Loading...

【アークナイツ大陸版】12章 驚霆無声 12-9「かつての血気」行動前 翻訳

シージ
シージ

この部屋は……

インドラ
インドラ

よし、見ろダグザ!ここが俺たちのかつてのホームだ!

ダグザ
ダグザ

おお!

ダグザ
ダグザ

ここでの暮らしはきっとかなりクールだったんだろうな!

インドラ
インドラ

当ったり前よぉ!

シージ
シージ

だが一度も掃除はしてくれなかったがな、ハンナは。

インドラ
インドラ

そ、それは……!俺だって何度も改めるつもりでいただろ!

ベアード
ベアード

あんたたちが出て行った後でも、たまにここを片付けに来ていたから、たぶん昔とあんまり変わっていないと思うよ?

インドラ
インドラ

おお!俺のコレクションがそのまま残ってるぜ!やっぱ頼れるモンはベアードだな!

ベアード
ベアード

フッ、ここで留守番をするハメになっちゃったからね。

インドラ
インドラ

おい、そりゃねえだろベアード。あん時は残るって自分で言い出したことだろうが。

インドラ
インドラ

ノーポート以外の場所じゃ寝付けられないからーとかって。

ベアード
ベアード

だったら、あの時ちゃんと克服しておけばよかったかもね。

インドラ
インドラ

へっ、何ぬかしてやがんだか。お前が寝つけられなくなったら、こっちまで夜更かしされるハメになるだろうが。お前っつー人間のことはよぉく分かってんだよ。

インドラ
インドラ

死ぬほど眠いって時にお前の話し相手に付き合わされるのはもうゴメンだぜ。

ベアード
ベアード

……ふふっ。でもまあ、最近はもうどこでも寝れるようにはなったよ。

シージ
シージ

どうした、疲れが溜まっているのか?

ベアード
ベアード

そうかもね。

ベアード
ベアード

もしくは……寝れば頭をからっぽにできることを気付いちゃったから、なのかな。

シージ
シージ

……ロドスの任務が終われば、必ず貴様らをここから連れ出してやるからな。

シージ
シージ

もう誰一人とて取り残したりはしない。

インドラ
インドラ

まあまあ、辛気臭い話は後にして。ほら、数年ぶりの再会に乾杯しようぜ!

インドラ
インドラ

ちーっと安物の酒ではあるけどよ、こんだけ長い間置いておいたんだから、もしかしたら美味しくなってたりして?

インドラ
インドラ

ほらモーガンも、ベアードたちにお前が書いたモノを見せてやれよ~。これまでの俺たちの冒険譚ってヤツ!

インドラ
インドラ

ヘヘッ、残念だったなベアード。次期女王ともなる人の冒険物語だ。そこにお前も登場できたはずなのに、そのチャンスを逃しちまって……

インドラ
インドラ

……って、どうしちまったんだモーガン?さっきから顔色が悪ィーぞ。

インドラ
インドラ

せっかく家に戻ったんだからもっと嬉しそうにしろよ!

モーガン
モーガン

……思い出しちゃったのよ、さっき踏んだ……あの腕のことを。

インドラ
インドラ

……

インドラ
インドラ

ありゃただの事故だろ。

モーガン
モーガン

手に……指輪がはめられてたの。どっかで見たことがあったような……

モーガン
モーガン

覚えているはずなのに……

モーガン
モーガン

なのに、どうしても思い出せないの。

モーガン
モーガン

……ねえ、ベアード。これまでの間、ノーポートで何が起こったの?

ベアード
ベアード

……何も。本当にただの、事故なのかもね。

ベアード
ベアード

今はみんな必死に生き残ろうとしてるだけ、それだけだよ。

ベアード
ベアード

起っちゃったことは仕方ないけど、あんたたちはこうして戻ってきてくれた。なら、あたしたちも直ここから出られる、それだけ知っておけば十分だよ。

モーガン
モーガン

……ノーポートは、吾輩らの家だ。

モーガン
モーガン

なのに……

モーガン
モーガン

……ここに戻ったら最初の日の夜に、てっきりまたあのビリヤード場に朝まで通って、それから隣にあるバーでいつものように飲んだくれると思っていた。

モーガン
モーガン

それかマクラーレンにビデオホールを貸し切ってもらって、冒険ものの映画を十作品ぶっ通しで鑑賞したりして……

モーガン
モーガン

……

モーガン
モーガン

……でも吾輩、見ちゃったんだよ。あんまりまじまじとは見ないようにしてたけど。

モーガン
モーガン

粉々になったガラスとそこにへばりついた乾いた血。そしてそこに倒れていた……黒いナニか。

ベアード
ベアード

あんたも寝たほうがいいね、あたしみたいに。

ベアード
ベアード

ここに帰ってくるまで大変だったんでしょ?

