Loading...

【明日方舟】ニアーライト NL-ST-3「酣睡する街」 翻訳

カヴァレルエルキが緊急事態に陥ったことを確認。
信号のコードを確認。部隊の識別番号も確認。
全部隊に伝達。
偽装を解除し、入城せよ。

グラベル
グラベル

……電力が完全に回復するまで、まだ時間がかかりそうですね。

グラベル
グラベル

ロドスの皆様にはすでにご自分の部屋に戻られるよう指示を送りましたが、もしお二人とも確認がしたのであれば……

アーミヤ
アーミヤ

……ドクター、私がみなさんの様子を見てきます。

アーミヤ
アーミヤ

突発的な事態なため、状況を把握していないオペレーターもいると思います、感染者に応っている際のあの数々の抗議で、みなさんプレッシャーを感じてるとも思いますので。

ドクター
ドクター

・苦労をかけるね。
・……
・本当に私の助けはいらないんだね?

苦労をかけるね。……本当に私の助けはいらないんだね?
アーミヤ
アーミヤ

いえ、気にしないでください、ドクター。

アーミヤ
アーミヤ

最近はずっとドクターに各種商談やお付き合いを任せっきりにしていたので、私も申し訳なく思ってたところです。

アーミヤ
アーミヤ

今のうちに、休んでおいてくださいね。

アーミヤ
アーミヤ

……あはは、ドクターもお疲れのようですね。

アーミヤ
アーミヤ

昨日からずっとあの企業家たちとの接待で、喉もガラガラなんじゃないですか?

アーミヤ
アーミヤ

大丈夫です、ハイビスカスさんもいますので、なにも起こらないと思います。

アーミヤ
アーミヤ

みなさんの様子を見に行くだけなので、すぐ戻ってきますからね。

グラベル
グラベル

ご心配なくアーミヤさん、ご不在の間は、私がしっかりドクター様を見ておきますので。

アーミヤ
アーミヤ

あっ……はい。

アーミヤ
アーミヤ

では行ってきますね。

グラベル
グラベル

……ドクター様。

グラベル
グラベル

近いうちに商業連合会が動きを見せますが、それがロドスに不利益を生じさせる可能性がございます。

グラベル
グラベル

それに今の停電事件も加えて、次からはおそらくさらに明確な陰謀が姿を表すでしょう。

グラベル
グラベル

ですのでしばらくの間は……決して私の目から離れないようにしてくださいね。もちろんですが、そちらが私の傍にいてくれるのなら、もっともなんですが。

ドクター
ドクター

散歩はいかが?

 

グラベル
グラベル

……うふふ、急に私の気持ちを理解してくれたみたいで、少し驚いちゃいました。

 

グラベル
グラベル

どうしたんですか?なにかいいことでもあったんですか?

ドクター
ドクター

グラベルさん、あなたは商業連合会のことをどう思ってるんですか?

グラベル
グラベル

……同じようなことは以前も聞きませんでした?どうしたんですか、また私の答えが知りたくなったんですか?私は全然構いませんけど。

グラベル
グラベル

あいつらはカジミエーシュの蛆虫です。

グラベル
グラベル

連携しながら騎士と街を腐らせ、最後には自分たちの目的を果たすような商売人連中です。

ドクター
ドクター

いいや。

ドクター
ドクター

商業連合会、その名の通り、ただ“連合”をしているだけにすぎない。

ドクター
ドクター

利益が彼らを紐づけているんです、なら当然彼らを崩すこともできる。

ドクター
ドクター

ただ騎士と対抗することによって、彼らがまるで一体になってるように見せているだけです。

グラベル
グラベル

……

グラベル
グラベル

……なにかしたのですか?

ドクター
ドクター

商業連合会の常務理事長の人間は四つのタイプに分けられる。

グラベル
グラベル

うふっ……ぜひお聞かせください。

ドクター
ドクター

時代を押し進むことに焦燥し、騎士階級を取り締まっている過激派。

ドクター
ドクター

保守に回り、一歩一歩踏み固めて進めていく穏健派。

ドクター
ドクター

どの立場も持たず、ただ利益があればいいという利益至上主義派。

グラベル
グラベル

……では最後の一種類は?

