まさか採掘場の奥がこんな感じになっていたニャんて。火山地帯にすごく似ているニャ。
尻尾もなんだかだんだん熱くなって――ってアツいアツい!
ニャアアアア!!!火がついてるニャアアアア!
なんであんたが採掘場を閉鎖しようと考えてるのかが分かってきたぜ。俺たちもこの状況を見れば、真っ先に阻止する方法を考えちまうかもな。
ここはすでに過度に採掘が行われちまってるし、源石の加工レーンまで建設されてる。にも関わらず、専用のプラットフォームを使用していないなんて……
こりゃもう村一つで抑え込めるような状況じゃねえぞ。
手探りでの採掘、そして厳格な防護措置が欠けた際は……活性源石がそのまま野晒しにされるってことだ。そりゃ天災も引き起こしちまうもんだぜ……
しっかし分からねえな……
あんたが言うようだと、この採掘場は七年前から稼働し始めてるんだろ?それを推し進めたのは今の村長、つまりあんたの叔父の瀧居應だ。
わずか七年で……こんな深くまで掘り進められるもんなのか?鉱脈が自分から顔を出してきたわけでもあるまいし。
半分は正解ってとこかな。
なんだって?
ここの採掘場は人が掘ってできたわけではない、採掘場が稼働する前からすでにあったんだよ。
さっき言ったことはまだ憶えてるかな?七年前に起こった獣の津波。
憶えているさ、七年前にひどい獣の津波が起こったんだろ?それで柏生明……柏生の爺さんの息子、そいつも狩人だったんだが、あの津波に襲われて亡くなったんだってな。
その獣の津波はね、まさにここを採掘し始めたから起こってしまったんだよ。
(学者ネコが倒れる)
ニャッ!
学者ネコ、大丈夫か?
大丈夫ニャ、何かに躓いてしまっただけで……ニャニャニャー!
骨があるニャ!
大量の骨が散乱してるな、それに牙も。これは……爪か?
もう死んでだいぶ時間が経つニャ。
ニャ、この骨格!大型の肉食動物のものニャ!これは初めて見るニャ!
残骸から察するに、この生き物はおそらく全身鱗に覆われて、長く鋭い爪がついた、発達した前足を持っていたはず。おそらくは……穴掘りに長けていたはずニャ!
それは犰爪獣(きゅうそうじゅう)だね。
彼らの名前だよ。犰爪獣は昔この山に住んでいた捕食者。社会性があって、山の中を掘って巣穴を築くんだ。
この鉱石洞窟はその彼らの巣穴だった場所。長い年月をかけて源石鉱脈の中を掘り進めきたおかげで、この雄大な宮殿を作り出したんだ。
だがここにしろ森の中にしろ、その犰爪獣らしき動物は見かけなかったぞ。
それは七年前……彼らがこの森から姿を消してしまったからだよ。
姿を消した?
姿を消したってまさか!
彼らがこの森の中で最後に残していったのは、いま君たちの目の前にあるその骸骨だけとなってしまったのさ。
そんなこと……いったいなぜ?
源石の鉱脈が発見した当初、明さんは採掘の反対者だった。
犰爪獣たちの巣穴を破壊すれば、予想だにしない悪影響を引き起こすかもしれないし、源石の採掘には危険が伴うと考えていたからね。
けどあたしの叔父さんやほかの村人たちは、この源石の鉱脈がもたらしてくれる利益がないと村の困難な現状を変えることはできないって考えていたんだ。
それから叔父さんは明さんに黙ってほかの狩人と手を組み、非常識なやり方で巣穴の中にいた犰爪獣を駆逐した。採掘活動を行うためだけにね。
その犰爪獣の虐殺で帰る場所を失ったほかの犰爪獣たちが怒って森の中で暴れ回ったせいで、あの獣の津波を引き起こしてしまったってわけ。
そういうことだったのか。多くの命が……たかだか採掘場を確保するためだけに殺されちまっただなんて。
叔父さんの態度、君たちもすでに知ってるんじゃないのかな?
