ハァ!
この感染者め――よくも――
退場しな、ここはお前には相応しくない。
チッ!ならせめてお前もスコア圏外に道ずれにしてやる!
(斬撃音と殴打音)
――!くっ!
よかった、まだポイントが残って――
それはどうかな?鉱石病のゴミめ。
ッ!?
(斬撃音と大歓声)
チッ、イングラのやつ……
いいぞ!錆銅!その調子だ!そいつをスコア圏外へ引きずり下ろせ!
そいつの手を潰せ!そうだ!その感染者を調子に乗らせるな!
ちょっと!声抑えて!あっちの観客席を見なさいよ……
ああ?なんであそこあの女一人しか座って……“感染者騎士席”だと?
……
声が大きいよ、彼女がこっち見てるじゃないの。
ハッ、席の間に仕切りが敷かれてるだろ?なにも聞こえてないはずだと思うが?それに、まさか感染者が仕切りを越えて俺と殴ってくるとでも?
(斬撃音)
これこそが騎士剣術というものだ、イングラ、お前のその猪突猛進な動きはまったく見てられん。
ペッ……感染者のザコが……てめぇが俺に説教だと?てめぇの皮を剥いでやっても……後悔すんじゃねぇぞ。
(やはり無鉄砲ではあるが機を窺ってるな……このまま理性を失わせれば……)
(ッ、来た……)
(斬撃音)
この感染者のクソゴミが――
――ゴミだと?そう言うくせに、お前たちみたいな向上心を持たない騎士のほうが、よっぽど弱く感じるが?
(盾で錆銅騎士を弾く)
ぐっ、俺を弾き返しただと……!?
いいや、てめぇみたいな雑兵がそんなことできるはずがねぇ……アーツだな、風を操るアーツか?それかただ単に推力で押しのけたのか?
教えてほしいのか?オルマー・イングラ。
この――食らえ!!
(斬撃音)
(速い――!?)
チッ、やっぱり風か……
どうやら移動をサポートする程度のようだな、風騎士みたいな頭おかしいヤツのよりちゃちなもんだ。
(探っていたのか……?こいつはただ頭単細胞のクズじゃなかったというわけか……)
フンッ、感染者……お前が持ってる剣にはアーツユニットを仕込んでいないにも関わらず、アーツを扱えるとは……気持ち悪ィ、てめぇの体内にある薄汚ぇ源石がお前にアーツをもたらしてくれても勝敗を決めることはできやしねぇさ……
血騎士の野郎もだ、ちょっと名が挙がった感染者騎士が出てきたからって、世間に感染者を認めさせようとしやがってよぉ?
監察会からえらく贔屓されやがって、少しはその恩に感謝するんだな、鉱石病のゴミめ。
……恩だと?
お前たちにか……?
……ハッ、なんだその態度は?カジミエーシュの最下層で藻掻いてる感染者のくせに、騎士貴族たちに歯向かうってか?
感染者は……感染者は合法的な身分のためにどれだけ代償を払ってきたかお前に分かるか?
ハッ、なんで俺がそんなことを知ってなくちゃならねぇんだ?てめぇがこれから酷い死に方をすることを知っていればそれで――
卵を産み終えたばかりの捕まえられたメスの鉗獣がどれだけ狂暴なのかお前に分かるか?感染者騎士の選抜は……殺しが黙認されてることを知ってるか?
ふん、「酷い死に方をする」とな、よく言えたものだ、オルマー・イングラ、お前はただ弱い者イジメを楽しんでるだけだ……お前は殺し合いをする度胸なんてこれっぽちもないんだ。
――安い命として定められた者がどう処理されるか見たことがあるか?貴族騎士のゴミ?
スコア圏内にいるヤツがもうたったの五人になっちまったぞ!?
※カジミエーシュスラング※、有り金を全部賭けたのに、あの役立たずたち結局三十分もしないで圏外に弾き出されやがった!
なんでまだ感染者が残ってるの?しかもあの“錆銅”のイングラと戦ってるよ!?
おい!ささっとその薄汚ぇヤツをやっちまえ!イングラ!
イングラ!イングラ!イングラ!
な、なんだ?地震か?
いや、違う、あっちにいる感染者の騎士よ……さっき思いっきり地面を踏んだから……
……チッ。
こいつら……感染者をリンチし始めやがったな?
