
……

誰だ?

誰、ですか?

悲しいことを言いますね。

“シエスタ・アイスティー”を一杯ちょうだい。

――そちらの男性の方に。

ッ……

どうした?

きっとバーの冷房が効き過ぎていたんじゃありません?だからそちらの方はさっきからずっとベラベラと話されていたんでしょう。

一杯飲んで身体を暖めてみては如何?

どうして……

あ~、忘れるところでした、酒の好みが変わったんでしたっけ。

昔まだ執刀医だった頃、あなたの一番のお気に入りはこの“シエスタ・アイスティー”でした。アルコールが強いものですから、飲めばローキャン・ウィリアムズからの叱責と侮辱の言葉を忘れられますからね。

彼は122年もの刑期を課せられ、そしてあなたは……自由を得た。

自由だと……テメェが自由を語れる筋合いかよ!?

俺はずっとテメェらに従って、毎週身体のデータを送るハメになってるっていうのに……

シー。

今は仕事の話はやめましょう。

バーに来たからには羽を伸ばさないと。

それとも、あなたの古くからの友人と飲むより、そちらのお二方……表情の見えない人と表情のない人とお喋りに興じたほうがいいと言うんですか?

古くからの友人だと?ケッ……ふざんけんじゃねえぞ!

俺がこんなザマになったのは、全部テメェらが……

さあ、ひとまず乾杯しましょう、自由に。

……

サリア、こいつが現れたからにはもう俺に選択肢はない。

――!

あとは一人で頑張りな。
男は目の前に出されたグラスに手を伸ばし、皆の目の前でグイッと大半を飲み干した。
彼は目を強く睨みつけるも、その目は誰にも向けられていない。果たしてそこに浮かぶものは怒りなのか、それとも絶望なのか。
すぐに、男は直立不動のまま地面に倒れ込んでしまった。
両足は電撃を受けたかのようにガクガクと震えており、左手は力いっぱい自分の右腕を掴んで離さんとしている。
指先は自分の肉に食い込みそうになり、まるで彼を苛んできた電子パーツを過去の罪悪感諸共、身体から引きずり出そうとしているような様であった。

ちょっとちょっと、あの人どうしたの?

はやく救急車を呼んで!

――
(サリアが倒れた男を確認する)

・急病か?
・酒に何か仕込まれたか?

……癲癇を起こしてる。

血液内の成分も異常だ、薬物が引き起こした症状で間違いない。

彼に救急薬剤を注射する、それで少なくとも命は持つだろう。

あの酒……

半分しか飲み干してないじゃないですか……勿体ない。

――

残りの酒を飲んだ?

ええ、見ての通り。

……

理解が及ばないのなら、そのお友だちの歯を診たら分かるかもしれませんよ?

――左側二番目の小臼歯です。

……

中身がくり抜かれた入れ歯?

ローキャンの水槽から逃げ出す前に、彼は最後のオペを敢行したんです、自分へのオペをね。

最初からそれを知っていたのか。

この不確定要素は、本来なら私自ら片付けるつもりだったんです。だって、歯を一本くり抜いたところで彼の仕事にはなんら影響が及びませんから。

けど、私はそうしなかった。

ずっと信じていたからですよ……クルビアでは、少なくとも死ぬ自由は保障されるべきだって。

ドクター――

この病人を運んで、距離を取ってくれ。

・分かった。
・まさか……

目の前に今片付けねばならないことが起こった。
(研究員が駆け寄ってくる)

フェルディナントさん、新しいテスト結果が出ました!

今度の結果は君が私の目の前でそう大喜びするに値するようなものであるといいな。

……

67%だと?

こ、これでも尽力したほうでして……

重複実験の結果は?

こ、ここにあります。

パラメーターを見せてくれ、全部だ。

は、はい……

……

あの……

あのヤギめ、本当に何もしなかったとは。

これであとはホルハイヤのほうだけだな……きちんとサリアを阻止してくれるといいんだが。

元ライン生命警備課主任に片付けねばならないことと称して頂けるなんて、とても光栄に思います。

一体何者だ?