叔父さんからしたら、リオレウスは自分が殺した動物たちの怨念の集合体。きっと頻繁に明さんが死んだ時のことも夢に出てきちゃってるはずだよ。
叔父さんの親友で、叔父さんの弟子だった明さんは、最後まで狩人としての意志を貫いて……叔父さんのせいで死んでしまったんだからね。
そんな明さんの亡霊がこうして現れてしまったんだ……きっとひどく怯えているはずだよ。
叔父さんのせいで死んだ?でも柏生明って村を守るために死んだんじゃ……
獣の津波は村のほうに押し寄せていったわけじゃなかったんだ。明さんが発見した場所はそんな村から遠く、採掘場に近い場所だった。
ほぼ発狂状態に近しい獣たちに襲われたんだろうね。その数は、獣の津波の中で尋常じゃないくらいには多かったから。
あっ、ついたよ。
ぐつぐつとマグマが煮えたぎってる採掘場の奥に、源石たちがひしめき合っている空間が広がっている。
そこに居座っている空の王者が顔を上げた。
一方、矮小なオニはそんな彼を上から見下ろしている。
彼らの目には互いの視線が鋭く突き刺さっていたのであった。
*感嘆とする極東スラング*
あいつ、大量の源石を自分の身の周りに寄せ集めていたんだね。
あんまり近づかないほうがいいよ。今すぐあいつを倒すつもりがないのなら、このまま距離を離しておいたほうがいい。
もしあいつを怒らせちゃったら、とても面倒なことになるから。
分かった。って学者ネコ……どこに行ったんだ?
リオレウス……あれは源石で巣穴を作っているんだニャ。
まさか、予想だにしていなかったニャ。
あいつ……すごく苦しそうにしているぞ。源石のせいでか?
そうだと思うニャ。前よりも周りの源石粉塵が濃くなってるようにも見えるし……
今の彼は言うなれば超巨大な汚染源。飛んでいった場所に源石粉塵をばら撒いてしまうニャ。
もしかしたら……リオレウスはこの見知らぬ土地で必死に生き残ろうと、適した環境を探した末にこの採掘場を見つけたのかもしれないニャ。
けど採掘場の奥深くに入ってしまえば、源石の付着は免れないニャ。
それから森の中で餌を捉える際に吐き出した炎は身体に付着した源石を活性化させてしまうニャ。そして細かい粉塵になって周りの環境にばら撒いてしまうという仕組み……
あいつも源石の被害者だ。
ノイルホーン、本当に彼を討伐する必要があるのかニャ?
源石は危険な存在だ。村や俺たちの安全も考慮に入れれば、あいつを狩ることが現状問題を解決できる最善の手段だろう。
もし源石を処理することができれば……少し時間をくれニャ!望遠鏡で観察して……
ほかに何か……何か方法は……
ニャ?あの痕跡は……
学者ネコ、はやく戻ってこい!近づき過ぎだ、そっちの地盤が脆くなってる!
ニャ?
(学者ネコの足元が崩れる)
ウニャアアアアア!
ふぅ、掴まえた。
ニャ――ニャんて恐ろしい!
ノイルホーン!どうしてもっとはやく教えてくれなかったんだニャ!
(学者ネコが持っていた望遠鏡が落ちて割れる)
今の、見たニャ?
ああ。
望遠鏡がリオレウスの頭に落っこちてしまったニャ。
ああ。
(リオレウスが咆哮を放つ)
リオレウスの口元で火花がちらついてるニャ!
逃げるよ!採掘場が壊されちゃう!
逃げるんだニャアアアアアア!
逃げるんだよォ!
もし採掘場内の源石が全部活性化しちゃったら……加速度的にアレが引き起こしてしまう……
天災がッ!
(瀧居未来が走り去る)
黒い霧は空を覆い、山と川が引き裂かれる。
飆は山をも裏返し、炎はまるで赤い波のように広がっていく。
草木は灰に、生きとし生きる者は炭と化す。
山城は蠢き、町は崩れていく。
逃げ惑う万物、空より降臨するは大いなる禍なり。
(獣の唸り声)
くッ――ハァ、ハァ。
こいつら、動きが速すぎる。こちらの斬撃が軽々と避けられてしまう。
バカ者、狩人としての判断力がなっておらん!ヤツらの弱点は下顎だ、そこに柔らかい皮膚がついておる!