どうした!?イングラ、もうおしまいか!?
(騎士達が感染者騎士を囲む)
くっ……囲まれたか?
……感染者……
てめぇがここに立つ資格はねぇ。
(斬撃音)
ぐふっ――!?
(感染者騎士が倒れる)
感染者、棄権しろ。
私もイングラのやり方は好きではないが、自分の騎士団も家族も、感染者が我々と同じ舞台に立つ屈辱を許すことはない……
この野郎……キレイごとばかり言いやがって……
誤解しないでくれ、元から最後にスコア圏内にいられるのはたったの一人だけなんだ。
これは乱闘だ、感染者、それが今、お前が全員のターゲットになったにすぎない。
……チッ。
命知らずのガキどもめ……この感染者を片付けたら、次はてめぇらだ。
イングラ様……私はもう負傷しておりますので、あなたと優勝を争うことはできません、しかし今は少なくとも、共にこの感染者の奴隷を潰そうではありませんか。
この下賤な感染者は、騎士へ侮辱の言葉を吐きました。あなた方も、以前から感染者が引き起こしている騒動をご存じですよね?
レッドパイン騎士団には容疑がかけられています、非合法的に集結した感染者を煽動してた黒幕がそいつらです。
私たちと同じ舞台で稼いだ賞金を利用して、カヴァレルエルキないしカジミエーシュ全土の安全を脅かそうとしているのですよ?そんな行為を許容できるはずがありましょうか?
……非合法な感染者だと?
俺が見たのは、帰る場所もない可哀そうな人たちだ、工場から、農村から闘技場で捨てられた可哀そうな人たちなんだ!!
うるせぇぞ、感染者。
てめぇらが本当にそう思ってるのなら、大人しく感染者収容地区にぶち込まれるべきだったな……ここに残って、八つ裂きにされるのではなく。
本心を言えよ、お前、騎士を全員ぶっ殺してやりたいんだろ?お前のうちには、怒りと復讐心が満ち溢れている、そうだろ?
じゃあなにをボサっとしてるんだ?
――貴様ッ!
(戦闘音)
ガハッ――はぁ、はぁ――
ゴミクズめ、てめぇの手を引きちぎって、それでてめぇの頬を引っ叩いてやるよ!
(ダメだ、これ以上はもう持たない、一先ず先に――)
……
……通しませんよ。
(斬撃音)
この……そこをどけ――
くっ!?
クソ……お前らなにしてるんだ!?
ここに立ってるだけですが。
……
今度こそ逃げ場はねぇぞ!
(斬撃音と鎧が弾く音)
ガハッ……!
……ほう、いい材質の鎧を着てるな、じゃなきゃ今ので背骨が折れてただろうよ。
ガハッ……ガハッ……ゴホッ、ゴホッゴホッ……
(感染者騎士が殴られて倒れる)
なぜ騎士協会はあなたたちみたいな人種をメジャーリーグへ参加させてやったのか理解できません……あなたたちの血は猛毒なんでしょう?
……待て。
感染者、ここから去り、棄権しろ。
お前はもう重傷を負ってる、このまま続ければ、この先の試合もすべて水の泡だぞ。
――黙れぇ!
き……貴様ら……暴徒のくせに涼しい顔しやがって……!
うっ!?
(斬撃音)
涼しい顔だと、俺のどこが涼しい顔をしてるように見えるんだ?
てめぇのその可哀そうな反抗心がどこまで持つか見ものだな、跪いて許しを乞え……
――!
おい、審判はどこだ、これはどういうことだ!?
あのクソ騎士野郎どもが、この場を借りて恨みを晴らそうってのか!?
アタシが――
――
(大歓声)
イングラ!イングラ!イングラ!
錆銅万歳!カジミエーシュ万歳!騎士万歳!
……
その感染者を立ち上がらせなさい!立ち上がらせるのよ!
立たせるのよ!もっと戦わせなさい!そいつがどこまで持つか見たいのよ!
……ッ!
な、なんだ?おいお前……こっち来るんじゃねぇ!
……会場に下ろしてやろうか?もっと近くで見たいんだろ?ああ?
いや……お前……
観客を襲いやがったな!?騎士でありながら、観客を?
……なっ……
警備員は!?警備員さん!感染者が一般人を襲ってます!
このクソ野郎!
