿でいる、アーツの作用によるものなのか?

イシン
イシン

イシンは……己のアーツも忘れてしまったわい……イシンはただぼんやりとだがこの源石水晶玉を弄るしか能がない、わしは最も輝かしかった時代を忘れてしまった、一体どんな仕掛けがこれにはあるのだろうな……

ケルシー
ケルシー

正常な生理疾患ではなさそうだ、あなたの大脳と身体はアーツの影響を受けているのかもな。

イシン
イシン

……ケルシー嬢。イシンは、沁礁の町が雨風に消え去った今日、おそらく、サルゴンの中枢でないとその手がかりは見つからんと思っておる……

イシン
イシン

そなたはあの伝説上の黄金の町に行かれたことはあるか?

ケルシー
ケルシー

サルゴンの王都のことだな。

ケルシー
ケルシー

基礎工業が次第に発達している今日でも、サルゴンの王都は依然と移動都市へ遷都しようとしない。

イシン
イシン

砂風が常にサルゴンの城壁を叩きながら、悠久の歳月を渡り歩いておる……

ケルシー
ケルシー

たとえ天災だろうとサルゴンの核心を震撼させることはできないだろうな。

イシン
イシン

イシンは己が忘却してしまったものはそこにあると信じておる。イシンはすべてを思い出すことができるかもしれんのに……そこには辿りつけられないとは……うぅ……

ケルシー
ケルシー

各地を治めるパーディシャと皇帝の恩寵を賜れた王族しか、あの砂風の最奥に佇む都市を拝むことはできないからな。

ケルシー
ケルシー

あなたは言っていたな、答えが欲しいと。

イシン
イシン

イシンはある夢しかを憶えておらん……果てしない熱土の上、軍隊が無人の地平線で争いを引き起こしたことしか……

ケルシー
ケルシー

――!

イシン
イシン

イシンは、蹄鉄が血腥い網を広げながら、彼らがサルゴンの最南端の地平線を目指していく場面しか憶えておらん――

ケルシー
ケルシー

待ってくれ、そんなこと――

ケルシー
ケルシー

いや待て……

ケルシー
ケルシー

なぜあなたはそれを知っているんだ……夢魘(むえん)と謳われたケシクの遠征はすでに数千年も過去の出来事だ……それと沁礁の町に一体何の関係が……

イシン
イシン

ケシク……夢魘の王の帳……イシンは、全部知っておるのか……なぜだ?

ケルシー
ケルシー

……

ケルシー
ケルシー

……あなたはかつて、夢魘の嗣子に仕えていたのか?

ケルシー
ケルシー

サルゴンの皇帝が、よもや夢魘の血を引くクランタをパーディシャに任命したというのか?

イシン
イシン

……イシン……は……

イシン
イシン

パーディシャ……沁礁のパーディシャ……イシンの主はクランタ?夢魘の末裔?

ケルシー
ケルシー

彼はあなたと共に見張り役の城壁へと赴き、己の血統には今なお誇りに思うほどの偉業が流れているとあなたに教えたのでは……

イシン
イシン

――!

イシン
イシン

城壁、そうだ、だがあれはただの城壁ではなかった、南、そうだ!南にあるんだ、サルゴン人ですら踏み入ることを厭う熱土に、人類未踏の大地の入口が――

ケルシー
ケルシー

……夢魘。パーディシャに任命された夢魘、そしてイバテー地区は、彼がかつて政治的偉業を行った中心地。

ケルシー
ケルシー

彼は王族たちの贅沢の限りを尽くした生活で保身に回ろうとしなかった、彼の征服に対する渇望は彼を……

イシン
イシン

……彼をこの砂漠の征服へと至らしめた……そうだ……パーディシャはこの黄砂を征服したかったんだ、民を連れて、新たな都市を……移動都市を再建するために……

ケルシー
ケルシー

歴史によれば、彼はあと少しのところで成功できたはずだ。

ケルシー
ケルシー

だがあなたは彼の命で見失ってしまったのだな、たとえ彼があなたに善意を抱いていたとしても、彼が死んで久しくとも。

イシン
イシン

わしは……

イシン
イシン

思い出した……

イシン
イシン

わしは番人などではない……パーディシャの腹心でもない……イシンはただの、彼の弄臣だったんだ……

ケルシー
ケルシー

……

イシン
イシン

いや……思い出したぞ……いやいやいや……あの夏の夜か?

