(イヴォナの足音)

……

……イヴォナ、おかえり。

顔色すごく悪いけど……

……当たり前だろ。

あのクソみたいな騎士連中の甲冑を砕けなかったんだからな……チッ。

……君のせいじゃないよ。

彼は自分の健康状態を私たちの誰にも教えてくれなかった。

あれほどの感染なら、彼は数か月前から活動を止めるべきだった――

どうにかしてカジミエーシュを出て、自分の考え方に従って、最後の日々を送るべきだったわ。

オルマー・イングラ……あれがカヴァレルエルキの騎士貴族です、暴虐で、無知で、人の命を軽んじている。

あの時に競技場でヤツの四肢を打ち砕くべきでした……

……君のせいでもないよ、灰豪。

チッ、アタシがついていたってのに……

……彼は最後……なんて言ってた?

知ったら後悔するぞ。

それでも知りたい。

……そうかい。

……

感染者が死んでも死にきれないことなど……珍しいことじゃありません。

彼の怒りを心に刻んでおきましょう。

……

ソーナ?

……彼の名前はジェミーだった、競技騎士になってから、事故によって感染者になったの。

バツイチで、かわいい娘さんがいた。病状を隠していたのは騎士として競技に参加し続けるためだったんでしょうね……彼にはお金が必要だったから。

けど病状を隠すため……彼は騎士協会へさらにお金を渡さなければならなかった。

彼の部屋で協会メンバーとの手紙を見つけた、あれは底なし沼だよ。

彼はとても楽観的な人だったわ、彼がそんなことを背負ってるとは察知できなかったぐらいにね。

鉱石病を罹っても、奥さんと子供と離れ離れになっても、彼はほかの人を助けようとしていた……

憶えてる?彼は毎朝あの子供たちの世話をしてくれていたんだよ。

それなのにあんな尊厳もなく死んでいくべきじゃなかった、私たちが騎士団を立ち上げた初志に反しているわ、でも……

でも……

生活に情熱を抱いていた人が、最後の最後にあんな骨に刻むような憎しみを露にした。

もしそうなら――

……ソーナ。

最近思い詰めすぎです、少しは肩の力を抜いてください。

……うん……

……そういう頭を使うまどろっこしいことはお前らに任せる。

アタシはもっと強くなる、あの涼しい顔して平然と人を殺すような連中を叩き潰せるぐらいに、自分で自分の道を切り拓けるぐらいにな。

血騎士がいい模範だ、カジミエーシュがまだ“騎士”を認めてるってんなら……アタシらもこのまま進み続ければいい。

だからあんま思い詰めるな、ソーナ、そうしてるとお前の進み具合が遅くなっちまう。

……ソーナ!

はいはい、わかったわかった、ならさっさとシェブチックと――

風……風が変った、ほんの一瞬だったけど……

誰かがここを見ている、それに……

……無冑盟?

よく気配を隠している……でも敵だったらとっくに襲ってきてるはず……

――出てこい。

ここは感染者の地盤だ、一般人がここに入ってくるはずがねぇ。

さもないと――
(トーランが姿を現す)

わかったわかった、そう大声を出さないでくれ、やれやれ。

感染者の騎士ねぇ、まったく思いもしなかったよ。十数年ぶりにカヴァレルエルキに近寄ってみれば、騎士の旦那と商人たちも開き直ったもんだ……

……誰ですか?

誤解しないでくれ、俺はただ人を探してるため、たまたまここを通っただけだ、だがまあ、これもなにかの縁……

……お互い共通の話題を持ってるはずだ、感染者たち、例えば……無冑盟とか。

お生憎様だけど、こっちは今お通夜をしてるのよ、話がしたいのなら、日を改めてちょうだい。

そうかい?そりゃタイミングが悪かったな、残念だ。

ほかの場所をあたってみるとするよ、せっかく大騎士領に来たもんなんでな。

それじゃあ失礼するよ……まあすぐまた会えるとは思うがな。

……
(無線音)

シェブチックを連れて行った騎士を見つけた……逃走した遠牙騎士だ。

レッドパイン騎士団とつるんでいる、ああ、感染者騎士たちは生まれつき集う習性があるからな――

――そっちなんか騒がしいんだけど?また酒場にいるなの?

