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【アークナイツ大陸版】イル・シラクザーノIS-10「狼の主」行動前 翻訳

エクシア
エクシア

偵察完了~、敵の確認はなしっと。

エクシア
エクシア

にしてもあの人たちがくれた地図すごいね、一回も足止めを食らわずにここへ辿りつけちゃったよ。

ラヴィニア
ラヴィニア

新区画の設計は、どれもクルビアからの技術を採用しているんです。

ラヴィニア
ラヴィニア

そのうちの多くは、未だにファミリーらでも理解できないものがありますから。

ラヴィニア
ラヴィニア

たとえば私たちが通過した後、この司令塔に通じてるルートならもうすでに封鎖されていますよ。

ラヴィニア
ラヴィニア

ほか一部のルートも、多かれ少なかれ技術的な手段で封鎖されています。

ラヴィニア
ラヴィニア

それに、ここに来るまでの途中も見えたでしょう。

ラヴィニア
ラヴィニア

ファミリー同士の争いが徐々に広まりつつある。おそらく大方のファミリーが司令塔を奪おうと考えても、ほかのファミリーに邪魔されてしまっているでしょうね。

エクシア
エクシア

しかもウチらがすでに司令塔を占拠しちゃってるって、向こうはまったく思いついちゃいないだろうね。

ラヴィニア
ラヴィニア

ええ、しかしまだ油断はできません。

ラヴィニア
ラヴィニア

ベッローネにしろ、ロッサーティにしろ、それともサルッツォにしろ。少なくともこの三家が副中枢区画を諦めるとは思えませんし、きっとすでにこちらへ向かってきてるでしょう。

エクシア
エクシア

アタシとテキサスがいるから問題ないよ。

ラヴィニア
ラヴィニア

……申し訳ありません、本当はあなたたちを巻き込むつもりはなかったのに。

テキサス
テキサス

好きでやってるだけだ。

エクシア
エクシア

そそ、アタシも!あとでどこのピッツァが美味しいか教えてもらえればそれでいいから。

ラヴィニア
ラヴィニア

ええ。

テキサス
テキサス

……

テキサス
テキサス

ところでさっき、ここにある技術はすべてクルビア由来だと言ったな。

ラヴィニア
ラヴィニア

はい、ほとんどはロッサーティが持ち帰ってきたものですから、向こうが封鎖を突破してくるんじゃないかと少し心配でして。

テキサス
テキサス

……ならあいつらが辿るかもしれないルートを教えてくれないか?

(ウォーラックがマフィア達を切り倒す)

ウォーラック
ウォーラック

……

ウォーラック
ウォーラック

おかしい、何かがおかしい。

ディミトリー
ディミトリー

あんたも勘付いたか。

ウォーラック
ウォーラック

ほかのファミリーに邪魔されているってのもあるが……

ウォーラック
ウォーラック

もしさっき通ったところの門が、なんらかの原因で起動させられていたとしたらだ。

ウォーラック
ウォーラック

こうも回り道ばかりをしてるもんだから大方は確信がつく。絶対誰かがわざとルートを封鎖していやがるぞ。

ディミトリー
ディミトリー

……それはつまり、俺たちよりも先を行ってるヤツらがいるってことか?

ウォーラック
ウォーラック

しかもその連中は、ここの区域の構造をよく理解している。

ウォーラック
ウォーラック

……それを理解しているのは、おそらくは俺たちロッサーティの人間だ。

ウォーラック
ウォーラック

それか、この副中枢区画の建造に関わったヤツだろう。

ディミトリー
ディミトリー

……相手が誰なのかはひとまず後だ。

ディミトリー
ディミトリー

で、俺たちはどうここを突破しりゃいいんだ?