イシン
イシン

ゴホッ、ゴホッゴホッ――

ケルシー
ケルシー

落ち着いて。

イシン
イシン

……

イシン
イシン

そうか……老いが数多の記憶を入り乱らせたのだな……そなたの言う通りだ……パーディシャは満天の夜空の下に彼の宮殿で宴会を開き、その場にいた衆人に語ったんだ……

イシン
イシン

いや……まさか……うう、ううぅ……イシンは……彼の栄光を享受する資格すらないのだ……ううぅ、うわああ……

ケルシー
ケルシー

あなたは彼のアーツの影響を受け、長い長い悪夢があなたの思考を歪曲させたのだな……だがこれは彼がわざとあなたに施したものではない。

イシン
イシン

……臣下が自ら願ったものだからな。何人たりともあの偉業の境地に、好奇心に、憧憬に、欲求に、人々を陶酔させるパーディシャの魅力に抗えぬのだ……

ケルシー
ケルシー

あなたは自分の夢で自分を見失ってしまわれたのだな。

イシン
イシン

ならぬ……ならぬのだ……なぜイシンは……

ケルシー
ケルシー

……

イシン
イシン

イシンは……しばらく落ち着きたい、落ち着かせておくれ……頼む、イシンを、しばらく一人でいさせておくれ……

エリオット
エリオット

……!

ケルシー
ケルシー

明日出発する。

エリオット
エリオット

……イシンはどうしたんですか?

ケルシー
ケルシー

彼はしばらく己を整理するための時間が必要でな。

ケルシー
ケルシー

悪夢に長い間うなされていたんだ、彼は夢の中で過去を受け入れようとしている。

エリオット
エリオット

どういう意味ですか……

ケルシー
ケルシー

その箱ももう用済みだ。

ケルシー
ケルシー

あれは本来最後の交渉手段だったんだが、サルゴンを離れるとなると、私たちにとってそれを持っても何の意味もない。

エリオット
エリオット

……これはぼくのものです。

エリオット
エリオット

ぼくの最後のものなんです。

ケルシー
ケルシー

……だから決定権を君に委ねる。

ケルシー
ケルシー

君はどうしたい?

エリオット
エリオット

……!

エリオット
エリオット

ぼくを無理強いさせないでください……

ケルシー
ケルシー

君を強迫するつもりなどさらさらない。たとえ君がその技術を復元できようと、本来ある形から……抜け出そうと、今ある源石基礎工業に頼れば、どうにでもなる。

エリオット
エリオット

……チッ。

しばらく迷った後、若い研究者は箱を下ろした。
彼は箱の中身が一体何だったのかすらほぼ忘れかけてしまったようだった。たとえずっと肌身離さずそれを守っていたとしても。

エリオット
エリオット

……これは……

青色の源石結晶が安定しながらも微かな光を放っていた。

エリオット
エリオット

……キレイ。

エリオット
エリオット

これ……本当にあなたが言うほど危険なものなんですか?

ケルシー
ケルシー

……簡易的なサンプルでは何の説明にもならん。それのコアとなる原理を把握すれば、一つの町を消し飛ぶ榴弾を作ることなど造作もない。

ケルシー
ケルシー

もしイバテーの王族あるいはパーディシャがそんな技術を手に入れれば、何が起こると思う?

エリオット
エリオット

技術は発展し続けています、邪なことを考えてる人なんて遅かれ早かれ手に入れますよ。

ケルシー
ケルシー

……率直に言おう、その源石サンプルは唯一無二のものだ。

ケルシー
ケルシー

源石としてみれば、その性質はなんら特殊な点はない、だがそれが今の形状に変った経緯を見れば違う、それは昔の探索で発掘されたものだ。

エリオット
エリオット

発掘隊はいつもたくさんの秘密を見つけられるものですね……

ケルシー
ケルシー

クルビアは三枚しかこのような源石サンプルを発見できなかった。だがこれらは例外なく……とあるサルカズの遺跡付近で見つかったものだ。

エリオット
エリオット

それらを破壊するとどうなるんですか?

ケルシー
ケルシー

サンプルの爆発範囲はすでに実験に投入されたあの電子装置類にはだいぶ劣る。だがそれの本来の性質は依然と私たちを別の危険に陥れることができる――鉱石病という危険にな。

エリオット
エリオット

そうですか。

エリオット
エリオット

さっき唯一無二って言いましたよね?それは結構、ならぼくにも方法はありますよ。

ケルシー
ケルシー

――待て!

