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【アークナイツ大陸版】12章 驚霆無声 12-11「時は人を待たず」翻訳

“カジミエーシュ人”
“カジミエーシュ人”

時折思うのだよ、時代はどれも均一に前へ進んでくれるわけではないと。

“カジミエーシュ人”
“カジミエーシュ人”

人が持つ発明の手段はこうも巧妙で、社会を組み立てる方法はこうも多様で、目まぐるしいものであるにも関わらずにな。

“カジミエーシュ人”
“カジミエーシュ人”

私は何度もカジミエーシュを離れてはまた踵を返し、この地で長い間過ごしてきた。今でもあの騎士の国には私たちの存在が確認できるぞ、本当さ。

“カジミエーシュ人”
“カジミエーシュ人”

あそこは本当に惹きつけられるような地だった。

Logos
Logos

その割には、我にあのネオンに彩られた都市を再現してくれと頼みこんではこなかったではないか。

Logos
Logos

この……至極平凡な村落を背景に、うぬは選んだ。

“カジミエーシュ人”
“カジミエーシュ人”

ここは静かだからな。私が初めてカジミエーシュに行った時は、まさにこういった光景が広がっていた。

“カジミエーシュ人”
“カジミエーシュ人”

黄金色の田畑と果てしない野原……だが、今のカジミエーシュにとっては、もはやどうでもいいものに成り下がってしまってるのだろうな。

“カジミエーシュ人”
“カジミエーシュ人”

お前から見て、ここはカズデルと比べてどうだ?

Logos
Logos

……カズデルは廃墟ではあるが、それでもそこには無数もの可能性が秘められていることをも意味する。

Logos
Logos

そこに思いを馳せている光景は人それぞれかもしれんが、次のカズデルを期待してやっても差し支えはなかろう。

“カジミエーシュ人”
“カジミエーシュ人”

それに比べてここは凄まじい変化を遂げたものだ。瞬く間にペガサスたちは彼らが守ってきた騎士道精神と栄誉と共に散り散りになってしまったよ。

“カジミエーシュ人”
“カジミエーシュ人”

……だと言うのに、ここはますます利益という甘露を蓄えながら、人々と惹きつけてくる……

“カジミエーシュ人”
“カジミエーシュ人”

神民と先民たちはサルカズたちに自らの血肉を貪られ、魂を使役されてきたと叱責してくるものだが、彼らは私たちよりもやり方が上手かったよ。

“カジミエーシュ人”
“カジミエーシュ人”

このカジミエーシュというバケモノを肥やすための餌として、支配下にいる人々が自ら我が身を差し出し、食わせるようにしたのさ。

“カジミエーシュ人”
“カジミエーシュ人”

そんな彼らが払うべき代償は……たかだか享楽を与えるという許諾だけだ。

“カジミエーシュ人”
“カジミエーシュ人”

そこで私は、以前カジミエーシュ人の支配者に会うことにした。彼らが作り出したものに興味が湧いたからな。だがそこで気付いてしまったんだ……

“カジミエーシュ人”
“カジミエーシュ人”

ここに支配者はいなかった。あの企業の代弁者も、商業連合会の面々も、監察会や大騎士長……どれも今あるカジミエーシュの支配者ではなかったのだ。

“カジミエーシュ人”
“カジミエーシュ人”

欲望だよ。膨れ上がる欲望がここを支配しているのさ、それだけでも十分なのだよ。

Logos
Logos

……生への渇望だけで、其れほどの探究心は果たして生まれてくるものなのだろうか……

Logos
Logos

うぬは想像するよりもさらに不安を抱えておるようだな。一体なにを恐れておるのだ?