ドクター
ドクター

今のロドスにとって、まだ時期尚早です。

ドクター
ドクター

無闇に動けば、むしろ危険に陥ってしまう。

グラベル
グラベル

……つまり、連合会は内部に亀裂を抱いていると?そしてあなたは……その亀裂を掴んだと?

ドクター
ドクター

・亀裂とは言い難い。
・彼らに“団結”の文字など存在しない。
・皆利のために来て、利のために往く。

グラベル
グラベル

……しかしあなたはまだ来て間もない、それに代弁者を通じて、常務理事長の一部と知り得ただけではないですか……

グラベル
グラベル

どうしてそう断言できるのですか?仮に信頼する相手を選び間違えたら、監察会とてその尻拭いはぬぐい切れませんよ……

ドクター
ドクター

・ロドスは目的達成のためなら他者を犠牲にしてもいいなんてことを考えたことは一度もない。
・私がなんの覚悟もせずにあの晩餐会に参加したとは考えづらくないですか?

グラベル
グラベル

……ええ。

グラベル
グラベル

あなたならきっとそうなんでしょうね。

(戦闘音)

ロイ
ロイ

これ以上時間を無駄にしちゃっていいのか?

ロイ
ロイ

感染者の指名手配はもう出してあるんだ、あとは大遮断の影響が回復したら、お前たちに逃げ場はなくなるぞ。

ロイ
ロイ

あっ、ついでに言っとくけど、“大遮断”ってのはな、メイン電力源を失った各区画が短い間に漂流現象を見せるからそう言われてるんだ。

ロイ
ロイ

それと、今は連合会周辺の区画ドッキングも中断されてるから、逃げ出すことは不可能だぜ。

グレイナティ
グレイナティ

……チッ……クソ……

ソーナ
ソーナ

……こりゃ正面から戦って勝てるような相手じゃないわね。

ロイ
ロイ

ようやくそれを理解してもらって助かるよ。それじゃあもう一回聞くが、ブツを渡してくれないか?そしたら見逃してやる。

ソーナ
ソーナ

フンッ、いつから無冑盟はそんな優しくなったの?

ロイ
ロイ

……気持ちの問題かな、ようやく長い争いの中から……希望の光が見えたもんでな。

ロイ
ロイ

ボリバルの廃墟から、カジミエーシュの平原まで、そして最後にはここにやってきた。

ロイ
ロイ

殺人が愉快だなんて普通の人間はそう思わないさ、他人の血を見て喜ぶのは裕福な暮らしを送ってるバカどもだけだよ。

ロイ
ロイ

しかし、今のお前は俺を救ってくれるんだ、感染者、だから俺もお前たちの代わりに無冑盟をぶっ壊してやれるぞ。

ソーナ
ソーナ

……お生憎様、あんたの言ってることが本当でも、これを渡すつもりはないから。

ロイ
ロイ

そりゃなぜ?

ソーナ
ソーナ

もう他人に指図される日々には飽きたからよ、無冑盟。

ソーナ
ソーナ

カイちゃん!

グレイナティ
グレイナティ

了解、一発食らえ!

ロイ
ロイ

――なっ。

(爆発音)

ロイ
ロイ

ゴホッ……ゴホッゴホッ……なんのマネだ。

ソーナ
ソーナ

逃げるよ、カイちゃん!

グレイナティ
グレイナティ

わかってます!

(ソーナとグレイナティが走り去る)

ロイ
ロイ

……この都市の構造区画は複雑だ、走り回ってエンジンにでも足を外してみろ、ひき肉にならないよう気を付けるんだな。

ロイ
ロイ

逃げられると思うなよ――

ロイ
ロイ

――フンッ。

(矢を射る音)

ソーナ
ソーナ

……!?

ソーナ
ソーナ

カイちゃん!危ないッ!

グレイナティ
グレイナティ

――

青い矢が焔尾騎士の甲冑を貫いた。
防ごうと試みたソーナだったが、その小さな身体では巨大な衝撃を受けきることはできなかった。
彼女は空中で藻掻き、都市区画の間にある隙間へと落ちていった。

グレイナティ
グレイナティ

ソーナ――!

