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【明日方舟】メインストーリー8章 R8-6「戦場、蔓延して止まず」前半

ファイギ:
感染者になり始めた頃は、思考が働かず何も考えられなかった。
コシチェイが私を利用してたくさんの悪事に働かせようとしていたことはよく知っている、しかし常に恐怖も感じている、奴は一体私に何をさせたかったのだろうか?
奴は謎の手段を使って、私が長年かけてやっと築き上げた感染者同士の通信網を一瞬にして破壊するつもりなのだろうか?
それとも、奴は私を利用して感染者を分裂させて、都市派と集落派に分けるつもりなのだろうか?
さらに恐ろしいのが、奴は感染者を新たな軍隊に仕立て上げ、ウルサスを再び戦争に突入させるつもりなのだろう?
今のところ私には推測することしかできない。暗い考えは払拭しきれず、いつもぐるぐると私の頭の中を巡っている。
しかし私はもう前に進むしかない。
そういえばあのスノーデビル、名前は確かペトロワだ、彼女が昨日獣のミルクで油の種子を炒めていた、面白い料理方法だった。味もかなり独特だったな。

アリーナ
アリーナ

あの出来事……思い出したわ。早いわね、あれからもう二年も経っちゃったなんて。

アリーナ
アリーナ

戦士たちが散々噂にしていたけど本当なのかしら、あなたが彼女とケンカしたって本当なの?噂では二人してあの廃棄された都市を木っ端微塵に吹っ飛ばしたって聞くけど。

タルラ
タルラ

そんな大げさじゃないよ。噂っていつもいつも常識外れになっちゃうから困るよ……私はただ彼女の源石の氷晶を燃やして融かしただけだよ。

(サシェンカが走り回る足音)

アリーナ
アリーナ

サシェンカ、走り回らないの、転んじゃうわよ!

タルラ
タルラ

彼らが自分たちで生活できるところを見てよ。実に素晴らしい。

アリーナ
アリーナ

それが私の責務だからね。

タルラ
タルラ

まさか君が自ら積極的に子供たちの教師として名乗り出たとはね。

アリーナ
アリーナ

私とあの子たちの関係はウルサスのよりよっぽどいいわよ。それでさっき何を燃やしたって言ったの?

タルラ
タルラ

フロストノヴァの源石氷晶だよ。彼女の小隊が使用していたアーツ装置の一種、だと思う。

アリーナ
アリーナ

それじゃあ……フロストノヴァは、きっと不服よね。

タルラ
タルラ

ふふん、その通り。一息吹きかけられただけで、私の身体の半分は凍りついてしまった。

タルラ
タルラ

反応できたころには、彼女はすでに氷のナイフで私の喉元に斬りかかってきた。

タルラ
タルラ

私は彼女のナイフを防いだけど、ふうと息を吹きかけられ、私の剣もここ数年初めて霜が付着してしまったんだ。

タルラ
タルラ

彼女もきっと自分のナイフが人によって欠けてしまったところを見たのは初めてのはず……

アリーナ
アリーナ

まぁ、嬉しそうに話しているわね。結構自慢にしてるでしょ?

タルラ
タルラ

そんなことは……まあちょっとはあるかな……あれっ、あの子、柵の後ろに隠れてる子って、名前何だったっけ?

アリーナ
アリーナ

ラネーフスカヤよ。そこで何をコソコソしてるの、リューバ!あとでまたお話を聞かせてあげるから!

アリーナ
アリーナ

そうねぇ、灰色の森にいるお化けの話をしちゃおうかしら……とっても怖いお話よ!

アリーナ
アリーナ

先生の代わりに木屑を持ってきてほしいんだけど、お願いできる?籠に入れてちょうだいね。ありがとう。

アリーナ
アリーナ

それで?