モーガン
モーガン

ねえヴィーナ、あんたは今その宝剣を持ってる。だったらいつかは国を救ってくれる英雄になってくれるのよね?

モーガン
モーガン

あんたが……いや、吾輩らがノーポートを救い出す。そんな英雄に。

モーガン
モーガン

ここのこんな見るに堪えない惨状は一時的なものに過ぎないんだって!そうなのよね!?

シージ
シージ

……当然だ。

シージ
シージ

必ずここを元通りにしてみせる。

ベアード
ベアード

できれば、ね……

ベアード
ベアード

さっ、もう夜も遅いんだし、今日はこの辺にしてしっかり休んでおこう。

ベアード
ベアード

明日もまだまだやらなきゃならないことが山積みだからさ。

シージ
シージ

ベアードの言う通りだ。しっかりと……休んでおこう、モーガン。

シージはソファーの上にうずくまっていた。彼女は何度も何度もここで夜を過ごしてきた。ここで感じる何もかもが彼女にとっては馴染み深いものであった。
何年も前にフリーマーケットで見つけたこのオンボロのソファーを、四人がかりで必死にジムの二階まで運び込んだことを、彼女は今でも鮮明に覚えている。
あの頃、このソファーはまだ広く感じていたのだが、すぐに足を肘置きに置かなければ横になることはできないくらいには大人になってしまった。
そんなシージは暗闇の中でソファーを優しく撫でる。
ここにはハンナが小刀を遊んでいた時にできた傷がある。あの頃は傷を付けてしまったせいで、三日は凹んでしまっていたものだったか。
モーガンも以前、ここに飲み物をぶちまけてしまったことがある。粗悪な洗剤で汚れを洗っていたせいで、結局こぼしてしまった箇所だけはひどい有り様になってしまった。今でもそこにはすべすべとした痕が残されている。
ベアードに関しても、アイロンをそのままソファーに置いてしまったせいで、あわや大火事を起こすところだった。

そうした日々はいつまでも続いて行くのだろう。シージはそう思っていた。
変わることはないのだと、そう信じていた。
私たちはグラスゴー。ここは私たちの街であり、私たちが育った場所、私たちのホームなのだと。


そして彼女はここへ帰ってきた。
なのに彼女は、まったく喜びが湧いてこなかった。
モーガンが書き上げた例の“回顧録”――『偉大なるヴィーナ女王陛下とその仲間たち』を思い出してみる。
傍に置いてある諸王の息吹にふと触れてみる。
しかしこの剣は相変わらず冷たいままだった。
指導者、英雄、そして女王。
群衆を導く者、ヴィーナ。
アレクサンドリナ・ヴィーナ・ヴィクトリアだというのに。

シージ
シージ

……

ベアード
ベアード

どうしたのヴィーナ?

シージ
シージ

……今着てる服が重すぎるせいで、寝る際に息苦しい。

シージ
シージ

もっと身軽なものに着替えたい。

シージ
シージ

服ならそこのタンスに仕舞ってあるよ。

(シージが服を着替える)

シージ
シージ

ふぅ……

ベアード
ベアード

数年ぶりだけど、もう背は伸びていないようだね?

シージ
シージ

……ふっ、みんなもう背が伸びるような年頃ではないだろ。

ベアード
ベアード

それはどうかな、成長ってもんは分からないものだよ?あたしたちが初めて会った時だって、あんたはまだあんなに……

シージ
シージ

よしてくれ、また歳月の残酷さを嘆くような昔話をするつもりか。

ベアード
ベアード

……もう何年も話し相手がいなかったものだったからさ。

シージ
シージ

……すまなかった、ベアード。

ベアード
ベアード

いいんだよ、帰ってきてくれただけでも。我らがヴィーナ女王陛下。

シージ
シージ

……そんな風に私を呼ばないでくれ。

ベアード
ベアード

……そう。

ベアード
ベアード

じゃあいつも通り、シージで。

エルマンガルド
???

……

サルカズの兵士
サルカズの兵士

どうかしましたか、マダム・エルマンガルド?