なるほど、夢魘の出自を調べていると、できた言い訳だな。それで感染者に関する命令はいつ出すわけ?

……なに?

シェブチックの一件は“上がまだ会議”してるからこうなったんでしょうが?ドローンまで寄越して吹っ飛ばしたのよ、今更なにが……

いやね……俺に言ってもよ、今はメジャーリーグ期間なんだ、そう簡単に決断が下るわけないだろ。

うん、そうそう、ホントにサボってなんかいないって、信じてくれよ。

ホントだって――あっ、店長さん、フライドポテトってない?

少々お待ちを。

わかった、もしもし?モニーク、聞こえてる?
(無線が切れる音)

……ありゃ、切れちゃった。

ご注文のフライドポテトです。

あっ、うん、どうも。

うん……!ジャガイモをスライスして揚げるって考えたヤツはマジで天才だな。現代社会はきっとそいつがいたおかげでこんな輝かしいもんになったんだ。

そういえば、この前頭角を現したあのマリア・ニアール、鞭刃騎士とよくここを訪ねてくるんだったよな?

もしサインが欲しいのなら、二人が来るかは運次第さ……

なんせ、この酒場には引退したヤツらしかいないもんでね。

なんじゃあいつ、まさか無冑盟の斥候か?

さあな、あっちが手を出さない限り、こっちも下手に動けないだろ……おい、あいつもしかしてお前を見ていないか?

うぅむ……放っておけ。

昨晩からまぶたがピクピクしおるんじゃ……なにか大事件が起きそうな予感がするわい。

お前もとうとう不眠なお年になったのか?

あ?こっちはまだピンピンしておるわい、お前になにがわかる!当時のわしはこのまぶたがピクピクしてたおかげで砲兵の襲撃を察知できて――

お前さんに大事件だぁ?今朝寝ぼけて歯磨き粉とオリーブオイルを取り間違えたんじゃないのか?

――む。

マーティン。わしも気配を察知したぞ……こりゃ大物じゃ。

俺もこんな不気味な予感は初めてだ……騒ぎを起こさないでもらえるといいんだがな。

(もう来たのか。はやいな……うーん、ひとまず静観しておくか。)
(何者かの足音)
――
――(古い言語)若き狩人が、天へと踏み出した♪
――(古い言語)夢の中より出でて、黄金の彼方へと行かん♪

(この言語は……!)

……どういうことだ、今は酒場に来ると同時に登場曲を自分で歌わなければならないのか?ならジュークボックスがお役御免じゃないか?
(騎士が酒場に入ってくる)

まさか俺のこんな辺鄙な酒場が本当にニアール家の恩恵に預かったのか?だがお前みたいな騎士は見たことがない……フォーゲル?おいどうした?

わ……わからん、心臓が突然……

(古い言葉)……バトバヤル、同胞、末裔の者よ。

(古い言語)なぜこのような場所にいる?

貴様……!なぜその名を知っている?

……
沈黙した騎士はあたりを見渡した、その視線が及ぶ場所では、光さえもそれを避けようとしていた。

答えろ、なぜその名を知っている……?

おいフォーゲル、こいつはお前の知り合いなのか?

……

ご注文は?お客さん?もし用がないのなら武器を仕舞ってくれないか、ここは武器を携えた騎士をあまり歓迎していないのでね。

(古い言語)……遺憾だ。

待て、そう急ぐな――
(ゾフィアとマリアが酒場に入ってくる)

コーヴァル、マリアがあなたの工房をまだ借りたいって――

――えっ。

ぞ、ゾフィアお姉さん、待ってよ……痛っ!

きゅ、急に立ち止まって、どうしたの?

……お前は……

……逐魘騎士?

今大会で頭角を現したニュースターがここに何の用?マリアとマーガレットの情報でも探りに来たの?

もしそうなら――

五月蠅い。

――!
(斬撃音)

危ないッ!

