……
国民院にオルマー・イングラを検挙したらしいな?
……はい。
メジャーの試合で人命が失われたんです、もしこれで制裁を受けなかったのなら、法律は一体なんのために……
国民院のやり方ならお互いよく知っているだろ、マルキェヴィッチ。君は過去に創業したことがある、なら彼らとの関わりも少なくはなかっただろ?
あまり思い悩むな、君はあとで感染者収容治療地区に行って、そこの医療企業と騎士協会を接待しないといけないからな。
ポジティブに考えるんだ、この仕事をしてるうえで人を救ってることだってある、そうだろ?
……
疲労を溜めこむんじゃないぞ……じゃないと自分が倒れてしまう、私はまだ会議があるからお先に失礼するよ。
(代弁者マギーが去る)
……はぁ。
(携帯のバイブ音)
……!
(代弁者マルキェヴィッチが電話に出る)
はい、もしもし……
代弁者マルキェヴィッチ様、ごきげんよう。
国民院判事の者です、代弁者からの訴訟を受けたのでお電話致しました。
あっ……
……どうなさるおつもりですか?
連合会に相応しくない騎士への検挙は、代弁者の義務でございますので、そちらの錆銅騎士への……ご意見でしたら、こちらも少しばかり優先して考慮致します。
ただ錆銅騎士のオルマー・イングラに関しましては、少々事情が複雑でして。
ご存じかと思いますが、以前、イングラの保釈申請は国民院の批准を得たばかりでして、いま再度彼を裁判にかける行為につきましては、おそらく国民院にもそんな権限はないかと……
当然ではございますが……代弁者の訴求は即ち理事会から訴求でもあります、そう理解しておりますので、その訴求を拒否するつもりはございません。
……だから電話はかけたということですね、わかりました、では国民院の条件とはなんでしょう?
ふむ……条件ですか?そうおっしゃらずに、これに関しては仕事における交流とご理解頂ければと思います。
チェルニーさんの想定外の追放、あまりにも予想外でした。こちらとしても、チェルニーさんがそこまでされるほどの過失をしたとは思っておりません。
しかしどうであれば、ことはすでに起こってしまいました。チェルニーさんは大騎士領を去り、代弁者の地位を失った。
しかしあまりにも唐突な追放処分であったため、こちらも各方面と協力して、事後処理に取り掛かることができませんでした。
……なにを……
ローズ新聞連合放送社が錆銅騎士へ支払った保釈金は、チェルニーさんの手から渡ったものだったのですよ。
チェルニーさんはあまりにも多くを知り過ぎた……マルキェヴィッチさん、ご理解頂けましたか?
自分の心臓の鼓動がはっきりと聞こえた。
な……なんのことでしょうか……
チェルニーさんの件が私たちの間で問題になり得ないと今後保証して頂けるのでしたら……錆銅騎士に関してはこの先必ず法で裁いて差し上げます。
こんなことが自分の身に起こるなんてこれまで一度も考えたことはなかった。
それか、考えたことはあったのかもしれない。ただ自分には決定権があるとは思ってなかった。
……
つ……つまり……
メジャーリーグ期間でご多忙なのは重々承知しておりますので、今すぐお決めにならなくても結構ですよ。チェルニーさんを抹消する、そう約束して頂ければ、こちらもすぐにご要望の件に取り掛かりましょう。
もちろん、チェルニーさんの消失に伴い……私たちの間にはより堅い信頼関係が築かれると思います。
……
……申し訳ありません、今すぐお返事できそうにないと思いますので……
……それは残念です。なるべくご決断頂けるようお願い致しますね、錆銅騎士様の試合禁止期間はそう長くありませんので。
いつでもお返事をお待ちしております、マルキェヴィッチさん。では、よい一日を。
(電話が切れる)
……
(ドアのノック音)
……うわっ!
マルキェヴィッチさん?いらっしゃいますか?