エルマンガルド
エルマンガルド

その“マダム”っていうのやめてちょうだい、私まだそこまで歳食ってないから。

サルカズの兵士
サルカズの兵士

申し訳ない、エルマンガルド……嬢?やれやれ、訳分からん歳をしてるもんですよ、あんたらリッチは……

エルマンガルド
エルマンガルド

……はぁ、じゃもうマダムでいいわよ。

エルマンガルド
エルマンガルド

それにしてもあの高速戦艦、ひどいやられ様ね。それに……ブラッドブルードの人たちのせいで、あたり一面血の海だわ。

サルカズの兵士
サルカズの兵士

マンフレッド将軍が言ってましたよ。サルカズの勝利の始まりだって。

エルマンガルド
エルマンガルド

ふっ、サルカズの勝利ねぇ……

エルマンガルド
エルマンガルド

はぁ~あ、そんな未来を迎えたところでなんの利益ももたらされないぞって、ケルシーが再三私に警告してきたっていうのに。

エルマンガルド
エルマンガルド

それにしても分からないわね……どうして私の師にはあんなフェリーンの友人がいるのかしら?

エルマンガルド
エルマンガルド

……はぁ、もうここの匂いに耐えられそうにないわ。行きましょう。

サルカズの兵士
サルカズの兵士

ではこちらへ。テレジア様がお待ちです。

アーミヤ
アーミヤ

おはようございます、ドクター。

アーミヤ
アーミヤ

朝早くから申し訳ないんですけれど、これからの行動の段取りを決めさせてください。

アーミヤ
アーミヤ

ここにいる一般人らはサルカズに捉えられた人質、いわば攻撃されないための盾です。ただ大公爵も軍事委員会も、タダでこの人たちを見過ごしてくれるだけの良心があるとは思えません。

アーミヤ
アーミヤ

彼らとの間にある駆け引きは一旦置いておくとして、ここで起こってる惨状はこちらも大方理解できました。

ベアード
ベアード

見ての通り、現状を変えるには無理があると思うよ。

ベアード
ベアード

あんたたちが持ってきてくれた医薬品も数えてみたんだけど、正直焼け石に水ってとこかな……

アーミヤ
アーミヤ

ええ。私たちだけではできることには限りがあります。ただ、ここで尻込みする理由にはなりませんよ。

アーミヤ
アーミヤ

飛空船の調査と一般人の避難計画は同時に展開する必要があります。どちらか一方を蔑ろにすることはできません。

ダフネ
ダフネ

あの……

アーミヤ
アーミヤ

なんでしょうか、ダフネさん?

ダフネ
ダフネ

あなたたちはサルカズの包囲網を潜り抜けてここまでやって来たんでしょ?だったらさ、ここから逃げ出すすべもあるってことだよね?

アーミヤ
アーミヤ

確かに、今ここにいるのは全員ロドスが誇る精鋭たちです。けどごめんなさい、ダフネさんが仰ったように、私たちだけじゃここから抜け出すことはできないんです。

アーミヤ
アーミヤ

この戦争を裏で操ってる者と比べれば、私たちはどうしてもちっぽけな存在になってしまいますから。

ダフネ
ダフネ

じゃあなたたちは……誰かの助けがあってここに入って来たってこと?

イネス
イネス

あのハット帽の言葉を借りるのなら、“取引”らしいわよ?一方的で不平等なものだけど。

ダフネ
ダフネ

……あなたは、サルカズなの?

ダフネ
ダフネ

まさか他勢力のサルカズと手を結んでいる大公爵がいただなんて……

[

イネス
イネス

ふふっ、あなたかなり物知りなのね。

ダフネ
ダフネ

……よ、よく新聞を読んでたから。

イネス
イネス

そっ、いい習慣ね。

ダフネ
ダフネ

それで、あなたたちは今撤退計画を練っているんだよね?バックについてる大物が協力してくれているから?

イネス
イネス

残念だけど、そうじゃないわ。向こうからすればここはどうでもいいみたい。

ダフネ
ダフネ

でもあなたたちからすれば、どうでも良くはないんだよね?