あなた……急になにするんですか!?

……ペガサス……軟弱な種族め。黄金の血が流れる天馬でこそ我が相手に務まる。

だが天馬が退いたあと、このいわゆる“騎士の国”は……

草原で衰えた、それをお前たちは見て見ぬフリをしているのか、クランタよ?

今のカジミエーシュで、お前たちのような者どもが、騎士を名乗るだと?

皆あのような……仰々しい競技場で、武を競い合ってると言うのか?

今のようなマネをしてくれてたおかげで、こっちはもう大人しく話を聞いてやれなくなってしまったよ。

動くな……小僧、お前にはまだ聞きたいことがある、わしも今ここでお前の脳みそを射貫きたくはない。

悪くない……戦う意志は残っていたか。

では、お前はどうする?

えっ、お、俺?俺はただの通りすがりの騎士のファンだ、俺のことならいない者として扱って、大目に見てくださいよ。

俺はなにもしません、なにもしませんから、うん。

……

(アイアンシェイクのマーティン、ハンマー使い、フォーゲルヴァイデ、征戦騎士の弓の使い手、鞭刃騎士、怪我を負ったあとだから脅威ではない……マリアも、しばらく目を配る必要もないな。)

(まあ肝心なのはこいつらじゃない……うーん……やはり逐魘はフォーゲルヴァイデが目当てだったか……)

(よし……そんじゃこれから……どうしよっかなぁ。耀騎士も来るのかな?)

……ここに長居する意味はないな、お前たちと相対しても、気が気でない。

貴様、舐めているのか?

(古い言語)バトバヤル、お前はかつて戦場を駆け巡り、その身で戦争を味わった、だが守れたのはせいぜい我が家のみだったな。

(あいつはなにを話してるんだ!?)

……戦争……貴様も征戦騎士だったのか?わしのことを知っておるのか?

(古い言語)いいや、私は“騎士”ではない、そうであればあまりにも笑えてくる話だ、しかし、戦争はお前にとって唯一先祖に恥をかかせない行いだったぞ、末裔よ。

(古い言語)たとえここに……鉄筋コンクリートで覆われた都市にいようと、暗い雨はやがて虹を越えていく、末裔よ、お前がまだ草原の呼吸とハーンの誓いを憶えていればいいのだがな……

……ハーン?あ……?

いつの話をしておるんじゃ貴様は?

(古い言語)本来なら……再び道を行く前に、このいわゆる騎士の国で生き残った同胞を探そうとしていたのだが、どうやら、現実的ではなかったな。

(古い言語)だが問題はない。

(古い言語)カジミエーシュの惰弱はハーンへの不敬だ、この行いは必ず誰かによって正さねばならない。

待て!まだわしの質問に答えてないぞ!

……うぅむ、今はすでに衆人に混じってしまったが、少なくともまだ半人前の同胞ではいるな……その質問に答えよう。

……お前の名前はある老兵から教わった、だがその者は、すでに老いてしまい、もはや駆け巡ることも叶わなくなった。

私はカジミエーシュにいる同胞たちを探している、関係がどれだけ微弱なものでも構わん、とにかく同胞を探しているのだ。

はあ?同胞じゃと?ここカジミエーシュでか?

……もうお前とは無関係の話だ、カジミエーシュ人。

待ちなさい。

……

逐魘騎士……最初は大人しい新人だと聞いていたわ。

けどこうやって刃を向けられたのなら、そのままあなたを行かせるわけにはいかない。

兜を外してから話をしてみたらどうなの?

……“逐魘騎士”……?ああ、あの都市の奴隷どもが勝手につけた名前だな。

笑止……騎士に名など必要なものか……

生来備わっていた信仰と命を掌握する渇望があってこそ、騎士は旅路へ出でるよう促されるというのに。

……!

そうやってわざと難癖を付けに来たら、騎士協会が黙っちゃいないわよ、メジャーリーグの参加資格を剥奪されたいわけ?

