みんな無事か?
Outcastさんが言ってくれたおかげで、隠れるのに間に合いました……ゴホッゴホッ、ジェニーちゃんは、大丈夫か?
平気です、Outcastさんが守ってくれましたので。
でも外は……何が起ったの?
たくさん悲鳴が聞こえる……子供たちの声が……
ジェニー、まだ出ちゃダメだ!全員、まだ遮蔽物の近くで伏せていろ、なるべく窓からも離れるように!
この規模の爆発なら一回だけじゃ留まらないはずだ――
(爆発音)
ぎゃあああ!お、俺の足が……本棚が上に……
ウィル、手を貸してやれ!
(ウィルがフレッドに駆け寄る)
はぁ……助かったぜ、兄弟、もう動けるよ。
血は出てないかい?
大丈夫、ちょっと掠っただけです。
医療キッドはまだ残ってるか?急性感染前期抑制剤を出してくれ、すぐに服用するんだ!
え?Outcastさん、ちょっと足の皮が木で擦れただけで、骨までは行ってませんよ。
いいや、それだけじゃない。
君は今一番危険な感染リスクに晒されている――窓を破ったあの黒い結晶が見えるかい?
う、ウソだろ……俺……
……あれは活性源石!?
そうだ。
まさか、街に出たあの真っ黒いの……全部が!?
おそらくね。
そんな……信じられない……
そ、それじゃあ今町中全域は巨大な危険に晒されてるってことか?
クソッ!Outcastさん、すぐ近隣の人たちを救助しましょう!時間が緊迫してる、一人でも多く助けましょう!
ほかに意見は?
……その反対意見を持ってるのがオリバーだとは思ってましたけどね。
こんな事態だぞ、まだ俺をおちょくろうってのか!さっさと救急キッドを集めてこい!フレッドは負傷してる、だからここで待機して、俺たちとの連絡を担当するんだ!ウィル、お前ははやく両親のところに戻って様子を――
ボクも皆さんと一緒に行けます……
バカ言うんじゃねぇ!家族より仕事が重要って言いたいのか?十分の量の薬を持って、家族を救助し終えたら、ついでにその街一帯にいるお隣さんたちも検査してこい!
オリバーさん、ありがとうございます……
シュレッダー、こりゃ多めに見回らないといけないぞ。
私のことも忘れないでくれ、オリバー、今の私は君の下にいる臨時オペレーターみたいなものだからね。
Outcastさん、冗談はよしてくださいよ。
真面目に話そう、第十区一帯は私に任せてくれ。
あそこは爆心地で、一番危険な場所ですよ……
だからだよ。私にも緊急用の通信機を渡してくれ、お互い随時状況を報告し合おう。
皆さん、私も一緒に……
あー、ジェニーちゃん、この救助任務は冗談じゃないんだ、お前は俺たちみたいに専門的な訓練を受けていないから、危険を冒すようなことはしなくていい。
そんなことより、こんなひでーこと思いついたヤツはどこのどいつだ、人の群れに活性源石を投げ入れやがったんだぞ?全部あの※ヴィクトリアスラング※の暴徒連中がやった仕業なのか!?
このごく短時間内でこれほど広範囲の区域に爆撃を仕掛けるように、この襲撃を画策した人だ、少なくとも最新型の地上制圧榴弾砲を十門以上は投入してるだろう。
そんなにたくさん……
ここ二日私は遠目からこの戦いを見てきた。君たちに暴徒と称されたあの人たち、彼らの中にはとても強力な術師がいた、それであの部隊に相当の隠密能力をもたらしている。
――だが彼らにこれほど殺傷力の高い武器を駐留軍にバレることなく、町内に持ち込めるほどの実力はなかった。
ましてや、せっかく奪った町に大砲を向けたり、現地住民もろとも自分たちの人間を粉々に吹っ飛ばすほど彼らとてバカではないと思わないかい?
そ、それってつまり……
ジェニー、君ならわかるね。
うそ、そんなのありえない……
それってつまり、こちら側の人間が町を爆撃したってことですか!?私たちが……こんなに多くの一般人を殺しておいて、それよりもさらに大勢の一般人を鉱石病の深淵に引きずり込もうと謀っているってこと?
……駐留軍の仕業だな。
駐留軍は今回の戦いは勝てないことを分かっていた、なぜならタラト人たちが全員向こう側を味方しているからね。協力者の区別は不可能、だから思い切って一般人もろとも敵を一網打尽にしようと考えたうえ――
非人道的な砲弾を使用したんだろう、後腐れを残さないように。鉱石病患者は全員集中管理されることになる、それで駐留軍は大義名分を手に入れ、今後堂々とタラト人を片付けられるようになるわけだ。
それって……人命を軽視してる手段ですよね?ヴィクトリアの軍は、ヴィクトリア人を守るべきじゃないのですか?
