
はやく、皆さんこちらです!爆発音と光ってる方向に向かってください、土煙に気を付けて!

ま、魔族……!

あら、なにかしらそれ?撹拌機とか?

そんな幼稚な工具でサルカズの傭兵に傷をつけられるとでも思ってるのかしら……ロンディニウムの子ネコちゃん?

こ、来ないで!

……大丈夫です。さあこちらへ、私の後ろに。

こちらの傭兵さんは……悪い人に見えますけど、今は私たちの味方ですよ。

味方ぁ?あんた少しは疑って警戒しといたほうがいいわよ。

Wさん……もし私から情報を得ようとお考えなら、もっと協力的な姿勢を見せたほうがいいと思います。

なんであんたまで脅し文句をそんなクネクネと遠回しに言うのよ。

チッ、は~あ……あんたまさか、ケルシーの隠し子とかじゃないでしょうね?

な、何を言って……

いや、よくよく見たら全然似てないわ。それもそっか、あんな薄情な女が子供を拵えられるはずがないもの。

もうこの話はやめよやめ、あんたらみたいな人はホント好きになれないわ。

それはよかったです、私も今晩これ以上友だちを作るつもりはなかったので。

そんな心配しないで、あたしずっとここに居るつもりはないから。ほかの傭兵からしたら自分のクビがどれだけの値段がついてるのか知っているもの、慈善事業なんかするつもりはさらさらないわ。
(Wが爆弾を起爆させる)

よし、これで一丁上がりっと。

爆弾……やはりまだあちこちに爆弾を仕掛けていたのですね。もしかして……ほかの入口から繋がってる道に穴を開けてるのですか?

仲間はどうしたのですか?今も団地の奥でほかのサルカズ兵たちと交戦してるんじゃ?

そんなに気になる?

……

説明ってね、すごく面倒なの、だから結論だけ教えてあげる。

――みんな死んだわよ。

……死んだ?

あんたを連れ出すのがどれだけ大変だったか理解してるのかしら?言っておくけどねトランスポーターさん、あたしがこの数か月の間に苦労してロンディニウムから集めた人員は、みーんなこのクソ工場の中で散っていったわよ。

だからね……できればこれ以上損させないでほしいの。これで満足?もう行っていいかしら?

もう一度人数を確認させてください……

よし、南の工場にいる人たちは全員いますね。

あたしから言わせれば、人数がちょっと多すぎるわ。あたしが受けた任務じゃターゲットはあんた一人だけなんだけど。報酬は倍貰うって、あんたからもケルシーに言っておいて。

さてウサギちゃん、あんたはそのフルフェイスの化け物を見失わないようにしててね、そろそろ――ちょっと、何ボケっとしてんのよ。

……

Wさん、目の前にある道もあなたが吹き飛ばしたのですか?

フッ、違うとでも?追っ手に道を残すなんてド三流のやり方よ?

でも、フェストさんの小隊がさっき脱出したばかりなんじゃ……

彼らなら救助に向かったよ。

クロージャ、彼らに繋げてくれ。

……いい歳した大人なのに、なにあちこち行ってんのよ。

ブレイク、前方の状況は?

オールクリア、全員倒れています。

了解。進みましょう。

ホルンさん、左ッ!

だ……ダブリンめ……殺してやるぅ!
(ホルンがサルカズ兵にクロスボウを撃ちサルカズ兵が倒れる)

ごめんなさいね、あなたを殺すのがダブリンじゃなくて。

……またですか?サルカズ兵たちが尽く倒れてるなんて、一体この道はどうなっているんだ?

今のところ二十六人倒れてたわね。

ダブリンの仕業でしょうか?

そうかもしれないわ。

ホルンさん、なんて言えばいいか分かりませんが、でも……

……ダブリンのおかげで手間が省けた、そう言いたいんでしょ。

それを認めるのは別に恥でもないわよ。ブレイク、あなたはかなりの間私と一緒にサディオン区で隠れてきたでしょ?生き残りたいのなら、使えるものはすべて使いなさい。

ついて来て、次は左にあるこの扉よ。

――準備はいい?