……もし……カジミエーシュにはお前みたいなつまらぬ騎士しか残っていないのであれば……さすがに骨折れ損というわけだ、無用な資格が剥奪されたとて気にも留めん。

しかし、お前の傍にいるそのペガサス……なにやら、私が探している人と似ているな……

……!それって……お姉ちゃんのこと……?

――耀騎士に何の用ですか?

何の用……?カジミエーシュから大騎士と奉られた優勝者の数々――もし征服するに値する相手が今のカジミエーシュにいるとすれば、おそらくはその者たちの中にいるのだろう。

もちろん……その者たちのどれもが失望に値する可能性もあるがな。

……狂ってるぞお前、もしやただケンカをしに来たと言うのか?

(古い言語)狂っている……?

(古い言語)そうだな……今を生きるカジミエーシュ人から、よくそう言われたものだ……

(古い言語)……ゆえに我らはもはや同胞ではなくなった。

待ちなさい!そのまま何事もなかったかのように立ち去るつもり!?

この行いに成果がないのであれば、自ずと留まる必要もない……

また会おう、末裔よ。
(逐魘騎士が立ち去る)

……チッ。

一体なんなのよアイツ、ブツブツと訳の分からないことを……

マーガレットがあんなヤツと当たらなければいいのだけれど。

どうやら、お前を一目見るために来たようだな?同郷の者か?

……

まさかヤツは……夢魘?

……は?この時代にまだ夢魘の生き残りがいるのか?

とっくに伝説に生きる人たちとは思っていたよ、それかサルゴンみたいな場所にひっそりと隠れながら暮らしているとか……

……

それで?お前の爺さんの爺さんの血縁の者が急にお前のもとに現れたのはどういうことだ?

…………わしらを呼んでおるのじゃ。
(戦闘音)

……チッ。
(戦闘音)

おお!おお!目の前で繰り広げられてるこの景色、なにやら既視感を覚えますね!

“左腕”のタイタス・トポラ、今回こそブレードヘルム騎士団に勝利を導き、再び十六強の位に返り咲けるのか!?

まさに復讐の戦い!皆様!大いに盛り上がりましょう!今まで幾度も十六強で留まっていた“左腕”のタイタス・トポラが、はたしてこの日をもって己を越えられるのだろうか!?
(大歓声)

そして――その相手は!!

トポラ家の長い騎士の歴史において、たった一度!たったその人のみ!彼へ極まりない屈辱を与えた!

クソッ……

……この数年間、貴様は一体なにをしてきたのだ……!?

(なぜだ……一体なぜ……)

(これからどう動く?距離を離すか?いや、ヤツは……チッ……なぜヤツがスピアなどを使っているのだ……)

(なにより……)

……

(……ヤツが……この私に……威圧感を与えているだと?)
タイタス・トポラは目を閉じた。
本来ならこれは激しい復讐劇になると思っていた、長い間醸してきた、価値を証明するための機会だと。
しかし怒り、願いと激情のすべては、この時跡形もなく霧散してしまった。
認めざるを得なかった、これは抗いではない。
挑戦なのだと。
頂への挑戦なのだ。

(ブレードヘルム騎士団の顔になってから、この感覚はいつぶりだ……?)
挑み、進む、さらなる高みへ這い上るために。

ハッ……ふふ、もはや笑えてくるな……

耀騎士……貴様は本当にあの頃の貴様なのか?

私をここまで追い詰めておいて……なのに貴様はまったく驕らず、まったく喜んでいないだと?あの頃の意気揚々としていた貴様はどこに行ったのだ?

今の貴様は、吐き気を催すほど冷静沈着でいる――

私は別にあなたを見下すつもりはない、タイタス、一度もな。

ただあなたはすでに方向を見誤ってしまった。

あの混乱とした囲い猟の中、少なくとも、最後まで立っていたあなたは、その手で幾重も連なった囲いから抜け出そうとしていたあなたは、ただ純粋に勝利のみを求めていた。

はは……今の貴様は説教することも覚えたのか……?追放された日々を送る中、覚えたのはその教師面だけか?