ロイ
ロイ

(……外した、それに一瞬だけ視界が暗くなった……)

ロイ
ロイ

(疲労による錯覚か……?いや、きっと邪魔されたに違いない……)

グレイナティ
グレイナティ

――ロイ、貴様ァッ――!

(戦闘音)

ロイ
ロイ

……!

ロイ
ロイ

理性を失っちまったか。

(戦闘音と爆発音)

ロイ
ロイ

おいおい、そんな近距離で撃ってきやがって、道ずれにするつもりか?

グレイナティ
グレイナティ

貴様……貴様よくも……ソーナを……!

ロイ
ロイ

……油断が過ぎたな。

ロイ
ロイ

チップが壊れてないか分からない、一番おっかねぇ状況だ、俺はあんな責任まで背負いたくないね。

グレイナティ
グレイナティ

黙れ!

(戦闘音と爆発音)

ロイ
ロイ

(どうする、今すぐ灰豪を殺して、死体を確認したほうがいいか?)

ロイ
ロイ

(いや、それも危ない、それに電力がもうすぐ回復する、鉄板の間に挟まるのはゴメンだぜ。)

グレイナティ
グレイナティ

貴様の血で償わせてやる――!!

ロイ
ロイ

わかりやすいねぇ、理性を失ったお前の動きなんざ筒抜けだよ――

グレイナティ
グレイナティ

――それはどうかな?

ロイ
ロイ

!?

(爆発音)

ロイ
ロイ

くっ、この俺が油断しただと?

ロイ
ロイ

……逃げた?

ロイ
ロイ

ってことは、あの激昂っぷりはフリだった……?

……アタシは感染者のために騎士になった。
感染者のために奮闘し、死んだ。
光栄の限りだよ。
栄誉あることのために死んで……とても光栄だったよ。

ソーナ
ソーナ

……ってな感じで凛と締めたかったんだけど、これ……どういう状況?

燭騎士
燭騎士

ロイはまだ近くにいます、きっと私のアーツを見抜くはずです、長居は無用ですよ。

燭騎士
燭騎士

あなたのお仲間にも、逃げるようにお伝えください、もし必要があれば、私が裏でサポート致します。

(無線音)

ソーナ
ソーナ

……もしもし、カイちゃん、アタシは無事だよ。

ソーナ
ソーナ

あいつにバレないようにしてね、スキを見て逃げ出すのよ、チップならあんたが矢を防いでくれたときに鎧の中に投げ込んどいたから、確認してみてね。

ソーナ
ソーナ

あと返事は大丈夫だから、まとあとで。

(無線が切れる音)

ソーナ
ソーナ

……あなたが私をキャッチしてくれたんですよね?一体どうやったんです?

燭騎士
燭騎士

アーツの応用方法は多種多様です、勉学に励むリターニア人であれば、元のアーツがどんなものであれ、ほとんどの場合は基本的な技を出せるのですよ。

ソーナ
ソーナ

……あなたは、燭騎士ですよね?

ソーナ
ソーナ

あなたみたいな大騎士が、なぜアタシみたいな……感染者を助けたんですか?

燭騎士
燭騎士

あなたに会いたがってる人がいます。

ソーナ
ソーナ

誰ですか?

燭騎士
燭騎士

それはまだ言えません。

ソーナ
ソーナ

あっ……じゃああなたも私たちがなにをしてるか知ってるんですね、街を陥落させたり、連合会を襲撃したり……お散歩に付き合う時間なんてこっちにはありませんよ?

燭騎士
燭騎士

……私を信用してないのも無理はありません。

ソーナ
ソーナ

いや、信用してますよ。

ソーナ
ソーナ

その人の目をチラッと見ただけで、その目からその人が考えてることを読み取れるんです。

ソーナ
ソーナ

まあ当然、百発百中ってわけではないけど、今は緊急事態ですし、ね?

企業職員
企業職員

はぁ、なんてこった、道路は封鎖されてるし、車も拾えないし、今晩は家に帰れそうにないな……

企業職員
企業職員

チーフめ、なーにが記事なら昨日で書き上げられるはず、だ……一日で終われるはずないだろうが……

企業職員
企業職員

うわああああ!な、なんだ!?!?

