状況を報告。
いいとは言えない、ドクターの予想通りだった、ここにたくさん人が集まってる。
そいつらは工場に向かっているのか?
うん……確定だね。
どうにかして追いつくんだ、状況は随時報告しろ。
ラジャー。
ではこちらの工場の接収も完了致しました。
今のところすべて順調に進んでおります、ドクター様が調停して頂いてるおかげですね。
以前は少しばかり進みが滞ってしまったかと思います、本当に申し訳ございません。
お気になさらず、私はただの学者だ。
いえいえ、そんなご謙遜を、これからもぜひとも教鞭を振るって頂きたいと思っておりますので。
お待ちを。
えっ、どうなさいましたか、ヴァレス将軍?
待ち伏せです。
さすがはヴァレス将軍だ。
何者?
話をつけにきた人さ。
皆様、カランド貿易の措置ならさきほどヴァイスとドクター様が領民の代表者たちにお伝えしております。
きっとなにかまだ誤解が……
誤解だぁ?
チェスターさん、あんたはまだ分かっちゃいないようだな。
エンシオディス様はその外国人に騙されているんだ!
なんだと?
俺たちも騙されていたんだ、誰かが教えてくれるまではな。
チェスターさんも知っての通り、本来その外国人は鉱石病と感染者対処の顧問という名目でイェラグにやってきたんだ。
どういうこと?
……
情報提供者がくれた情報に間違いはない。
その外国人はすでにアークトスと手を結んでいる、そこにいるヴァレス将軍はそいつの監視役だ。
エンシオディス様のイェラグ開拓に対して曼珠院とアークトスが不満を抱いてることなんざ、今や誰にだって知ってることだ。
その外国人は、工場が鉱石病を伝播するとか訳の分かんねぇ理由を使って、旦那様に不利な証拠を大量にばら撒いて、工場を閉鎖させるつもりなんだ!
黙りなさい!ペルローチェ家はいつそんな日の目を見れないことに手を出したと言うのですか!
ペルローチェ家と曼珠院は裏で繋がってるんだ、日の目を見れないことと犠牲になった人ならごまんといるんだろうが!?
(回想)
……
お父さん、お父さん!大丈夫?
ほれ、これを飲むんじゃ、飲んでおけば大丈夫。
イェラガンドの涙がイェティの残した毒を清めてくれよう。
……なにを根拠に!
ペッ、自分らでやったことのくせに俺たちに聞き返すってか?
ドクター様、それは本当なのでしょうか……
・嘘だ。
・……
・そっちはどう思う?
……信じてもよろしいのですね?
どうした、言葉が出なくなっちまったか?
その口には乗らねぇぞ!
無駄口はいい、今ここで俺たちにケジメをつけさせてもらう!
(ヴァレスが攻撃を防ぐ)
衛兵!客人の護衛を!彼らを捕らえなさい!
先にその外国人を捕まえろ!
(Sharpが攻撃を防ぐ)
な、なんだてめぇ!?どっから湧いてきやがった!
ここは危険だ!
逃げるよドクター!
ウルサス族のオペレーターがあなたを肩に担ぎあげて、大股で林のほうへ逃げていった。
(雪を踏み走る音)
もう大丈夫だ、下ろしてくれ。
あっ!わかった。
はぁ……
もう一度言わせてもらうぞ、ドクター。
あんたがどんなプランを練っていようが、どれも危険すぎる。あんたは憶えちゃいないかもしれないが、以前からもう何度も言ってることだ。
それでも君のことは信じているよ。
人なら誰だって失敗はする、それは俺も同じだ。できることなら俺の仕事の難易度を下げてもらいたい。
可能性は高くないにしろ、もし仮にあの襲撃者の中に戦闘のスペシャリストが混ざっていたらどうするんだ?
もしあいつらがボウガンを持ち出したら、どうするんだ?
心配はいらない、彼らの目的は私を殺すことではない。
ドクターに状況を報告するね。
Sharp隊長と私はドクターからの言伝に従って、各自ブラウンテイル家の邸宅とシルバーアッシュ家の工場に行って怪しい人を追跡してきた。
その結果、私たちの手掛かりは最後同じところで繋がったんだ……
あの人たちはおそらくブラウンテイル家に煽動されたんだと思う。
一般人の煽動、相手の名誉棄損、よく見る常套手段だよ、でも大雑把だった。
・私とシルバーアッシュ家を対立させようとしてるみたいだな。
・ペルローチェ家とシルバーアッシュ家を対立させるようとしてるみたいだな。
だがそれも罠かもしれない。
それってつまり……?
さっきの連中の装備も戦力もどうってことはなかった、全力で逃げるほどでもない。
あいつらを捕らえて尋問にかけて、あいつらが情報を受け取った元を辿れば……
逆にブラウンテイル家が不利になるかもしれない!?
そうとは限らない。
こっちはまだ情報不足だ、事件の全容も把握しちゃいないから、黒幕の正体とその目的を掴むことはできない。
今唯一確定してるのは御三家の関係をガタつかせようとしてる人間がいるってことだ、言い換えれば全体の安定を破壊しようと目論んでいる、外国人としてのドクターにとっては非常に危険な情勢だ。
じゃあどうするの、ドクター、とりあえず帰ったほうがいいんじゃない?