タルラ
タルラ

フロストノヴァが……アリーナ、君も知ってるだろ、あのフロストノヴァだ。彼女の名前は私よりはるか前に北西凍原の術師たちに伝わってるんだ。

アリーナ
アリーナ

てっきりあなたって自分の名前が他人の間に伝わるのが嫌ってたと思ってたわ。

タルラ
タルラ

この名前を使って他者を脅かしてる連中がいれば、そりゃあ嫌だよ。でも戦士たちがこの名前を聞いて私に挑んでくるようになるんだったら、それはそれで割といいかも。

アリーナ
アリーナ

あなたと違って、フロストノヴァはそんな挑戦を避けてきた。これは、相当彼女を怒らせたわね。

タルラ
タルラ

彼女は感染者の中でもトップクラスの術師で、小隊指揮もトップクラスで、なにより感染者最強の戦士だ。

タルラ
タルラ

……誤解しないで、決してそれに目がくらんだわけではないから。

アリーナ
アリーナ

でも色んな人から見ても、あなたたちって結構似てるわよ。子供たちだっていつかはフロストノヴァになりたいって言う子もいれば、あなたみたいなヒーローになりたいって言う子もいるわよ。

タルラ
タルラ

ストップ、ストーップ。ヒーローって言葉はやめてよ。君はどうなのさ、アリーナ、そういう君はどうなの?

アリーナ
アリーナ

私からしたらみんなそれぞれ違うわよ。

タルラ
タルラ

そう言うと思ってたよ。

タルラ
タルラ

実を言うと、フロストノヴァが小さい頃どう暮らしていたかはまだ知らないんだ、彼女の教養は素晴らしい、昔は結構いい暮らしをしていたんじゃないかな。

タルラ
タルラ

この子たちには私と同じ人生を歩んではほしくないから。

アリーナ
アリーナ

あなたの教養も素晴らしいじゃない。

タルラ
タルラ

やめてよ。

アリーナ
アリーナ

……タルラ、この大地が彼らにどんな仕打ちを与えるかなんて誰も予想はできないのよ、もしかしたら私たち以上にひどい目に遭うかもしれないのよ。

タルラ
タルラ

縁起でもない。

アリーナ
アリーナ

だから私は先生になりたいって思ったのよ。

タルラ
タルラ

私の「先生」は君みたいな人ではなかったけどね。

タルラ
タルラ

……君の言いたいことはわかるよ。フロストノヴァもきっとそうなんだろうな……

アリーナ
アリーナ

さあね。まったく同じ人生を歩む感染者なんていないんだし。

タルラ
タルラ

とにかく、フロストノヴァとやり合ったあと、技巧訓練で手を抜くことはもうなくなったよ。アーツにしても、剣術にしても。彼女に負けるわけにはいかないからね。

アリーナ
アリーナ

二人がケンカしたのはよーく分かったから、その後はどうなったの?

タルラ
タルラ

彼女がやっと怒りが収まってから教えてくれたよ、あの討伐は彼女が始めたことじゃないってね。

アリーナ
アリーナ

じゃあ始めたのはあの人しかいないわね。

タルラ
タルラ

君の言う通りだ、あの人しかいない。私たちが戦い終えて間もないころに……

タルラ
タルラ

……都市の別端から一人の……

タルラ
タルラ

……人が来たんだ。

アリーナ
アリーナ

思い出すのにそんなに体力使う?

タルラ
タルラ

第一印象であまりにも仰天してしまったからね、どう君に表現していいものやら。

タルラ
タルラ

昼の日差しが彼に降り注いでいるのに、照らし出せないほど彼はヘドロのような黒色をしていたんだ。

タルラ
タルラ

丁度フロストノヴァに私の計画を話していたときだった、ほかの都市にいる感染者にも連絡を入れたいとね。

タルラ
タルラ

資金を調達して小型の移動都市を建設あるいは奪取したいと、彼女らにも計画に参加してほしいと話したそのとき……

タルラ
タルラ

彼の影が私の目に入ったんだ。もうこれ以上は話せない。

アリーナ
アリーナ

どうして?