(戦闘音)

モニーク
モニーク

そこをどけ、じゃないとお前の脳みそをぶち抜くぞ。

企業職員
企業職員

ひぃ――――か、勘弁してください、今すぐどきます――

トーラン
トーラン

おっと動くなよ、そこの兄ちゃん、脳みそをお引越しさせたくはないだろ?

企業職員
企業職員

で、でも彼女がどけって――

トーラン
トーラン

口を開いても閉じても殺すって言う人だぞ、そんな人を信用すんのか?

企業職員
企業職員

じゃ――じゃあどうすれば――

トーラン
トーラン

トーラン、一般人の後ろに隠れて情けないと思わないのか?

企業職員
企業職員

あ、あああ――

トーラン
トーラン

それもそうだな、じゃあ三つ数えるか?

企業職員
企業職員

た、頼むから、やるなら私抜きにやってくれ!

トーラン
トーラン

一。

企業職員
企業職員

イヤァ――

トーラン
トーラン

二の。

モニーク
モニーク

……

トーラン
トーラン

三!

(企業職員が走り去り、トーランとモニークが戦闘を再開する)

企業職員
企業職員

イカレてる、あの二人イカレてやがる――

企業職員
企業職員

それよりどこだよここ――待った、あれって――

企業職員
企業職員

騎士さん!騎士の旦那!

企業職員
企業職員

私はローズ新聞社の者です、助けてください、ローズ新聞のことは知ってますよね?編集部にあなたのことを推薦しておきますから、あっちにイカレた輩が二人いて――

逐魘騎士
逐魘騎士

……

企業職員
企業職員

――ひっ――

逐魘騎士
逐魘騎士

……

トーラン
トーラン

……もう矢は使い果たしたんじゃないのかい?

モニーク
モニーク

チッ、数分かけても獲物を捕らえられなかったのは初めてだ……大したもんだな、トーラン・カッシュ。

モニーク
モニーク

最初から私を足止めするのが目的だったのか?

トーラン
トーラン

ふふ……あんたはどうなんだい、俺と遊ぶのが目的だったのか?

モニーク
モニーク

いいや、お前の首は高くつく、どんな時でも、私たちは金が必要なんだ。

トーラン
トーラン

ほう?床に伏した弟でもいるのかい?それとも介護する必要がある父親とか?

モニーク
モニーク

……この仕事は想像を遥かに超える金をくれるんだ、バウンティハンター。

モニーク
モニーク

私たちはお前たちより、騎士より、このカジミエーシュにいる誰よりもこの社会のルールを熟知している。

モニーク
モニーク

私たちはただ早道を選んだだけだ、今晩のハンティングを終えれば、私たちは新たな始まりを迎える。

モニーク
モニーク

だが今、またバカ一人がそれを邪魔しにきたみたいだがな。

トーラン
トーラン

……

(逐魘騎士が近寄ってくる)

逐魘騎士
逐魘騎士

……この、意気消沈した都市で……またこんな夜空が見れるとはな。

逐魘騎士
逐魘騎士

これこそが私の知っている夜空だ、この汚れた人工物をここに沈めさせ……この街の血を抜いてくれた、よくやった、名の知れぬ反逆者よ!

トーラン
トーラン

……あんた本当に変わった騎士だな、私闘は金にならないぜ?

モニーク
モニーク

チッ、また茶番が始まった。

マーガレット
マーガレット

みんな無事か!?

マリア
マリア

お姉ちゃん!さっき予備電池を見つけたよ……だから……このランプはもう消してもいいよね?長く持ちそうにないし……

ゾフィア
ゾフィア

……みんな無事なようね。フォーゲルとコーヴァルは外で様子を見に行ったわ、あとで戻ってくるって。

ゾフィア
ゾフィア

ムリナールは?

マーガレット
マーガレット

叔父さんは家にいるよ、せっかく仕事から息抜きできるチャンスだから、一人で家にいたいって言ってたけど……

マリア
マリア

シャイニングさんとナイチンゲールさんは?