――
(鉄の扉が開く)

誰もいません、ホルンさん。

わかった。じゃあ次は右に行くわよ。

ロッベン、曲がり角を警戒しておいて。敵がひょっこり角から現れるサプライズは受けるもんじゃないよ。

了解。

よし、開けて!
(鉄の扉が開く)

ゴホッ……ゴホゴホッ……来るな、魔族め!俺たちは……俺たちは絶対に何も言わないからな!

……見つけたわ。

あ……あんたは……

あなたの同胞よ。

夢じゃ、ないよな……はは……戦いの騒ぎが聞こえたし、アーツの光も見えていたから……てっきり魔族どもがまた新しい痛めつけ方を思いついたのかと思ったよ……

辛い目に遭わせてしまったわね。

立てるかしら、兵士?

兵士……そうやって俺たちを呼ぶのも久しぶりに聞くな。

あんたは長官の類なのか?何しにきた?今更どのツラ下げてここにいるんだ――

――

どうしたんだお前?私たちはお前たちを助けにきたんだぞ!

助けに来た?俺たちを助けて何をするつもりだ?もう一度俺たちを騙して、あんたらと異種族の連中が画策した陰謀の中で殺すつもりなんだろ?

思い通りにはさせないぞ、このクソ“長官”が!それで死ぬぐらいならこの拷問室の中で死んでやる!

……わかった。

ロッベン、ボウガンを構えなさい。

……ホルンさん?何を言って……

私だってここで弾薬を消費したくはないわ。今はどんな物資でも貴重だからね、あなたも理解してるでしょ。

けど……彼らは同胞、かつてヴィクトリアのために忠義を尽くしてくれた兵士たちよ。

ここで死ぬのが彼らの最後の願いなら、私たちの弾薬で介錯してあげましょ。

……

……

本当に俺を殺してくれるのか?

……ええ。

けどこんな陰鬱な独房の中で死ねば、あなたは永遠にロンディニウムから忘れ去られることになる。

そしていつしか、この古い独房すらも人々の記憶から消えてしまい、腐った土があなたの白骨までをも隠してしまうでしょうね。

……

ただし、あなたには私からこのボウガンを手に取って、別のことをするという選択肢がある。

これを持って、私たちと一緒にここから出るという選択肢が。

無論、さっき言った願いもすぐに叶えられるわ、敵の砲火によってね。

死ぬ直前、最後に夜空を一目見みたり、錆やオイルの匂いに満ちた空気を一口ぐらい吸うこともできるでしょう――

そして自分と同じくこの空気を吸ってる、生き残ってほしい人たちのことをあなたは思い返すかもしれない。

彼らならあなたの犠牲を憶えておいてくれるはずよ。私がそれを保証する、私の命に代えてね。

……

あいつら……そうだよな……もしかしたら、あいつらはまだ生きてるかもしれない……

俺は……

考えは変わった?これ以上迷ってる時間なんてないわよ。

……

武器をくれ、一緒に行く。

ほかの人たちは?あなたたちはどうなの?
(ブレイクが負傷兵達を連れてくる)

そう。ブレイク、あなたの小隊の人数が増えたわね……七人、いや、九人ほど。

では兵士たち、ここを出る前に、あなたたちの名前を教えてちょうだい。

クロージャさん、自救軍の小隊と連絡が取れましたか?

ちょっと待って~……このドローン再起動したばっかりだからね……ああもう、全然構造が違うから手間がかかるよ!

……今私たちはとても危険な状況にいます。

ハイディさん、先にほかの一般人を連れて脱出してください、自救軍の三部隊が外で迎え……
(爆発音)

Wさん!?

ちょっと、あたしが残した地雷たちが全部起爆させられたわ!大勢の敵があたしたちを追いかけてるってことよ、分かる!?

ホンットにもう……これ以上あたしの爆弾たちを無駄にしないでほしいわ、ウチの連中のせいでかなりの数が消耗させられたっていうのに――

・あと五分だ。
・これ以上は待っていられない。

ええ、長くてもあと五分です。

クロージャさん、なるべく早くフェストさんに繋いでください。五分以内に戻ってくるようにと。

ドクター、私たちも攻勢に転じましょう。

なあビル、正直に言えよ、お前……なんか重く、なったんじゃないのか?全然、引きずって、られねえぞ……

ハァハァ……はは……じゃあ、これでどうだ?

うおっ、少しは軽くなった。

どういった手品を使ってやがんだ~?

