Loading...

【アークナイツ大陸版】12章 驚霆無声 12-13「影」行動後 翻訳

イネス
イネス

それで、あなたはダフネ・ウィンダミアで間違いないのね。

ダフネ
ダフネ

……

ダフネ
ダフネ

どうやって知ったの?

イネス
イネス

もしかしたらと思っただけよ。

ダフネ
ダフネ

そう、もしかしたら……立派な洞察力で。

ダフネ
ダフネ

で、さっきの人は“グレイハット”だった。つまりあなたたちのバックにはカスター公がついているってことだね。

ダフネ
ダフネ

……どうりで宝剣を欲しがっているわけだ。フンッ、向こうはもう野心を隠すこともしなくなったってわけ。

ダフネ
ダフネ

どうやら私よりも厄介な場面にいるみたいだね、あなたたち。

ダフネ
ダフネ

それで、ロンディニウムにヴィーナさんが戻ってきたけど、本当に王位を取り返すつもりなの?

イネス
イネス

それは本人に聞いてちょうだい。私は興味ないから。

ダフネ
ダフネ

じゃあ何に興味があるの?

イネス
イネス

自分の衣装を汚さないことに。

ダフネ
ダフネ

……

ダフネ
ダフネ

母上のところに戻ったら、もっとロドスに目を光らせたほうがいいって伝えなきゃ。

ダフネ
ダフネ

これまでずっと見くびっていたよ、あなたたち“製薬会社”を。

イネス
イネス

あら、私が医者に見えないって言いたいのかしら?

ダフネ
ダフネ

見えないね。

イネス
イネス

なら、これからはそう見えるように努めるわ。

イネス
イネス

さて、これでお互い腹を割って話ができるようになったでしょう。

イネス
イネス

それでウィンダミア公のことだけど、この区画にどれだけの人員を配置してるの?

ダフネ
ダフネ

……私の周りに護衛が二人ついてたけど、もう死んじゃったと思う。

ダフネ
ダフネ

サルカズがここを封鎖しようとした時に私を逃がそうとしたんだけど、失敗しちゃったんだ。

イネス
イネス

護衛を二人だけ……庶民に優しい後継ぎだこと。

イネス
イネス

ならあなたたちも、あの剣を狙っているわけ?

ダフネ
ダフネ

ウィンダミア公なら興味はないよ。大丈夫、私が保証するから。

イネス
イネス

じゃあどうしてあなたはここに?

ダフネ
ダフネ

……たまたまだよ。

イネス
 
イネス
イネス
イネス

……分かってると思うけど、あなたは一つ私に借りができてるの。

答えたくないのなら、今すぐここから出て行っても構わないわよ?あの“グレイハット”も、きっと喜んで大公爵の跡継ぎと話がしたいと思っているはずだわ。

 

イネス
イネス

もしこんなところで自分の娘の身に危害が及んだと知ったら、あの剛直で戦上手なウィンダミア公はどう出るんでしょうね?

イネス
イネス

きっとどの大公爵も見たいと思ってるはずよ。自分たちのライバルがテレジスと戦って自滅するところを。

イネス
イネス

無論、私があのハット帽のことを誤解しているって可能性もあるわね。もしかしたら、本当にデザートをご馳走してあなたと話がしたいだけなのかも。

ダフネ
ダフネ

確かに、イネスさんのアーツのおかげで助かったよ。

ダフネ
ダフネ

でもこの街に閉じ込められているのは本当にただの偶然なの。

ダフネ
ダフネ

大公爵たちはみんなそれぞれ自分たちの情報網を持っている。サルカズの動きを監視するためだったり、ほかの大公爵の動向を探るためだったり。

ダフネ
ダフネ

まあ正直に言って、後者のほうが重要なんだけどね。

ダフネ
ダフネ

ノーポート区は……単に身を隠すにはもってこいの場所なだけだと思うけど。

イネス
イネス

それだけじゃなくて、あなたにとって失踪した王位継承者がかつて所属していたグラスゴーギャングは非常に有益な情報源だから、という理由もあるんじゃない?

ダフネ
ダフネ

……それは違うかな。

ダフネ
ダフネ

私もベアードも……同じビデオホールに行くのが好きだったってだけだよ。

イネス
イネス

……そう。

ダフネ
ダフネ

で、ヴィーナさんがあの剣と一緒にカスター公のところまで連れていかれることもなく、今でもノーポートの中にいるってことは……

ダフネ
ダフネ

あの“グレイハット”があなたたちに厄介な仕事を押し付けたってことなんじゃないかな?