お、お入りください……
(ビックマウスモーブが部屋に入ってくる)
あっ……マルキェヴィッチさん……お邪魔してすいません。
実は、その、最近不眠気味でして……通知を見ました、メジャーリーグ期間のほとんどの催事は私が受け持つとのことで、大変光栄に思うんですが……しかし……
最近私宛ての苦情とかは届いていませんか?一部の観客から私のパフォーマンスに不満があるらしくて、前の感じに戻してほしいと。
理事会から直接のご意見を頂けるのはこちらとしても非常に困難かと思いますので、申し訳ありませんモーブさん、とりあえずこれからは抑え気味でいきましょう。
ぁ……ではメジャーリーグの解説を請け負ったあと、デカい報酬を貰えるんですよね?
ミスさえしなければ。
そうだ……ご実家はどちらでしたか?確か……
職人の都ですか?
へへ、今は好きなモンを作ってるだけの、小さな町に過ぎませんよ……昔はまだ結構有名でしたけど、今じゃただの古い町です。
だから私はこうして大騎士領に来て別の生業をしてるわけです、ご理解頂けました?
なるべくこちらでも擁護致しましょう、モーブさん、あなたはもう十分お勤めを果たしてくれましたから……
……彼らがあなたを非難するようなことならきっとありませんよ……きっと。
……ドクター様。
なにをご覧になられてるのですか?
・感染者治療に関するスケジュールだ。
・商業連合会の宣伝チラシだよ。
・メジャーリーグのコラム記事だよ。
あぁ……感染者の収容治療ですか、あれはここ最近始まったばかりのプロジェクトですので、まだ未熟なものなんですよ。
ただ、ドクター様でも、あまり首を突っ込まないほうがいいと思いますよ~。
感染者騎士は今でも大貴族たちからすれば目の敵なんです、ロドスが優良なビジネス契約だけをご所望なのでしたら、あまり踏み込まないほうが賢明かと。
商業連合会ですか……興ざめするようなチラシですね。
もしお暇でしたら、私が街を案内して差し上げます、私の同伴があれば、少しだけ繁華街に出歩いても規則範囲に収まると思いますので。
もちろん……ここにいたいと言うのでしたら、邪魔は致しません。
メジャーリーグですか……あっ。
そういえば、ロドスの皆様は耀騎士とただならぬご関係にあると聞いております。
それなのにまだ耀騎士が気になるのですか?ふふ……羨ましい限りです……
競技騎士とは常に万人から注目を集める存在ではありますが、ドクター様は……“仲間”として彼女にご関心を寄せているのですね?
新鮮な感覚を覚えます、耀騎士はカジミエーシュ外の場所で――騎士の国以外の大地で、どのように見られているのでしょうね?
そういえば、ドクター様。
後程ご面会がございます、商業連合会の代弁者とのご面会です。
代弁者?
商業連合会の代弁者は、それぞれ常任理事長がお選びになった各業界のエリートからなります、各々の職を担い、メジャーリーグにおける雑多な事務から重要な任務まで色々をご担当されているんです。
あの方たちは権力のトップ層とは言いませんが、不可欠なパイプラインであることに間違いはありません、ですので連合会の口舌があなたをご指名して面会なされるのですから、気を引き締めて頂ければと思います。
どうであれ、ドクター様がカジミエーシュにいる間は、私が終始あなたのお傍で身の安全を保証致します。
あら、なんですかその表情は?まさかまだ私を信用して頂いていないのですか……それは傷つきますね……
けどご安心ください、私があなたのお傍にいる限り……必ず身の安全を保証致します。
もし私の忠誠に疑問を呈して……尚且つなにかあなたを不安にさせるような行為を働いたのであれば、どうぞなんなりと私にご処罰を……
……なんなりと、ね。
(代弁者マルキェヴィッチが近寄ってくる)
失礼……ロドスアイランドのドクター様がいらっしゃるお部屋でしょうか?
あっ、騎士様……えっと?
