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【明日方舟】吹雪過ぎ行く BI-ST-4「シールド・ムーブ」翻訳

エンヤ
エンヤ

数千年前、イェラガンドはこの地に降り立ち、ここをイェラグと名付け、終始この地を守り続けてきました。

エンヤ
エンヤ

それから幾千年来、かの教えはいつ時だってイェラグの民に影響をもたらしてきました。

エンヤ
エンヤ

かの血肉はペルローチェ家へ、かの毛皮はブラウンテイル家へ、そしてかの骨格はシルバーアッシュ家へとそれぞれ授けてくださったのです。

エンヤ
エンヤ

しかし私たちには共通の名前を持ちます――イェラグ人という名前を。

エンヤ
エンヤ

かの信仰は、即ちイェラグの根幹であり、今日私たちがここに立ち、共にイェラグ人と名乗れる理由でもあります。

エンヤ
エンヤ

私たちは共にイェラガンドへの畏敬を心に抱き、今に至るまで手を携えながらこの地で生き長らえてきました。

エンヤ
エンヤ

しかし、皆ももはや知っての通り、この大地に存在してる国はイェラグだけではありません。

エンヤ
エンヤ

この雪山の外には、広大な天地が広がっています、そこには私たちと外見も、言語も異なり、イェラガンドを信仰していない人々がいます。

エンヤ
エンヤ

過去において、私たちはその人たちとどうやって接するのかについて、大きな岐路に立たされました。

エンヤ
エンヤ

しかしその岐路はなにも危機というわけではなく、あのお方が我々に与えてくださった試練であり、我々へ示してくださったお導きだったのです。

エンヤ
エンヤ

あのお方はイェラグ人全体が信仰する対象であり、私たちの母であり、私たちの守り神でもあります。

エンヤ
エンヤ

母であれば、自分の子が立ち止まってるところは決して見たくはないはずです。

エンヤ
エンヤ

ですので――

エンヤ
エンヤ

古きを重んじるがあまりに新しきから目を逸らさないでください、あなた方はあのお方の子であり民であるのですから、勇気をもって立ち向かいなさい。

エンヤ
エンヤ

故郷を恋しがるがあまりに新たなる天地への探索を諦めないでください、あなた方がどこにいようと、あのお方はあなた方と共にあられます。

エンヤ
エンヤ

既得した富のために冒険を避けないでください、あなた方ならより莫大の富を築けたはずでした。

エンヤ
エンヤ

なぜなら、あのお方は寛容だからです、あのお方が守られる土地が寛容なのは当然であり、あのお方の民であれば、なおさら寛容なのは至極当然だからです。

エンヤ
エンヤ

あのお方から賜った神権の名において、今ここで謹んで宣言致します。

エンヤ
エンヤ

曼珠院はイェラガンドに対する異邦人たちの信仰を受け入れましょう。

エンヤ
エンヤ

そして、曼珠院は民衆たちが各々の方法でよりよい生活を追求できるように限りなく支援致します。

カランドの巫女、啓示者、祝福されし者であるエンヤ・シルバーアッシュが全イェラグ人に向けた影響力ある演説を記念して。
この日、イェラグの国教記念日へと定められた。

ドクター
ドクター

(駒を動かす)

エンシオディス
エンシオディス

……窪地の一件は、本来ならただの遊び駒だった。

エンシオディス
エンシオディス

ペルローチェ家の注意を逸らし、なおかつ私が裏で物資を調達できるようにしてくれる人が必要だったからな。

エンシオディス
エンシオディス

その人がもしお前でなければ、別人でも構わなかったんだ。

エンシオディス
エンシオディス

本来ならことを終えた後、本件に対してお前に詫びを入れるつもりでいた。

エンシオディス
エンシオディス

だがどうやら、今はお前が引き起こした影響を軽視したことにも重ねて詫びを入れなければならなくなったようだな。

エンシオディスはそう独りでに語り出し、駒を一つ動かした。

ドクター
ドクター

・(駒を動かす)