マーガレット
マーガレット

彼女たちならドクターが無冑盟に狙われることを案じて、感染者収容センターに戻っている。

マリア
マリア

……

マーガレット
マーガレット

心配するな、二人とも頼りになる人だ。

マリア
マリア

ううん……ただ……お二人のことまだ全然よく知らないからさ……

マーガレット
マーガレット

すまない、私が接触しないようにしているんだ……ドクターたちを私個人の事情に巻き込ませるわけにはいかないのでな。

マーガレット
マーガレット

ただいつか、必ず改めて紹介するよ。それに、マリアもいつか、あの船に乗れるかもしれないからな。

マーガレット
マーガレット

理想家の光はどんな人でも惹きつける、それぞれの進む道と、信念が異なっていても、心の中にある意志を揺れ動かせるものなどは存在しないのだから。

マリア
マリア

……それってまるで……

マーガレット
マーガレット

まるで読んでいた本の中の騎士みたいだろ。

(バーの扉が開く)

老騎士
老騎士

帰ったぞ!

老工匠
老工匠

本当にあたりが真っ暗だ……隣で懐中電灯を売ってる店は今夜繁盛するだろうな……

ハゲのマーティン
ハゲのマーティン

マーガレット、来ていたのか。

老騎士
老騎士

今の外はどこもめちゃくちゃだ、ここで大人しくて、電力が回復するまで待ってたほうがいいんじゃないか?

老工匠
老工匠

なにを待つんだ?今日あった試合も見れなくなったんだぞ?

マーガレット
マーガレット

今日は本来ならトップ8の騎士を決める最初の試合だった。

ゾフィア
ゾフィア

……もしかして血騎士のことも注目していたの?

マーガレット
マーガレット

少しはな……彼は今シーズンの選抜からメジャー戦まで無敗だったからな……それだけじゃない……

マーガレット
マーガレット

彼は感染者の英雄でもある。

ソーナ
ソーナ

……どこに行くんですか?文句ってわけじゃないですけど、こっちもあんまり時間がないもんですから……

燭騎士
燭騎士

ここです。

ソーナ
ソーナ

チャンピオンウォール展示会場?

燭騎士
燭騎士

密会ですので、くれぐれも声を荒げないでくださいね。

ソーナ
ソーナ

アタシに会いたがってる騎士って一体誰ですか?

燭騎士
燭騎士

騎士ですか……そうですね、尊敬に値する騎士と言えば間違いありません。

ソーナ
ソーナ

……

燭騎士
燭騎士

うふふ、そう緊張なさらずに……少しお年を召した女性の方ですよ。

燭騎士
燭騎士

先にお入りください。

ソーナ
ソーナ

……あなたは来ないんですか?

燭騎士
燭騎士

あの方はカジミエーシュでも指折りの人物でして、少し怖いんですよ。

ソーナ
ソーナ

へぇ……燭剣を掲げる燭騎士にも怖い人がいるんですね?じゃあ尚更アタシが会っても大丈夫なんですか?

燭騎士
燭騎士

……きっと違う反応を見せると思いますよ。

燭騎士
燭騎士

なんせ名義上では、彼女は私の養母みたいなものですから。

ソーナ
ソーナ

(連合会と一緒でここも緊急用の電力を備えている……大遮断の影響はなしか……)

ソーナ
ソーナ

(騎士……それと連合会は……)

ソーナ
ソーナ

(……未だにこの暗闇の中で光を輝かせている。)

ソーナ
ソーナ

……

光がチカチカと煌めく。
ソーナは考えることを打ち切られた。
騎士と資本も避けるような濃い夜の色。
そんな夜に溺れ死ぬのは一体誰なのだろうか?

(年長な騎士が近寄ってくる)

ラッセル
年長な騎士

……焔尾騎士の、ソーナね。

ラッセル
年長な騎士

さあこちらへいらっしゃい、よく顔を見せてちょうだい。

ソーナ
ソーナ

――!

ソーナ
ソーナ

あ、あなたは……!!