お会いするのは初めてですね、サリア主任。

けど、あなたに関することは色々と聞いていますよ。

ライン生命の創設者の一人であり、ツリーマウンズ理工大学の卒業生にして、生物医学課程で博士号を取得するも、その後はほぼ学界から姿をくらまし、警備課に移転したと――

ライン生命のことを話せば、どこもみんなクリステン・ライトのことを指しますけど、あなたを口にする人はめったにない。

今までずっと、悔しくはなかったのですか?

そんな必要はない。

これは私自らが選んだことであり、私の責務だからだ。

まあ、そうでしょうね。

あなたは自分を火消し役だと思い込んでいますけど、実際は炎上した現場に乗り込むのを一番楽しんでいるのは、その自分なのではなくて?

だってあなた、戦うの好きじゃありませんか。

とは言え、あなたは戦士というわけでもありません、サリア主任。あなたには挑戦と破壊をしたいという欲望を持っていませんから。

ただまあ、そのおかげであなたは学界の中でも浮いた存在になってしまっていますけど。

五年前に、ミュルジスからキレイな接ぎ木をされた植物を送られてきましたよね?一番得意とする彼女の小細工を駆使して、植物を踊らせるようにしたアレです。

それをあなたは受け取った。しかもそれから毎日朝七時には、自分のオフィスで好き放題伸びてくる新芽を剪定し続けている、そうですよね?

ライン生命を監視しているのか?

オフィス内の噂話を聞いただけなのかもしれませんよ?

ならきっと、その夏にミュルジスが三人の主任のオフィスをサルゴンのジャングルに変えたことは、まだ耳に入っていないんじゃないのか?

色々と警備課を困らせたものだったよ、あれは。

となれば……

あなたを一番困らせたのは、あの炎魔なのではなくて?

……

さっきまでお前はグダグダと生産性のないことばかりを喋っているが、一つだけ正しいことがある。

なんでしょう?

戦いは嫌いじゃないということだ。
(サリアがホルハイヤに襲いかかり、ホルハイヤが押し返す)

まあ、キレイなアーツですね。

あなたが自分の総括に手を出したあの時も、この技を使ったんですか?

傭兵にしては、些か好奇心が旺盛過ぎるぞ。

キャーッ!ケンカよ、あの人たちケンカをおっぱじめたわ――

酔っ払い……?ちょっと、警備員は何をしてるのよ!

……

あなた警備員?早くなんとかしてちょうだい!

私はただの技師だ、すまないな。

むしろここから逃げたほうがいい、死ぬほど危ないぞ。
(天井が崩れ始める)

オーマイ!天井が崩れかけてるわ、はやく逃げなきゃ!
(バーの客が逃げる)

ドクター、無事か?

・無事だ。
・私よりこの情報提供者の容態のほうが危ない。

Mechanist、君はサリアに加勢してやってくれ。
(サリアがホルハイヤの攻撃を弾いて突き飛ばす)

そんな急いで戦いを終わらせなくてもいいじゃないですか……

そんなに私と一緒にいるのがイヤなんですか?

クルビアであなたの一撃を耐えられる人はそうそういませんよ?

お前こそ、その腕を雇える人は相当限られてくる。

この一件はヴォルヴォート・コシンスキーとあまり関係性はない上に、お前の戦闘スタイルは軍のそれではない。

それに、この試験管の中身の手掛かりを断とうと焦ってすらいる。

ということは、お前の雇い主はフェルディナントか、あるいは……

……総括?

ここまで来ても、彼女を一番には疑わないんですね、サリアさん?
(サリアとホルハイヤがぶつかる)

お前は知り過ぎた、だからここに残ってもらうぞ。

サリア!
サリアは自分の同僚の姿と位置を確認した。この女の退路は塞がれている、逃げ場はない。
これ以上のやり取りも必要はなく、彼女は躊躇なくアーツを放つ。
エナメル質の壁が即座に現れ、ホルハイヤの急所に手刀が迫らんとした。

どうやらお喋りはここまでのようですね。

避けないのか?