そこを刺すんだ!そうすればヤツらの喉を引き裂くことができる!
……了解した。
(六段斬り!)
(獣が斬撃を受けて倒れる)
とった!なっ……
ケダモノめ、これでも食らっておけ!
うわッ――
(獣達が斬撃を受けて次々と倒れる)
やったぞ!
二人とも、背後に気を付けられよ!
なんだと!?*極東スラング*!
(二段斬り!)
(獣が斬撃を受けて倒れる)
フンッ……
礼なら結構だぞ?
それにしてもさっき……私の腕から力が抜け落ちた感覚はいったい……?
波の如く押し寄せてくるモンスターの群れ、とある集落を旅した時にそのような現象を耳にしたことがあったが、まさかこうして身をもって体験することになるとは……ニャ。
獣の津波はまだまだ弱まる気配がない、このまま足止めを食らえば遅かれ早かれ力尽きてしまうぞ。なんとかして包囲網を突破する方法を考えねば。
向こうのほうに大きな木々が生えている。もし向こうまでに辿りつけられれば、木に登って獣の群れから逃げることができるかもしれない。
方法なら一つ思いついたぞ。
これは?
獣を引き寄せることができる粉末だ。貴様らも知っているだろ、以前儂が角獣の騒動を引き起こしてリオレウスを誘き出そうとした。ただ、使う量を見誤って制御が効かなくなってしまったがな。
今まで粉塵を人に使ったことはない、自殺行為だからな。だが今は……獣どもの行き先を変えるためにも、こうするほかない。
しかしそれでは……
粉塵を被ればは瞬く間に獣に囲まれてしまうが……突破口を切り拓くことができるのなら、やる価値はある……そこでだ……
いいや……職人ネコ、あの縄はまだあるか?
たくさん作っておいたニャ!
よし、長さは十分だな……これくらいの強度なら数人分の重みに耐えてくれるはずだ。この縄を木に括りつけて、それから私たちを引っ張り上げてもらおう。
獣たちは私が惹きつける、柏生さんは……
いいや、惹きつけ役は儂でなければならん。
いいやダメだ、もう一度獣の群れに飛び込むことはあまりにも危険だ。もしあなたが犠牲になってしまえば、あなたを助けようとしてきた私の行動がすべて無意味になってしまうではないか。
儂はこのザマだ、群れに突っ込んだ貴様を助け出せる保証はできん。だが少なくとも貴様が戻ってくるまでに死ぬことは絶対にありえん。
小娘、貴様は必ず儂を助け出してくれるのだろう?違うか?
……分かった、そこまで言うのなら。
(獣達が柏生義岡に引き寄せられる)
さあ来い、畜生ども!こっちだ!
そうだ、それでいい!脇目も振らずに儂を追いかけるのだ!
(柏生義岡が走り去る)
今だ!
(突進連斬!)
ハァッ――!
(獣達が斬撃を受けて次々と倒れる)
成功した……ニャ!
はやく縄を括りつけてくれ、私は柏生さんを連れて帰る!
この畜生どもめ、どいつもこいつも気が触れたのか?ところ構わず突っ込んできよって。
津波の方向は……本当に変わったとは。なんとまあ不思議なことだ。
しかし群れを成した獣どもの数が多すぎる……
あの日……あの日……七年前の津波も、今とは変わらなかった。
クソガキが……あの日の晩、お前もこうだったのか?お前は……こいつらのせいで死んでしまったのか?
これが……お前が最期に見た光景だったのか?
何重にも囲い込んでくる獣たち、剥き出しになった牙と、口の隙間からダラダラと垂らしてくるよだれを。
お前もきっと手に持っていた矛を振り回し、一匹ずつこいつらを殺していったのだろう。
だがどれだけ殺しても、この畜生どもは次々とお前に襲い掛かってきた。
(柏生義岡が獣を切り倒す)
フンッ――!邪魔をするな!
*極東スラング*、こいつらから見ればお前はもはや生物ですらなくなった。ヤツらに引きちぎられるだけの肉塊となったのだ。それをお前はあの時確かに感じ取った。
しかしだなクソガキめ、お前のその性格なら、きっとそんなことは口に出さなかったはずだろう。
腕は疲れ果てても、矛すら掴めなくなっても、お前は諦めずに振り回していたはずだ。
そしてお前は岩に寄りかかって、ゆっくりと地面に腰を落とそうと……なのに、この畜生どもはお前に襲い掛かった!