タルラ
タルラ

そんなに自信がないからだよ。

アリーナ
アリーナ

自信がない?あなたに自信がないときなんて見たことないわ。

タルラ
タルラ

でもあれは……パトリオットだからね。

アリーナ
アリーナ

彼を説得できなかったのね。

タルラ
タルラ

今もね。

タルラ
タルラ

あとのことは君もよく知ってるだろ、私とフロストノヴァが「親善試合」をしたあと、私たちのチームは見事遊撃隊と合流できた。

アリーナ
アリーナ

安心した。というのも、あの遊撃隊と一緒に行動できるって聞いて、私たちの感染者の多くが大喜びしていたし。

アリーナ
アリーナ

この二年間私たちの暮らしは以前に比べて良くなった、あなたの選択は間違っていなかった。あなたは正しかったわ、タルラ。

タルラ
タルラ

でも……たぶんだけど、遊撃隊は私やほかの感染者の戦士たちを重く見ていたわけじゃないと思う、彼らはただ……私たちに同行している感染者たちを無視できなかっただけなのかもしれない。

アリーナ
アリーナ

ならなおさら気を落とす必要はないわ。あなただってそう思ってるじゃないの。

タルラ
タルラ

でももう二年も経つんだよ。それもなんの進展もなく。

アリーナ
アリーナ

じゃあこう考えましょ、タルラ、いつからパトリオットに認めてもらえなくなったと思う?

タルラ
タルラ

一年よりも前かな……私たちが遊撃隊と合流できてしばらく経ってからかな。今もだけど。

フロストノヴァ
フロストノヴァ

不可能だ。

フロストノヴァ
フロストノヴァ

凍原にまだどれだけの感染者がウルサスのクズ共の統治下で暮らしているのかすら分からないんだぞ、その状態で遊撃隊に都市にいる感染者の話をしても、早すぎる。

タルラ
タルラ

凍原の感染者を見捨てるわけではない。でなかれば彼らを連れてくるはずがないだろ?

タルラ
タルラ

私たちはいずれここに戻ってくる。私たちの目標はウルサスを、いや、この大地にいるすべての感染者を団結させることだ……

タルラ
タルラ

それぞれ異なる場所に身を置いていようと、我々は己の理不尽な境遇に区別はない。

タルラ
タルラ

私のある都市にいる同胞がこの行動を「レユニオン」と呼んでいた。

タルラ
タルラ

彼は感染者たちを団結させるよう呼び集め、自ら「レユニオン・ムーブメント」と称した、同じ信念を共に抱き、共にウルサスが今行っている感染者への残酷な統治に抗議するために。

フロストノヴァ
フロストノヴァ

ならこちらも採掘場を搾取している凍原のウルサス兵に抗議すべきだ、もしかしたら非を認めさせられるかもしれん。

タルラ
タルラ

お前が南で「抗議」するのであれば、いっそのこと師団と命の張り合いをしたほうがマシだ。

タルラ
タルラ

ウルサスとて一枚岩ではない。これは我々のチャンスでもあるんだ。レユニオンがすべきことは我々の信念を広く世間に伝え広めることだ、それにほかのチャンスもたくさんある。信念以外にも信号を伝える必要がある。

フロストノヴァ
フロストノヴァ

信号とは?

タルラ
タルラ

「お前たちは孤独ではない」という信号だ。

フロストノヴァ
フロストノヴァ

――

タルラ
タルラ

君だって凍原にいるだけでは自分たちの力を消耗するだけということも理解しているんだろ。だからまずは凍原を抜け出す必要があるんだ。

フロストノヴァ
フロストノヴァ

そんなことに頷けるわけがないだろう。

タルラ
タルラ

やっぱりまだ同意してくれないのか。

フロストノヴァ
フロストノヴァ

離れることの代償が死なのであれば、私の命はせいぜい一人二人のウルサス兵の命と取り換えることぐらいにしか使えない。

フロストノヴァ
フロストノヴァ

だが私たちの周りに人たちはどうする?

フロストノヴァ
フロストノヴァ

タルラ、お前は兄弟姉妹たちが傍にいないからそう言えるんだ。私は彼らを死なせるわけにはいかない。

フロストノヴァ
フロストノヴァ

だがそれに関しては正しいと思っている。

タルラ
タルラ

それってどれのこと?