ケルシー
ケルシー

よせ――Mon3tr、彼を守れ!

Mon3tr
Mon3tr

(不満げな嘶き)

少年は美しい結晶を地面に叩きつけて砕いた。
その瞬間、光がすべてを呑み込んでいった。

エリオット
エリオット

ぐあ――なんで、止めるんですか……!

ケルシー
ケルシー

……話を聞かなかったのか、あれは源石なんだぞ!

ケルシー
ケルシー

感染したいのか。

エリオット
エリオット

がはっ、がはっ……

エリオット
エリオット

だから何なんですか!?

ケルシー
ケルシー

……

エリオット
エリオット

感染者を忌み嫌ってるんですか?感染者が憎いんですか?ハッ。

エリオット
エリオット

ならちょうどいい、もうあなたに借りを作らなくて済みますからね――!

ケルシー
ケルシー

……私も感染者だ。

エリオット
エリオット

なっ――えっ――

エリオット
エリオット

ぐっ、あ……!痛い……!頭が……!

ケルシー
ケルシー

急性感染の症状か、応急処置が必要だ。

エリオット
エリオット

そんな、の、必要ない――!

ケルシー
ケルシー

私はただ君が数時間後に源石粉塵になって塵と化すのを防止したいだけだ。

ケルシー
ケルシー

君は誤った方向を進んでしまったな、エリオット。

ケルシー
ケルシー

君はただ自分の運命を粉砕しようとしたんだろうが、それは最も間違った方法だ。

エリオット
エリオット

うあ……ぐっ……ぐあああ!

ケルシー
ケルシー

……エリオット・グラバー。

ケルシー
ケルシー

今の君は感染者になった。君が自ら、選んだ運命だ。

エリオット
エリオット

はぁ……はぁ……ハッ!

エリオット
エリオット

ならそれは……いい運命なもんだな……

ケルシー
ケルシー

もしこの先厄災に見舞われたくない生活をしたいのであれば、こちらから様々な方法を提供してやらんでもないが。

エリオット
エリオット

いや……ぼくはただ……ぐっ。

エリオット
エリオット

こうすれば……きっと……この足枷を壊せる……そうすればぼくは……過去を振り切れると思っただけです……

エリオット
エリオット

……ごめんなさい……あなたを巻き込んでしまった……

ケルシー
ケルシー

そんな状況でも謝罪が言えるのだな。

エリオット
エリオット

だってぼくもあなたが憎いですから、ケルシー……

ケルシー
ケルシー

てっきり君はもう私をクルビア人として見ていないのかと思っていたぞ。

エリオット
エリオット

いや……そうじゃありません……

エリオット
エリオット

あなたは本当に自分なら他人の運命を変えられると本気で思ってるんですか……?

ケルシー
ケルシー

そんなことは一度も思ったことないさ。

エリオット
エリオット

けどあなたはそれをしてるんですよ、ケルシー……たとえ誰からもあなたのやってるとこは間違ってるって言われなくともね……

エリオット
エリオット

ハッ……でも今はもうすべてが終わった、そうなんでしょ?

ケルシー
ケルシー

……

エリオット
エリオット

ぐっ、はっ。

ケルシー
ケルシー

出発時刻は変更できない、だが君は今すぐ横になって安静になる必要がある。

エリオット
エリオット

……これが鉱石病というものですか?

ケルシー
ケルシー

人によって差異はある。

エリオット
エリオット

ならぼくは……もうアーツユニットに頼らずともアーツ装置の実験ができるようになるんですか?

ケルシー
ケルシー

君は体系的なアーツの教育を受けたことがないだろ、それにそんなことをすれば死を早めるだけだ。

エリオット
エリオット

なら言い換えると、できるってことですね。

ケルシー
ケルシー

……

エリオット
エリオット

うん……それはいいですね。

イシン
イシン

……その先を進めば、闇市を抜け出すもう一つの道がある。

イシン
イシン

この道はイシンしか知らぬ、誰だってそこを行ったことがないからな。

イシン
イシン

聖檀。

イシン
イシン

墳墓。

イシン
イシン

お嬢さん……もうこの道を阻むものはない。

ケルシー
ケルシー

……

エリオット
エリオット

……

ケルシー
ケルシー

エリオット。

ケルシー
ケルシー

私はウルサスに行くぞ。

エリオット
エリオット

……分かってますよ、今それを言ったのは、どういう意図ですか?