そうか……やはりそうだったのだな。
柏生さん、助けにきたぞ!私の腕に掴まるんだ!
なにをボケっとしているんだ!はやく!
よし、掴まえたぞ!
オトモアイルー、はやく縄を引っ張れ!
これでようやく……
いいやヤトウ殿、向こうを見てくれ……向こうの木が、倒れてしまったニャ……
……
また大量の獣たちがこっちに突っ込んできているニャ!
*極東スラング*、もうほかに方法は……
ヤトウ殿、見ろ!獣の群れが突如と散り散りになったニャ!
ニャ……これは……空からの鳴き声。
(リオレウスの咆哮)
リオレウスが空を飛んでいるニャ!しかもあれは……
*極東スラング*!
天災……
炎を巻き上げた狂風は天地を貫き、知性のない生き物のようにすべてを呑み込んでいく。
燃え盛る渦巻きが襲い掛かり、木々はまるで浮草のように、そして山々はまるで砂利のように巻き上げられていく。
どれだけ恐れ知らずな勇士であろうと反抗心は削がれ、どれだけ真摯な祈りを捧げようと報いが帰ってくることはない。
ここに降り立ったのは懲罰、大地からの懲罰なのだ。
ぶつかってくるぞ!飛び降りろ!
みんな大丈夫か?
儂は無事だ。
わしも平気だ……ニャ。
燃え盛る空……赤く灼熱した火柱……*東国スラング*、なんて恐ろしい光景だ。
……これと似たような事例はロドス本艦で目にしたことがある。
天災が引き起こした嵐は山火事を巻き込み、さらに凶悪な炎の嵐と姿を変える。
嵐が移動するにつれ、渦巻きはより多くのものを吸い込んでいくんだ。それに加えてこの森の中は可燃物ばかり、この先のことを考えると……いや、考えるだけでも恐ろしい。
なぜだ……なぜ天災がこうも早く現れた?
嵐が起こっている場所は……採掘場の近くだ。
採掘場だと!?
――!
これでも食らえ!
(斬撃が獣を斬り倒し、ノイルホーンと学者ネコが姿を現す)
よぉ!やっぱりここにいたか!ほら見ろ学者ネコ、俺の言った通り……
今は無駄話をしている余裕はないぞ、ノイルホーン。状況報告は後にしてくれ。
へいへい、分かってるよ。
柏生のお爺ちゃんじゃん!なんでここにいるの?
それはこっちのセリフだ、未来。
こんなことは言いたくないが、天災が来てくれたおかげで、私たちは獣の群れから抜け出すことができた。
今は村が心配だ。天災の中心部分はまだ村から少しだけ距離があるし、移動速度もそれほどはやくはない。しかし獣の津波となれば……
なるべく早く村のほうへ戻りたい。みんな、何か方法はないか?
えっとえっと、この近くなら……そうだ、アレを使おう!それなら一気に山から下りられるよ!
だがアレはもう長い間使われていない。今も使える保証はできんぞ。
ちょっと待ってくれ、あんたらが言ってるアレってのはなんなんだ?
トロッコのことだよ。採掘場を開く時、山へ行き来しやすくするために敷いたんだけど、洞窟が整備されてからは使われなくなっちゃってね。
でも安心して、絶対大丈夫だから。あれはあたしが設計した最初の作品なんだよ。
あんた生態学者じゃなかったか?そんな人が設計したトロッコなんて、ちょっと不安なんだが……
柏生さん、この先の戦闘はますます困難なものとなってくる。あなたにもそれ相応の覚悟をしておいてもらいたい。
今度ばかりは儂を除け者にはしないのだな、小娘。
もしそうしてもらいたいのなら私はそうするさ。だが今はあなたの意志を尊重したい。
ほう?
私はどうしても他人の意見を疎かにして、自分の意見にしか従わない意固地なところがある。これは私の正さなければならないところだ。
そのため私は色々と間違いを犯してしまった。まずは以前まであなたに言ってしまったことについて謝っておきたい、本当に申し訳なかった。
実情を理解していない中で、あんなことを言っても任務の助けにはならない。むしろあなたに余計な危害を加えさせてしまうだけだった。
ふむ……
私からの謝罪を受け入れてくれないだろうか?