……タイタス。

なぜあなたはその企業のロゴマークに縛られているのだ?

――耀騎士!

貴様が常々そんな陳腐な伝統を口に掲げてるというのであれば……一番古式ゆかしい方法で決着を決めよう……

一度っきりの衝突、一度っきりの交じり、一度っきりの全力でだ。

貴様の……すべてを踏みにじってやるッ!
(大歓声)

左腕騎士が構えた!最後は必殺技で勝敗を決しようというのだろうか!?

耀騎士のほうは――耀騎士のほうもゆっくりとその奇妙な武器を掲げた――

刃を交わしたあと最後に立つのはどちらなのか、さあさおはやく、観客の皆様!皆様の行動で騎士たちへの応援を証明してやりましょう――!

……

あれって燭騎士のドロストさんじゃない?なんでこんなところにいるんだろ?

待ち合わせとかじゃないかな……ていうかボーっとしてないで、とりあえず一枚だけこっそり撮っちゃおうぜ……もしかしたらスクープが見れるかも……

……

燭騎士様、わざわざご足労をおかけしてしまい、申し訳ありません、どなたかお待ちしているのですか?

お気になさらず、思いつきで来ただけです、こちらこそそちらに一声かけてなくて申し訳ありません……ただ耀騎士のお姿を一目見ようと思いまして。

試合、そろそろ終わりそうですかね。

……ええ、左腕騎士のタイタス・トポラ様は、十分前に耀騎士に負けてしまわれました。タイタス様はかなりの実力をお持ちですが、一試合目で敗者となってしまわれたことにつきましては、あまり楽観視できないかと……

……ええ。

……本当にただ耀騎士を一目見ようといらっしゃっただけなのですか?

見てみたかったのです、今の彼女の姿と、騎士たちが口々にしてるあの彼女は、一体どれだけの違いがあるのかを。
(大歓声)

人がみんな向こうに流れてしまいましたね。

そ、そうですね、耀騎士が正式に試合へ帰還されたあと、あまりこちらが運営するイベントに協力して頂けなくて……

よく一言も発せずそのまま競技場を後にすることもあるんです、予定していた会見や各種宣伝活動も尽く拒否されるものですから、こっちは今まさに頭を痛めていますよ……

しかし、今日耀騎士を取り囲んでいる記者たちが普段よりかなり多いようですね、一体どうしたんでしょうか?

その……すまない、通してくれ……

マーガレットさん、感染者騎士が試合会場で死亡した件についてどうお思いですか?それでマーガレットさんの試合にも影響が及ぼすのでしょうか?

耀騎士様、最近の騎士協会の動きについて、なにかコメントはありますか?感染者は本当に不公平の要因になり得るのでしょうか?

あっ、マーガレットさん、直近の感染状況を教えて頂けますか?騎士協会がその点について守秘措置を行うとのことですが、観客やほかの騎士たちからすればあまりにも無責任ではないでしょうか?

それとあなたが数人のサルカズ人と仲良くしてる場面の目撃情報があります、彼女たちは何者なんですか?ご説明ください!

耀騎士様!お答えください――感染者騎士たちの精神的な支柱になるおつもりなんでしょうか?

――それこそ第二の血騎士になったりは――

……質問にはお答えできません。

それって黙認ってことでよろしいですか?ではあのサルカズ人たちとの関係も――
(燭騎士が近寄ってくる)

お初お目にかかります、ニアール様。

……あなたは?

……燭騎士のドロスト!燭騎士が会場前で耀騎士を待っていた!

はやくスケジュールを渡せ……間違いない、二人はこの後試合で戦うことになってる……おい、はやくこのシーンを収めるんだ!はやく撮れ!

少し、お話できますか?

(そちらもメディアに着け纏わられたくはないのでしょう?)

あっ……ああ。

……わかった、では場所を変えよう。

ちょっ、申し訳ありませんが、これ以上近づくことは――メディアの会見はこの後予定しておりますので、今回はお引き取りください!お引き取りください!

