(戦闘音)

お前がそんな驚く顔を見せるとは意外だな。

ヒントは与えたはずだろ。

……それってあの石ころのこと?昔話をするなら時と場面を弁えてくれないかしら、こっちはちっとも笑えないんだけど。

あたしはてっきり……

てっきり、誰が来ると思っていたんだ?マンフレッドか?

……あんたを殺さずに取っておいて、おまけにロンディニウムで好き勝手のさばらせてるテレシスはボケ始めたんじゃないかって、思っただけよ。

もう長い間あんたたちの消息を聞いていないもんだからね、とっくに死んだかと思ってたわ。

……

フッ……それもそうかもね。だってほら、あんたの言う通り、あたしは確かに変わった……感傷的に。あたしたちはただの傭兵だってことを一時的に忘れてしまったぐらいには、ね。
(爆発音)

起爆に躊躇に出てるな、W。

そういうあんたのほうは、もう手が震えていないじゃないの。
(ヘドリーが剣を振り回す)

レユニオンから連れていった傭兵たちはどうした?まさか本当にお前一人で来たのか?

あいつらをここに連れてきて、あんたと同じように摂政王に買収されるサプライズなんて、あたしは受けたくないからね。

……仲間思いだな。どうりで見知った顔を見ないわけだ。

あたしは違うけどね、ロンディニウムで色んな見知った顔が見れたわ。

相変わらずだな、いつも俺のところから部下を掻っ攫っていく。

それじゃあシュワブはやっぱり死んだわけ?それともあんたが殺ったのかしら、ヘドリー?あいつはあたし以上のあんたの古株じゃなかった?

かつてあんたを一日中背負って、テレシスから送られてきた十数人もの殺し屋から逃がしてくれた古い馴染を殺した時、手は震えなかった?

一つだけ間違えているぞ、W。ロドスの護衛任務についてた頃、あいつはすでに部隊を離れていた。

そう、こういう一緒に戦ってきた人たちのことは、あたしよりもあんたのほうが憶えていたわね、確か。

それでずっと聞きたかったんだけれど、そういう死んだ連中を記憶に留めておいたほうが、安心するのかしら?

……

しなさそうね、だってあんたのその顔が教えてくれてるんだもの、今までよりさらに悪夢を見る回数が増えたってね。
(斬撃音)

W、俺とお前が知り合ってからもう随分と久しい。

お前があれこれと俺の感情を刺激しにきているのは、自分の心の動揺を隠したがっているからじゃないのか?

へぇ~、よくご存じで。
(斬撃音)

昔のお前なら、きっと躊躇なくあの足を引っ張るレジスタンスたちを撒き餌にして、こちらに寄越していたはずだ。

もしWが自ら進んで殿を務めた、なんてことを聞かされた際は――ちっとも笑えない冗談だと俺は言うだろうな。

チェルノボーグでの経験で頭が完璧におかしくなってしまったのか、W?

タルラによって脳みそが完全に焼き切れてしまったのか?それとも見るべきでない幻影を、誰かからすでに死んで久しい幻影を見出してしまったからなのか?

イカレたヤツがわざわざ自分は狂ってる、なんてことは言わないでしょ?どうして狂ってしまったのはあたしだって言えるのかしらね?

テレシスの信頼は値が張るものよ。シュワブの首だけじゃ全然足りないはず、ほかにいくらつぎ込んだの?

もしかしてあんた、彼女を……

それ以上言うな。

あら……やけに反応するわね?

俺たちはやれるだけのことをやった。

お前は出遅れすぎだ、W。

聞き間違いかしら、あんたが自分の無能さに言い訳をするなんてね?あの時、自分はもうすでに決心できてるって言ったのはどこの誰だったかしら――

俺がなんのために片目を失ったと思っているんだ?

ちょっと待って、まさかイネスはもう……

そうだ、彼女なら死んだ。

……またそれぇ?

そんなの信じ……

信用の失墜にはケジメがつく、それが傭兵だ。だからこれは、俺なりのケジメだ。

出て来れたわね。

ええ、今のところは順調そのもの、幸運に見舞われたのでしょうか?

サルカズ兵たちは全員南で起こった爆発に引き寄せられていますし、拷問室の近くにいた看守の数人もダブリンが前もって片付けてくれてましたからね。

……戦場の幸運を信じる人なんてロクな結末を辿らないわね。

フッ、でもそういった奇妙な幸運に巡り合ったからこそ、ここまで生き残れたんじゃないの?

――

えっと……誰ですかあいつ?あいつらも拷問室から逃げてきたヤツらなんでしょうか?もしかして……友軍とか?