エンシオディス
エンシオディス

ノーシスは私の親友であり、同時に協力者だった。

エンシオディス
エンシオディス

彼の考えは私と完全に一致しているとは言えん、彼にも彼なりの考えとやり方があるからな。

エンシオディス
エンシオディス

だが彼のことなら私が一番よく知っている。

エンシオディス
エンシオディス

目的さえ一致していれば、彼が私を裏切ることはない、さらに言えば計画の最中に彼と情報を逐一交換する手間もなくなる。

エンシオディス
エンシオディス

ゆえにこちら側は安心して彼に資源運用を任せ、ブラウンテイル家を抑え込むための彼が思う効率のいいやり方を選択できた。

エンシオディス
エンシオディス

鉄道の破壊工作は見事な一手だったと言えよう。ノーシスはラタトスの信頼を勝ち得たと同時に、他国のスパイとトランスポーターの侵入を防いだんだからな。

エンシオディスはこちらを一瞥したあと、駒を一つ動かした。

ドクター
ドクター

・(駒を動かす)

エンシオディス
エンシオディス

引き分けだな。

まるで勝敗を予見していたかのように、エンシオディスは駒から手を離し、両手を広げた。
この一局はここで終わりだという示唆だ。

エンシオディス
エンシオディス

どうやら近頃、私はあまり運がよくないらしい。

エンシオディス
エンシオディス

チェスも勝てなくなってしまった。

ドクター
ドクター

・まだ負けてはいない。

エンシオディス
エンシオディス

引き分けというのは、時には勝利か敗北かのどちらかを意味する。

ドクター
ドクター

・では君にとって、あのような結果は勝利と敗北のどっちだんだ?

エンシオディス
エンシオディス

……私に言わせれば、得られなかった勝利は、敗北も同然だ。

エンシオディス
エンシオディス

だが今回に関しては、例外ではあるがな。

エンシオディス
エンシオディス

私の勝利に疑いの余地はない。

エンシオディス
エンシオディス

ただ、私の勝利のためにお前は別の可能性を切り拓いてくれたことについては想定外だった。

ドクター
ドクター

・別の可能性か。

・私に巫女を下山させるような力はないさ。
・私はただ犠牲者を出したくなかっただけだ。

別の可能性か私に巫女を下山させるような力はないさ。私はただ犠牲者を出したくなかっただけだ
エンシオディス
エンシオディス

そう、別の可能性だ。

エンシオディス
エンシオディス

本来ならこういう結末はありえないと思っていたが、あろうことかお前はまったく無知の状況で局面を看破してなおかつ影響を与えた。

エンシオディス
エンシオディス

私が勝利したという事実を曲げないままな。

エンシオディス
エンシオディス

おそらく長い間相手と駒を打たなかったせいかもな、実力が伯仲する対局は実に心が躍る。

エンシオディス
エンシオディス

巫女は――他人にあれこれ決められる必要はない。

エンシオディス
エンシオディス

だが、お前はそんなちょうどいいタイミングで彼女の背中を一押しして、彼女に方向を示してくれた。

エンシオディス
エンシオディス

あまつさえ、彼女のために舞台まで整えてやった。

エンシオディス
エンシオディス

それらすべてはお前が無意識に行ったことでも言いたいのか?