必要ないですもの。成功確率が低いことはしたくないので。
本来なら、サリアの五指はこの女の腹部に接触するはずだった。
しかしおかしなことに、あれは人間の肉体の感触ではない。
ホルハイヤも、一切痛みの表情を見せなかった。
むしろ唇がサリアの耳たぶに触れるほど近づいていく。

サリアさん、信じようが信じまいが勝手ですが、私は本当にただ話をしに来ただけなんです。

あなたのこともライン生命のことも……とっても気になりましてね。

お前が現れたせいで私の知り合いが倒れてしまった、ナンパにしては過激過ぎると思うぞ

ウフフ……こっちだってやらなきゃならない仕事があるから仕方がないじゃないですか。

最後に一つだけ。

私を敵に回さないほうがいいですよ……

もちろん、ほかの人も。
(ホルハイヤが逃げる)

……

あの女、逃げたぞ?壁に穴が……いつの間に?

私が開けてしまった穴だ。

ヤツのアーツにハメられたのか?

アーツではない、そういうテクノロジーだ。

ヤツは周囲にある空気の成分を変え、私と私のアーツとの繋がりを断ち切り、最後の一撃を外させた。

あんなテクノロジー……今まで見たことがない。

・ミュルジスは……
・術者と水分子の繋がりを断ち切ったのは彼女なんじゃないのか?

ミュルジスの失踪も、きっとヤツが大きく関わっているはずだ。

あり得る話だ。

空気をある一定の範囲内で加熱するテクノロジーなら最先端でもない一般的な技術だ、あれでミュルジスが抑えられるはずがないって、そう思っていたさ。

ドクター、今すぐヤツの後を追うことを推奨する。

ヤツが握ってる情報にしかり、あの奇特なテクノロジーにしかり――

あのリーベリの女は極めて危険な存在だ。

マリー巡査部長、どちらへ?

あなたに報告する必要がある覚えはないんだけれど。

車両のキーを取ったと記録にありますが……

あ~、ちょっとライン生命の社用車を借りるわよ。

あのクソッタレの主任に報告したいのなら好きにしてちょうだい。

……マリー巡査部長。

なに、まだあるの?ならはやく言ってくれるかしら、こっちは急いでるんだけれど。

マリー・バナー巡査部長、幼少期からツリーマウンズ北部の郊外にあるアイアンバーデン町で暮らし、サニー・ロマーノとは近所に住まう中学時代からの同級生兼親友。

私を調べてたの?

四年前、ロマーノは感染者として登記され、弁護士事務所での実習期間を終え、アイアンバーデン町に戻る。その後、彼の医療保険料の支払いは六か月後に停止してしまう。

しかしそれから三か月と十七日後に、彼の名前はあの開拓隊のリストに出現。

それまでの間に、彼はどこに隠れていたのですか?

そんなの知ってるわけないでしょ。

問題の発生を未然に防ぐのも、我々警備課の仕事の一つです。

……あなた、たかが資料を読み上げただけで脅しになるとは思わないことね。

私は五年もかけてやっとこの地位に就けたのよ、あなたたちみたいな大企業が飼ってるクソ虫連中への処世術を知らないとでも?

オホン――そのようなことは決して……あなたの実力を疑ってるわけではありません。

だったらその口を閉じとけ、荒地に捨てて牙獣たちの餌にしてやるわよ。

……マリー巡査部長、信じてくれないかもしれませんが、こっちはただあなたに忠告したいだけなんです。

あなたを見てると……たまに思い返すんです、私の元上司のことが。すごく尊敬していましたが、個人的な感情のせいで、彼女は自らの手で自分の将来を台無しにしてしまったんです。

ですので、あなたまでそんな目に遭ってほしくはありません。

フッ……個人的な感情ですって?