ダフネ
ダフネ

まあそうだよね、だってあなたたち飛空船を探してるんだもん。

ダフネ
ダフネ

確かに、あれは大公爵たちにとって垂涎の的だ。私だって、どうやってサルカズがあんな戦争の形を変えてしまうような飛行要塞を作ったのか知りたくなっちゃうよ。

イネス
イネス

ここまで聞く限りじゃ、あなたたちってば本当に“戦争”ってものを愛しているのね。

ダフネ
ダフネ

サルカズの傭兵さんも同じように愛してると思ってたけど?

ダフネ
ダフネ

まあいいや、私はあなたたちに借りがあるんだし。それで、優しいお医者さん組織のロドスはどう私を利用するつもりなのかな?

ダフネ
ダフネ

さっきも言ったけど、ここにはもう私を守ってくれる護衛も部隊もいないんだ。ガッカリするなら今のうちだよ、イネスさん?

ダフネ
ダフネ

あなたたちとあの“グレイハット”との間にある厄介な仕事、私じゃ手伝ってやれそうにないから。

イネス
イネス

あの飛空船のことなら、私たちだけでなんとかするわ。

ダフネ
ダフネ

じゃあ目的は何?カスター公にとって私がどれだけの価値があるかはあなただって分かってるはずでしょ?なのに私を助けるなんて……

ダフネ
ダフネ

まさか今になって、普通に助けたかっただけだから助けたって言ってくれるの?

イネス
イネス

残念だけど違うわ。

ダフネ
ダフネ

そう、残念だよ。

イネス
イネス

一人の大公爵と抗えるほど、私の勢力は大きくないわ。

イネス
イネス

カスター公だって、きっとロドスよりも他のことに労力を注いでいるはずだわ。

イネス
イネス

そこであなたには、今回の一件を手伝ってもらうようあなたの母親を説得してもらいたいの。

ダフネ
ダフネ

……だとしたら高くつくけど?

ダフネ
ダフネ

母上の介入を利用して、カスター公の支配から逃れたいわけだ。

ダフネ
ダフネ

よく分かっていると思うけど、そんなことは綱渡りだよ?

イネス
イネス

生憎、私たち優しいお医者さん組織にはもうこれしか道がないの。

アーミヤ
アーミヤ

ドクター……

アーミヤ
アーミヤ

ホテルにある通信施設を借りたいとの直談判なんですが、上手くいってるのでしょうか……?

アーミヤ
アーミヤ

やっぱり私もついて行ったほうがよかったんじゃ……

シージ
シージ

心配するな、アーミヤ。ドクターの傍にはイネスがついている。何より、通信施設を少し借りるだけではないか。

アーミヤ
アーミヤ

……そうですよね。なんならここの負傷者たちのほうが私を必要としていることですし。

シージ
シージ

彼らがここを発つ前に、すでに撤退する時間は決めておいたはずだ。

シージ
シージ

ここに居座ってるサルカズたちの攻撃を凌ぐ必要はあるが、公爵らがサルカズに攻撃を仕掛ければチャンスはやって来る。

シージ
シージ

……計画はうまく行くさ。

アーミヤ
アーミヤ

はい……ただ、やっぱりどうしても不安でして。

アーミヤ
アーミヤ

何か……圧を感じるんです、この場所で。何なのかはまだ分かりませんが。

アーミヤ
アーミヤ

最初は、ここノーポートの重苦しい雰囲気によるものだと思っていました。それからはテレジアさんが……また私に何かを見せようとしていたんじゃないかと……

アーミヤ
アーミヤ

でも、どれも違っていました。

シージ
シージ

……本艦にいる時に聞いたのだが、一部のサルカズたちからは“魔王”と呼ばれているようだな、アーミヤ?

シージ
シージ

貴様にとって、“魔王”とはどういう意味だ?貴様はサルカズではないはずだろ。

シージ
シージ

民衆を導く統治者になろうと考えているのか?それとも誰よりも前を突き進む英雄にか?

その傍らでシージは横に置いてある諸王の息吹を軽く撫でるも、剣は相変わらず冷たいままだった。

アーミヤ
アーミヤ

……分かりません。ただ、正直に言いますと……

アーミヤ
アーミヤ

テレジアさんは私たちにある未来を描いてくれたんです……彼女が信じる未来こそが私たちの生きる希望なんだと、私は今でもそれを信じています。

アーミヤ
アーミヤ

でも、あの人が私にこの王冠を渡した際、その未来に辿りつく方法は教えてくれませんでした。さらに言えば今、テレジアさんは……私たちに立ち向かってきています。

アーミヤ
アーミヤ

だから私はこう自分を説得させるしかありませんでした。これはあの人が私に与えた試練なのだと。

アーミヤ
アーミヤ

……正直言って、どうやってあの人と対面すればいいのか、今でも分かりません。何を話しかけてくるのか、私がしてきたことをどう思っているのか……

アーミヤ
アーミヤ

……

アーミヤ
アーミヤ

もしかしたら、私が私のために選んだ道を見て、あの人は……失望してしまうのでしょうか?