エンシオディス
エンシオディス

そしてお前はそれを達成した。

エンシオディス
エンシオディス

自らアークトスとラタトスへ接触し、彼らのために作戦を立案し、さらには戦争を回避するための最善策を提供した。

エンシオディス
エンシオディス

実にお前らしいやり方だ、ドクター。

エンシオディス
エンシオディス

この私でさえ、今回の一件がこれほどまでに平和的な形で収まるとは思いもしなかったさ。

エンシオディス
エンシオディス

なぜ私がこれほどイェラグの統一に急いでいたかは、おそらくお前もすでに知っているはずだ。

ドクター
ドクター

外圧か。

エンシオディス
エンシオディス

その通りだ。

エンシオディス
エンシオディス

私はなにも曼珠院に恨みを持ってるわけではない、ましてやこの土地から信仰を排除しようとするつもりも毛頭ない。

エンシオディス
エンシオディス

アークトスの排斥にも、ラタトスの躊躇にも別段不満はなかった。

エンシオディス
エンシオディス

彼らは外で今なにが起こってるかを知らないからな、なら私と同じ考えを抱くのも無理な話だ。

エンシオディス
エンシオディス

もし時間が充分にあれば、五年十年さらにもっと長い時間をかけてでも厭わなかった、彼らの考えを変え、より穏便な方法でイェラグを変えるためならな。

エンシオディス
エンシオディス

だが――

エンシオディス
エンシオディス

イェラグにそんな時間はない。ここは決して豊かとは言えないだろうが、この天災に脅かされてこなかった土地を狙ってる隣国は必ずいるはずだ。

エンシオディス
エンシオディス

ゆえに私は歩を速める必要があった、もしそれに反対する人がいれば、こちらも仕方なくその者たちの反対する権利を剥奪するしかなかった。

エンシオディス
エンシオディス

そういうことだ。

ドクター
ドクター

・私を納得させる必要はない。
・私とは無関係なことだ。

エンシオディス
エンシオディス

私の考えを共有し合えると思った人と分かち合っただけだ。

エンシオディス
エンシオディス

私の知る話によれば、アークトスは大長老に毒を盛った責任を負うため、自ら当主の座を降りたらしい。

エンシオディス
エンシオディス

彼があれほどキッパリと降りられたのは、自ら進んで巫女に宣誓したからだろうな、ペルローチェ家の土地管理を巫女へ譲渡することを。

エンシオディス
エンシオディス

おそらくそれで巫女の地位を固める狙いがあるのだろう。

エンシオディス
エンシオディス

ブラウンテイル家とシルバーアッシュ家との従属協定も間もなく締結される。

エンシオディス
エンシオディス

もう少しお前に話しておこう、私はなにもブラウンテイル家を併合するつもりはない、もしラタトスが望めば、彼女の権利は以前とさほど大差ないままでいられる。

エンシオディス
エンシオディス

これでもう停滞を望む者はいなくなった、頑なに前へ進もうとしない者と損得勘定で動く者はカランド貿易とイェラグの発展の阻害でしかないからな。

エンシオディス
エンシオディス

この結果を受け入れようじゃないか、ドクター。

ドクター
ドクター

君と巫女の間に、それほど大きな軋轢はないはずだろ。

エンシオディス
エンシオディス

……だが私と彼女はそれぞれ違う道を選んでしまった。

エンシオディス
エンシオディス

それに、これは私が過去に決めた選択によってもたらされた結果だ、私はその選択の責任を背負う必要がある。

エンシオディス
エンシオディス

そして彼女もまた自らの選択に責任を背負う必要がある、私の策動下でなく彼女の指導によってイェラグ人をこの泥沼から抜け出させた責任をな。

エンシオディス
エンシオディス

お前は私に、このイェラグにお前自身を証明してくれた、それに……エンヤのことも。

チェスター
チェスター

総裁、そろそろ会議のお時間です。

エンシオディス
エンシオディス

わかった。

エンシオディス
エンシオディス

何はともあれ、イェラグはいずれ大きな変化を迎える、ドクター。

エンシオディス
エンシオディス

これからお前に会う時間も確保しづらくなるかもしれない。

エンシオディス
エンシオディス

だがこれだけは保証しよう、今後ロドスはイェラグの如何なる場所においても阻害されることはない――

エンシオディス
エンシオディス

それと、お前やほかオペレーターが今回の件に巻き込んでしまった補償として、同時に私からお前への誠意を示すために。

エンシオディス
エンシオディス

ロドス、及びドクターたちの名は、この先本件と関連するいかなる公式文書にも出現することがないようにしよう。

エンシオディス
エンシオディス

加えてだが、お前と私が互いに盟友を呼び合えるような新しい契約を、すでにロドスに向かわせておいた。

エンシオディス
エンシオディス

後始末を終えた頃に、改めてロドスを訪問しよう。

エンシオディス
エンシオディス

その時は、また一局手合わせ願いたい、ドクター。

エンヤ
エンヤ

ヤール。

ヤール
ヤール

なんでしょうか?