第四階級騎士の“グラベル”です、今はこちらにいらっしゃるドクター様とロドスアイランドがカジミエーシュへご滞在される間の安全顧問を務めております。
この命令は直接監察会から承ったものですので、代弁者さん、どうぞお気になさらず。
では座りながらお話しましょう、ドクター様、それと……グラベルさんも、もし職務が許さるのでしたら、そちらもどうぞゆっくりしてください。
私はどちらかと言えば全体状況を把握しておきたいので、立ったままで結構です。
……わかりました。
あなたがロドスアイランドの責任者様ですか?
・はい、お会いできて光栄です。
・……
・私が違うと言えば、驚かれますか?
こちらこそ光栄です。
えっと……あはは、どうやらあまり交流がお好きでないようなので、そちらの意向は……尊重致します。
えっ?まあそうですが……ただ、責任者様が今しばらくお泊りになられてるのがここ付近と聞き及んでおりますので。
……もしかして本当に違うのですか?いやでもあなたは確かにドクター様だ……あはは、ユーモアな方なのですね。
オホン。
私は商業連合会代弁者のマルキェヴィッチ……マルキェヴィッチとお呼びください。
ロドス製薬に関する資料を少し拝見させて頂きました、私はこれに関しては門外漢ではありますが、鉱石病と絶えず抗うことというのは……きっと気楽なことではないことぐらい私も理解しております。
カジミエーシュの騎士競技事業にお力添えして頂いて本当に感謝します。契約内容はもうご覧になられましたか?
ロドスアイランドは提携企業として、“医療チーム”をベースに、“カジミエーシュ感染者連合医療組織”へ組み入れて頂きます。
該当組織は監察会の管理下に置かれますので……もちろん、騎士協会や私たちも、全力で皆様をサポート致します。
監察会……騎士協会と、“あなたたち”ですか。
……はい。ここ大騎士領において、各組織との交流は免れません……すぐ慣れると思いますよ。
なにかご質問がございましたらなんなりとお申し付けください、カジミエーシュの外からいらっしゃったお客様へお答えすることが、私の今日の職務でございますから、ロドスアイランドのドクター様。
・“商業連合会”には気を付けなければいけない、と聞かされておりますが。
・感染者騎士以外に……ここにはほかの感染者もいるのですか?
・そちらはどうお思いですか?私たちの……事業について。
あっ……誤解してるようですが、私の職務は“代弁者”です、つまり、“商業連合会”を代表してるとも言えます。
商業連合会は騎士競技の主催側で、同時にカジミエーシュにおいて不可欠な国内経済連盟でもあります。
実際、医療組織は名義上監察会の管理を受けることになっておりますが、資金や物資配給のすべては、商業連合会が掌握しておりまして……
ですので、連合会の意図を重視しなければならないのは確かですね。
えっーと……おそらくはですが……私もよくわかりません。
ただ今回のプロジェクトの施行対象は、騎士協会で正式に登録された感染者騎士、及び騎士見習い、候補生に限定されます。
もし……事故によって不幸にも感染してしまった一般人がおられれば……
医療手当の範囲外ではありますが、もし代金を支払ってくれるのであれば、治療収容を申請することは可能です。
……その人が代金を支払えればの話ですが。
私?あはは……私がですか?
実を言うと、私の暮らしは感染者とあまり縁がなくて……あっ、誤解しないでくださいね。
ただ、生きるために、仕事のために奔走し、雑多な都市で自我をどうにかして保つことというのは……多くの人が常に抱いてるこの世の理です。
私自身この大地に存在するほか国家についてあまり理解しておりませんが、ただ、病のせいで差別を受けてる患者たちを保護することを、悪いこととは言い切れないのではないでしょうか?
しかしカジミエーシュ人の全員が感染者に手を差し伸べてくれると言えるのでしょうか?