(斬撃音と殴打音)
ごふっ……
き……貴様ら……
まだ息が残ってやがるな?
(殴打音)
ぐふっ――おえ……おえええ……
もうそこまでにしろ、錆銅、死んでしまうぞ。
感染者ではあるが、正式に登録されてる騎士だ。感染者のせいで国民院の厄介になる必要はない……
チッ、てめぇはなんでさっきからグチグチ言ってきやがるんだ!?あ?何様のつもりだてめぇ?
私たちの間もスコアで勝敗を決めなければならないだろ、錆銅……この試合の勝者は一人だけなんだからな。
そりゃちょうどいい――
(アーツ音)
……なんだ?風?まだ藻掻くつもりか?
……貴様……
ハッ、なあ知ってるか、廃棄物になった扇風機のほうがてめぇよりよっぽど強い風を出してくれるんだぜ、感染者、なんのつもりだ?
……後悔……するぞ……
くっ……
(アーツ音)
こいつ死ぬつもりですか!?
風が――強くなった?まだ力が残っていたのか?
くっ――
貴様!
貴様ら……
おい、おい、見ろよあの感染者!
なにをしてるんだ!?アーツを出してるのか?
てめぇら――
――アーツだと?よせ!あいつを止めろ――
イングラ……それと貴様ら!
貴様らはまったく感染者がどんな悲惨な目を受けてきたを理解していないんだ……鉱石病は俺たちが貰いたいと思って貰ったとでも思ってるのか!?
家族に捨てられ、戦友に捨てられ、貴様らみたいなゴミクズみたいに闘技場に捨てられ、飢えた鉗獣と一緒に血を流される……
貴様らには――
俺はここで殺される。
ああ、ここは試合会場だもんな、メジャーリーグの試合会場だ、だが結局のところショーとしての性質が強いスタイル競技にすぎない。
いや。
どんな場所であれ……感染者が“事故や事件に遭った”としたらどうなる?
抗わなければ、俺は本当にここで殺されちまう。
そうだ。
抗わなければ。
抗うだけじゃないか。
貴様らには……血をもって血の代償を払ってもらうぞ……!
くっ、風がどんどん強くなってる……
ふん、私がここに突っ立っても、いずれあなたたちに負ける始末です、騎士団の上層部も私を理解してくれるでしょう。
本来なら漁夫の利を得ようと思っていましたが、どうやら無理みたいですね、棄権だ、私は棄権します!ここはあなたたちに任せますよ!
……感染者がアーツユニットを頼らずアーツを使えるなど、不公平にもほどがある。
このことはノースウッド大騎士団へ報告する、感染者は必ず制限されなければならない……一先ずここは退こう、錆銅。
……
錆銅?
黙れ……こいつは俺を殺そうとしてる、命を燃やしながら繰り出したアーツで俺を侮辱しようとしてやがる……
……貴様!もう逃がさんぞ……!
ハッ!この俺が逃げるだと?
てめぇのその哀れなアーツ諸共てめぇの顔をズタズタに引き裂いて、てめぇの血を踏みにじりながらダンスを踊ってやるよ――!
さあ来やがれ!感染者の賤民が!
お前を……倒す……この俺が……
あ。
離婚したとき、アルバムはあいつに持っていかれたんだったか?
残念だ、あれじゃあ見れないじゃないか、俺の可愛い――
(金属音)
……
……
な、なんだ、最後のあれ、風が急に止まったのか?
じゃあ……
じゃあ錆銅のさっきの一撃は……当たったってことか……
……!チッ!
(イヴォナが走り去る)
はあ……はあ……あんだけ騒いだ結果がこれか……?
おいどうした!?感染者?最後の最後に力を使い果たしたのか!?
この――
――
いや……こいつ……
死んだのか?
……感染者が……死んだ?
しかし――
医療班を呼べ!はやく!ここは競技会場だぞ!もし大規模な感染を引き起こしたら――
錆銅!はやくそいつから離れろ!
死んだ……?
はは、ははは……この程度のアーツを放っただけで、死んだってのか!?
これだからてめぇら感染者は――
まずは試合会場から離れてください、錆銅騎士様。
医療班、感染リスクがないことを確認したあと、密閉箱へ入れて運搬作業あたれ、急ぐんだ。
……チッ。
(イヴォナが錆銅騎士に襲いかかる)
――!?