フロストノヴァ
フロストノヴァ

感染者たちにお前たちは孤独ではないことを伝えることだ。

フロストノヴァ
フロストノヴァ

私たちはこの雪原で一つのことに多くの時間を費やし過ぎた。

フロストノヴァ
フロストノヴァ

同胞たちを探すことにな。

フロストノヴァ
フロストノヴァ

だが、都市の感染者たちを団結させるだと?

フロストノヴァ
フロストノヴァ

どうやら大都会からやってきた若者はよほどファンタジーを好むらしいな。

タルラ
タルラ

君の笑いものになるつもりはまだないよ、フロストノヴァ。

フロストノヴァ
フロストノヴァ

嘲笑ってるわけではない。お前は強い、お前は彼らを連れて長い道を歩んできた、私たちと同じように。

フロストノヴァ
フロストノヴァ

しかし南に向かうこと自体が幻想なのだ。

フロストノヴァ
フロストノヴァ

遊撃隊がいくら強かろうと、私たちは所詮感染者だ。

フロストノヴァ
フロストノヴァ

あとどれくらい私たちに時間が残されているかも分からないんだ……お前が言う団結もどれだけの年月がかかることやら……

タルラ
タルラ

だからこそ――

フロストノヴァ
フロストノヴァ

父さん?

タルラ
タルラ

あ……

タルラ
タルラ

パトリオット殿?

パトリオットは焚き火の傍に腰を下ろした。タルラが脳内で無数にシミュレーションしていた情景と同じように、パトリオットはただそこに座り、一言も喋らず、焚き火を見つめていた。

フロストノヴァ
フロストノヴァ

……

フロストノヴァ
フロストノヴァ

気にするな。続けてくれ。

タルラ
タルラ

私たちに残されている時間が少ないからこそだ。

タルラ
タルラ

南なら豊かな畑地がある、気候もちょうどいい、四季の変化も、新鮮な食べ物だってある。

タルラ
タルラ

資源も、教育も、先行きも……

タルラ
タルラ

未来だってあるんだ。

フロストノヴァ
フロストノヴァ

――未来?

タルラ
タルラ

フロストノヴァ、君が何を考えているかはわかる。

フロストノヴァ
フロストノヴァ

私の考えはすでに私の顔に出ているはずだ、そんな「未来」なんてものは知らない。

タルラ
タルラ

残された時間は確かに少ない、開拓できる場所もあまり多くないのかもしれない。

タルラ
タルラ

しかし感染者にも未来を持つべきだ、未来の感染者のためにも、私たちよりもあとの人たちの未来のためにも。

タルラ
タルラ

フロストノヴァ……私たちで感染者たちに住処を探してあげよう。

タルラ
タルラ

ウルサスの感染者治安維持隊に邪魔されない場所を、ウルサス軍に囲まれない場所を。

フロストノヴァ
フロストノヴァ

お前もよくわかっているはずだ、感染者を同行されることは遊撃隊の足手まといになることを。だが彼らを見捨てることもできない。

フロストノヴァ
フロストノヴァ

困難な道になるぞ。

タルラ
タルラ

少なくとも、私たちが死ぬ前に創造したその希望を、ほかの人に残してあげることはできる。

タルラ
タルラ

それに、もし今のウルサスの感染者制度を覆せれば……

タルラ
タルラ

すべてを変えられる。

フロストノヴァ
フロストノヴァ

だが私たちの勢力はまだ弱い。

フロストノヴァ
フロストノヴァ

お前が感染者じゃなければ、私と握手するもんか?

タルラ
タルラ

なら握手から始めればいい。

フロストノヴァ
フロストノヴァ

……お前の言ってることは、おそらく……

フロストノヴァ
フロストノヴァ

父さん?どこに行くんだ?