……本来なら、こういった議論を交わすべきではないのですが……はぁ。
感染者騎士制度とは血騎士が優勝したあと、監察会と商業連合会の常務理事が共同で決定された新しい制度なんです。
まあ、当然ではありますが、すべては“競技騎士”を前提としての制度です。あちらのお嬢さんは、それに当てはまっておりません、軍が感染者を処理するにあたっては別の制度が適応されますから。
感染者は特別な試合――こちらでは一般的に“洗浄試合”と呼ばれる特別な試合を通して、騎士になるための能力を証明しなければなりません。
もし確実にポテンシャルを持ってる選手が感染者たちの中に埋もれているのであれば、商業連合会自らその人の身分を清めることになります……
その……最近のニュースはご覧になりましたか?近頃、未だにこの一連の制度に反対する人がたくさん存在します。
しかし少なくとも、感染者たちは惨い死に方をしなくて済む、これが最善の結果なんだと、私は思います……
……
ロドスの皆様におかれましては……監察会のほうも、とても感染者対策の豊富な経験を持ってる機構という認識を抱いております。
ですのでどうか医療メンバーの皆様には“感染者騎士たち”へ身体検査を実施し、メジャーリーグの期間中に治療方案を制定して頂きたいと存じます。
治療方案ですか……
感染者騎士の人数規模はどれぐらいでしょうか?
規模ですか?感染者騎士は試合に参加される騎士全体の7%にも及びません。騎士協会へ正式に登録されてる感染者騎士だけの人数ではありますが……
騎士候補生、見習い、及び生きるために自分の命を貴族に売らざる得ないような感染者、それらをすべて加えるとすれば……
憂慮してしまうような数字になるでしょう。ですがそのために、私たちはここにいます。
最近なにやらよくない噂を耳にしますが。
先ほど申したように、今どれだけのカジミエーシュ人が感染者騎士へ偏見を抱いているかおわかりになったかと思います。
正直に言いますと、当初感染者連合医療組織を立ち上げた目的は、感染者騎士の体系的な治療と管理を通して、国民を安心させるためでした。
こう言えば不快に思いかもしれませんが、なんせ彼らは病人……私たちはこの客観的な、えっと、差異を無視するわけにはいかないのです、こんな言葉を使って申し訳ありません。
もちろん、なにかお力になれることがございましたら、いつでもお声がけください。
少なくとも……私はどの騎士にも、いい結果がもたらされることを願っておりますので。
では商業連合会のことについて教えて頂けませんか?
……えっと、申し訳ありません、これからまだほかの予定がありますので、もしお時間を頂けるのでしたら、ディナーをご一緒頂ければと思います。
しかし、連合会のどういったところを?
国を代表する経済提携のお相手ですので、なるべく詳しく知りたいなと。
すまない、遅くなってしまった。
マーガレット!
一体どういうことよ、燭騎士に連れていかれたってどこもその話で持ち切りだけど!?
あの女になにか言われた?まさか脅された?商業連合会から――
……少し落ち着いてくれ、ゾフィア。
ただ単に記者とメディアから逃がしてくれただけだ。
……ホントに?
燭騎士のドロストか、まったく相変わらず掴みどころがない人じゃ……
人気でいえば、カジミエーシュトップ3に入る騎士だ。毎年彼女から生み出された富のおかげで、要塞を建てられるぐらいにな。
彼女はどんな騎士なんだ?
……なんであなたもマリアみたいになっちゃったのよ、もっと身の回りの相手にも気に掛けたらどうなの。
お前たちがいるからじゃないか?
