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【明日方舟】10章 破砕日輪 10-18「理想の倒影」翻訳

マンフレッド
マンフレッド

……殿下。

テレジア
テレジア

残念……間に合わなかったみたいね。

マンフレッド
マンフレッド

……殿下も私同様、ヤツらを阻止できなかったと、遺憾に思われてるのでしょうか?

テレジア
テレジア

マンフレッド……

テレジア
テレジア

畏まって私と話すようになったわね……カズデルにいた頃と違って。

マンフレッド
マンフレッド

……

テレジア
テレジア

あの時のあなたなら私の目を見て話してくれてたのに。

マンフレッド
マンフレッド

あの頃のカズデルは、ただの荒廃した廃墟、叶わぬ夢となった青写真にすぎません、殿下。あの頃の殿下はテレシス将軍と……

マンフレッド
マンフレッド

いや、今はもはやあの往日を思い起こす必要もありますまい。

マンフレッド
マンフレッド

あなたは戻られた、将軍のもとへ。そして両殿下が王たちを率いて、過去に何度もあったように、必ずやサルカズに勝利をもたらしてくれることでしょう。

マンフレッド
マンフレッド

私やほか将兵たちに必要なことはただ一点、それを信ずるのみです。

テレジア
テレジア

ええ……

テレジア
テレジア

でもね、マンフレッド……私、どうしてもあの子に会いたいの。

マンフレッド
マンフレッド

なっ――!

テレジア
テレジア

はたして死者はもう一度夢を見ることが叶うのかどうか……あなたはどう思う?

テレジア
テレジア

この数か月もの間、私はよくあの子らの夢を見たわ。

テレジア
テレジア

あの舟を、ちっとも笑わない医者と語り合う場面を、私があの寡黙な指揮官と甲板で肩を並べる場面を見た、何度も何度も……

テレジア
テレジア

……ベッドに寄り添い、サルカズとこの大地の物語を語り、あの子を寝つけさせる場面もね。

マンフレッド
マンフレッド

テレシス将軍は……そのことをご存じで?

テレジア
テレジア

彼ならなんでも知ってるわ。

テレジア
テレジア

しかし所詮はただの夢……違う?

マンフレッド
マンフレッド

殿下、頬に……

テレジア
テレジア

あら……灰がついちゃったわね。

マンフレッド
マンフレッド

てっきり……

テレジア
テレジア

涙なら流さないわ。

テレジア
テレジア

いや……なぜ私は涙を流せないのかしら?

聴罪師
聴罪師

摂政王殿下、やはり“彼女”を城壁へ行かせたのですね?

テレシス
テレシス

“魔王”の脅威ならお前とて把握してるだろ。

聴罪師
聴罪師

無論でございます。マンフレッドや大君とて、事なき終えてあの力の継承者を捕らえられるとは限りません。

聴罪師
聴罪師

――“魔王”を打ち倒すためなら、当然最も妥当な人物を選ばなければ。

テレシス
テレシス

思惑があったのだろう?お前が私にそれを提案した時に。

聴罪師
聴罪師

確か私が初めて“彼女を連れ戻す”提案を奏上した時、危うく殿下に斬り捨てられるところでした。

聴罪師
聴罪師

“虫唾が走る”――そう仰っておりましたよ。あのような激昂っぷり、忘れられようもございません。

テレシス
テレシス

今もその考えは変わっておらんがな。

聴罪師
聴罪師

しかし我々は“彼女”が必要です、違いますか?