なに言ってんだ、俺はただ……姿勢を換えただけ……ゴホゴホッゴホッ……

いやいい!いいから!姿勢を変えないでくれ、それで傷が悪くなったら本末転倒だ!

お前を見つけた時はあんなに血を流してたからよ、それでお前が……

……俺が死ぬんじゃないかってか?

ハァ……ハァ……あの魔族共に、そんな度胸はないさ!せめて俺のためにマ……マッサー……痛ッ……痛てててて……

もういい、休んでくれ、喋らなくていい。

ロックロック、脱出経路は見つかったか?室内の構造が複雑すぎて目が回っちまうよ、絶対サルカズたちに改造されたに違いねぇ。

つい数分前に、交戦してる音が聞こえたよ、隊長。

だからきっと出口もこの近くにあるはず……

うぅむ……

やっぱいいやビル、なんか喋ってくれ。そのままぽっくり永眠しちまうほうが怖いぜ。

前回の勝ち戦で、お前オレに奨励を求めてきたんだが、それがなんだったか憶えているか?

えーっと……フルーツの缶詰だったか?

んなわけねえだろ、ハガネガニのロボットが欲しいって言ったんだよ!金融街に住んでる姪っ子に送りたいってな!

あーそうそうそれだ、いや~空腹で忘れてしまったよ……いい記憶力をしてるじゃないか。

記憶力ってお前なぁ……言っとくがあの後オレは任務に出る以外は何日も寝ずに、お前のためにそのロボットを作ってやってたんだからな!

もうすぐ完成するんだから、ここでくたばったら承知しねえぞ、帰ったらとっとと持っていきやがれ!

ゴホッ……わかった、ありがとよ、隊長。

足音!

まずいよ隊長、サルカズだ――!

どこに行きやがった?

見ろ、地面に血痕が残ってる。そう遠くには行ってないはずだ、追うぞ!

はやくここから脱出しないと。

ッ……

隊長、アタシもビルを支えてあげるよ。

お前ら二人に支えられないと歩けないたぁ、情けない限りだぜ……

そんなこと言わないで。言ってたじゃん、アタシたちは家族だって。家族なら助け合うのは当たり前でしょ。

隊長!あいつらが追ってきました!

もう少しだけ持ち堪えてくれジョニー!ガビー、お前に渡した手榴弾はまだ持ってるよな?よく狙ってから投げてくれ、援護が必要だ――
(手榴弾を装填する音)

了解!
(爆発音)

ロックロック、このままロック17号で前の道を探ってくれ、オレたちが逃げ切れるかどうかは全部そいつに……

右に曲がって、はやく!

わかった、右だな!

ちょっと待て……今誰が喋ってたんだ?ロック17号なのか?お前……まさか生きてるとか……

……エンジニアにしては低レベルなジョークだね?

こっちはこのドローンのシステムにハッキングするのに超~~~苦労したんだからね!……あっ、でも誤解しないでロックロックさん、なにも弄っちゃいないから、このシステムの作りが単純すぎるのがいけないんだよ。

……

……もしかして、クロージャさん?

ピンポ~ン、クロージャで~す!まあキミのドローンにアタシの音声素材を入れる時間なんかなかったから、電子部品で発声を誤魔化してるだけなんだけどね……はぁ、だからそんなにかわいい声してないっしょ?

ううん……結構似てるよ。

それで、これからどこを進めばいいの?

左に……いや違う違う、左にはサルカズがいるんだった、あっ、敵のサルカズってことね!だからはやく後退――

後ろのほうがもっと敵が多いよ。

う~ん……そうだねぇ……

そうだ、じゃあ上に上がろう、上だ上だ!

えっ、上?

ほら、キミたちってあの飛べる装備を持ってるじゃん?そうそう、ジップラインだ!ちょうど今キミたちの真上に人ひとりが通れるぐらいの通気口があるから、そこから――

……そこを通らなきゃならないのか?

クロージャ、こっちには重傷者がいるんだ、もしミスでも起こしちまったら、それこそこっちは全滅だぞ。

う~ん、そうだなぁ……じゃあロックロックさん、ちょっとこのドローンの操作を任せてもいいかな?

わかった。

それで、アタシは何をすればいいの?

おいロックロック……本当に通気口を通る気か?

じゃあこれ以外にもっといい方法があれば教えてもらえるかな、隊長?