フンッ……好きにしろ。
なら、そうさせてもらおう。
小娘よ……
以前貴様は、儂を理解していると言っていたが……なぜそう言えたのだ?
あぁ、そのことについてなら……話せば長くなる。
話したくないのならそれでもかまわん、聞かなかったことにしてくれ。
いや、いいんだ。ロドスに入る前まで、私は殺し屋をやっていてな……
なに?
文字通りの殺し屋だ。命令に従って仲間の命を奪い取ってきた。毎日、毎晩。
自分の血にまみれた両手を見て、ひどく恐れを感じた時まで、ずっとな。その翌日には、とある親子を片付ける任務を請け負っていたんだが、私は彼女らを守ることにしたんだ。
もう殺し屋をやりたくなかったからな。ノイルホーンと出会ったのもその頃だった、彼も私の話を聞いて殺し屋をやめたんだ。
……
だが私は間違っていた、人を殺さなければ済む話ではなかったのさ。
あの親子は私を怖がっていた、だから仕方なく安全な場所に彼女らを逃がしてあげることしかできなかった。あの時は人を傷つけなかったら、私もほっとすることができたよ。だが忘れていたんだ……
そんなことをしても、彼女らはどの道あとからやって来るほかの殺し屋に殺されてしまうんだとな。
それで貴様は……後悔しておるのか?
ああ、それからしばらくの間はずっと……彼女らの夢を見たんだ。どうしてあの時、私たちをあの場所に残していったんだと。
人を傷つけたくないと考えていても、結局は人を死なせてしまったからな。
……そこで私は疑ってしまったよ、私は元から人を守ることなんてできなかったんじゃないかって……
だが幸いあの時、私は助けられた……彼のおかげで、私も覚悟がついたよ。
あの小僧が?
ああ。
めったにないが、あの時ばかりは私を叱ってきてな。それからこう言ってきたんだ……
「過去に戻ることはできない……だからあんたのその悔しさと犯してきた罪なら、これからの一生をかけて償っていきな」とな。
大人しそうに見えて、なかなか頭がキレる小僧ではないか。
私も彼の言ってることは正しいと思ったからな、それ以来は考えないようにしたのさ。
そうして私と彼は、この先は人を守ることを使命とするようになった。それから彼に引っ張られてロドスに加入したんだが、お互い目標が似通っているものだからな、今日に至るまでずっと一緒に行動してきたわけさ。
そんな貴様らをも雇ってしまうとは、その企業もなかなかやるものだな。
人を守る、それが貴様らの罪の償い方というわけだな?
まだ始まったばかりではあるけどな。でも今はまた新たな気付きを得たよ。
ここに来るまで、私は多くの死を見てきた。人は何かと理由をつけて自分の命を諦めることがあるし、何も知らないまま死んでしまうことがある。
以前自分の考えを他人に押し付けるなと、私に言ってきたことがあっただろ?しかし命に関わることとなれば、その人たちを生かすために私はそうするしかないんだ。
この大地に存在する命というのは、軽々しく死んでいくために生まれ落ちてきたわけではない。生きてこそ、あらゆる可能性を掴み取ることができるんだ。
そのために私は、私のできる限りのことを尽くしている。
もう悔しい思いをしないために。もう廃墟を見つめるばかりで、そこから立ち去ろうともしない人たちを……
作らないためにも。
ヤトウ!柏生さん!トロッコを見つけた、まだ使えそうだぜ!
って、なんで二人とも俺をジーッと見つめてるんだ?俺のマスクになんか汚れでもついてるのか?
いいや、なんでもない。すぐに向かおう。
柏生さん、これからの戦闘だが、よろしく頼む。
(手を差し伸べる)
……いいや。
何度も言っているが、あれは儂の獲物だ。
貴様らは傍らで見ておれ。そして見事な場面に拍手喝采してくれればそれでいい。
なら、それは聞かなかったことにしておこう。
……
……これからは困難な道が続く。
貴様らの武運を願おう。
同じく、ご武運を。