聴罪師
聴罪師

両殿下がご一緒であらせられなければ、将兵たちも信じてはくれないものなのです、先の混沌で暗黒だった時代はもう終わったのだと。

聴罪師
聴罪師

あなた様が発せられる命の正当性を疑う者もいなくなります。サルカズたちの心中には以後、もはや異なる二つ声もないのでしょうから。

聴罪師
聴罪師

そのためにも、我々もいち早くもう一人の“魔王”を手中に収めなければなりますまい。

テレシス
テレシス

であれば確実なものにしろ。

テレシス
テレシス

兵たちには必ずやこの戦いに集中してもらわなければならないからな。

テレシス
テレシス

彼らは知るべきなのだ、追随すべきなのはどこぞの馬の骨が握っている力なんぞではなく、みなを苦難から解放してくれる主君であるのだと。

聴罪師
聴罪師

存じ上げておりますとも、あなた様は生来よりあの黒き冠を蔑んでおられる。

聴罪師
聴罪師

“魔王”に対する研究もこちらで着々と続けております、あなた様をご満足させるためにあるのですから。

聴罪師
聴罪師

確かな進捗も得られておりますよ、これもすべては“彼女”のおかげ。仮に我々があのコータスを手中に収めれば、長くもしないうちに、きっと真に“魔王”の力を知ることができるでしょう。

テレシス
テレシス

サルカズはいかなる人や力の奴隷にあらず。

テレシス
テレシス

仮にあの“魔王”の冠もただの枷だったのであれば――

テレシス
テレシス

必ず打ち砕くのだ。

聴罪師
聴罪師

あなた様の理想は私の理想……必ずややり遂げてみせましょう、摂政王殿下。

聴罪師
聴罪師

まさかこうもお帰りが遅くなるとは思っておりませんでした、大君様。

???
ブラッドブルードの大君

……フッ。

聴罪師
聴罪師

なにやら少々……お疲れのご様子で。

ブラッドブルードの大君
ブラッドブルードの大君

聴罪師、あのバンシィもあの場にいたとは聞かされていないぞ。

聴罪師
聴罪師

ふむ……大君様ならお気づきになられていたと思っていた次第でして。

ブラッドブルードの大君
ブラッドブルードの大君

フンッ。

ブラッドブルードの大君
ブラッドブルードの大君

バンシィとは厄介な相手だ、時折あの腐れ喰いよりも鬱陶しい。まさかあれほどの天賦の才があったとは……

ブラッドブルードの大君
ブラッドブルードの大君

しかし次会った際は、ヤツの舌を水晶の箱に収め、プレゼントとしてヤツの母に送りつけてやろう。

聴罪師
聴罪師

それはあまりよろしくないかと存じます、大君様。摂政王殿下とナハツェーラーの王の反感を買うかと。

ブラッドブルードの大君
ブラッドブルードの大君

知らぬうちに行えばよいだけのことよ。

ブラッドブルードの大君
ブラッドブルードの大君

それとあのマンフレッドもだ……よくも我が頭上で城壁についてるおもちゃを動かしてくれたな。

ブラッドブルードの大君
ブラッドブルードの大君

私が被ったこの埃、半分はヤツの仕業と言えよう。少々説教をしてやらねばな。

聴罪師
聴罪師

心中お察しします、大君様。

聴罪師
聴罪師

ではこう致しましょう、今回情報が欠如したささやかな償いとして、“魔王”の捕縛任務を大君様に委ねるよう、私から摂政王殿下へご提言致します。

ブラッドブルードの大君
ブラッドブルードの大君

フッ、とすればヤツも失敗に終わったのだな。ヤツは意志薄弱な穀潰しだと、最初からテレシスに言ってやったものの。

聴罪師
聴罪師

差し支えございません、これもすべて摂政王殿下の計画のうちですので。

聴罪師
聴罪師

今はあの人たちに逃れた喜びを味わわせてやりましょう。希望と信念を打ち砕くのは、実現してからが美味でございますゆえ。

ブラッドブルードの大君
ブラッドブルードの大君

ハッ……確かに、今は市内にいる貴族どもも蠢いていることだしな。よかろう、ヤツらにはもうしばらく阿呆のままでいさせてやる。

ブラッドブルードの大君
ブラッドブルードの大君

パーティが最高潮に達し、歓笑が瞬く間に悲鳴に変わる時の味と匂いこそが……至上というものだ。

ブラッドブルードの大君
ブラッドブルードの大君

して、その貴族なんだが――

聴罪師
聴罪師

まだ何か摂政王殿下へのご報告が?