“カジミエーシュ人”
“カジミエーシュ人”

……埋もれてしまうことに恐れているのさ。過去と歴史の中にな。

“カジミエーシュ人”
“カジミエーシュ人”

私はただ、はっきりとさせたいだけなのだよ……

“カジミエーシュ人”
“カジミエーシュ人”

どう自分自身と相対すれば良いのか、とな。

ケルシー
ケルシー

……

ケルシー
ケルシー

うぅ……

W
W

おはよう、ケルシー。今回はなかなか運が悪かったわね~。

ケルシー
ケルシー

ここは……

W
W

よかったらもう少し横になってもらっても構わないわよ?まだあんたの枕元に爆弾を仕込み終えてないから。

W
W

もしかして、目が覚めて最初に視界に入った人があたしで機嫌を損ねちゃったんじゃないの?アハッ、安心して、あたしもだから。

W
W

毎日涙を流しながら、あんたが目を覚めてくれる瞬間を待っていたなんて誤解はされるのはゴメンよ?そんなの死んでやったほうがマシだわ~。

W
W

言っとくけど、これは本当にただの偶然だから。たまたま水を飲もうと部屋に入っただけ。あたしの居場所を占拠してるのはそっちのほうなんだからね。

ケルシー
ケルシー

……ドクターと、アーミヤは……?

W
W

さあ~、どこにいると思う?

W
W

もしかしたら、あんたが寝てる間に殺しちゃったりして~。

ケルシー
ケルシー

……そうか、二人とも無事だったか。

W
W

フッ、あたしも信頼されたものね。

ケルシー
ケルシー

……今の位置関係は?

W
W

ロンディニウムの外にあるあたしのセーフハウス。裏庭まであんたの可哀そうなお仲間たちでぎっしりよ。

W
W

あんたのその深謀遠慮の計画にあたしの恩義は組み込まれているのかしら?もし心から感謝を述べるつもりがあるのなら、受け入れてやってもいいわよ?

ケルシー
ケルシー

……以前アスカロンと何度も計画を選定したことがあったのだが、そのうち最悪の状況に際して元バベルの面々に支援を要請するというものがあったのは確かだ。

W
W

フンッ、やっぱりね。あんただったら一人ひとりの使いどころを綿密に計算してから利用するとおも――

ケルシー
ケルシー

とはいえ、助かったのは事実だ……ありがとう、W。

ケルシー
ケルシー

君の言う通り、心から感謝を述べよう……

W
W

……へ?

W
W

あんた大丈夫?テレシスに脳みそまでやられたんじゃないでしょうね?シャイニングを呼んできてあげようかしら?

ケルシー
ケルシー

私は……ウッ……!

ケルシー
ケルシー

……

ケルシー
ケルシー

W……

W
W

ハッ、呼んであげるわけないでしょ。むしろ今の状態のほうがマシなのかもしれないんだから。

ケルシー
ケルシー

すまないが……身体を起き上がらせたいんだ、少し支えてくれないか……?

W
W

……

W
W

……分かったわよ。

W
W

はい、お水。

ケルシー
ケルシー

ありがとう。

ケルシー
ケルシー

ロンディニウムから撤退することは非常にリスキーな行動だ。今私たちはどうなっている?

W
W

それあたしに聞く?そういうのはクロージャに聞いてちょうだい。いま部屋を増築するとか勝手なこと言ってこの部屋から飛び出していったからいないけど。

ケルシー
ケルシー

君の判断を仰ぎたいんだ。傭兵は常に危機的な状況に鋭い嗅覚を発揮するからな。

W
W

……分かったわよ。

W
W

まず、あんたのお仲間である自救軍はマンフレッドに弄ばれてもうめちゃくちゃね。

W
W

とうとうあんたたちに手を出すって決断したみたい。あたしから見ても、あの惨めな兵士もどきな市民じゃ、おっかないサルカズのクズ連中の相手は務まらないわ。

W
W

そんなお邪魔ムシたちも、今じゃロンディニウムから追い出されてしまった。まあいいことね、少なくとも無駄死にするよりはマシだわ。

W
W

唯一いいニュースと呼べるものは、大公爵らがとうとう動き出してくれたことくらいかしら。イネスから聞いたわよ、ドクターとウサギちゃんがそのうちの一人のパシリにされてるだって?