そんなものが人を救えるんだとしても……

……自分から死にに行くような人間まで救ってはくれないわよ。

……
(マリーが車に乗って走り去る)

緊急事態だ――

急いでフェルディナント主任に連絡を入れてくれ。

……十七回目の記録送信テスト、座標はここ、第九区画の廊下。

目標となる位置と距離は前回の送信記録と同様……

うん……素粒子の結合状態も安定してるから、これなら……

――

やっぱりダメか……シグナルはなし、メッセージも何も送り出せない。

(これ以上時間を無駄にはできない、はやく別の方法を探さないと……)

(通信が戻ったら、すぐ上にここの事態を報告しなきゃ。)
(サイレンスが近寄ってくる)

……エレナ?

お、オホンオホン!

ここで何してるの?

ちょ……ちょっと息抜きしてるだけだよ。

開拓者たちに思うところがあるのは分かる……それでも一緒に集まってたほうがいい安全性は高いよ。

最後の襲撃は10分前に起った、それにここからも近い。

アレがまた現れたら、あなた一人じゃ危険だよ。

わかったわかった、すぐ戻るから。

ちょっと待って。

戻る前に何か……私に言いたいことがあるんじゃないのかな?

ちょっと何を言ってるのかよく分かんない。

今は開拓者たちも感情が不安定だから、また彼らを怒らせるようなことがあれば、ジョイスは危険な目に遭ってしまう。

だから、あなたが彼らの前で本当のことを言いたがらないもの理解できる。

でも、ここには私とあなたしかないんだよ。だから打ち明けてくれない?

実験のことを聞きたいの?

プロジェクトのメンバーじゃないから教えることはできないよ、会社に申請を出してからお願い……

誤魔化しても無駄だよ。

……

あなたが私に色々と隠し事をしてるのは分かってるんだから。

怒ってるわけじゃないんだ。私たちは同じ仲間だし、友だち。ライン生命はそういう会社だからずっと守秘規定に関しては厳しいし、それ以外でも、みんな本音を隠すことが習慣化してる。

オリヴィア、私は別に……

分かってる、わざとじゃないって。

分かってるよ、分かってないはずがない。

会社にいる感染者は極々僅か。あなたがここに入って来たばかりだった頃、お昼休憩の時に、あなたは自分から私に挨拶しに来てくれたよね……その時エネルギー課の同僚が君を引き留めて、こっそり私が感染者であることをあなたに教えた。

それでも、あなたは私のところに来てくれた。

キミの身体に生えてる石ころなんか全然気にしなかったからだよ、病気を持たない人間なんていないんだし。キミのことを耳打ちしてきた人たちだって、完璧超人なわけないじゃん。

後から私もその石ころを貰っちゃったけど……でも全然気にしてないよ!

そうだね、それでこそ私の知るエレナ・ウビカだ。

だから私……

でもここの実験でトラブルが発生したことを、あなたは知っている。

最初から、あの銀色の物体の正体だって。

アレは今、私たちと……外にいる無関係な人たちを脅かしている。

私の知ってるエレナ・ウビカは、そんな人が死ぬような恐ろしいことが起こるのをむざむざ見過ごすようなことは絶対にしないはずだよ。

一体ナニがあなたの口をそうやって堅く閉ざしているの?

もしかしてフェルディナントに……

……オリヴィア、これは私個人の責務なんだよ。

ヘレンや、数多くのライン生命に所属してる研究員と同じ……私の夢はここにある。

キミも言ってたじゃん、キミだってパルヴィス主任とライン生命には感謝しているって。だから……
(回想)
この星図を暗唱しなさい。
物理のテスト結果を見せたところで興味はない。満点だからなんだ?そんなものに意味はない、零点と同じだ。
お前はウビカ家の娘なのだ。そんなくだらん大地にある知識を学んで、我が家の姓に泥を塗るつもりか?
お前には失望したよ、アステジーニ。
……これが君の一か月の努力の結果か?
……
君の才能は認めよう、だがここクルビアの科学技術界隈ではな、そんな才能なら誰だって持っている、一銭の価値すらない才能だ。
君の決心は堅いが、経験を得ていない決心は脆い。
君は勤勉でもあるが、方向が定まっていない勤勉さは無鉄砲に行動することと一緒だ。
この時代は変化を求めている。その際君が無駄にしてきたチャンスたちというのは、君自身や君が生きてるこの時代にとって、とてつもなく巨大な損失なのだよ。
私は無数いる門下生の中から君を選んだのだ、それが間違いではなかったこと切に願っているよ、エレナ。
(回想終了)