ラッセル
年長な騎士

あら。今日は別に公務として会ったわけではないわよ。

ラッセル
年長な騎士

聞いたわ……感染者騎士は監察会の一部の騎士と、取引をしたようね。

ラッセル
年長な騎士

騎士協会と監察会議員の、デミアンという人物じゃないかしら。

ソーナ
ソーナ

……

ラッセル
年長な騎士

感染者は大騎士領で生き長らえるため、彼の支配に下ることを約束し、今回の騒動を起こした。

ラッセル
年長な騎士

そして四都市の大遮断……監察会はこの事件の再発を黙認したのよ。

ラッセル
年長な騎士

この壁を見てみなさい……ここにいる騎士たちは、本来ならこんな姿で人々の注目を集めるような存在ではなく、真の英雄になれる存在のはずだったわ。

ラッセル
年長な騎士

はぁ、あなたは……それで悲哀を感じないかしら?

ソーナ
ソーナ

……悲哀なら、感じます。

ソーナ
ソーナ

けど感染者たちのためにも、今の私は不公正な待遇に、享楽と欲望に沈んでいる人々のために悲哀を覚える暇などありません。

ソーナ
ソーナ

頑張って苦労しながらも生きている、カジミエーシュ人の誰一人に対しても……同じです。

ラッセル
年長な騎士

……素晴らしい主義主張だわ、リスのお嬢さん。

ソーナ
ソーナ

本当に監察会は私たちに普通の生活を約束してくれるのですか?

ラッセル
年長な騎士

手続き、公的文書、国民院が認可した法律文書があれば。もちろん、監察会が代わりにやってあげるわ。デミアンはあなたたちに約束したからね。

ラッセル
年長な騎士

しかしあなたたちの身体に生えてる源石結晶のことはどうするの?

ソーナ
ソーナ

……

ラッセル
年長な騎士

私はあなたたちのことが気に入ってるの、レッドパイン騎士団、けど輪郭がはっきりしない問題のことも、あなたたちは克服する必要があるわ。

ラッセル
年長な騎士

あとでデミアンがそちらに向かうわ。彼のことなら信じてあげなさい、方法はちょっと馬鹿っぽいけど、彼なりの考えがあるから。

ソーナ
ソーナ

……わかりました。

ラッセル
年長な騎士

……さあ、私の騎士団もそろそろ到着する頃だから、はやくお仲間さんたちと合流しに行きなさい。

ラッセル
年長な騎士

それと、ヴィヴィアナにも伝えてちょうだい、たまには一緒にご飯を食べに来なさいって。

ソーナ
ソーナ

……

ソーナ
ソーナ

…………騎士とは一体なんなのでしょうか、マダム?

ラッセル
年長な騎士

それは一人一人で答えが違ってくるわ、お嬢さん。

ラッセル
年長な騎士

私の答えなんて多分聞きたくないと思うわよ、私たち年を取った連中は、あまりにも多くの道を歩みすぎたからね。

ラッセル
年長な騎士

さあ、リスのお嬢さん、行ってきなさい。

ラッセル
年長な騎士

カジミエーシュの朝日がまだ灼熱のままか、その目で確かめてみるのよ。

ロイ
ロイ

……見失っちまった。

ロイ
ロイ

もう一回包囲殲滅したほうが効率的になるのかな……

(無線音)

ロイ
ロイ

俺だ、どうした?

ロイ
ロイ

……なっ……数は?

(戦闘音)

逐魘騎士
逐魘騎士

……卓越した剣捌きだ。

トーラン
トーラン

はぁ、こっちはあんたとのお突き合いに時間を無駄にしたくないんだけどな、騎士のお兄ちゃん。

モニーク
モニーク

……イカレた野郎だ……

モニーク
モニーク

トーランを殺したあと、すぐに撤退しておこう。

(無線音)

モニーク
モニーク

……こっちは今“公会のボス”と夢魘との鬼ごっこに付き合わされてる、話ならあとにしてくれ。

モニーク
モニーク

……

モニーク
モニーク

いや……私もすぐに行く。

(無線が切れる)

モニーク
モニーク

鬼ごっこはここまでだ、トーラン。

トーラン
トーラン

逃げるつもりかい?