ウォーラック
ウォーラック

……俺の部下に精通してるヤツがいる、そいつに任せてみよう。

ディミトリー
ディミトリー

それじゃあ時間の無駄だ。

ディミトリー
ディミトリー

それに……

ウォーラック
ウォーラック

もしこれが意図的に起こされたことなら、必ず念には念を入れてくるはずだ。

ウォーラック
ウォーラック

あんたの言いたいことなら分かるさ。

ウォーラック
ウォーラック

お互い仲良くなくてもそれなりにやって来たが、それもここまでのようだな。

ディミトリー
ディミトリー

ああ、そうだな。

ウォーラック
ウォーラック

……

ウォーラック
ウォーラック

なあベッローネの、ある意味俺たちは似た者同士だよ。

ディミトリー
ディミトリー

あんたと一緒にしないでもらいたいね。

ウォーラック
ウォーラック

なんだ、違うとでも?

ウォーラック
ウォーラック

見りゃ分かるさ。あんたも頭は冴えちゃいるが、実際は死ぬほど忠誠心が高いバカの類なんだろ。

ディミトリー
ディミトリー

あんたに言われたくはないね。

ウォーラック
ウォーラック

自分を持ち上げるつもりならないさ。俺なら俺が何をしてるのかはよぉく分かっている、後悔もしちゃいない。

ウォーラック
ウォーラック

だがあんたはどうなんだ?もし本当にあんたの言った通り、自分んとこのドンがすべての元凶で、自分の兄弟とも対立しなきゃならなくなるかもしれないってことになったらだ。

ウォーラック
ウォーラック

あんたは本当に手を出せるのか?

ウォーラック
ウォーラック

自分が求めているものを掴み取ってやれるのか?

ディミトリー
ディミトリー

そう言うあんたはもう掴んだのかよ?

ウォーラック
ウォーラック

いいや、ないさ。申し訳ないとは思っているが、ほかに選択肢はなかったんでな。

ガードマン
法廷のガードマンン

ラヴィニアさん、一か所に隠れてたこの司令塔の技術職員らを見つけましたよ。

ガードマン
法廷のガードマン

あなたと話がしたいと。

ラヴィニア
ラヴィニア

分かりました。

書記
冷静な技術職員

あなたは……裁判官さん!?

ラヴィニア
ラヴィニア

落ち着いて、あなたたちを傷つけるつもりはありません。

ラヴィニア
ラヴィニア

今の私はファミリーの者でもなく、スィニョーラの者でもありませんから。

書記
冷静な技術職員

……じゃあ、なんなんです?

ラヴィニア
ラヴィニア

ただのラヴィニア・ファルコーネです。

書記
冷静な技術職員

……そう。

書記
冷静な技術職員

私たちに手を出さないってんなら、少しだけ助けてやってもいいわよ。

ラヴィニア
ラヴィニア

……その前に一つ聞きたいことがあります。

書記
冷静な技術職員

なに?

ラヴィニア
ラヴィニア

あなたたちに副中枢区画の分離工程を起動させたのは誰ですか?ベッローネの人間ですか?

書記
冷静な技術職員

……ベッローネのドン、ベルナルドだって人にやれって言われたわ。

ラヴィニア
ラヴィニア

ベルナルド……やはりあなただったのね。

ラヴィニア
ラヴィニア

権力のためにここまでするだなんて――

書記
冷静な技術職員

それに、ファミリーのいないシラクーザを想像したことはあるかって、そんなことも聞かれたわ。

ラヴィニア
ラヴィニア

……今、なんと言いました?

ウォーラック
ウォーラック

この先が門の制御室なんだな?

冷静なヒットマン
ロッサーティファミリーのメンバー

はい。

ウォーラック
ウォーラック

よし、そんじゃ――

ウォーラック
ウォーラック

また会ったな、チェッリーニア。

(テキサスが姿を現す)

テキサス
テキサス

……

(テキサスが剣を引き抜く)

ウォーラック
ウォーラック

まあそうだろうな。俺とあんたは生きるか死ぬかってことしかねえだろうさ。

アルベルト
アルベルト

……ラヴィニア、あの裁判官か?