……

隊長!連中がもうすぐこっちに来ちまいますよ!部隊長らしきサルカズも見えています!
(手榴弾を装填する音)

チッ、クロージャ、ロックロック、はやく通気口を開けてくれ!

了解!ロックロックさん、狙って狙って!

ロック17号――!
(ドローンがアーツを放つ)

どうだ?こじ開けられたか?

あともうちょい。

もういっちょだ!

ロック……
(斬撃音)

ドローンが落された!そんな……こんなに距離が開いてるのに、斬撃が届くなんて……

今頃になって逃げ道の確保か?遅すぎるぞ。

隊長、ここは俺に任せてはやく――

蛮勇は戦場じゃなんの役にも立たないぞ。
(???が自救軍の戦士を切り伏せる)

ジョニー!!!

ロックロック、はやく通気口を――!

も……もうこじ開ける方法が……

隊長、俺がなんとかします、ここにまだ二発の手榴弾がありますから、これならいくら頑丈な身体を持ったサルカズだろうと……
(???が手榴弾を真っ二つにする)

なっ、手榴弾が……真っ二つにされちまっただと?しかも起爆せずに……

隊長、ありゃただのサルカズじゃ――
(???が自救軍の戦士を切り伏せる)

ガビー!

残念だが、俺はただの平凡な傭兵にすぎないさ。

その程度でマンフレッド、あるいはテレシスを倒そうと……本気で思っているのか?

足元にも遠く及ばんな。

サルカズてめぇ……手榴弾の二発が最後の手段だとでも思ってんのか?
(ヘドリーが手榴弾を真っ二つにする)

俺から見ればあれは煙を吐くだけの小道具に過ぎない、手榴弾なんて名ばかりなものだ。

サルカズの身体を粉々にするような爆弾なら、そんなかわいい形はしていないぞ。

……

フェスト、ロックロック、聞こえてる?ドローンを調整し直したから……チャンスはこれで最後だよ!しっかり掴まっててね、頼んだよ!

ロックロック――!

――
(ドローンが通気口をこじ開ける)

成功だ!隊長、上がれるよ!

お前から上がれ!

ダメ、ビルを連れてるのはキミなんだから、キミから先に上がって――

……わかった!
(フェストが上に上がる)

サルカズ、これ以上追わせはしないよ!

アタシはアタシの家族を守る、これ以上……好き勝手に彼らを傷つけさせたりはしない!

ロック17号!
(ドローンが自爆する)

ドローンが自爆した?

だとしても……威力不足だな。

隊長……はやく……逃げて……

教えてくれフェリーン、一人の戦友を救うために、二人……あるいはそれ以上の戦友たちの命を天秤にかけることは、本当に割に合ってると言えるか?

そいつらは死の直前、全員が隊長の名を呼んでいた。

お前は、そんな者たちの犠牲を背負いきれるのか?

……だとしてもオレは、誰ひとり死なせはしねぇ。

ロックロック、掴まれ!

え?
(ロックロックが上に上がる)

……

一度降りて引っ張り上げたか?賢いやり口だ、だが、まだまだ甘いな。

そんな小細工じゃ……いずれは戦場で死ぬことになるぞ。

またすぐ会うことになるさ、未熟なレジスタンスの戦士たちよ。お前たちは決して、この煉獄から生きて出られることはない。

クロージャさん、フェストさんたちは帰ってきましたか?
(爆発音)

――もう4分50秒経過よ。

カウントダウンでもしてあげようかしら?

……

では……
(フェスト達が駆け寄ってくる)

アーミヤ!!

間に合ったんですね!

えっ、フェストさん、三人だけなんですか?ほかの二名は……

……

……あいつらなら……もう帰ってこれないさ。

アーミヤ、今すぐここから離脱しよう!

あのサルカズが追って来たんだ、オレたちじゃ敵わねぇ、おまけにかなりの数を連れてきている、待ち伏せされたんだ!

クロージャのおかげでどうにか逃げられた、さもないと全滅してたぜ……

オレたちが仲間を助けに行くことも、お前らがここにいることも全部知っていやがった、あいつらはただ待ってただけだったんだ……こりゃ罠だぜ、はやく逃げないと間に合わなくなっちまう!
(爆発音)

チッ、それがもう間に合いそうにないわよ。

ったく、最後にして一番デカい地雷を使うハメになるなんて。

・また最後の一つなのか?
・これで何回目の最後だ?