モニーク
モニーク

いいや。

モニーク
モニーク

それとお前、夢魘。

トーラン
トーラン

――!お前夢魘なのか!?

逐魘騎士
逐魘騎士

……

モニーク
モニーク

しばらくは休戦だ。

モニーク
モニーク

お前……カヴァレルエルキに来たのは同胞を探すためと試練を受けるため、なんだろ?

逐魘騎士
逐魘騎士

栄誉ある伝説をそう軽々しく口にするな、カジミエーシュ人、お前にその資格はない。

モニーク
モニーク

私はただ警告してあげただけだ、夢魘。

モニーク
モニーク

無駄骨はよしたほうがいい。

トーラン
トーラン

それは言えてる。

逐魘騎士
逐魘騎士

……なにを根拠に……

モニーク
モニーク

……フンッ、もう会うことはないだろう、このアホめ。

企業職員
企業職員

交通はまだ回復してないのか?一部じゃもう電気が通ってるって聞いたぞ……

参戦騎士
カジミエーシュ騎士

こんな損害を起こして、騎士協会からはなんの補償も出ないのか?

興奮した観客
観光客

そうだそうだ!政府は観光の補償を出すべきだ!

企業職員
企業職員

はぁ……冷蔵庫の肉は大丈夫なんかな……

モニーク
モニーク

……それは本当か?

ロイ
ロイ

はぁ。

ロイ
ロイ

知ってるか、あいつら一人がかりなら、俺たちも単独で仕留められる。

ロイ
ロイ

だが二人がかりなら、協力しないと無理だ。

ロイ
ロイ

三人にもなれば、空前絶後の激戦になるだろうな。

ロイ
ロイ

もし三人以上だったら……一個の戦術部隊と見なしてもいいだろう、無冑盟じゃ歯が立たんよ。

ロイ
ロイ

もし両手でも数えきれないぐらいの数がいたら、無冑盟全員でかかっても、二三回殺されても足りないぐらいだ。

モニーク
モニーク

それは知ってる、私だって見たことぐらいはある、お前に言われるまでもない。

モニーク
モニーク

それで歩哨が見た数はいくらだ?

ロイ
ロイ

四十人弱だってさ。

モニーク
モニーク

最悪だ……こんな節目にか?

ロイ
ロイ

……ああ。理事会にも伝えてある。

ロイ
ロイ

あいつらも四都市連合を攻め落とすつもりなのかな?

代弁者マギー
代弁者マギー

……ありえない!

代弁者マギー
代弁者マギー

そ、そんなのありえない……軍事顧問はどこだ!征戦騎士を監督してる責任者はどこだ!?

代弁者マギー
代弁者マギー

この前監察会が動かしたあの征戦騎士たちなんだが、前回報告した時ヤツらはどこにいた?

代弁者マギー
代弁者マギー

……573キロ先。

代弁者マギー
代弁者マギー

通常規模の征戦騎士小隊の進軍速度じゃ絶対に間に合わないはずだ……馬鹿な、早すぎる……

代弁者マギー
代弁者マギー

まさか監察会は連合会の目を盗んで、ほかの部隊を動かしていたのか?いや、そんなのありえない……

代弁者マギー
代弁者マギー

……待った。

代弁者マギー
代弁者マギー

銀槍のペガサスの先鋒隊の……一番速かった記録はどれくらいだ……?

代弁者マギー
代弁者マギー

なっ……ヤツらは……自分たちの軍隊識別番号を偽装していただと……?しかも、自分たちの甲冑と槍にもカモフラージュを施していただと?

参戦騎士
カジミエーシュ騎士

ん?なんかちょっと明るくなってないか?

企業職員
企業職員

あっちを見ろ!あの道の向こうが光ってる!きっと電力が回復したんだ!

興奮した観客
観光客

でも……街灯とかは消えたままだぞ……

興奮した観客
観光客

どっちかって言うと……月の光みたいだな……?

月光。
ガラス管に光が通ったネオンライトが繁栄したことにより、人々は月光本来の輝きを忘れてしまっていた。
この暗闇の都市は――
――すでに銀光によって照らされていた。

???
野次馬の通行人

………………あ、あれも騎士なのか?