ガードマン
サルッツォファミリーのメンバー

はい。

ガードマン
サルッツォファミリーのメンバー

ドンの指示通り、突破する前に少し回り道をしたら、役人を一人とっ捕まえることができました。今のも全部そいつが吐いたものですよ。

ガードマン
サルッツォファミリーのメンバー

司令塔ならすでに自分のモンを率いたラヴィニアに占拠されてしまいました。

アルベルト
アルベルト

なるほど。まさかたかだか裁判官風情が、役人どもの助力であんなことをしでかすとはな。

アルベルト
アルベルト

だがそんな小細工でファミリーらを足止めできるはずもない。

(ファミリーメンバーが急いで部屋に入ってくる)

ガードマン
サルッツォファミリーのメンバー

ドン、大変ですッ!

アルベルト
アルベルト

なんだ?

ガードマン
サルッツォファミリーのメンバー

ラップランドが、ラップランドがつい先ほどこっちに戻ってきて!何も言わずにファミリーの連中を襲って、今こっちに向かってきています!

アルベルト
アルベルト

……

アルベルト
アルベルト

ヤツを止めろ。

ガードマン
ガードマン

はい!

(ラップランドが通りがかりにマフィアを切り倒していく)

アルベルト
アルベルト

ラップランド、お前の殺しの技量も少しは進歩したじゃないか。

アルベルト
アルベルト

昔だったら、ここまで来るのにもう少し時間がかかっていたぞ、傷もたくさん付けながらな。

ラップランド
ラップランド

そっちこそ、相変わらず自分の部下たちが殺されてもまったく動じないね。

アルベルト
アルベルト

使えない部下を惜しむ必要なんてどこにあるんだ?

ラップランド
ラップランド

じゃあ使えない子供はどうなの?あぁそうだった、パパにとっちゃ部下も子供も一緒か。

アルベルト
アルベルト

お前も知ってるだろ。私が一番毛嫌いしているのは、無能で働き者のタイプの人間だ。

アルベルト
アルベルト

お前がこの家に戻ってくるまでの間、私はずっと待っていたぞ。

アルベルト
アルベルト

お前が私に牙を向けてくる時をな。

アルベルト
アルベルト

その時が今ようやくやってきた。

アルベルト
アルベルト

なあ教えてくれ、私の娘よ。一体なぜこれまで何年もの間ずっと、何度も何度も私を怒らせ、私に逆らい、私に歯向かってきているのだ?

アルベルト
アルベルト

教えてくれ、そうじゃなきゃ教育のしようもないだろ。

アルベルトの言葉を聞き、ラップランドはニコリと笑った。
そして手にしている武器を下ろしたのであった。

ラップランド
ラップランド

そろそろパパの暗殺を計画したほうがいいんじゃないかって、ずっと考えていたんだよね。

アルベルト
アルベルト

ほう?

アルベルト
アルベルト

お前にとって、親殺しはそこまで迷うようなことなのか?

ラップランド
ラップランド

迷っているのはその行為じゃなくて、やる意味にあるのさ。

アルベルト
アルベルト

意味だと?ハッ、お前も意味を探ることなんてあるんだな。

ラップランド
ラップランド

ボクにとっての意味は、パパにとっての利益と同じぐらい大事なものだからね。

ラップランド
ラップランド

ねえパパ、どうしてボクがいつもテキサスのことを気にしちゃってるか分かる?

アルベルト
アルベルト

一度もお前から聞いてはいなかったから知らんな。

ラップランド
ラップランド

ボクは生まれてから、ここのファミリーの一員として育てられた。

ラップランド
ラップランド

パパは一番シラクーザ人らしい教育をボクに施し、ボクもパパにその期待を応えてきた。

ラップランド
ラップランド

シラクーザ人を演じるってことに関しては、ボク以上に上手くやれてる人間はいないだろうね。

アルベルト
アルベルト

お前が自分の身分を認めているとは思いもしなかったぞ、娘よ。

ラップランド
ラップランド

パパの支配から逃れられたことなんて一度もあったと思う?