……いいえ、敵よ。

(狙っておいて。)

(ただし……まだ撃ってはダメよ。)

あんたは私に会うなりボウガンを構える決まりでもあるわけ?私たちにずっと着いてきたから、あんたらは無事ここまで辿りつけたんでしょうが、こっちにはバレバレよ。

……ありがとうって言ってほしいのかしら?なら私と一緒にロンディニウムの一番深いとこにある監獄まで来てもらいたいわね。

……

正直言って、あんたらにはある意味感服したわ。

あんたはあの全身脂まみれで、下水道に流される価値しかない貴族たちとは違う。

持っていた日常を保つためなら、あいつらはどんな人の足でも舐めるわ。サルカズもダブリンも……あいつらからしたら大差ないんでしょうね。

でもあんたは……絶対に諦めたりしない人だわ。忌々しい虫みたいに、私がどこに行こうが、目の前を飛び回って邪魔立てしてくる……

邪魔立てしてるって言うのなら、お互い様でしょ。

なっ……!

ゲホッ……ゲホゲホッ……ま、マンドラゴラ……

そちらのお友だち、かなり重傷ね。

あんたの兵士たちもどっこいじゃない。

今は急がなきゃならなさそうね、お互い。

……

そうね、今はあんたに構ってる暇はないわ、残念。

それは何より。

じゃあすまないけど、道を譲ってくれないかしら。

……

……行くわよ。

あっ、そうそう――

ん?

私が直々に岩であんたを貫いてあげるから……

それまでサルカズに殺されるなんてことはないようにね。
(立ち去る)

ふぅ……ホルン、また事なきを終えましたね。

……こっちもサルカズのために弾薬を節約したいところだったからね、何よりだわ。

それってつまり……

順調に進み過ぎている、あなたもそう思ってるでしょ?

ダブリンが拷問室から誰を連れ出そうが、あのサルカズたちがそのままあいつらを見逃すとは到底思えないわ――

――私たちも含めてね。

ハイディさん、全員脱出できましたか?

はい、アーミヤ、全員ここにいます。
(矢が複数飛んでくる)

危ない!
(アーミヤがアーツで周囲を破壊する)

ハイディさん、身体が弱ってる方から先に行かせてください、追ってきたサルカズ兵は私たちが対処します。

フェストさん、まだ戦えそうですか?

もちろんだ。

ビル、振り落とされないようにしっかり掴まっておくんだぞ?

みんな、前にも敵がいるよ!きっと別の入口から出てきたんだ!

目標を発見した!

はやくこっちに来い!あいつらを片付けるんだ!

フッ、吾輩から逃げるなんていい度胸してるじゃない。後ろを見ないで走ってると、転んじゃうよ~。
(モーガンがサルカズの戦士達を殴り倒す)

何人か取り逃がしてるぞ。

あんたはまだやり足りてないんでしょ?

ならとっちめてやりな、まずはあの術師から片付けるんだよ。万が一吾輩たちの負傷者にアーツでも投げ込まれたら一大事だ。

よかったぁ、モーガンさん、ダグダさん、来てくれたんですね――

アーミヤ、ドクター、間に合ったかい?

・ジャストタイミングだ。
・これでひと安心できたよ。

ふぅ……というかあんた、吾輩たちの引継ぎが一人だけだなんて聞いていないぞ。

・一人で十分だ。
・実は一人だけじゃないんだ。

ロドスを理解すればするほど、ロドスが不思議に思えて仕方なくなるよ、ドクター……

となってもまあ、いくら不思議なオペレーターを見たところで、一番不思議なのはやっぱりあんただね。

やっぱりね……まだなんか策を講じていたんでしょ?

その点に関しちゃ、吾輩たちは同じ類の人間だね。

そうだ、今はサルカズ兵たちがここに引き寄せられていように見えるが、実際吾輩たちが駆けつけてきた時はあまりサルカズ兵の数を見かけなかった。

だから吾輩たちの代わりに敵を惹きつけてくれてるあのお友だちは……特段実力を持っていなければ、極めて危険な状況に陥ってしまうよ。

私も、Wさんが心配です……

W?WってあのWかい?あのチェルノボーグに行ったオペレーターの多くが忘れられないっていう……

はい、そのWです。

……ホント人材が多種多様だね、ロドスは。

今はまだ……仲間でいてくれていますよ。

ドクター、Wさんがハイディさんに用があるって言ってた時、彼女の目つきがその……少しおかしかったんです。

・何か感じたのか、アーミヤ?
・いつもあんな様子じゃないのか?

