――天災。
いつからか天災は激しくなる一途をたどり、大地は混沌たる様となった。
人々は先人の知恵の中に隠れ、コンクリートと金属を用いて天災を避ける巣を作った。それが移動都市国家だ。
しかし、天災は依然として非情にも地上の全ての生き物を捕らえ、災害はより遙かに強い苦難を生み出している。
誰かが災害の拡散を阻止しなければならない。何とかしてお互いを敵視し、互いに排除しあっている都市国家の間のバランスを取らなければ――。
天災が私達を引き裂いてしまう前に何か手を施さなければいけない。
…ようやく来たか。予定より少し時間が遅れているようだが。
ご、ごめんなさい、少し遠回りしてしまって。
幸いプロヴァンスさんがいてくれたから、面倒事は大きくならなかったけど…。
レユニオンが引き起こした騒ぎが思ったよりも大きくてね…でも無事で良かったよ。
予想に反して現在のロドスは多くのトラブルに直面してしまっている。
とにかく、お疲れ様だ。この契約が私達の窮地を緩めてくれることを祈るとしよう。
物資の補給が厳しいのは私達だけじゃないみたい…危機契約の協力者達も厳しそうだった。
誰もは立ち上がって、この停滞してしまっている契約の仕組みを復活させたいと願っているんだけど…。
ずっとぶつぶつ言ってるんだよ、でも、こんな負担をドクターに分担してもらうなんてって――
だ、だって、これはロドスのオペレーターがやることだし!
はいはい。
…でも、これをすぐに解決出来るような万能道具なんてものはないよ。むしろ、その逆。
チェルノボーグが転載によって破壊された後に、どれくらいの連鎖反応が起こった?この契約の厚さがその問題を物語ってるよ。
ロドスを即時に支援出来るとしても…こんな危険な任務に疲れ切っているオペレーター達をなんて…。
…お前の心配はよく分かっている。だがロドスには安全を考えるという権利すら無かった。
それに、本当に選択をするのは私達ではない。
・お邪魔するよ、ドーベルマン教官。
ドクター、それにアーミヤも。丁度良い時に来てくれた。
あ、ドーベルマン先生、それにアンジェリーナさんとプロヴァンスさんも!
任務お疲れ様でした。お二人がロドスに戻ってこられたということは、それはつまり――。
そう、協力条項を再締結したんだ。契約の内容は全部持って帰ってきたよ。
――!よかった、ありがとうございます!
いいのいいの、これもトランスポーターの役目だから。
僕たちは確かに全ての書類をドーベルマン先生にお渡ししたので、後のことはドクターにお任せするよ。
ドクターに担当させるのは…君はどうなの?
うん、私達はドクターを信じるよ。
でも…あまり無理はしないでね。いい?
・ええっと、分かったよ?
あの…ドクターは現在の状況がまだ良くわかっていないのでしょうか?
ドクターは多くのことを覚えてはいないのだろうが、私達もあなたにゆっくりとこれら全てを理解してもらう時間はないんだ。
プロヴァンス、アンジェリーナ、もう一度礼を言う。君たちは早く休むと良い。
ドクターとアーミヤ、私と一緒に歩きながら危機契約について説明しするとしようか。
・危機契約って?一体何?
…そこから説明をするのか?まあいい、端的に言おう。
危機契約とは我々が存じている政治的実体とは独立した情報交換システムと言えば理解してもらえるだろう。
各種組織や個人が発行した特殊任務を受けて、これらの任務を遂行することが出来る人に転送をする。
過去に私達は危機契約を完遂することによってロドスの運営を支えるために十分な各種物資を獲得することが出来た。彼らはロドスにとっても重要なパートナーでもある。
レユニオンを起因にする衝突のおかげで危機契約の連絡は一時途絶えてしまっていた。だがトランスポーターの努力によって、私達は新たな交換ルートを構築することが出来たのだ。
今のロドスの状況はドクターもよく知っているだろう。危機契約がもたらす可能性のあるいかなる利益も私達は重要視しなければいけない。
それで相手の目的は?