ラップランド
ラップランド

いや、パパの支配じゃないや。このシラクーザからの、ファミリーの、血筋の、ルールからの支配だろうね。

ラップランド
ラップランド

全部嫌いだったよ、全部。でも気付いてしまったんだ、こいつらから逃れることはできないんだって。

ラップランド
ラップランド

こいつらは影も形もなくボクを支配し続けてきた。

ラップランド
ラップランド

ボクがいくら抗っても、結局その抗いもパパの支配下に置かれていただけに過ぎなかったんだって。

ラップランド
ラップランド

そんなんじゃ抜け道なんて見つかるわけもないよ。

アルベルト
アルベルト

シラクーザを、踏み込めば二度と抜け出すことのできない泥沼と考えているのはお前だけだ。

ラップランド
ラップランド

泥沼だよ。パパも他の者も含めて、みーんなそこの泥水さ。自分がどれだけ濁っているのかも知らないような、ね。

ラップランド
ラップランド

まあ当然だけど、あの頃のボクはそんなこと考えつくこともなかったんだけど。

ラップランド
ラップランド

あの頃の自分は十分過ぎるほどイカレていたって、反逆心が旺盛だって思っていたけれど、今思うとただ勘違いだったね。

ラップランド
ラップランド

あの頃のパパもさ、あと何年か経てばボクもきっと現実を受け止めてくれるって思ってたでしょ?

アルベルト
アルベルト

そうだな。

アルベルト
アルベルト

お前が歯向かってきていることはよく分かっていたよ。だが、その反逆心が一体どこからやってきたのかだけは分からなかった。

ラップランド
ラップランド

それはね、パパが自分の暮らしと行いは絶対的に正しいって、ずっとそう思い込んでいたから。

ラップランド
ラップランド

いずれボクはパパみたいな人間になるんだって、パパは一度も疑わなかったからだよ。

ラップランド
ラップランド

でもね、そんな時に彼女が現れたんだ。

ラップランド
ラップランド

最初はさ、遠いクルビアって場所でボクよりもシラクーザ人らしいヤツがいるってことで気になっていたんだ。

ラップランド
ラップランド

チェッリーニア・テキサス、サルヴァトーレの孫娘。

ラップランド
ラップランド

冷酷で、情け容赦なく、しかし情も義理も厚いそんな彼女が。

ラップランド
ラップランド

シラクーザの地を踏んだ後、彼女はすぐさまファミリーの間で一番名のあるシラクーザ人になったよ。

ラップランド
ラップランド

ただのクルビア人なのにね。

アルベルト
アルベルト

お前もよくできていたさ。

ラップランド
ラップランド

ハハッ、そりゃもちろん。

ラップランド
ラップランド

でもボクが彼女を気にしてるとこはそこじゃない。

ラップランド
ラップランド

彼女もシラクーザ人になったのに、この泥沼に足を突っ込んだはずだったのに。

ラップランド
ラップランド

なのに結局、彼女は自分の血筋に見切りをつけ、自分のファミリーが清算に遭っても放っておいたとこにあったのさ。

アルベルト
アルベルト

あれの元凶はすべてジュゼッペにある、チェッリーニアが放任するのも当然だ。むしろ、親殺しの大義名分を履行したまであるだろ。

ラップランド
ラップランド

オオカミの群れの中で、裏切り行為は決して珍しいことじゃない。

ラップランド
ラップランド

でも彼女は諦めることを、見切りをつけることを選んだんだよ。

ラップランド
ラップランド

想像できるパパ?

ラップランド
ラップランド

あの日、彼女がシラクーザを離れ、すべてを捨て去ろうってした時、ボクはどれだけ――

ラップランド
ラップランド

興奮したことか!