ブラッドブルードの大君
ブラッドブルードの大君

いや、なんでもない。

ブラッドブルードの大君
ブラッドブルードの大君

代わりにテレシスに伝えてくれ……次のパーティが楽しみだとな。

(ブラッドブルードの大君が立ち去る)

聴罪師
聴罪師

……何かを察して、あえて隠した?

聴罪師
聴罪師

そのような姑息な真似……摂政王殿下も長くはご寛恕賜らないことでしょう。

聴罪師直属衛兵
聴罪師直属衛兵

首領。

聴罪師
聴罪師

市外にいる公爵軍に動向はありましたか?

聴罪師
聴罪師

そうですか……

聴罪師
聴罪師

ナハツェーラーの王もそろそろお戻りになられる。お帰りになった際は、直ちに摂政王殿下のもとまでご案内して差し上げなさい。

聴罪師
聴罪師

それと……あるヴィクトリアの貴族が何名かのトランスポーターを送り返してきた、と仰いましたね?

聴罪師
聴罪師

では行きましょう、彼らに会いに。

聴罪師直属衛兵
聴罪師直属衛兵

それともう一件ございます、首領。

聴罪師
聴罪師

……おや、なんでしょう?

聴罪師
聴罪師

ほう……よもや彼女が、このタイミングで戻ってきたとは。

聴罪師
聴罪師

ふむ……

聴罪師直属衛兵
聴罪師直属衛兵

いかが致しますか?

聴罪師
聴罪師

……

聴罪師
聴罪師

王立科学院へ伝えてください。

 

聴罪師
聴罪師

そろそろ……久しぶりに家族で団らんするとしましょう。

シャイニング
シャイニング

リズ……大丈夫ですか?ちょっと急ぎ足だったので、疲れてないですか?

ナイチンゲール
ナイチンゲール

……平気です。

シャイニング
シャイニング

もしどこか苦しかったら、必ず言ってくださいね。

ナイチンゲール
ナイチンゲール

はい……それが、胸のあたりが少し苦しくて。

シャイニング
シャイニング

故郷に近づいてきたからですか?

ナイチンゲール
ナイチンゲール

いいえ、あそこは故郷とは呼べません。

ナイチンゲール
ナイチンゲール

シャイニング……それと二アールさんがいる場所こそが、私の故郷ですから。

シャイニング
シャイニング

できることならあなたをここへ連れて行きたくはなかった……

ナイチンゲール
ナイチンゲール

けど、私はそう願いました。

ナイチンゲール
ナイチンゲール

あなたとご一緒したいんです、それに……失ったものも取り返したかったので。

ナイチンゲール
ナイチンゲール

……感じるんです、失ったものたちがここにいるんだと。

シャイニング
シャイニング

そうですね。必ず見つけましょう、きっとあなたを治してくれます。きっとよくなりますよ。

シャイニング
シャイニング

その時になったら……一緒にロドスに帰りましょう。もちろん、カジミエーシュだって構いません……あなたの行きたい場所ならどこへでも。

ナイチンゲール
ナイチンゲール

……その時はあなたも一緒に来てくれますか?

シャイニング
シャイニング

……

シャイニング
シャイニング

ええ。

シャイニング
シャイニング

いつでも、あなたがそう望むのなら……ずっと傍にいてあげますよ。

新たな旅路に発ったかのように、しかし最初の起点に戻ったかのように。
ロンディニウムの城壁はまるで巨大な檻籠、閉ざされた墓場に見えたが、同時に一部の人々にとっての過去と未来の故郷のようにも見えた。
あまりにも多くの答えが、そしてより多くの疑問がここにある。
私たちは最後に、どこへ向かうのだろうか?
迎えるは団らんか……あるいは離別なのだろうか?

ロックロック
ロックロック

アタシたち……生き、残れたの?