天災の影響を軽減する…それが本来の目的です。
そもそも、危機契約というものは天災特使によって設立されたものなのです。
…私達は必要なものだけを取ります、ですが「危機契約」には一貫した信条があるのです。
「もっと多くの命のために」。彼らはいつも同じようなことを言っている。
お前の考えていることはよく分かる。空虚なスローガンは確かに人に疑いを持たせる。だが、私達の過去の協力は偽りではない。今はロドスに助けが必要だ。
…ドーベルマン先生の言う通りです。とにかく、私達には多くの選択肢はありません。
ドクター、これらの任務は困難を極めるでしょう。しかしロドスの行き詰まり感を打破するのには、これが私達にとっての唯一の突破口です。
・よく分かった、最善を尽くそう。
――ありがとうございます、ドクター!
では、これから契約の具体的な流れを説明しますね。ドーベルマン先生もお願いします――。
ドクター、これを見てください。これらは今まで接触があった全ての契約条項です。
危機契約においては具体的な任務内容に併せて、多くの非強制的な「追加契約」が提供されています。
例えば、特殊な目標が要求されていた場合には普段とは異なる敵がいるか、目標を達成するためには特別な戦術を取らなければいけません。
似たような契約はたくさん存在します。もちろん、全ての内容が困難なものという訳ではありません!
危機契約からは様々な支援が得られることがあります。そうれなれば逆に任務は簡単なものとなるんです!
支援を合理的に利用することは良いことだが、目的は忘れるなよ。支援を求めるということはロドスが何も得られなくなるということなのだから注意が必要だ。
また、危機契約は私達にある程度の自由選択のスペースを提供してくれている。だが決してあらゆることが自由ということではない。
オペレーター達の作戦区域はとても広く、これは私達が同時に多くの危機契約を選べるということを意味する。
だが、少し考えれば分かるだろう?契約の中にはお互いに矛盾してしまうものも存在している。
同時に終わらせようとすればかえって損をする。そのようなことは避けなければならない。
当然、同時に複数の契約を行うということは任務の難しさを増加させることとなる。計画と指揮がうまくいかないということになった場合の結果は想像に耐えないものとなるだろう。
大丈夫です、私はドクターを信じています!
…ドクターの能力に疑問はない。この点についてもとっくに何度も検証はしているが、もう一度確認する必要はあるだろう。
契約の内容によると任務の難易度には「普通」と「困難」の2つのクラスが存在している。
契約数および危険度レベルの評価係数が4以下の場合は「普通」。
契約数および危険度レベルの評価係数が7以上の場合は「困難」だ。
いくつかの特殊な行動ポイントでは危険度レベルは上昇する。
これらの区分はロドスが契約履行時に不要な損失がもたらされることを防止するためでもあります。
私達は…本当にこれ以上簡単に失うことは出来ません。
もちろんだ。しかし、これはあくまでも基本的なデータからの予測であり、実戦では様々な予測もできない状況が予想されている、その時には…ドクターの指揮に頼るしか無い。
・大丈夫だ、私に任せてくれ。
・私達はもう何も失うことはない
・…
ドクター…。
…お前の様子を見てもう決めたよ。どうすれば良いのかを。
プロヴァンスとアンジェリーナが全ての執行文章を持ってきてくれている。残りは自分でひっくり返してみると良い。
ドクター、ロドスの今の立場は決して楽観的なものではない。今、一番有力な手段は…お前の手の中にあるんだ。
お前の手腕、期待しているぞ。
――「危機契約」。
出身に関わらず、人種に関わらず、善悪にかかわらず、あなたに十分な実力さえあるのであれば――生きて、目標を達成し、報酬を獲得する。
あるいは危険な目標を処理し、巨額の報酬を得て生き延びる。
これから起こるであろう未曾有の災害に「危機契約」は暗がりにある誰も知ることが出来ない網を支えることとなる。
これら全ては更に多くの命のために。