――
レッドパイン騎士団――!ここにいる騎士全員を敵にするつもりか!?ああ!?
――そいつを下ろせッ!
……ほかの騎士と観客全体への安全を考慮した行為です、ご理解ください。
錆銅様、あなたも急いでここから離れください。
チッ、汚らしい騎士め……鉱石病で日常を台無しにするのはゴメンだ……
……お前も感染者だったな?落ち着け、ここはメジャーリーグだぞ……
うっ……
そいつにまだ息が残ってるのが見えねぇのか!?どけ!
てめぇら……!
落ち着け、騎士協会に歯向かうつもりか?
ここは医療班に任せて――
ゴホッ!ゴホッゴホッゴホッ――!
ひゅー……
通せ!
放っておけ……彼女も感染者だ、さきに観客の避難を。
……大丈夫か?
……へっ……あんまり……
失血だが……もう大したことではない……
感染してる箇所が痛い……全身を走り回っている……痛ぇ……
観客の皆様、会場で緊急事態が発生したため、スタッフの指示に従い、直ちに避難してください、今後予定される表彰式は二時間後に開始致します。
繰り返します――観客の皆様……
……ワイルドメイン。
なんだ。
……探して……くれないか……
……お前の嫁さんと娘ならソーナが見つけ出してくれる。
だから安心しろ。
……!源石がそいつの体表で蔓延している!これ以上は看過できない、直ちに密閉箱に入れるんだ!
てめぇらなにしやがる!?
感染隔離だ。
……貴様ら……クソ……
イヴォナッ!
こいつら全員の顔をよく憶えておくんだ……
憶えておけ……この騎士たちを……このカジミエーシュ人たちを……この陰湿な人殺したちを……
誰一人、絶対に許すなッ……!
お前の番だ、やはくカードを出せ。
焦るな、もう少し考えさせろ。
残り数枚しかないってのになにを考えるって言うんだ?
続いて緊急ニュースをお伝えします――
本日メジャーリーグで行われたスタイル競技のフラッグ争奪戦項目にて、事故が発生しました――
感染者騎士一名が試合開始前に身体状況を偽装報告し、試合中に負傷したあと、アーツの強行使用したため――
――試合途中でショックを引き起こし、その場で死亡が確認されました――
……感染者が……
……死亡?死んだだと?競技会場で?
なお、医療部門がすでに会場の清掃を終えていて、翌日消毒を行ったあと競技場は継続して使用するとのことです。
この事件発生から三時間後、国民院にはすでに多数の感染者騎士に関する法案の改正を求める声が届いております――
……法案改正じゃと?なりふりだけ構えておいて、所詮連中は自分の顔をぶつ度胸がないだけじゃろうが!
血騎士のとき、連中は圧力に押されて渋々感染者の合法性を認めただけだからな、今改正すれば、メンツが潰えるだけだ。
感染者問題はままごとではない……“メンツ”だけで政策に影響を与えといてよいのか?
数十年前の話だ、騎士貴族たちの“メンツ”が小さかったわけがあるか?
時代は変わった、あいつらがなにを考えてるかはわからないが、どんな場所であれ、客観的な結果よりも、今ある規則を守ることのほうが優先される。
俺たちはみんなそんなひどい目に遭っただろ。
現在、現場の清掃はすでに完了していますが、安全を考慮して、試合に参加されたすべての騎士は三日以内に医療検査を受け――
今回の事件に対し、騎士協会も注目しております。
現在、多数の騎士団が連名して騎士協会に、感染者の予測不可能な死、制御管理外にあるアーツ、及びメジャーリーグ期間内に存在する大規模な感染リスクに関する抗議を行っており――
(斬撃音)
はあ――!
問題ない、マリア。
武器の重心調整は完璧だ、こうも手に馴染む武器を扱ったのは久しぶりになる。
あっ……うん!
そりゃあこの前にあったお姉ちゃんの戦いっぷりを参考にして調整したからね、へへ。
……ああ。
……データではすでに初歩的な調整は済ませてあるから、これからは少しだけ実戦形式で試してみましょう。
マリア、離れてなさい。
あっ……うん!
二人とも無理はしないでね!