……だからフェルディナントは、私にとって努力の目標なんだよ。

彼から何か聞こえのいい約束をされたの?フランクス主任の実験を手伝ってやったら、自分のプロジェクトを持てるようにしてあげるとか?それとも……

なんでキミまで姉さんみたいに、いつまでも飴をせがんでる子供みたいに私を見てるの?

キミがフェルディナント……主任と色々誤解を抱えてるのは分かるよ。ここ数年、主任に対する調査で主任に多くの迷惑をかけてきたことだって……

いや、この際ことの詳細はどうでもいいとして……

本当なら、キミやロドスの介入を拒むことだって主任にはできてたんだからね。

彼だってライン生命を、クルビアを変えようとしているんだよ……私もチャンスさえあれば、主任ならやり遂げられるって信じてるのに……

そんなに……フェルディナントのことを信頼してるの?

分かってるの?ライン生命が今……
(物音)

そこにいるのは誰……?

あの物体がまた追ってきたんじゃ!?
(開拓隊隊員が近寄ってくる)

開拓隊の!

近づくんじゃない!

やっぱり……やっぱり隊長の言ってた通りだ。お前らは、本当に俺たちを実験動物にようとしていたんだな……

ちがっ、それは誤解で……

まだ俺たちを騙そうって魂胆か?

もう……これ以上信じられるか!俺たちによくしてくれたのも、全部ウソだったんだな!

どうか落ち着いて、えっと……マイヤーさん、だったよね?

マイヤーさん、信じられないのなら、サニーさんに説明させてもらえればきっと誤解は解けるよ、彼なら傍にいるから。

イヤだ……こんなとこで死にたくない……

クソ……なんなんだよこの廊下は!走っても全然終わりが見えねえ……感染者収容区域にある息苦しい壁と同じだ……

もう俺を出してくれ、ここから出してくれ……頼む、頼むからよ!

もし俺を外に出してくれないのなら……こ、こいつを殺すぞ!

……

ジョイス!

なんで……なんでこんなことに……?

やめて、ジョイスを……ジョイスを放して!

地面の痕跡を見るに、あの女はここを通ったはずだ。

向かった方向は特定できるか?

この先にある巷だな。

よし、追うぞ。

・待ってくれ。
・まだ解明できてない謎がある。

何か分かったのか、ドクター?

・さっきの戦いは、はたして私たちの勝ちだったのだろうか?

戦いの勝ち負けなど気にしたこともない。

……ドクターの言いたいことが分かったぞ。

あの時、あのリーベリに勝ち目はなかったが、あんなあっさりと負けるはずもなかったんだ。

少なくともあと3分は持ち堪えられていたはずだろう。

・あるいは、Mechanistが加勢する前に逃げられたとも言える。

・向こうはまるで私とMechanistの加勢を待っていたようだった。
・彼女はわざと何かの情報を残していったようだった。

つまり、この巷に私たちを誘き寄せようとしていた、ということか。

じゃあこのまま追うのか?

行こう。

マム、準備が整いました。

分かった。

向こうはすぐにでも追いついてくるはずなんですよね?

サリアの性格なら、誘き寄せられてると知っていても、きっと追いかけてくるはずよ。

だとしても、やっぱりまだ不安ですね……このパワーアーマー……

本当にフェルディナントさんの同意を得なくて大丈夫なんですか?

それって、私が前に言ってたアイデアのほうがよかったって意味かしら?

それってパワーアーマーを俺に着させて……いやいやいや、やっぱりなんでもないです。

これはテストよ。

このテストの結果を見れば、私たちの雇い主はきっと大喜びになってくれるはずだわ。

足音が聞こえてきました、マム!

ナビゲーション小隊に通達、行動を開始しなさい。

了解、それで俺たちはどうします?

退くわよ。