参戦騎士
カジミエーシュ騎士

せ、征戦騎士だと!?なんでこんなところに!?

騎士が群衆を通っていく。
騎士の街と謳われたこの都市を通っていく。
だがこの街はこの騎士たちを認めてなどいない。
騎士もこの街を認めていない。
彼らは遥か遠い辺境の要塞からやってきた。
その身にははっきりと匂えるほどの泥臭さが染みついていた。
血肉を浴び、白骨になるまで戦い、戦場に埋もれた無数の英傑たちだ。

ロイ
ロイ

……全無冑盟へ通達、今どんな任務を請け負っても、直ちに手を止めるんだ。

ロイ
ロイ

面倒事がイヤなら何もするな、下手に動くんじゃないぞ。

モニーク
モニーク

ゴクッ。

ロイ
ロイ

モニーク?

モニーク
モニーク

あそこ……あそこにいる人は……

ムリナール
ムリナール

……

トーラン
トーラン

……懐かしいかい?

ムリナール
ムリナール

いいや。

トーラン
トーラン

……俺は懐かしく思うけどな。

トーラン
トーラン

この大地は思ってるほど悪くないと勘違いして、意気揚々としていた時代が……懐かしく思ってくるぜ。

ムリナール
ムリナール

……

トーラン
トーラン

だがもしなにも思うことがないのなら、あんたがここにいるのはおかしい、違うかい?

トーラン
トーラン

ムリナール、周りを見てみな、この街は眠った、誰も想像しなかったことが起こった。

トーラン
トーラン

あんたはどうなんだい?

(企業職員が駆け寄ってくる)

企業職員
企業職員

報告です!一部の通信回線が回復しました――!

代弁者マギー
代弁者マギー

――国民院の判事に繋げてくれ。

企業職員
企業職員

はい。

(無線音)

代弁者マギー
代弁者マギー

……判事殿か?

代弁者マギー
代弁者マギー

私が言おうとしてることならご存じだろう、あの征戦騎士たちは許可なく大騎士領内に踏み入った、すでに第二法案に抵触している――

???
電話からの声

前任の国民院判事のデュークさんなら、賄賂受け取り、違法取引、さらに謀殺と涜職など多数の容疑にかけられ、すでに勾留されております。

代弁者マギー
代弁者マギー

……

???
電話からの声

冷静に発言をお選びになられてほうがよろしいかと、代弁者様。

???
電話からの声

大騎士領は停電による緊急事態に直面しておりますので、監察会には緊急事態時に軍を派遣する権限がございます。

???
電話からの声

ほかになにかご質問はございますか?

代弁者マギー
代弁者マギー

……いいや。邪魔をしたな、では。

代弁者マルキェヴィッチ
代弁者マルキェヴィッチ

……マギーさん。

代弁者マギー
代弁者マギー

……ああ。

代弁者マルキェヴィッチ
代弁者マルキェヴィッチ

通信がほぼ回復したようです、マギーさん。

代弁者マルキェヴィッチ
代弁者マルキェヴィッチ

皆さん忙しそうにしてますね……ところで、電話はどういうものかご存じですか?

代弁者マギー
代弁者マギー

……?そんなのもちろん、通信用の道具……

代弁者マルキェヴィッチ
代弁者マルキェヴィッチ

いいえ。電話とは現代社会における紡錘と鋤、この現代社会を編み出してる血管のようなものなのです。

代弁者マルキェヴィッチ
代弁者マルキェヴィッチ

偉大なる象徴なのですよ、マギーさん。

代弁者マギー
代弁者マギー

……

マギーはなにも言葉を返さなかった。
ただ突然マルキェヴィッチから雰囲気を感じたのだ。
数か月前には創業に失敗し、何も成し得ず、他人の言いなりになっていたこの男から、とても自然な雰囲気を感じた。
マギーはこれまでたくさんの人からこういった雰囲気を見てきた。
彼らのほとんどは変化と競争の中で我を失ってきたが、そこから生き残ってきた人たちは――
――ほとんどなにかの一部へ形を変えてしまっていたのだ。

タイトルとURLをコピーしました