ケルシー
ケルシー

そうか、大公爵たちが……

ケルシー
ケルシー

なら、いよいよ戦争は勃発したと見てもよさそうだ。

W
W

勿体なかったわね、寝てる間に色んなイベントをすっぽかしちゃって。

W
W

ねっ、今もしかして後悔してるとか?アハ~ッ、いくらおつむが良くても望んだ結果が得られなくて残念ね~。

ケルシー
ケルシー

後悔なら……これまで一度だってしたことはないさ。

ケルシー
ケルシー

ただ時折……

ケルシー
ケルシー

どうしても疲れを……覚えてしまうことがある。

W
W

珍しっ、あんたもそんな表情ができたのね?はやく今の惨めなあんたとツーショットを撮って記念に取っておかないと。

ケルシー
ケルシー

確かに望んだように事態を発展させたいと考える時はあるが、陰から物事の流れに糸を引いて操ろうとする人間を称するつもりはない。

ケルシー
ケルシー

これまでの私は……多種多様な手法を採ってきた。成功例もあれば、この先まだ手を加える余地があると証明された例もある。

ケルシー
ケルシー

だが一つだけ断言できることは、これまでのどの選択もその時々における最善のものであり、理知的に下したものであると私は信じている。

W
W

フンッ、最善ね。

ケルシー
ケルシー

……“最善”という言葉を聞けば、きっとそれらの選択はすべての問題を解決してくれると思ってしまうことだろう。

ケルシー
ケルシー

だが実際はそうではなかった……私はただ、事態を最悪の方向へ発展させないために尽力するしかなかった。

ケルシー
ケルシー

だが私が幾度試そうと、最終的な結末はいずれにしろ私にこう証明してきたのだ。“個人の影響力には限りがある”と……

ケルシー
ケルシー

誰であろうとな。

ケルシー
ケルシー

たとえこのケルシーという名と、その人が背負った記憶がどれだけこの大地を練り歩いてきたとしてもだ。私にできることは……どれも微々たるものに過ぎない。

ケルシー
ケルシー

……かつての私は、一度カズデルを滅ぼしたことがある。あの時、平和をもたらすためにはこれしかないと、そう信じて止まなかった。

ケルシー
ケルシー

私たちは見事、当時の魔王を斬首することに成功した。ほぼ私たちの勝ちだった。そして計画通り、魔王の権能を回収した。

ケルシー
ケルシー

私は起こり得るすべての可能性に対処するための予備案を練った。潜在的に魔王を継承する可能性を持つ者も、厳しい監視下に置くようにした。

ケルシー
ケルシー

だがテレジアは……あの黒い王冠に手を伸ばしたのだ。

W
W

……フン、あたし歴史には興味ないのだけれど。

W
W

それよりも、どうしてあんたとあの人はバベルなんかを立ち上げたわけ?それとあんたにとってサルカズは一体なんなのよ?

W
W

もしあたしたちの命を弄びたいだけなら、あの人は……テレジアはあんたの味方なんかにはならなかったはずだけど。

ケルシー
ケルシー

……サルカズは私たちが想像するよりも異質な存在ではない、私たちはそのことに気付いたんだ。どの種族よりも劣っているわけでもなければ、上位に存在しているわけでもない。

ケルシー
ケルシー

どこからやって来たにしろ、我々は例外なく源石によって似通った姿に、似通った感情と欲を持つことになったのだから。

ケルシー
ケルシー

今でこそこの大地は醜い姿をしているが、これまでに生まれてきたサルカズたちの意志によれば、彼らこそがかつてこの世界における支配者だった。虐殺され、抑圧され、数千年來居場所を奪われてきたのは彼らのほうだと。

ケルシー
ケルシー

私も見たことがある……さらに古い時代、地上にはサルカズしか存在していなかった。

ケルシー
ケルシー

実際この“サルカズ”という呼称は、驕り高ぶっていた加害者らが付けた略称にすぎない。だがいつしか、その名称は被害者らが団結するための合言葉となった。

ケルシー
ケルシー

イリシッドとゴリアテにあれだけの差があるというのに、サイクロプスと炎魔の外見も異なっているというのに、なぜ“サルカズ”として一括りにできる?