イネス
イネス

まあね、だってこの人たちはロドスだから。

イネス
イネス

私はそこの人に言われた通りに従うだけだわ。今は無事ここから脱出できるかどうかが気掛かりだけど。

ダフネ
ダフネ

……一つ提案があるんだけど、いいかな?ちょっとリスキーではあるけど……

ダフネ
ダフネ

いま発信できる装置だったり施設は、全部サルカズたちに渡っているんだ。それであいつらが色々と“言い訳”をしてるのは大方予想できる。

ダフネ
ダフネ

大公爵たちのほうも、本当に単なる“言い訳”だって理解してるはず。

イネス
イネス

ただ向こうがわざわざ攻めてくることはない。大公爵側も軍事委員会側も、互い言い訳については黙認し合ってるふしがあるから。

イネス
イネス

サルカズはここの人たちを盾にしてるけど、それは大公爵たちも同じこと。ただここの人たちが皆殺しにされたほうが都合はいい、なんて思ってる大公爵もいるかもね。

イネス
イネス

戦争における道徳心はただの重荷でしかならない。どうしてもそういう思考を持つ人たちは生まれてしまうものなのよ。

ダフネ
ダフネ

うん、その通り。

ダフネ
ダフネ

だから私たちで……その黙認し合ってる関係をぶち壊すんだ。

ダフネ
ダフネ

大公爵たちに動いてもらうようにね。

ダフネ
ダフネ

……私たち全員がここで死んでしまう前に。

ゴールディング
ゴールディング

……

変形者たち
変形者たち

もう何日もだんまりだね、ゴールディング。

変形者たち
変形者たち

ボクたちの知る限りじゃ、君はそこまで寡黙な人じゃなかったはずだけど。

ゴールディング
ゴールディング

ロンディニウム自救軍はどうなった?

変形者たち
変形者たち

その人たちならこの街から出て行ったよ。

ゴールディング
ゴールディング

生存者数は?

変形者たち
変形者たち

多くはないね。

ゴールディング
ゴールディング

……

変形者たち
変形者たち

やれやれ、まただんまりか。それで自分を慰めているつもりなのかな?

ゴールディング
ゴールディング

いいや、私はただ……彼ら一人ひとりの顔と名前を、思い出しているだけだ。

変形者たち
変形者たち

そんなことする必要なんてないじゃないか。君は彼らに属してるわけじゃないし、そんな虚しい帰属意識なんか忘れちゃいなよ。

変形者たち
変形者たち

それに君が彼らを殺したわけじゃないんだしさ、ほとんどこの戦争で死んでいった者たちだよ?なんだったら君たち、そんな死を“犠牲”って言い換えてるじゃないか。

変形者たち
変形者たち

君が思い出してる名前、その名前を持つ人たちのことだって、ほとんどは会ったこともないんでしょ?

変形者たち
変形者たち

そうやって無理やり自分はとあるグループの一員であると思い込んでおかないと、君たちは喜びと誇りを見出せないのかい?

変形者たち
変形者たち

けどね、そんなことを思っても、ボクたちはボクたちでしかないんだよ?

ゴールディング
ゴールディング

……

ゴールディング
ゴールディング

最初の頃、私は私たちが目指す夢のために、自救軍のために戦っていると考えていた。

ゴールディング
ゴールディング

だがこの数日で気付いてしまったよ。そんなことはない、と。

ゴールディング
ゴールディング

レトの言う通りだ、私たちは同類だったよ。

ゴールディング
ゴールディング

彼のことを悲観主義者と言ってしまったが……それは私も同じことだ。認めようが認めまいが……私は簡単に失望してしまう人間だったよ。

ゴールディング
ゴールディング

自救軍の面々はピュアな理念を抱きながら戦う人たちなのかもしれないが、自救軍そのものはそうとは限らない。

ゴールディング
ゴールディング

クロヴィシアもアラデルも……彼女らの為人は尊敬しているよ。だが彼女らの目的は決して口で描いてるだけのものではない。

ゴールディング
ゴールディング

そんな私は長い間、ずっとそういったものに気付いていないフリをして過ごしていたんだ……

変形者たち
変形者たち

そうして君は幻滅してしまった。ようやく自分のやってることは決して清廉潔白なものではないことに気付いてしまったんだね。

変形者たち
変形者たち

自分がしてきた努力はすべて徒労に過ぎなかったんだって。

ゴールディング
ゴールディング

フッ、まさか。

ゴールディング
ゴールディング

確かにこれまでしてきたことについては、もうとやかく考えないようにはしている。だがそれに関わってきた人たち、その人たちの顔は思い出すようにしているんだ。

ゴールディング
ゴールディング

ハイディ、フェイスト、ロックロック、ビル、アダムス、ジョージ・Jr……

ゴールディング
ゴールディング

自救軍に向かって懺悔する資格も権利も私にはない。あなたの言う通り、そんな虚しい帰属意識を持つ必要性はないさ。

ゴールディング
ゴールディング

だがせめて……心の中で彼らと向き合う必要はあるのだよ。

 

タイトルとURLをコピーしました