アルベルト
アルベルト

フッ、それも一種の抗いか。だが、それでチェッリーニアが無事ここから抜け出すことができたとでも?

ラップランド
ラップランド

抜け出せられてはいないさ。最初からこの地が彼女を逃すはずがないってことは、ボクにも分かっていたからね。

アルベルト
アルベルト

ならなぜ私に立ちはだかろうとしているのだ?それもすべてヤツがいるから?

ラップランド
ラップランド

彼女がいるから?

ラップランド
ラップランド

いやいや、そんなことはないよ、パパ。

ラップランド
ラップランド

ボクがここに立っているのは、別に彼女の成功と失敗から何かを学んだからってわけじゃないさ。

ラップランド
ラップランド

こういう選択肢もあるんだって、向こうがボクに教えてくれたからだよ。

ラップランド
ラップランド

彼女がいずれまたここに戻ってくるのは分かっていた。だから彼女が戻ってきた後に何をするのか、それが楽しみで楽しみでね。

アルベルト
アルベルト

だがヤツは何も成し遂げられなかっただろ。

ラップランド
ラップランド

違うよ、パパは何も分かっていないね。

ラップランド
ラップランド

彼女は選ぶことにしたのさ。

ウォーラック
ウォーラック

おいチェッリーニア、あんた自分が何をやっているのか分かってんのか?

テキサス
テキサス

お前が知る必要はない。

ウォーラック
ウォーラック

あんたはクルビアから、シラクーザから逃げて、そこにあるすべてを捨て去った。

ウォーラック
ウォーラック

なのに、しゃあしゃあとした面をしてまたここに帰ってきやがって。

ウォーラック
ウォーラック

自分がバカらしいとは思わねえのか?

(斬撃音)

テキサス
テキサス

この国はまだそこまで終わっちゃいないと思ったんでな。

テキサス
テキサス

だから私は逃げることをやめた、それだけだ。

ウォーラック
ウォーラック

逃げることをやめたから、戻ってくることにしたってわけか。

ウォーラック
ウォーラック

じゃああんたに捨てられた人たちのことはどうする?

ウォーラック
ウォーラック

言ってみろ!どうしてくれるんだ!

テキサス
テキサス

八つ当たりだな。

テキサス
テキサス

ジョバンナに手を出さざるを得なかったのはお前なのに、その原因を私になすりつけようしている。

ウォーラック
ウォーラック

俺はそこまで恥知らずな人間じゃねえさ。

テキサス
テキサス

だとしても、代償は払ってもらうぞ。

(戦闘音)

ウォーラック
ウォーラック

……チェッリーニア、ロクな死に方はしないぞ。

テキサス
テキサス

心配ない、どんな死も私からすれば一番の安らぎだ。

(斬撃音)

ウォーラック
ウォーラック

クソ……が……

(ウォーラックが倒れる)