パトリオット
パトリオット

もうよい。

(パトリオットが立ち去る足音)

タルラ
タルラ

パトリオット殿……

フロストノヴァ
フロストノヴァ

はぁ、まったく。

フロストノヴァ
フロストノヴァ

あまり気にするな。

アリーナ
アリーナ

たぶん色々考えてくれてるのよ。

タルラ
タルラ

なら随分考え込んでくれているんだろうね。

タルラ
タルラ

この二年間、私と彼の会話はすべて隊の建設やこれからの段取りばっかりだった。一度も彼から私に計画のことを聞いてはくれなかったさ。

アリーナ
アリーナ

タルラ、たとえ彼が君を嘲笑っていたとしても君を反対していたとしても――あっ、他人を嘲笑うような人には思えないけど――あなたはずっと彼の答えを待ち続けている。そうなんでしょ?

タルラ
タルラ

凍原を出たければ、遊撃隊なしではダメだからね。頑張って説得するよ。

アリーナ
アリーナ

彼が凍原にいる感染者の希望だから?

タルラ
タルラ

君がそう言うとは思わなかったよ。君なら……そう言わないはずだったかな?

アリーナ
アリーナ

あなたの考えてることが知りたいだけよ。

タルラ
タルラ

……彼こそが凍原感染者の団結の象徴、だと思ってる。

タルラ
タルラ

あの象徴だけは次の代に引き継ぐことはできないからね。

フロストノヴァ
フロストノヴァ

起きろ!いつまで寝ぼけてるつもりだ?

タルラ
タルラ

寒いんだよ、この白兎が……!

フロストノヴァ
フロストノヴァ

お前がか細い火の苗だからといって、こんな寒さも耐えられないとは言わせないぞ。

タルラ
タルラ

あのウルサス人の武器を凍らすときに言ってることと違うじゃないか。

フロストノヴァ
フロストノヴァ

兄弟たち、撤退するぞ!奴らに追わせてやれ!採掘場の守備軍を片っ端からおびき出すんだ!

タルラ
タルラ

盾衛兵たちの支援が来るまでの辛抱だ!諦めるな!

フロストノヴァ
フロストノヴァ

――早く。早く行くんだ。早く。遊撃隊がすでに挟撃し始めた。

タルラ
タルラ

なんで分かる――ちょっと待て。

タルラ
タルラ

あの変な源石の装飾品の数々は、遊撃隊が設置したのか?

フロストノヴァ
フロストノヴァ

私の父のために設置したものだ。

タルラ
タルラ

ウルサス軍がもう追ってこなくなったぞ。あれを恐れているのか。

タルラ
タルラ

ちょっと待て、あれって……サルカズのものじゃないか?

フロストノヴァ
フロストノヴァ

あの人のサルカズの儀式だ。あの二つは、現時点で手元にある材料で造れる一番良質なものなんだ。

タルラ
タルラ

パトリオットは……パトリオットはここにいるのか?

フロストノヴァ
フロストノヴァ

お前も言ってただろう、私たちの隊が襲撃されたのは予想外だったと。あの連隊を殲滅すると言ったからには、我々の小隊だけでは敵わないのも当然だ。

フロストノヴァ
フロストノヴァ

……敵が怖気づいてきたな。

フロストノヴァ
フロストノヴァ

私の父が戦うところを見るの初めてか、タルラ……?

???
ウルサス駐留軍

あれは……あいつは……あいつだ……なんで言わなかったんだ……なんであいつがここにいるって言わなかったんだ!

???
ウルサス駐留軍

撤退!撤退だ!!奴らは放っておけ、もう構うな!

???
ウルサス駐留軍

待て!あいつが隊の後方から来ただと?じゃあ俺たちの目の前にいるのはなんだ?

???
ウルサス駐留軍

おい?おい!?応答しろ!応答しろ!!

[パトリオット]……

駐留軍が彼に猛攻撃を仕掛けるまで、大衆の面前に聳え立つ高大なサルカズはビクとも動かず、また一言も声を発しなかった。
しかしタルラにはまるで凍原の北風に慟哭が混ざったように聞こえた、それはこの大地の震えであり、かの邪悪はこのウェンディゴを目前に徐々に委縮していった。
パトリオットは仁王立ちし、凍原に向かってその手に持つ戟を突き出した。
ただ生きる命を貪ることしか知らない陰鬱とした天空に突如と大きな空洞が空いたのだった。

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