「勝利の角笛は響いた――」
「英雄の意志は、一人一人の勇ましき魂に受け継がれる!」

……外はお祝いで大盛り上がりですね、パラス。

なにをそんな苦い顔をしてるのですか、まるで私たちが惨敗したようじゃないですか。ロドスは今回勝利の勲章を得られたんですよ。

コリニアの戦士……うぅ……私は自分に悲しんでいるわけではありません。

……分かってます。今のあなたは大衆に姿を曝け出すわけにはいきませんからね。
パラスは手を握りしめた。少し躊躇ったあと、ため息をつき、頷いた。

正直に言うと、初めて任務内容を受けとった時はあまり理解できませんでした。

なぜ私への指令は随時あなたの動向に注意し、あなたに傍で発生しうる“事故”の回避、それに加え……あなた自身が創り出すかもしれない“事故”を予防すること、なんでしょうかね。

戦士シデロカよ、もうその意図はお分かりなのではないですか。

ええ。ロドスから参加されるオペレーターの中には……“感染者”がたくさんいます。

競技に参加したすべてのチームの中で、感染者を正式なオペレーターとして雇用してるところは私たちだけですから。

出入りが極度の制限を設けられているだけでなく、生活のほとんどは試合場所に固定されている。

初めてミノスにやってきた感染者オペレーターたちからすれば、今回は彼らの活動の中で一番広範囲なものとなったんでしょうね。

ええ……鉄の掟と人心の偏見を変えられないのは、なんと心痛ましいことなのでしょう。

つまり、あなたが必死こいてロドスを競技に参加させたのも、変えるため……だったのですか?

うっ。

戦士よ、私は様々な場面に身を投じてきましたが、それでも口に出してしまえば羞恥心を生んでしまう言葉というのが少なからず存在するといいますか……

別に恥ずかしがることなんてないじゃないですか。

ご、ご存じの通り、期待に胸を膨らませながら故郷に戻りましたが、私もいたたまれない悲しみにふさぎ込んでしまいました。

たとえミノスからの視線だろうとロドスからの視線だろうと、私の分を弁えない行動を許容することはありません。

ですので……あなたがおっしゃった通り、私はすでに心を決めております、今回の旅路も、私からすればミノスが私の到達を許容してくれる最深部まで潜ったことになります。

たとえ辺境地区にあるヒュムノイだろうと、この山にも神話の英雄たちの魂と意志が眠っております、その地で豪快に戦えたことは、私にとって非凡なる意味があるのですよ。

……では方法はもうないのでしょうか?

コリニアが鋳造した商業の夢からあなたが目覚めたように、ミノスを振り返った今の私も、美しくも荒唐無稽な夢を見ていたような気がします。

今回の競技、あなたは楽しんでおられましたか?

もちろんです。なんといっても私もミノス人ですから、闘争心は消え失せませんよ。

ふふ……勇敢なる戦士よ、私にとって、それより嬉しく思う言葉はありません。