ラップランド
ラップランド

そこで今度はボクの番になったってわけさ。

ラップランド
ラップランド

何度も悩んだよ、寝つけられなくなるほどにね。

ラップランド
ラップランド

でも、こうしてパパの前に立ってるとね、ふと気付くんだ――

ラップランド
ラップランド

そうか、別に難しいことでもないんだって。

ラップランド
ラップランド

ボクはパパに歯向かい、パパを殺したかったわけじゃなかったんだ。

ラップランド
ラップランド

パパに、ボクの父親に、このファミリーに、この泥沼にお別れを告げたかっただけだったんだってね。

ラップランド
ラップランド

だからボクはここに来たのさ。

アルベルト
アルベルト

そんなことをしてみろ、シラクーザそのものを敵に回すことになるぞ。

ラップランド
ラップランド

その逆だよ、パパ。

ラップランド
ラップランド

シラクーザがボクを敵に回したのさ。

アルベルト
アルベルト

……

ラップランド
ラップランド

もう会うことはないだろうね、パパ。さようなら。

ラップランドは自らの父親に深々と別れのお辞儀を済ませる。

今がこのバケモノを殺せる最後のチャンスなのだと、アルベルトは薄々勘付いていた。
そうだ、ヤツはバケモノだ。
私が自ら育てたバケモノだ。
決して無敵というわけではないにも関わらず、何者にも打ち破れぬような雰囲気を彼女は纏っている。
もしいま手を出せば、必ずと言っていいほど自分の娘をこの場で殺すことができるだろうと、アルベルトは思った。
彼女は決して何者にも恐れられぬ存在ではないが、自ら失えるすべてを捨て去った存在ではある。
ここで殺し、後顧の憂いを絶つべきだ。
しかし……
「パパ」
彼女は私が自ら育てたバケモノだ。
単に見切りをつけるだけであったのなら、私に会いに来る必要などあっただろうか?
群れから離れたオオカミなら、誰しも自分が属していた群れのことを忘れはしない。しかし今日、私の娘はとうとう群れから離れることを選んだ。
そう思いながら、アルベルトは深くため息をつく。

アルベルト
アルベルト

次会った時は必ず殺してやるぞ。私の娘、私の誇りにして、私の裏切者よ。

それを聞いてラップランドはニコリと笑顔を見せるが、言葉は返さなかった。
彼女はもう、群れを離れたオオカミではなくなった。
シラクーザには、もはや彼女を受け入れる余地はなくなった。
しかしそれは彼女も同じであり、彼女もまた必要とはしなくなったのだ。

ラップランド
ラップランド

さて、残りはキミだけだね、テキサス。

(ラヴィニアがエクシアと電話で会話をする)

ラヴィニア
ラヴィニア

あの、本当にチェッリーニアさんだけを向かわせて大丈夫だったんですか?

エクシア
エクシア

平気平気~。

エクシア
エクシア

一人で行かせてくれって言うぐらいなんだから、それなりの理由でもあったんでしょ。

ラヴィニア
ラヴィニア

気にならないのですか?

エクシア
エクシア

相手の言いたくないことには詮索しない!これいいバディーとしての必須条件ね、分かる?

ラヴィニア
ラヴィニア

本当に仲がいいんですね。

エクシア
エクシア

もっちろん!

エクシア
エクシア

あれ?

 

ラヴィニア
ラヴィニア

どうかしましたか?

エクシア
エクシア

なんか一人そっちに向かって来てる人がいるよ、しかも結構速い。

ラヴィニア
ラヴィニア

一人ですか?

エクシア
エクシア

うん、たったの一人。

エクシア
エクシア

黒髪で、すげー威張り散らしてるような服装を着たマフィアのボンボン、あと二丁拳銃。

ラヴィニア
ラヴィニア

……レオン?

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

ラヴィニア……やはりお前たちだったか。

ラヴィニア
ラヴィニア

……レオントゥッツォ、なぜここにいるんですか?

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

お前を探していた。でもお前、ファミリーとの連絡手段を全部シャットアウトしてただろ、おかげで連絡がつかなかったぞ。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

探してる途中でほかのファミリーの連中から聞いたんだが、どうやらファミリーでない何者かが副中枢区画の各種通路を閉鎖して回っているらしい。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

だからここに来た。

ラヴィニア
ラヴィニア

……そう。長い間カラッチの傍にいたものだから、当然ここが一番の突破口だってことも分かっているものね。

ラヴィニア
ラヴィニア

けど、こちらはもうあなたと話すことなどありませんよ、レオン。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

違うんだ、ラヴィニア……

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

俺は――

(ディミトリーがマフィアを連れて近づいてくる)

ディミトリー
ディミトリー

レオンか!?それとラヴィニアと、法廷の人たちまで……

ディミトリー
ディミトリー

そうか、後ろで副中枢区画を操っていたのはあんただったんだな、ラヴィニア。

ラヴィニア
ラヴィニア

……

ディミトリー
ディミトリー

おいレオン、あんたあれからどこに行ってたんだ?まさかずっとラヴィニアの傍にいたわけじゃないだろうな?