アーミヤ
アーミヤ

本当に、私なんかが“魔王”を受け継いでよかったのでしょうか……

シージ
シージ

だが、貴様は今でもそれを背負っているではないか。

シージ
シージ

私も同じ悩みを持つ。はたして人々が期待する人物になれるのかどうか。

シージ
シージ

天災を切り開く英雄に。民衆を団結させる君主に……

シージ
シージ

そのためには、私は何をすればいい?どうやってあの重く積み重なった期待に……応えてやればいいのだろうか?

シージ
シージ

人々を隔てている壁を壊せばいいのか?それとも貴族らを説得させればいいのか?

シージ
シージ

人々へ団結するよう呼び掛けるのか?それとも、静かに威厳を表せばいいのか?

シージ
シージ

……だが、そんなことはどれも不得意だ。ガウェインからも、そういうことは何一つ教わっていない。

シージ
シージ

私はこれまでほとんどの時間をグラスゴーで過ごしてきたからな。私が知るのは、迷惑をかける酔っ払いを殴り飛ばすことや、友人らと一緒にサツから逃れることだけだ。

シージ
シージ

ロドスに入ったおかげで、私は色々と学ぶことができたよ。だがそれでも、どうすればいいかが分からない。

シージ
シージ

てっきりここに帰ってこれば……それが分かると思っていたんだが……

シージ
シージ

モーガンが市民らに向かって、私を“王女殿下”と呼んだあの時……私は相変わらず何も言い出せなかった。

シージ
シージ

幸いなことに、あれは一時的に群衆を宥めるための一芝居だったのだが……やはりど何をどうすればよかったのやら……

シージ
シージ

本当にこの道を進まなければならないのだとしたら……私は一体……

シージ
シージ

最初は単に、苦しむ人たちが見過ごせなかっただけだというのに……

アーミヤ
アーミヤ

……その思いがあるだけでも十分ですよ、シージさん。

アーミヤ
アーミヤ

テレジアさんから一つ教わったことがあるんです。“魔王”は単なる重荷ではないんだと。

アーミヤ
アーミヤ

私も同じですよ……見て見ぬフリをしたくなかっただけですから。

“グレイハット”
“グレイハット”

ドクター殿、今の仕事はお好きですか?

ドクター
ドクター

・ああ。
・……
・好きではないな。

 

 

ああ。……好きではないな。
“グレイハット”
“グレイハット”

なるほど。どうやらご自分は有意義なことをしていると思い込んでいるようですね。

“グレイハット”
“グレイハット”

そこまで長く考えなければならない問題でしたか?

“グレイハット”
“グレイハット”

ほほぅ。なら、今よりもさらに大きな野心をお持ちのようで。

 

“グレイハット”
“グレイハット”

私はですね、正直言ってこの仕事を好きにはならないのですよ。

“グレイハット”
“グレイハット”

闘争を好んで生まれてくる者などおりません、私も同じです。

“グレイハット”
“グレイハット”

一貴族として、どこか大きな敷地を持つ辺鄙な郡にでも移り住んで、暖炉を焚きながら呑気に日々を過ごしたかったものです。

“グレイハット”
“グレイハット”

できることなら小さな牙獣も飼っておきたいですね。毎日荘園の林の中を散歩しながら、文学や詩や歌に考えを巡らせることができますから。

“グレイハット”
“グレイハット”

ただお恥ずかしいことに、たまに『ロンディニウム日報』の文学ページに私の作品が載ることがあるのですが、詩人としては三流でして。

そう言って目の前のこの男は、まるで恥ずかしさを隠すようにハット帽のつばを摘まむ。

“グレイハット”
“グレイハット”

まあ評論家たちがどう評価するにしろ、本人が楽しんでいればそれでいいのです。

“グレイハット”
“グレイハット”

ただ知っての通り、これはあくまで理想に過ぎません。言わずもがな、理想が現実として叶うことは非常に難しい。

“グレイハット”
“グレイハット”

この時代に生まれ落ちてしまったのであれば、この時代に教わった生き方で過ごさなければならないのです。

“グレイハット”
“グレイハット”

では本題に入るとして……教えていただきましょうか、先ほどここにいたあの人は誰なんです?