……そんな甘い言葉言っても無駄だからね。
彼女はスーパースターよ。第二の“黒騎士”とも言われているわ。
リターニアからやってきた彼女は、恐ろしいほどのアーツの才能を持ってる、貴族のような教養を備え、容姿も美しい、戦績も驚嘆するほどのものだわ。
生まれが謎ということでさらに神秘という彩が加わって、ほぼ一夜にして、燭騎士はカジミエーシュの家々が毎日話題に上げるほどの大騎士の一人になった。
今になっても、メディアたちはこぞって彼女の私生活を掘り起こしてネタにしようとしてるぐらいだからね……
……だがただ外見だけの話ではない。
彼女は若いが、とても強い。
流浪していた日々を送る中、多くの巧みな天賦を備わったアーツ使いを見てきた、ヴィクトリアで、リターニアで、それに……感染者の中でも。
たとえこの大地で最も卓越した術師でも、彼女が発する気質はそれに勝るとも劣らない。彼女は戦士ではないのかもしれないが……甘く見てはいけない。
黒騎士はすごく特殊なリターニア人だったわ、リターニアから来たとは言うものの、ちっともアーツなんかできなかった、もはや天性の武人ね。
あの時代はもう過ぎ去った、けど、誰もあの時代を忘れることはできないと思う、巨大な武器を振り回す彼女が私たちにどれだけ印象を残していったことか……
けど燭騎士ドロストは、そのまったくの逆、彼女は“典型的な”リターニアの騎士だわ。
彼女がどういうアーツを扱うかはまったく見当もつかないけど、“燭”という称号は確かに彼女の装備構成や戦いっぷりを表しているわ。
マーガレット……次の対戦相手は彼女なの?
二日後、激戦になるな、準備する時間もそれほど多くない……マリアは?
あの子なら家で休んでるけど……ていうかあなた……
笑ってるの?
ん?笑ってたか?
……断るとは思っておりましたよ、ミス・ドロスト。
しかし連合会のほうはこれ以上耀騎士が勝ち続けることを望んでおられない、少なくとも、確実に彼女を負かせなければいけません。
おかしいですね……であれば、最初から耀騎士の身分を認めなければよかったじゃないですか、そっちのほうが簡単だとは思いません?
……それは……
「商業連合会とて一枚岩であったことなど一度もない」、ということですね。
……!それは……どうかほかの人の前で決して言わないようにお願い致します。
理事会も内部で矛盾を抱かれる、これは必然なことです、しかしあなたのような騎士がそのような発言をされれば、おそらくあなたのご身分にも影響を及ぼすかと……
それは失礼致しました……そちらも苦労なさりますね、マギーさん。
あっ……はい、お気遣いどうも……
……とにかく、なるべく斡旋に務めてまいります、そちらが耀騎士には“特殊な手段”を使いたくないと申し上げようとも……
ですがご理解頂きたい、たとえあなたが理事会の提言を拒否したとしても、上は別の方法を採るだけです、その時はおそらく、事態はさらに極端に変化する可能性も……
無冑盟ですか。
可能であれば、そうした事態は避けて頂きたいです。
ミス・ドロスト……はぁ、これは私がわかったと言えばなくなるような話ではないのですよ。
フッ……であれば、理事会は私の実力をそこまで信用していないのですか?騎士として、複雑な気持ちです。
いいえ、そんなことは断じてございません、信じてください。
メジャーリーグでトップに君臨なされた大騎士は、どなたでも各国トップクラスの騎士と匹敵する実力をお持ちです。
ただ相対的に、この領域に踏み入れてしまえば、俗に言う“極限”に近づいてしまったあと、差も縮まってしまうというものです。
不確定要素も多くなる……ですよね?
……ええ。
あなたを困らせるつもりはありませんよ、理事会の考えなら私も理解しております。
一先ず下がってもよろしいですよ、耀騎士のことについては……こちらでも研究しておきます。
わかりました、では試合映像や個人資料が必要になると思いますので、ここに置いておきますね……
耀騎士は追放されたあと、大きく変化されたようですので、その点お忘れなく。
ええ……ですから一目見ようと思っていたのです。
マーガレット・ニアール……マーガレット・ニアール……ああ。
騎士競技産業を蔑んでいた、あの戦争の英雄の孫娘、ニアール一族のペガサスであり、メジャーリーグにおいて誰もが注目するチャンピオンでもある……
貴族でありながら、まるで征戦騎士のような気質すら発している、であれば彼女は死や戦を見届けてきたと……?
いいや、きっと見届けてきたに違いありませんね。
では彼女は死を乗り越えたのでしょうか?甘い理想という軛から抜け出したというのでしょうか?
それとも、すでに新たな境地へ達しているのでしょうか?
うふふ、マーガレット、本当に……まるでホンモノの騎士みたいですね。