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

……

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

いや、俺は親父を探していた。

ディミトリー
ディミトリー

なに?

ディミトリー
ディミトリー

なんでそれを俺に教えなかったんだ!?

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

……アルベルトと会った時、あの洗車屋からの訴えを聞いた時、俺は――

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

過去の俺がどれだけ間違っていたのかに気付かされたんだ。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

だから――

広々としたら大通りの中、ディミトリーとラヴィニアが互いに睨みを利かせている。
その間に立っているレオントゥッツォは大きく息を吸った後、ついにはラヴィニアの傍に寄り添った。

ディミトリー
ディミトリー

それがあんたの答えなんだな?

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

ああ。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

俺はもうベッローネのドンではなくなった。

ディミトリー
ディミトリー

……自分が何をやっているのかは、分かっているはずだよな、レオン?

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

ああ、分かっている。

ディミトリー
ディミトリー

分かっているだと?

ディミトリー
ディミトリー

ドンは自分のデカい理想のために、このファミリーを捨てやがった!

ディミトリー
ディミトリー

それで今度はあんたの番か!あんたもそのデカい目標かなんかのために、ファミリーを棄てるつもりなんだな!?

ディミトリー
ディミトリー

俺たちは一つの家族だろうが、なあレオントゥッツォ!

ディミトリー
ディミトリー

俺の目を見ろ、答えろ!

ディミトリー
ディミトリー

一緒に育って、一緒にたくさんのことを経験してきたのに。

ディミトリー
ディミトリー

それが全部、あんたにとってどうでもいいものだったのかよ!

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

親父はこのファミリーを利用して、シラクーザにとっての新しい時代という導火線に火を点けた。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

その点で言えば親父は間違っていると思う、だが……

レオントゥッツォはゆっくりと視線を上げ、ディミトリーと目を合わせる。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

俺もいずれは、すべてのファミリーを敵に回さすつもりでいたさ。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

そういうことが起こると決まっていたのなら――

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

痛みは短く済ませてやったほうがいいだろ、なあディミトリー。

ディミトリー
ディミトリー

……

しかし、一触即発といった時に、とある悪寒がその場にいる全員を包み込んだ。
逃れられぬ、と。
やり遂げられぬ、と。
楽には死ねぬ、と。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

なんだ……これは……

ラヴィニア
ラヴィニア

くッ……頭の中で……声が……

やがてその場に、黒い霧が集まっていく。
霧が大きくなるにつれ、見えない圧が少しずつその場にいる人たちの頭に、肩に、心に圧し掛かる。
一方その場にいた人たちは、この威圧にとある親近感を覚えていた。まるで自分たちの血脈と繋がりがあるような……いや、まさに繋がりがあるものであったのだ。
だが次の瞬間、彼らはただ果てしない恐怖に苛まれた。なぜならこの見えない威圧には、果てしない怒りすらも含まれていたからである。
人としての理性もこの時ばかりは抑圧されるがあまり、まるで訴えかけてくるような声を発してきたのだ――
跪づけ、と。
服従せよ、と。

ガードマン
ガードマン

さ、寒い……

(ガードマンが倒れる)

この威圧に耐えられなかった者たちが続々と倒れていく中、残ったのはラヴィニアとレオントゥッツォ、そしてディミトリーだけであった。

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

この感覚、見覚えがあるぞ……

レオントゥッツォが視線を、その黒い霧から生じた実体に向けた時――

エクシア
エクシア

気を付けて、その黒い霧ヤバいよ!

レオントゥッツォ
レオントゥッツォ

狼の……主。

言い終えるや否や、黒い霧から生じた狼たちの群れが、こぞってレオントゥッツォに襲い掛かってきたのだ。

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