フェスト
フェスト

ああ、これでようやく一息つけそうだ。

ロックロック
ロックロック

うっ……うぅ!

フェスト
フェスト

お、おいどうしたんだよ、急に泣き出して?は、初めて見たぞ、お前が泣きだすところなんて!

ロックロック
ロックロック

アタシ……

ロックロック
ロックロック

ううん、なんでもない、ただ……ビルを思い出して、彼のことを考えたら、つい……

フェスト
フェスト

ビル、か……

ロックロック
ロックロック

ううぅ……ひっぐ、ダメ、まだ、泣いちゃダメ。

ロックロック
ロックロック

戦いはまだ……終わってないんだから。

フェスト
フェスト

大丈夫だロックロック、今はしばらく安全だ、少しは肩の力を抜いて、ビルやほかの仲間たちを、悼んでやろうぜ……

フェスト
フェスト

俺たちにはその権利がある、次の戦いが起こるまでな。

アラディー
???

ようやく会えたな。

シージ
シージ

貴様は……

アラディー
アラディ

アラディ・カンバーランド。アラディと呼んでくれ。

アラディ
アラディ

クロウェシアとは友人でな、オクトリーグ区に展開するロンデニウム市民自救軍――つまり周りが言う中央区の担当責任者だ。

シージ
シージ

……カンバーランド?

シージ
シージ

では貴様はカンバーランド公爵の……

アラディ
アラディ

……娘だ。

アラディ
アラディ

父が亡くなった時、私はまだ幼子だった。

アラディ
アラディ

父に関する記憶といえば、毎回剣術試合が終わった時に汗ばんだ髭で私の頬を擦りついてきたことだけだ――二十数年生きて、憶えてるのもこれだけになってしまった。

シージ
シージ

カンバーランド公爵は確か……王室に反対するほか貴族たちに謀られて殺害されたと聞いている。

アラディ
アラディ

父は自分の理想のために、自分が唯一正しいと思った道を歩んだ。

アラディ
アラディ

とても尊敬していたよ、ゆえに私もここにいるということだ

シージ
シージ

貴様もほか貴族も……ずっとサルカズと抗ってきたのか?

アラディ
アラディ

ああ、とはいえ今まで抗ってきてようやく進展が見えたといったところではあるがな。

アラディ
アラディ

イザベルが私のところに来た時は本当に驚いたよ。

アラディ
アラディ

彼女はあのマンチェスター伯の後継ぎだからな――ちなみに、伯爵は長いこと我々に協力してくれてる後ろ盾のうちの一人である。

アラディ
アラディ

ただ最初の頃は、塔の騎士たちは全滅したと思っていたんだ……だからイザベルの生還は我々にとって大きな励みとなった。

アラディ
アラディ

無論、一番驚いたのはやはり……お前の存在だがな。

シージ
シージ

私を知っているのか?

アラディ
アラディ

はは、本当は知らなかったさ、さもなければ“驚いた”とは言えないだろ?

アラディ
アラディ

長い間ずっと、我々はお前を探し続けてきたが、わずかな痕跡すら皆無だったよ。お前はもうとっくに死んだ、それが周りの結論だった……

アラディ
アラディ

だが私はそうは思わなかった。

シージ
シージ

私を探してる連中全員が私の殺害を目的としていたわけではなかったのだな。

アラディ
アラディ

もしかすればだが……

アラディ
アラディ

その連中の中にも、今じゃ考えが変わった人もいるのかもしれないぞ。

アラディ
アラディ

今のロンディニウムの惨状はお前も見ただろ――

アラディ
アラディ

もうとっくに、人々は自由を失っている。

アラディ
アラディ

ヴィクトリア人であれば、たとえ爵位を与えられた貴族でさえ、サルカズの奴隷になるか、明日の太陽を拝むために戦々恐々とするしかない。

アラディ
アラディ

その者たちはきっと夢の中で、いつも“陛下”と寝言を上げていることだろう――

アラディ
アラディ

あの時、もしあの絞首刑がなかったら、今のロンディニウムも今までのままだった、そう思わない人などいるはずもない。

シージ
シージ

貴様は本当に、私がここにいれば現状を変えられると思っているのか?