……

……その……

ご苦労なことですね、カジミエーシュの伝説は。

あなたが“追放”されたおかげで、“耀騎士”はむしろさらに神秘のベールに包まれるようになりました……聖なる光を纏いし騎士、威厳たる黄金の天馬、流星の如き舞い戻った英雄……

今日こうして近づいてみれば、まだまだお若いのですね、だからああいった突発的な事態に困惑されてしまう……マーガレット・ニアールも、生きてる人間なのですね。

……とにかく、さきほど助けて頂いて感謝する。

そちらも騎士のようだが、お名前を伺っても?

……人から自分のことを訪ねられたのは随分と久しぶりになります、私が誰なのかより、みんな私がその誰かであってほしいと望んでいるものなので。

えっと、申し訳ない、こっちはまだカジミエーシュに戻って間もないんだ……

……うふふ。

私のことをご存じないから、怒らせてしまった……と思ってらっしゃるのですか?

見ればわかる、あなたは只者ではない。

あら、お褒めに預かり光栄です。

私も耀騎士とお会いできて嬉しく思っておりますよ、ヴィヴィアナ・ドロストと申します。

燭騎士とも、お呼び頂ければ。

燭騎士……いや、ドロストさん、もう一度さきほど助けて頂いたことに感謝する、それで私に何か用だろうか?

この先しばらくもしないうちに試合で相見えることになります。

あなたは感染者、それに一度は追放された人……誤解しないでくださいね、試合前にこうして相手と交流するような人ではないんです、私。

私はリターニアから来ました、異郷の地で、思いもしなかった身分で、この栄えた都市で暮らしています。

すでにカジミエーシュから認可を得ているのだな、ドロストさんは。

聞いた話によると、耀騎士は今ある騎士制度を一度も認めなかったから、それによって、追放されたのだと……まだそのようなお考えを持っておられるのですか?

カジミエーシュの騎士は今もなお自分たちの責務を忘れている。

カジミエーシュの一番貧しい地方へ行かれたことはあるかな?戦争、飢饉、感染者……庶民たちは巨大な苦しみに喘いでいるというのに、騎士たちは自分の街で歌よ舞よと平穏に暮らしている。

騎士の精神は、すでに消え果て、資本に弄ばれるがままの遺産と化してしまった。

屈辱とは思わないだろうか?

……なるほど。

どうやら、あなたは正真正銘の騎士でいらっしゃるのですね。

しかし……あなたとて一介の騎士にすぎません。

……

ご姉妹はどうなのですか?以前の間は、彼女が試合で活躍されておりましたが。

彼女は騎士への道を……諦めたのでしょうか?

…………
(代行者マギーが近寄ってくる)

ミス・ドロスト……それにミス・マーガレット、ごきげんよう。

ごきげんよう、マギーさん。

さきほどの騒動はご苦労様でした。

……はぁ。自覚をお持ちでしたか……

お二人のような大騎士であれば、その一挙手一投足も群衆が激動する話題になりかねません、なにより、メディアが集う目の前でなんて……

まあよしとしましょう、処理にあたる方法なら幾らでもある、ミス・ドロスト、そろそろ明日行われるリターニア貴族との面会の準備にあたってください。

できればですが、しばらく間はまたあのような不確定要素を作らないで頂きたい。

たとえば、感染者騎士と会うことでしょうか?

……あの貴族の方々はあなた目当てでいらっしゃったと言っても過言ではありません、ミス・ドロスト。あなたのリターニアにおける人気はずば抜けているんですから。

ミェシェンコ工業はリターニアにおける建設計画に大層関心を寄せいている、だが最終的にその契約を結べるのは、あなた、ミス・ドロストにかかってることをお忘れなく。

もちろん……私の責務ですから。

残念ですが、耀騎士様、今宵の対談はここまでのようです。

お気になさらず、その……正直驚いた、今のカジミエーシュにはまだあなたのような騎士がいたとは。

ではまた、競技会場で。

ああ。

]待っている。

……最後に一つ忠告がございます、耀騎士様。

嵐がやってきます。

それまでの間、夜空に掲げる星々も燦然と輝くことになります。