エンヤ
エンヤ

あなたねぇ、私を蚊帳の外に置くなんていい度胸してますね!

ヤール
ヤール

どうかご容赦を、ヤールには何のことだかさっぱりでございます。

エンヤ
エンヤ

ほう?ならそういうことにしておきましょう。

エンヤ
エンヤ

しかし、ヤール、一つ気掛かりがあります。

ヤール
ヤール

なんでしょうか。

エンヤ
エンヤ

……私をイェラグの指導者に仕立て上げたのは、あのお方のご意思なのですか?

エンヤ
エンヤ

すべてはあのお方の予定通りであり、私がこの一連の事件で起こった困惑も、迷い、最後に出した選択も――

エンヤ
エンヤ

すべてあのお方の思し召しだったのでしょうか?

エンヤがなぜ突然このタイミングでこのようなことを聞き出したか、ヤールにはわかっていた。
彼女は恐れているのだ。
自分が下した決定が誤ったのではないかと恐れているわけではない、彼女は恐れているのは、自分が目にした出来事は、すべてただ神様が気まぐれに差したゲームなのではないかということだった。

ヤール
ヤール

……それだけについては、約束するわ。

ヤール
ヤール

あのお方は……一度もあなたに干渉するつもりなんてなかったわよ、あなたが出した考えは全部あなただけのものなんだから。

ヤール
ヤール

人々の奇跡に対するイメージというものは、そのほとんどが自分たちの願望といい加減な妄想から出たものなのかもしれない。

ヤール
ヤール

それに吹雪の中で民のために侵略をまったく受けない土地を開拓してあげたんだから、すでに力を尽き果てていたのかもしれないわよ。

ヤール
ヤール

だからあのお方はただずっとこの地を見守って、この地に生きる民のために幸せな方法を探してくれていただけだと思うわ。

ヤール
ヤール

そしてあなたが出した答えが、あのお方の許しを得た、それだけのことよ。

エンヤ
エンヤ

……でしたら、あのお方に一つだけお願いを伝えてもらってもいいですか?

ヤール
ヤール

伝えられることなら。

エンヤ
エンヤ

ならどうか、あなたを連れて行かないようにお願いしたいです。

ヤール
ヤール

……え?

エンヤ
エンヤ

一般的なおとぎ話ではどれもそうじゃないですか。私は答えを得た代償として、きっとあなたを失ってしまう。

エンヤ
エンヤ

ほかに要求はありません、ですからこれからも私の侍女をやってくれますか?

ヤール
ヤール

……プッ。

ヤール
ヤール

あはは、あはははは。

エンヤ
エンヤ

……

ヤール
ヤール

ごめんなさい、まさかそんな可愛らしい要求を言い出すとは思いもしなかったから……

ヤール
ヤール

でも……そうね、巫女様、だったら、契約を結びましょうか。

ヤール
ヤール

もしいつか、あなたが今の理想を保てなくなってしまった時、私はあなたの傍からいなくなる、でも、それまでの間は、ずっとあなたの侍女長になってあげるわ。

エンヤ
エンヤ

約束ですよ?

ヤール
ヤール

約束よ。

ノーシス
ノーシス

……

(回想)

ノーシス
ノーシス

君の代表として私をロドスへ?

エンシオディス
エンシオディス

そうだ。

エンシオディス
エンシオディス

ロドスに行けばお前も研究に没頭できる、気に入るはずだ。

ノーシス
ノーシス

君が彼らを招いたのは、そういう狙いもあったからか?