ケルシー
ケルシー

ブラッドブルードが国を建てたとしても、この傲慢なるヴィクトリアとなんの違いがある?シェイプシフターが文明を支配しても、あの冷酷なるウルサスとなんの差がある?

ケルシー
ケルシー

だから私とテレジアは答えを導き出した……これでは解決には至らないと。

ケルシー
ケルシー

彼女は魔王の記憶を奥深くまで潜っていたからこそ、私がこれまでずっと憂慮してきた可能性を分かってくれていた。

ケルシー
ケルシー

私たちに……この大地に、もう時間的猶予はないことに。

W
W

……なんであたしにそんなことを話してくれたわけ?言ったでしょ、歴史に興味ないって。

ケルシー
ケルシー

歴史に興味がないからこそだ、W。

ケルシー
ケルシー

歴史はブラッドブルードを、リッチを、その他もろもろの支族を……君たちをサルカズに仕立て上げたが、同時に君たちはその奴隷となってしまった。

ケルシー
ケルシー

カズデルなら、いずれはまた復興するだろう。だが一体どんな基盤の上に復興するのだろうか?

ケルシー
ケルシー

W、君のような人であれば、きっと違う答えを出してくれることだろう。

フェイスト
フェイスト

……

ロックロック
ロックロック

まだキャサリンさんのことを心配してるの?

ロックロック
ロックロック

負傷者たちなら、しばらくここで落ち着いてもらえるかな。あのWって傭兵……本当にいい腕してるよ。

ロックロック
ロックロック

自救軍もすでに再編制されているから、すぐにでもロンディニウムにとんぼ返りできると思うよ。

フェイスト
フェイスト

そうだな。

フェイスト
フェイスト

……

フェイスト
フェイスト

なあ、ロックロック……昨日の夜なんだが、なんか人を見かけなかったか?

ロックロック
ロックロック

それって、サルカズの軍のこと?

フェイスト
フェイスト

いや、そうじゃなくて、知らない人っつーかなんつーか……俺にもよく分からねえんだ。

ロックロック
ロックロック

急にどうしたの?

フェイスト
フェイスト

実はな、一通の手紙が俺んところに届いたんだ……今朝、俺の装備箱の中に。

ロックロック
ロックロック

自救軍の誰かが書いたんじゃないの?

フェイスト
フェイスト

いや、筆跡にはすげー見覚えがあるんだが、どうも思い出せなくてな……

フェイスト
フェイスト

手紙には、ロンディニウムにいる婆ちゃんは無事だから心配はいらないって書いてあったんだ。

フェイスト
フェイスト

それと……住所をいくつか。こっからそう遠くない場所だ。

ロックロック
ロックロック

そんなことができるのは、大公爵のうちのどれかしかいないよ。

フェイスト
フェイスト

そうだよな。

ロックロック
ロックロック

でも大公爵は私たちの保護対象であるロンディニウムの市民じゃないけど?

フェイスト
フェイスト

分かってるよ、どっちの味方につくのかくらい。

フェイスト
フェイスト

あの連中が俺たちのことをどう思っていようが……そいつらの駒になったりはしねえよ。

フェイスト
フェイスト

これは自分たちの権力闘争の戦いだとか、俺たちに選択肢はないなんてことを向こうは思ってるかもしれねえが……

フェイスト
フェイスト

そいつは大間違いだぜって、自救軍として思い知らしめてやるさ。

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