ドクター
ドクター

・ロドスのオペレーターだ。
・このホテルのマネージャーとドアマンだ。

“グレイハット”
“グレイハット”

誰のことを指して言ってるのか、分かっているはずでしょうに。

“グレイハット”
“グレイハット”

ならこうしましょう。もう一つ取引をするのはどうです?

“グレイハット”
“グレイハット”

そのオペレーターとやらと一緒にこのホテルを出て行ってからでも、引き続き以前話し合った仕事に取り掛かってもらっても構いません。

“グレイハット”
“グレイハット”

そしてその仕事を終えた際には、あなたとアレクサンドリナ殿下を公爵閣下へご紹介して差し上げましょう。

“グレイハット”
“グレイハット”

駒や人質としてではなく、客人と友人として。

“グレイハット”
“グレイハット”

もっと緊密なパートナー関係になっていただきたいと思いましてね。

“グレイハット”
“グレイハット”

その際心配はいりません。約束を遵守する、それが公爵閣下の信条ですから。

ドクター
ドクター

サルカズよりも、よっぽど一人のヴィクトリア人に興味を持っているのだな。

“グレイハット”
“グレイハット”

当然ですとも。なんせ我々はヴィクトリアに身を置いているのですから。

“グレイハット”
“グレイハット”

彼女の外観に騙されてはなりませんよ。この区画が単にサルカズらが建てたかわいい牢獄だとでもお思いですか?

ドクター
ドクター

かわいいとは思えないがな。

“グレイハット”
“グレイハット”

ならば凄惨な牢獄とでも……いや、この際はもうお好きなように。

“グレイハット”
“グレイハット”

あなた方が自らヴィクトリアの王位継承者と呼称し、感染者らに注射を打ってやってた間も、こちらは忙しかったものでしてね。

“グレイハット”
“グレイハット”

確かにここには虐げられている一般市民が大勢います。だがその他にも……

“グレイハット”
“グレイハット”

自分たちの痕跡を隠し、悪巧みをしようとしている不届き者も大勢混ざっているのですよ。

“グレイハット”
“グレイハット”

私が仕えている公爵閣下は、本気で困難を乗り越えたヴィクトリアにもう一度栄光をもたらしてやりたいと考えられておりますが、他もそうとは限りません。

“グレイハット”
“グレイハット”

その他の者たちを炙り出す。それが私の仕事なのですよ。

ドクター
ドクター

なれば、ここの一般人たちはどうでもいいということか?

“グレイハット”
“グレイハット”

どうやら私を責めるおつもりでいるようですが……

“グレイハット”
“グレイハット”

そうではありません、もちろん関係はあります。私とて市民ら一人ひとりの平穏を取り戻してあげたいと考えておりますとも。

“グレイハット”
“グレイハット”

だがそんなことは不可能だ、違いますか?

“グレイハット”
“グレイハット”

今に固執し、現状を変えるためにこつこつと頑張ることができる人はいるでしょうが、誰かしらそれよりも重い使命を背負わなければならないのです。たとえそれが不本意だったとしても。

“グレイハット”
“グレイハット”

例を挙げるとすれば、国家が生き残るための未来を探るという使命を。

“グレイハット”
“グレイハット”

前者の考えも尊重してはいますが、だからといって後者の考えを否定するようなことはしないでいただきたいものです。

ドクター
ドクター

どの大公爵も口ではそう言っているのだろう。

ドクター
ドクター

自分は国家の未来を探っている、そう思っているのかもしれないが……

ドクター
ドクター

それこそヴィクトリアが今回の災難に見舞われた元凶だろ。

“グレイハット”
“グレイハット”

……否定はしません。

“グレイハット”
“グレイハット”

浅はかにも、公爵らは単に権益を奪い合っているだけに過ぎないと考える者もいますが……どうやらあなたはそうではないようですね、ドクター殿。

“グレイハット”
“グレイハット”

権力はあくまで手段であり、利益は道具でしかありません。

“グレイハット”
“グレイハット”

大公爵らが奪い合っているのは、この国を未来へ導くための資格なのですよ。

“グレイハット”
“グレイハット”

ヴィクトリアはもう、王を失って久しいですからね。

“グレイハット”
“グレイハット”

そしてサルカズはいわば紙やすりのようなもの。一通り磨き終えれば、我々の国は再び輝きを取り戻すことができるのです。

(イネスが戻ってくる)

イネス
イネス

さっき自分は詩人として三流だって言ってたけど、どうやら本当みたいね。

“グレイハット”
“グレイハット”

……ようやく戻ってきてくださりましたか、イネスさん。

“グレイハット”
“グレイハット”

これ以上は待てないと思っていたところでしたよ。

タイトルとURLをコピーしました