エンシオディス
エンシオディス

一種の可能性だったに過ぎないさ。

エンシオディス
エンシオディス

なにせ、我々の計画が成功しようが失敗しようが、イェラグにおけるお前の境遇は悪くなる一方だからな。

ノーシス
ノーシス

本来は囲い込むはずだった対象が、危うく我々の計画を台無しにすることをお前は想定してなかっただけだろ。

エンシオディス
エンシオディス

互いの勝利を変えることはできないからな。

エンシオディス
エンシオディス

もちろんだが、イェラグに残りたいのであれば、私が手配してやっても構わないぞ。

ノーシス
ノーシス

いやいい。

ノーシス
ノーシス

……汚名など気にしないさ、だが毎日私の研究所の窓が石で割られてはさすがにウンザリするがな。

ノーシス
ノーシス

それに、私もそのドクターとやらに会ってみたくなった。

エンシオディス
エンシオディス

お前も彼に興味を?

ノーシス
ノーシス

まさか、彼はすでにこの土地に自分の爪痕を残した、だから見てみたいだけだ、彼は我々の敵になるのか否かとな。

エンシオディス
エンシオディス

もし敵でなかったら?

ノーシス
ノーシス

そうだな、敵でなかったのなら――あそこは確か鉱石病を抑制できた会社だと聞く、一体どういう技術力を持っているのか見物させてもらおうじゃないか。

エンシオディス
エンシオディス

……ノーシス、今のお前も目がギラついているぞ、さんざんお前が口にしてきた私と大差ないじゃないか。

(回想終了)

ノーシス
ノーシス

……

チェスター
チェスター

ノーシスさん、荷物がまとまりました、そろそろ出発しましょう。

ノーシス
ノーシス

わかった。

チェスター
チェスター

今すぐ発たれますか?

ノーシス
ノーシス

……

ノーシス
ノーシス

少しだけ待ってくれ。

ノーシス
ノーシス

メンヒ!

ノーシスの声に応えてくれる人はいなかった。

ノーシス
ノーシス

……メンヒ?

簡素な部屋の中は、とても整理整頓されていたが、唯一喋る口調に翳りを含ませていた少女の姿はそこになかった。
彼はすぐ部屋の中央にあるテーブルの上に、ナイフが置かれてることに気づく。
これは彼が過去にメンヒへ贈ったナイフだ。

ノーシス
ノーシス

……

彼はしばらく沈黙したあと、ナイフを手に取り、部屋を出た。
外は燦燦と日差しが降り注いでいた。

エンシア
エンシア

ねえねえ、ドクター、ほら見てこのお店、巫女様と関連する商品を売り始めたよ。

イェラグの商売人
イェラグの商売人

これはこれは、エンシアお嬢様じゃないですか、またおいでくださっておありがとうございます。

エンシア
エンシア

店長さん、流行りに敏感だね。

エンシア
エンシア

アタシがイェラグに帰った時は、まだ曼珠院関連のものしか置いてなかったのに、もう巫女様関連の商品に品替えしたんだ。

イェラグの商売人
イェラグの商売人

ははは、うちだけじゃないさ、今じゃこの大通りにいるみんながそうなってますよ。それにじゃんじゃん商売してくれとのお達しだ。

イェラグの商売人
イェラグの商売人

正直に言いますと、以前売ってたものなんですがね、由縁とか由来とかはでっち上げで自分も信じちゃいなかったんです。

イェラグの商売人
イェラグの商売人

だが巫女様関連の商品なら、誠心誠意造らせて頂いてますよ。

イェラグの商売人
イェラグの商売人

最初執政権返還って話を聞いた時は、今後うちらの商売がどうなっちまうのかで心配だったんですがね。

イェラグの商売人
イェラグの商売人

それがまさか巫女様があんた開放的なお方だったとは驚きだ。

イェラグの商売人
イェラグの商売人

今じゃ、どれだけ頑固なイェラグ人でも、外国人との接触に文句を言うこともなくなりましたよ。

イェラグの商売人
イェラグの商売人

それに聞いた話によると、ちょうど今エンシオディス様が巫女様と会談されてるらしいじゃないですか、だから今後ブラウンテイル家とペルローチェ家の領地も全面的に外へ開放されるはずだ。

イェラグの商売人
イェラグの商売人

私に言わせれば、これからはますます期待できる日々になりますよ。

エンシア
エンシア

ヘヘッ。

エンシア
エンシア

そう言ってもらえると、こっちも嬉しくなってきちゃった。

イェラグの商売人
イェラグの商売人

そりゃ嬉しくなって当然ですよ。

イェラグの商売人
イェラグの商売人

見てください、この通りにいる人たち、ニコニコしてない人なんて見当たります?