彼女の感情は……ほかの人たちと比べて少々特殊でして。いつもは偽ったりしているんですけど、そうしていない時は目つきで分かるんです。

前にあのような目つきをしたのは、中枢区画を止めるキーを私にせがむ時でした。

もしかしてWさんは……まだほかに何か伝えたかったことがあったんじゃないかって思うんです。

・彼女が戻ってきたら、聞いてみるといいよ。
・彼女はWだ、きっと戻ってくるよ。

そうですね……今回も、彼女を信じましょう。

ハァ……ハァ……

血を流し過ぎたな。

あんただって全身穴ぼこじゃないの。

昔みたいに、爆弾を隠し持っていたほうがよかったかもな。そうすれば、少なくとも俺を道連れにできてたはずだ。

ゲホッ……ねえヘドリー。

あたしの首っていくらするのかしら?あんたがロンディニウムで一戸建てを買えるぐらい?

申し訳ないが、摂政王はお前のような傭兵の名を憶えてくれはしない、だから値も張らないだろうな。

ハッ……それイネスにも同じことを言ってやったわけ?あんたたち二人のしょうもない夢で首を落とす前に。

こんな状況になっても、相変わらず素直じゃないな。

そりゃそうよ。じゃあ何?あんたたちのバカさ加減に手を叩きながら爆笑してあげたほうがよかった?あたしにほんの僅かでも悲しんでほしいと企んでたのならお生憎様ねヘドリー、そんなのあたしらしくないわ。

……バカなのはどっちだ。現に倒れているのはお前であって、俺ではないじゃないか。

だから言ったでしょうが、あたしはただちょっと……驚かされただけだって。

俺の手足を三四回吹っ飛ばせたはずのチャンスを見逃してしまうほどにか?

それこそお前らしくないぞ、W。一体お前は何に取り乱しているんだ?

死んだと思ってた古いお友だちが実は生きてて、その上まさかあたしを殺そうとしていた、これでも足りない?

それだけは本心のように聞こえるな。

W、その古いお友だちは……誰のことを指しているんだ?

……そういうところが嫌いなのよ。あんたもあいつみたいに、いっつもあたしを見透かせると思ってる。

残念だが、今回ばかりは見透かしてもらったよ。

お前はロンディニウムに潜り込んでしばらく経つようだが、そこまで心情を乱すような人や出来事にはそれほど遭っていないはずだ。一体市内で何を見たんだ、W?

……フッ、あんたテレシスに着き従ってるくせに、あいつが何を企んでいるのかまだ分からないわけ?もう何回かあのニセの王座に跪いたらどう?そしたらはっきりと見えてくるかもよ?

そういうお前は知っているんだな。

その“あんたは知ってる知らない”とかいう謎かけゲームはもうやめてちょうだい。いい加減傭兵らしさを見せなさいな、ヘドリー。

W、もうお前をここから生きて返すわけにはいかなくなった。

俺は多くの顔見知りを殺してきたが、その中でもお前ならきっと……俺の選択を一番理解してくれるはずだ。

……一体どっちが躊躇するようになったのやら。

なら見届けてあげようじゃないの、あんたが本当にあたしの心臓に剣を突き刺せられるのかどうかをね。

……いいだろう。

さらばだ、W。
(ヘドリーの剣が弾かれる)

……なに?

剣が……防がれた?これは……短刀?どこから飛んできたんだ?

……動くな。

……

…………

久しぶりだな、アスカロン。

……

あんた……

お前も動くな。

ゲホッゲホッ、動いたらどうなるっての?

……ちょっと待って、あんたは私を助けに来たってことでいいのよね?

……

ウソでしょ、まさかこいつを助けるつもり?テレシスが彼女に何をしたのかを知らないあんたじゃ――
(アスカロンがWに物を投げる)

……

投げるならしっかり狙いを定めてくれない?こっちは重傷を負ってるのよ、しっかりキメてちょうだい。

……それは惜しいことをしたな。

……

……

結局あんたはあたしを殺せなかったわね?

あんたもあたしもお互いのボスになったことがあったけど、今じゃそんなあたしら二人のボスになった人がお出ましになった。それに、相当不機嫌そうね。

……そうだな、もしかすれば二人仲良く同時に首を落すことになるかもしれないな。

だから俺は……もうこれ以上話すことはない。

……W。

お前は口数が多い、血をこれ以上流したくないのなら黙っているんだ。

はいはい分かってるわよ、ご心配どーも。

どうやらここで一緒に死にたくなければ……この凡ミスを受け入れなきゃならなくなったわね、ヘドリー“隊長”。