まだその時じゃない、この一件はまだ始まったばかりだ。
そうだ、この茶番は巨大な嵐のほんの一部にすぎないと言っていい。だが俺の任務は至極簡単、あんたを一番おっかない事件の中心から遠ざけることだ、ドクター。
・もっと情報が欲しい。
・あの人たちが掴まらないようにしないと。
・御三家を対立させようとする黒幕を阻止しなければ。
知れば知るほど境遇がますます危険になるぞ、俺たちにも細かい部分を全部カバーしきれる時間はないんだ、ドクター。
ありゃただの始まりにすぎないさ、ドクター。
言っておくがドクター、今の事態はもうあんたがここに来た当初と違ってはオーバーしてる。
だがあんたがそう判断して、ちゃんと把握してるようにしてんのなら……俺は止めはしない。
なら事態がここまで進んじまった以上、クーリエやマッターホルン、特にクリフハート、シルバーアッシュ家の人間であるあいつらにこの事態を教えるつもりなのか?
・いいや。
・……
・君の判断に任せるよ。
そうだろうな。クリフハートには申し訳ないが、ここまでことが進んじまった以上、クーリエとマッターホルンを信用しろと言われても難しい。
ドクター、あんたがあいつらを信じてやりたいのはわかってる、だがクリフハートはともかく、今御三家が争われてる中、クーリエとマッターホルンにはそれなりに警戒しとかなきゃならん。
らあいつらは事件の一部をひた隠してるはずだ。
それじゃあ私を送り返してもらおうか。
ほかの者は?
いません、全員取り押さえました。
ではドクターは?どこに行ったのですか?
……何者かに連れていかれて、林のほうに逃げたのを目撃しました。
……まずい!
あなたたちの何人かは私とついて来てください、ドクターの身になにかが起こってはなりません!
お探しかな?
!!
あっ、ここにいらっしゃいましたか……てっきり……
逃げたとでも?
……さきほどは緊迫した状況でしたので、そちらに注意を向けられずにいました、どうかお許しくださいませ。
お見苦しいことを見せてしまいましたね、本来ならあなたの安全を守ることが最優先でしたのに。
ただご覧の通り……この人たちは、全員取り押さえました。
こらッ、大人しくしなさい!
俺たちは知ってんだからな!お前はわざわざエンシオディス様を陥れるためにやってきたんだろ!
この君子面をした偽善者が!ペッ!
……
……兄さん?
……?
ローラ?なんでこんなとこにいるんだ?
兄さんこそ!ここでなにしてるの!
お、お前こそその野郎と一緒になにしてるんだよ?
彼は私の上司なの!
そこまでにしておけ、今はそういう状況じゃないだろ。
……わかった、隊長。
率直に申し上げると、カランド貿易がもつ工場の安全や防護設備には問題がある。
はい?
・排気パイプと施工現場の位置が近すぎる、配置が悪い。
・従業員たちに配布してる防護設備の使用率が低い。
・源石鉱物の輸送ルートが安全とは言えない。
……その、エンシオディス様にはそれを仰いましたか?
なっ!てめぇ!やっぱり陥れようとしてるクソ野郎じゃねーか!
事実だ。
……こういうことは専門外ですので、あなたが言ってることが本当かどうかは判断できかねます。
ただ理にかなってるようには思えます。
てめぇの戯言を信じるわけがないだろ!このクソ野郎が!この……
大人しくしなさい!あなたたちが曼珠院の領地内で外国の賓客を襲ったのですよ、これからどういう罰を受けるのかが想像できないのですか?
……
エンシオディス様のためなら……
シルバーアッシュ家のお客さんをシルバーアッシュ家の領民が襲った、これってシルバーアッシュ家の名誉に泥を塗る行為なんだよ?
これがあなたたちの“エンシオディス様へ報いるため”の方法だって言うの?
……それは……
ちゃんと考えてよ!
兄さん、昔はすごく冷静な人だったのに、どうしちゃったの?
……いい、お前に話してもわかりゃしない。
ヴァレス将軍、この者たちを釈放してくれないか?
……え?
・見ての通り、この中には私の部下の親族がいるんだ。
・これは全部誤解だ、それを拡大させないでほしい。
・さっき皆さんがしたミスをこれでチャラにしてあげるから。
ヴァレス将軍、どうか……
……はぁ。
本当にただの誤解でしょうか?私にはそう見えませんが。
……はぁ、まあいいでしょう。
……それでよろしいのですね?
よく聞きなさいあなたたち、もしこちらのドクターがご寛容な方でなかったら、杖打ちの刑は免れていなかったんですからね!よく自分たちの行いを反省するように!
それで俺たちの心を掴んだとでも思うなよ!この……
まあまあ、もういいだろ、行くぞ、これ以上シルバーアッシュ家の面目を潰すな。
憤った領民たちは失望と蔑んだ表情をしたまま去っていく、今のところ一番誤解を招く衝突はすでに解けた。
吹雪が近づいてきてる、なによりもはっきりとあなたはそれを理解していた。