イェラグの商売人
イェラグの商売人

祭典であんなことが起こってしまったけど、それでも巫女様が調停してくださったおかげで、御三家も納得してくださった。

イェラグの商売人
イェラグの商売人

その結果に反対する人なんてほぼいませんよ。

イェラグの商売人
イェラグの商売人

これもすべて、巫女様とエンシオディス様に感謝しなくちゃいけませんな。

イェラグの商売人
イェラグの商売人

そうだ、そのお恰好、もしかしてイェラグを出るんですかい?

エンシア
エンシア

そうだよ、休暇が終わっちゃうからね、アタシもそろそろ治療と仕事に戻らなきゃならないんだー。

イェラグの商売人
イェラグの商売人

じゃあ何か欲しいものがあれば持ってってくだせぇ、今日は全部タダにしてあげますよ!

イェラグの商売人
イェラグの商売人

お見送りの餞別として!

エンシア
エンシア

えっ、でも……

イェラグの商売人
イェラグの商売人

遠慮はいりませんよ、どうか貰ってください。

エンシア
エンシア

……じゃあお言葉に甘えてもらうね。

エンシア
エンシア

このお姉ちゃんの肖像画と、刺繍と、あとこの彫刻をください。

エンシア
エンシア

あれっ、この絵って――

壁に掛けていた絵画がエンシアの目を惹いた。
絵の中で、姉のエンヤと兄のエンシオディスが交渉の席の傍で握手を交わしている、まるで何かの協定を達成したかのようだ。
それを見た彼女はピタッと、一瞬だけ足を止めた。

イェラグの商売人
イェラグの商売人

ああ、これはイェラグの未来に関する共通認識を得たエンシオディス様と巫女様を描いた絵です。

イェラグの商売人
イェラグの商売人

本当にこういう一幕があったかどうかは知りませんが、実質上今のイェラグを統治されているのはエンシオディス様と巫女様ですからね……

イェラグの商売人
イェラグの商売人

それにあの二人は兄妹だ、知らない人なんていませんよ。

イェラグの商売人
イェラグの商売人

だったら、お二人の関係はきっと仲がとてもよろしいはずじゃないですか。

イェラグの商売人
イェラグの商売人

そうですよね、エンシアお嬢様?

エンシア
エンシア

そうだね……もうちょっと、ほかのお土産も見ておこっかな……

エンシア
エンシア

ドクター、なにか欲しいものはない?

ドクター
ドクター

特産品が欲しいかな。

エンシア
エンシア

わかった、じゃあたくさん選んであげるね!

イェラグの商売人
イェラグの商売人

あのー……エンシアお嬢様、タダとは言いましたけど、手加減はしてくださいよね。

ヴァイス
ヴァイス

……

ヤーカ
ヤーカ

……ドクター。

ヤーカ
ヤーカ

俺たち二人はエンシオディス様の家臣という立場にいますが、ロドスの一員でもあることも事実です。

ヴァイス
ヴァイス

色々と……本当に申し訳ありませんでした。

ヤーカ
ヤーカ

俺もクーリエも厚かましく許しを乞うつもりはありません、ただせめて今後もロドスにいるエンシアお嬢様に会わせて頂けるだけで結構ですので。

Sharp
Sharp

……ドクター、どうする?

ドクター
ドクター

・君たちもやりづらかっただろう、理解はできる。
・……
・私はたまたまペルローチェ家に招かれただけだ、君たちとは無関係だと思うけど?