うっさいわね、そうよ、爆弾はまだ残ってたの、誰かさんのために残していたのか当ててみる?遠慮はいらないわよ。

・もしかして緊張してるのか?
・そんなに厄介な相手なのか?

……さっきの爆発音がおかしいって思わなかったのかしら?あ~、それもそうね、だってそのマスクの下には何も入ってない空っぽだもの。

一つサルカズの怖い話をしてあげましょうか、あいつは一回もアタシのトラップを踏まなかった。踏まなかっただけでなく、爆弾の源石構造だけをご丁寧に壊していたわ。

つまりどういうことか分かる?そっ、地雷を設置するだけならまだよかったけど――

あたしの地雷を全部ダメにしたヤツは、あの憎たらしい龍女が最後だったってこと。

でもタルラがこんなところにいるわけがないわよね、違う?

ちょっとウサギちゃん、なによその顔は?あいつは今ロドスにいるんじゃ……

……は?まさかあんたたち……チッ、ドクターもケルシーも……マジで一遍死ね!

おめでとうドクター、ついさっき、あんたはあたしの吹っ飛ばしたいヤツランキングの第二位に繰り上がったわよ。

・嬉しくはないな。
・……
・どうも。

Wさん、まだ色んな情報を共有できていませんから、まずは撤退して……

……撤退?簡単に言ってくれるわね。

けどまあ、タルラが来てるわけじゃなくて助かったわ、あのドラコが吐く炎特有の自尊心の塊のような匂いを嗅がなくて済むんだもの。でも……

ここを包囲しろ!

――七番隊と八番隊、壁の向こう側に回れ!そこの道を塞ぐんだ!
(サルカズ傭兵が集まってくる)

……こんな短時間でこれほどの兵力を集結させたなんて……

しまった、ドクター、ハイディさんたちがまだ逃げきれていません!

すまねぇ、アーミヤ、オレたちのせいで……

その話は私たちが無事に脱出できた時に話しましょう。

……わかった。

ドクター、ここは私が……ってちょっと、えっ、Wさん?どうして私の腕を掴んで……

あんたは少しでも体力を残しておきなさい、ウサギちゃん。ここに残ってる人たちを見てみなさいよ、労働者、ケガ人、そして役立たず……戦力になれるヤツがどこにいるよ?

うっ……そりゃそうだが、オレたちも一応尽力したほうだぜ……

足は……ゴホッゴホッ……引っ張らないから。

いやいい、もう勘弁して、あんたたちまでをも連れ出していけるほど、あたしの足に肉はついていないから。その体力は逃げるために残しておきなさい。

はぁ……ホントはこういうの言いたくないのよね。全然あたしらしくないっていうか。

でも、どうしてもあのハイディには生きてもらわなきゃ困るのよ。あのクソババアのとこに連れて行ってあげる代わりに、問い質してやるためにもね。

Wさん……

だからウサギちゃん、もう逃げなさい。連れて行く人は全員連れていってちょうだい、燃えないゴミなんか残すんじゃないわよ。

……

Wさん!

んー?

……気を付けてくださいね。待ってますから。

さっさと行ってくれない?それとも帰り道もまた吹っ飛ばしてあげようかしら?
(爆発音)

……やーっと行った。

おかしなことばっか言ってくれるわね、まるであたしたちが親しい間柄か戦友みたいじゃない。

それであんた――

このままあたしにドッカンドッカン吹き飛ばしてもらってもいいのかしら?そしたらここ、更地になっちゃうんだけど。
(石が飛んでくる)

ちょっ……なによこれ?石ころ?どういう意味かしら、冗談にしては悪質すぎるわよ?

コングラチュレーショ~ン。あんた、あたしを怒らせたわね。
(Wが爆弾を起動させる)

チッ……本当はもっと節約しておきたかったんだけど、仕方ないか。

それでいい加減、姿を見せてくれない?ついでとしてあんたの死体をキレイなままにしておいてあげるからさ。
(剣が空振る音)

おっと、危ない危ない、爆弾二個分の隙がなかったら斬られてたところだったわ。

また成長したな、W。

ウソ……そんな――

なんで、あんたが……