ケルシー
ケルシー

そこは重要ではない、私が聞きたいのは……まだ私についてくるかだ

ケルシー
ケルシー

君は本来クルビアに戻って、自分の事業を受け継ぐことができたはずだ、少なくとも、君があの選択をする前ならな。

イシン
イシン

……

ケルシー
ケルシー

それとも、ここに残るのか。

エリオット
エリオット

――!

ケルシー
ケルシー

イシンの言ってた通り、誰だろうと運命を操ることはできない。

ケルシー
ケルシー

彼が君を助けてくれる。

イシン
イシン

……お嬢さんがそう言うのであれば、イシンがお前を助けてやろう、坊や。

エリオット
エリオット

そんな今更……

ケルシー
ケルシー

私は君の未来を決定する権利などない。

ケルシー
ケルシー

たとえ君はあんな極端な方法で私に証明を試みようと、過去と関係を断ち切りたいと証明をしようとな、最初から、君はわかっていたはずだ。

エリオット
エリオット

――

ケルシー
ケルシー

戦争の阻止、サルカズ巫術の遺産が引き起こすサルゴンの内乱と、大規模な源石感染の阻止――簡潔に言うと、それが私の目的だ。

エリオット
エリオット

それってつまり……もう成功したってことですか?

エリオット
エリオット

じゃああなたは、あなたの計画で死んでいった人たちのことをどう思ってるんですか?

エリオット
エリオット

分かってますよ、あなたはぼくを助けてくれた、本来はぼくたちを助けることも、ぼくはあなたに恩があることも――でも、あいつらが犯した罪は何も“戦争を引き起こす準備をした”だけじゃないんですよ――

エリオット
エリオット

あなたなら見たことありますよね、きっとそうだ、ここに来るまで、あんなに戦いが起こったんだ、あなた一体何人殺してきたんですか?それと何人あなたとぼくを殺そうとしてる人がいるんですか?

エリオット
エリオット

パーディシャも、王族も、内乱はもうとっくに始まってますよ、まさかこの事態が終われば、あいつらはお互い嬉しそうに隔たりを下ろしてパーティを開くとでも言いたいんですか?

ケルシー
ケルシー

……君はサルゴンの貴族と王族たちの間に作用してる原理を知らないんだ、彼らの腐敗と傲慢さが彼らを引き留めてくれるさ。

エリオット
エリオット

じゃあそういうあなたは……何もなかったかのように締めくくり、離れるつもりなんですか?

エリオット
エリオット

ぼくにはできませんよ、ケルシー、申し訳ないけど……ぼくにそんなことはできません。

ケルシー
ケルシー

ならどうしたんだ?

エリオット
エリオット

……あいつらを全員見つけ出す。

ケルシー
ケルシー

……

エリオット
エリオット

サルゴンからクルビアまで。

エリオット
エリオット

一人残らず。

イシン
イシン

ふむ……執着か。

イシン
イシン

どうやらこの子はもう覚悟を決めているようだ、お嬢さん。

ケルシー
ケルシー

……

ケルシー
ケルシー

これは彼がした選択だ、イシン。

イシン
イシン

分かっておる、イシンは二人の考えを尊重するさ、なんせこのイシンはあまりにも老いた、イシンも火種を残したのだ……

ケルシー
ケルシー

ぼくを手伝ってくれるってことですか?

イシン
イシン

尽力しよう、坊や。

エリオット
エリオット

ありがとうございます。

エリオット
エリオット

それじゃあ、ケルシー――

エリオット
エリオット

そろそろお別れですね。

悪夢から覚めた老人の目尻には、旧日の栄光を含んだ涙がかかっていた。
若き研究者は思いに耽っていた、彼の心にある怒りの炎はとっくに感染による痛みすら覆い隠していた。
ケルシーは無言のまま。
流浪者は独りになって旅立った。

イシン
イシン

……お嬢さん、イシンへの対価を忘れないでおくれよ。

イシン
イシン

二十数年後、金貨一枚と引き換えに、この無力な魂を連れて行っておくれ。

ケルシー
ケルシー

……

ケルシー
ケルシー

Mon3tr、出発しよう。

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