君たちもやりづらかっただろう、理解はできる。……私はたまたまペルローチェ家に招かれただけだ、君たちとは無関係だと思うけど?
Sharp
Sharp

弁明の余地はある、俺も報告で説明しておこう。

Sharp
Sharp

だがどういう判断が降りるかは、お上次第だ。

Sharp
Sharp

ドクター、あんたがこいつらを責めちゃいないのはわかってる。

Sharp
Sharp

聞こえなかったフリをするのは大人げないぞ。

Sharp
Sharp

それにたまたまエンシオディス関連の事件も解決しちまってる。

Sharp
Sharp

この一件をそう片付けたいのなら、ケルシー先生に渡す報告書の内容を捻って書かないとな。

Sharp
Sharp

俺は手伝わないぞ。

ヴァイス
ヴァイス

……ありがとうございます、ドクター、Sharp隊長。

ヤーカ
ヤーカ

本当にありがとうございます。

オーロラ
オーロラ

ドクター、家族と別れは済ませてきたから、そろそろ出発してもいいよ。

ドーベルマン
ドーベルマン

荷物は忘れてないな?

エンシア
エンシア

ドーベルマン教官!

ドーベルマン
ドーベルマン

巫女は実質的にイェラグのトップになり、エンシオディスもイェラグにあるほとんど資源を所有する権利を得た……

ドーベルマン
ドーベルマン

ドクター、最初から私の忠告に耳を貸せばよかったんだ。

ドーベルマン
ドーベルマン

だが幸い、周りの者からお前の名前は聞いていない、どうやら、少なくとも巻き込まれずに済んだようだな。

エンシア
エンシア

えっとー……

ヴァイス
ヴァイス

……

ヤーカ
ヤーカ

……

オーロラ
オーロラ

……

Sharp
Sharp

……

ドクター
ドクター

……

ドーベルマン
ドーベルマン

……

ドーベルマン
ドーベルマン

巻き込まれたばかりか、ほかにも色々とやらかしたようだな。

ドーベルマン
ドーベルマン

報告書できっちりと説明させてもらおう、期待しているぞ。

ドーベルマン
ドーベルマン

まあいい、話は帰り道で聞く、みんな車に乗ってくれ、そろそろロドスに戻ろう。

エンシア
エンシア

……

エンシア
エンシア

ドクター、アタシらがさっきあのお店で見た絵画を憶えてる?

ドクター
ドクター

・握手してたやつ?
・憶えてないなぁ。

握手してたやつ?憶えてないなぁ。
エンシア
エンシア

うん。

エンシア
エンシア

ドクター、分かってるんだからね、憶えてるくせに。

エンシア
エンシア

あの時、すっごくあの絵を買おうって思ってたんだ。

エンシア
エンシア

でも考えたらやっぱやめた、だってアタシ知ってるもん、あの絵に描かれた内容は、ウソなんだって。

エンシア
エンシア

あれはお兄ちゃんが最後の最後にお姉ちゃんに一歩譲ってあげただけだったんだ、仲がなおったわけでもなんでもなく。

ドクター
ドクター

すまない。

エンシア
エンシア

ドクターはなにも悪くないよ。

エンシア
エンシア

ドクターがいなかったら、お兄ちゃんとお姉ちゃんの関係はもっと悪くなるだけだったからね。

エンシア
エンシア

でも、おかげでアタシもはっきりしたよ。

エンシア
エンシア

お兄ちゃんが選んだことだろうと、お姉ちゃんが選んだことだろうと、あれは二人が自分の信念を貫いた結果なんだって。

エンシア
エンシア

ドクターはそれをちょっと押してあげたってだけ。

エンシア
エンシア

誰もアタシに山登りを諦めさせられないように。

エンシア
エンシア

信念はそう簡単に曲がられないものだからね。

ドクター
ドクター

じゃなきゃ、それはもう信念とは呼べないからな。

エンシア
エンシア

そうだね。

エンシア
エンシア

でも、アタシのもう一つの信念もそう簡単には曲がらないよ。

エンシア
エンシア

いつか絶対、お兄ちゃんとお姉ちゃんの仲をまたあの時のように戻してやるんだから。

ドクター
ドクター

……

ドクター
ドクター

(エンヤ、それにエンシオディス。)

ドクター
ドクター

(イェラグが直面する困難は、まだ始まったばかりかもしれないぞ。)

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