感情が昂ぶってるね、私にも分かるよ、そうして昂ぶってるということは君は多くの兵士が欠けている慈愛の心を持っているからだろうね。
だが残念なことにこの数百年間、ヴィクトリア軍がこの大地にある無数の国と人々を踏みにじって来たわけだが、一度たりとも慈愛を掲げながらではなかった。
……
どうりで、タラトの住民から見たら、暴徒たちのほうが正義に映るわけね……
どれも同じく無関係な命を利用して、自分の利益を追い求める組織だ、被ってる仮面は異なる模様をしてるがその下にあるのは同じく醜悪な顔、そこに違いがあると思うかい?
じゃあ――ロドスだけは正しいことをしてるってことですか?
ロドスのことはどこまで理解してる?
私はオリバーさんたちを信じています、それに、初めてあなたと知り得たあの日から、あなたのこともずっと信じています……
君は私のことを、どこまで理解してる?
……
Outcastさん、そんな厳しいこと聞かないでやってください、ジェニーちゃんには受け入れるための時間が必要なんで……
……大丈夫です、オリバーさん、Outcastさんが言いたいことは分かってます。
行き場のない私を受け入れてくれた皆さんには……今もとても感謝してます。
確かに私は、今も迷っています……いつも私がどちら側に立とうと決心時、誰かが言ってくるんです、お前はそっち側の人間ではないって。
でも少なくとも今、自分が何をすべきかは分かっています。
だから私も救助活動に加えさせてください。私も外で怪我を負った人たちをなるべく多く助けてあげたいんです。
たとえ彼らの中に、さきほどまで君に石を投げつけ、君を追い払った人たちがいてもかい?
あなたがさっき言ってくれたように、悪が跋扈してるところをただ見てるだけなんて私にはできません――私がどっちに立とうかまったく関係ないことでもありますし。
オリバー、聞いたね?君はモナハン町事務所の責任者だ、ジェニー・ウィローの臨時加入を承諾するかい?
お、俺は構いませんよ!
救急キッドもちょうど片付いたし、ジェニーちゃん、一緒に行動したい人を好きに選んでくれ。
……私もダウンタウンに行きます。
はは、じゃあOutcastさんと一緒ってことだな?ふー、さっきまであんなこと聞かれてたから、てっきりこの人のことが怖くなったのかと思ったぜ……
ん?
なんでもないです!
では準備ができたのなら、各自出発しよう。
いいかい、自分の保護を最優先にするんだ――目の前にある汚染源の大規模な防護措置をする必要もあるし、潜伏してる敵からもなるべく避ける必要がある。
そして、今の状況を見るに、どちらの兵士も、私たちの敵になる可能性があるからね。
(バグパイプの走る足音)
コックさん、コックさん――
はぁ、どうしよう、どこもケガ人だらけだ。
(爆発音と瓦礫が崩壊する音)
ゴホッゴホッ、ゴホッゴホッゴホッ……
ダメ、絶対にコックさんを見つけないと、きっとこの近くにいるはず、絶対町の外まで送ってあげないと!
ウチが……ん、ウチの足がなんかに掴まれてる?
……
て……敵!?
――!
いや、おめーさんはもう戦闘能力を失ってる。これ以上おめーさんに手を出すわけにはいかないよ。
……俺を……殺せ……
話はあとにして、先におめーさんの足を圧し潰してる石をどけてやるべ。
フンッ――
よし!うわ、もうペチャンンコだなぁ。それに……この黒い結晶……見るからに深刻だべ。
殺して……くれ!
俺は……感染者に……薄汚い……汚らわしい!
今喋ったところでなにになるのさ?しっかり生きていけばいいんじゃないの?
お前に……わかるわけがない……
これは死よりも……恐ろしいんだ……
わからないならそれでいい。ウチはまだ探してる人がいるから、おめーさんのことは助けてやれないべ。
コックさん!コックさ――
フッ……
ちょっとなにまだ引っ張ってるの?そ……そのマフラー!コックさん――!
……
(この石、コックさんまで圧し潰してたんだ。どうりで見つからないわけだべ。)
(情報はまだここにある。)
(見てわかった、最後まで、コックさんは全力を尽くしてこの重要な証拠を守っていたんだ。)
はぁ……
マクマーティンさん、あなたの本名は存じ上げませんが――でもあなたがしたことは決して忘れません。
どうか安らかに、戦友よ。
あなたの勇気を無駄にはしません。
……
それとおめーさんも。ありがとね、名も知らない敵さん。
本当ならおめーさんの最後の要求に応えてあげるべきなんだけど、ウチにはわかるよ、ウチが手を下さなくても、おめーさんはもうじき死ぬ。
言い残したいことはある?
……我らの首領よ。
こんな時になっても、まだボスを思ってるの?
は……わはははは!
我々は……もうじき……新生の炎を……迎えるのだ!
おめーさんどこを見て――
さらなる敵が大軍を引き連れて廃墟と瓦礫を踏みつけながら現れた。
敵の援軍が到着した!?
絨毯砲撃してもまったく効果がなかったなんて……
隊長……隊長たちが危ない!
はやく隊長たちと合流しないと――
ウチの任務は失敗、であれば、ウチらに残された唯一のチャンスは通信基地の奪還だべ!