アラディ
アラディ

少なくとも可能性は一つ増える。

シージ
シージ

……

アラディ
アラディ

なにやらまだ考え込んでいるようだが、すでに決心はついているはずだろ。

シージ
シージ

……そう見えるか?

アラディ
アラディ

お前はイザベルをここに向かわせた、つまりそれは我々を率いてサルカズに抗う備えが整ったという意味ではないのか?

シージ
シージ

否定はしない、それを言うのであれば確かに決心はついた。

シージ
シージ

しかし備えというのは……いつまで経っても終わらぬものだ。

アラディ
アラディ

言えているな。

シージ
シージ

我々もそろそろ本題に進めるとしよう、アラディ殿……いや、アラディ。まずは現状の説明を頼む。

シージ
シージ

分かってると思うが、こっちはそれなりの復習が必要でな。

アラディ
アラディ

それは何よりだ、お前がその気でいてくれて嬉しく思うよ。

アラディ
アラディ

では……

アラディ
アラディ

よくぞお帰りなさいました、アレクサンドリナ……殿下。

ケルシー
???

ハイディ。

ハイディ
ハイディ

ケルシー先生……あぁ、ケルシー先生。

ハイディ
ハイディ

――やっぱり、会おうと思っても難しいことですね。

ケルシー
ケルシー

後はつけられていないか?

ハイディ
ハイディ

ご安心を、来た道の痕跡はすべて処理しております。

ハイディ
ハイディ

それさえもできなければ、あなたのトランスポーターなんて務まるはずもないでしょう?

ケルシー
ケルシー

君ならもう十二分によくやってくれている。君の父も誇りに思うだろう。

ハイディ
ハイディ

うふふ……

ハイディ
ハイディ

実は、昔に何度も失敗するんじゃないかって時にこう考えたことがあるんです……あなただったらどうしていたのかって。

ハイディ
ハイディ

私が皆さんを引っ張って乗り越えた時、先生はまたどういう言葉をかけてくれるんだろうって……

ハイディ
ハイディ

でも今、先生が私の目の前にいることを考えると、もうどうでもよくなってしまいました。

ケルシー
ケルシー

備えは確実、ということかな。

ハイディ
ハイディ

……はい。

ハイディ
ハイディ

少なくとも……いつまでも備えは怠りませんよ。ずっと。

ハイディ
ハイディ

そうだ、今すぐアーミヤさんに会いに行くおつもりで?

ケルシー
ケルシー

いや、すでに確認はできてる、彼女なら今しばらく安全だ。

ケルシー
ケルシー

ロンディニウムに来るのは久しぶりだからな、こちらも少し処理しなければならないことがある。

ハイディ
ハイディ

そうですか。

ハイディ
ハイディ

それともう一人……先生をずっと待ってらっしゃった方がいます。

(???が近寄ってくる)

W
???

――

W
???

ケルシー、説明して。

ケルシー
ケルシー

――まだ生きていたのか。

ケルシー
ケルシー

今度は何を説明してほしいんだ、W?

W
W

相変わらず動じないわね。ここに来るまであんたがアレを知ってたのかどうかすら判断できなかったなんて……

W
W

まあいいわ、あんたがバケモノかどうかなんてどうだっていい。今はそれよりも知りたいことがある。

W
W

テレジア……あれは本物のテレジアだった!

W
W

なんであんたは――彼女の遺体をテレシスの手に渡らせてしまったのよッ!?

アーミヤ
アーミヤ

……

ドクター
ドクター

アーミヤ。

アーミヤ
アーミヤ

あっ……すいません、ドクター、気付きませんでした。

ドクター
ドクター

・列車を降りてから、ずっと思い耽ってるようだな。
・車内でなにか見たのか?