……ああ。
……フッ、いい目をしてるわね、マーガレット。
そう本気で来なくっちゃね、マーガレット、もし手加減でもしたら、私のプライドに傷をつけることになるわよ。
もちろんだ。
では――
(複数の斬撃音)
――本件に対して、多数の騎士競技専門家たちの意見を頂いております、では騎士協会の責任者へお繋いでみましょう。
えー、カジミエーシュ市民の皆様、こんにちは――
……
――感染者がアーツユニットを頼らずにアーツを出せることについては、医療界隈でも浅はかながら見解は得ています――
しかし試合において、これは“極めて不公平”なことになります――
(……公平。)
……公平かぁ。
規則の中でその規則の主に勝てるとでも?まったくもって馬鹿げた話だ。
……
(斬撃音)
くっ……!
(ゾフィアが倒れる)
気を付けろ。
大丈夫か?
うっ……ま、まあね、いいからはやく手どきなさいよ……
すまない、長物を扱うのは久しぶりなんだ、まだ慣れない。
はぁ……
――マ、リ、ア?なにニヤニヤしてるの?
えっ、あっ、ごめん、ごめんなさい。
……マーガレット。
あなた本当に変わったわね。
ん?そうか?
……外見の話じゃなくて、まったく髪の毛がまた乱れてるわよ、ほらこっち来なさい、梳いてあげるから。
マリア、櫛を持ってきてちょうだい。あなたの作業台の後ろに置いてあるから。
あ、わかった。
……座りましょう、少しは休まないと。
ああ、すまないな。
まったく……あなたが去ってから、もうあっという間ね。
(あっという間に……あなたはまた私たちから離れていってしまったわ……)
――死亡した感染者は違法感染者事件と関連があると見られるため、現在調査が行われております。
小さな波風で、メジャーリーグ全体のスケジュールが滞ることはないと、騎士協会はコメントしており――
お姉ちゃん……あれ……
またイングラか……試合中に相手を殺すなんて……
……
――現在、感染者騎士が関与してる試合を観戦してる観客から、次々と騎士協会に正当な処置を求める声が上がっております。
また同時に、今回の事件へ直接関わった関係者として、“錆銅”のオルマー・イングラさんなど数人の騎士たちがインタビューに応えて頂きました――
……
聞いていますか?マルキェヴィッチさん?
あ、すみません、ジュウェル、続けてください。
では。実は騎士協会からリストが届いておりまして、内容は今大会に参加される大騎士たちに関する資料と注意事項が記されております。
連合会もこのビッグスターたちと関係を悪くしたくないと思っていますので、今後もっと注意して取り掛かるようにと……
どれどれ……
(みんなベテランの選手だ……うぅむ、やはり耀騎士もいますか……)
ん?
この“逐魘騎士”も騎士団に所属してないようですね?騎士団に所属せずにメジャーリーグに参加する騎士は耀騎士だけと思っていましたが……
それに、“逐魘騎士”……一般的に大騎士の称号は簡潔に意味を伝えるための一文字称号ですよね?
彼はまだ大騎士ではないのですか?ではここに載ってるのはなにか特別なところがあるからとか?
あっ、こちらの方は……はは、この方でしたら騎士協会も頭を悩ませていまして、私も詳しくはわからないのですが……
本人は称号に対してまったく気にしておりません、連合会からの指示もほったらかしにしていますが、故意に背くつもりもないみたいなんです。
要するに変人ですよ。
変人ですか……
はい、ただ実力は確かなものです、それになぜかは分からないのですが、一部の騎士一族が彼の身分に興味を示されていまして、協会のほうに何度も問い合わせてきているとか……
ただ彼の詳細については私たちもあまりよくわかりません、サルゴンから近いどっかの田舎から来たらしいんですよ?
……
マルキェヴィッチさん?
……わかりました、先に行っててください。
承知致しました。
あっ……そうだ、ジュウェル。
はい?なんでしょうか。
私はまだ君が知ってるマルキェヴィッチです……ですのでそう畏まらなくてもいいんですよ、私も慣れなくて。
あっ……承知、えっと、わかりました、マルキェヴィッチ……さん。
この件に対して、国民院はどういった判決を出すのでしょうか?またメジャーリーグ開幕初日にこういった大事故を起こしたことについて、騎士協会はどう対処するのでしょうか?
CMのあと、騎士協会による記者会見の生中継をお届けいたします。
――デデン♪♪
ブルーイヤー酒造、三百年も伝承された、騎士の味――