アーミヤ
アーミヤ

はい……

アーミヤ
アーミヤ

ドクターには誤魔化せられませんね……誤魔化すべきでもないのですが。

アーミヤ
アーミヤ

私、見たんです……彼女を。

ドクター
ドクター

……

アーミヤ
アーミヤ

ドクター……ロックロックさんの言ってた通り、本当に彼女でした。

ドクター
ドクター

・ケルシーが言うには、彼女はもう……
・ケルシーが言うには、私が彼女を……

ドクター
ドクター

だからWもあんな態度で私に……

アーミヤ
アーミヤ

四年前、テレジアさんは確かに死にました。

アーミヤ
アーミヤ

その背後にある真相について、ケルシー先生やWさんは私と異なる見解を抱いてるのかもしれません……でもこれだけは、みんな同じです。

アーミヤ
アーミヤ

あの日、私たちは彼女を失ったのだと。

ドクター
ドクター

じゃあなぜ……

アーミヤ
アーミヤ

……分かりません。

アーミヤ
アーミヤ

ただ……駅で彼女を見かけた時、やっとわかったんです……なぜロンディニウムにこのような感情が渦巻いているのかと。

アーミヤ
アーミヤ

怒り……そして悲しみ。果てのない悲しみの感情が。

アーミヤ
アーミヤ

サルカズにとって怒りと悲しみは……同時に存在する感情。ただ彼らはほとんどの場合、怒りの炎で涙を乾かすんです。

アーミヤ
アーミヤ

そんな彼女は、それらすべての感情が煮詰まったかのような目をしていました。

アーミヤ
アーミヤ

でも昔のテレジアさんなら、あんな……

ドクター
ドクター

苦しいんだな。

アーミヤ
アーミヤ

苦しい、ですか?確かにそうかもしれません、でも彼らと比べれば……憎しみと偏見にすり潰されてるサルカズと比べれば、大したことはありません。

アーミヤ
アーミヤ

私が感じ取れるものは……まだあまりにも、少なすぎますから……

アーミヤ
アーミヤ

一瞥しただけでも、私は危うくそれらの感情に飲み込まれ、溺れてしまいそうでした。

アーミヤ
アーミヤ

じゃあそれらをすべて受け止めているテレジアさんは、私よりもその感情の渦に押しつぶされているんじゃ……?

ドクター
ドクター

自分を責めることはない。

アーミヤ
アーミヤ

いいんでしょうか?

アーミヤ
アーミヤ

ドクター、前にも言いましたよね、彼女に会っても本物だとは思えないって。

アーミヤ
アーミヤ

でも……この目で彼女を見た時、私はあっさりと受け入れてしまったように感じたんです。

アーミヤ
アーミヤ

であればここに来た以上、私は真実を確かめなければなりません。

アーミヤ
アーミヤ

テレジアさんの真実を、市内にいるサルカズ……彼らが何を経て、あれほどまでの怒りと悲しみを抱えてしまったのかという真実を。

ドクター
ドクター

もしその真実がさらなる苦しみをもたらすことになったらどうする?

アーミヤ
アーミヤ

ドクター……

ドクター
ドクター

・恐れていいんだ、アーミヤ。/
・私も恐ろしい、アーミヤ。

ドクター
ドクター

だから、行く時は一緒に行こう。

アーミヤ
アーミヤ

はい!

アーミヤ
アーミヤ

一緒に行きましょうね、ドクター……

アーミヤ
アーミヤ

答えを求めに。

ドクター
ドクター

ああ、私が求めている答えでもあるからな。

(アラディが近寄ってくる)

アラディ
アラディ

失礼、二人共。お話の最中にすまない――

アラディ
アラディ

アレク……ヴィーナと我ら自救軍にとって非常に重大かつ急を要することがあってな。

アラディ
アラディ

ハイディからの手紙を見て、この件はお前にしか頼めないと判断したんだ。

アラディ
アラディ

聞きたいのだがドクター――

アラディ
アラディ

エドワード・アルトリウスの遺品は、今所持してらっしゃるかな?

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