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【明日方舟】メインストーリー8章 R8-6「戦場、蔓延して止まず」後半

タルラ
タルラ

援護感謝します、パトリオット殿。

パトリオット
パトリオット

――タルラよ。

パトリオット
パトリオット

雪原を出るつもりなのか?出たとしてもウルサスの鉄甲に粉砕されるだけだ。

フロストノヴァ
フロストノヴァ

父さん?どうして今そんなことを?私たちは勝ったんじゃ――

パトリオット
パトリオット

盾衛兵たちが物資を回収しに行った。お前は隊を撤退させろ。全員移動させるように命令を出せ。

フロストノヴァ
フロストノヴァ

……わかった。

パトリオット
パトリオット

お前とお前の計画は全員無駄死させるだけだ。

タルラは意識した、目の前の巨人が初めて自分に意見を出したことを。たとえその意見が揺れ動かなかろうと、骨を突き刺すような鋭さを備えていようと。

タルラ
タルラ

北西凍原にいても生存は困難です。私たちの隊が大きくなればなるほど、必要になる食料やエネルギーの補給も大きくなります、我々を毛嫌いする集落も我々を支持してくれる村落よりよっぽど多い。

タルラ
タルラ

一年に一度収穫を行っても……我々が畑仕事に加わっても、いくら収穫できると思いますか?

タルラ
タルラ

我々の畑は治安維持隊に壊滅させられると思いますか?遊撃隊なら撃退は容易でしょう、しかしほかの感染者には無理な話です。

パトリオット
パトリオット

お前は彼らの死を早めているだけだ。

タルラ
タルラ

私たちは凍原を出るだけです。サーミにも、荒野にも行くつもりもありません……東へ、南へ、温かいところに向かいたいだけなんです。

パトリオット
パトリオット

ではどう生き延びるつもりだ?お前はどうやってこれほどの大勢を死なせないようにできるのだ?

パトリオット
パトリオット

遊撃隊だって救助を行っている。遊撃隊が隊以外の者を犠牲にすることは万に一つもない。犠牲になるのは戦士だけで十分なのだ。

タルラ
タルラ

しかし、各都市や都市周辺で生活している感染者は、凍原よりはるかに大人数です。

タルラ
タルラ

あなたは北に常駐していますから、北に住まう感染者の痛みや苦しみをよく熟知している……しかしそれゆえあなたはあまり理解できないのでしょう、南にいる感染者たちがどのような生活を送っているかを。

パトリオット
パトリオット

彼らの暮らしはどうだ?

タルラ
タルラ

暮らしは最悪です。

パトリオット
パトリオット

お前は彼らを吸収したいのだな。

タルラ
タルラ

彼らを団結させたいんです。

パトリオット
パトリオット

帝国が感染者を狙えば、真っ先にお前に斬りかかってくるぞ。

タルラ
タルラ

私の下に団結させるのではありません。断じて違います。同じ理念の下に団結させるのです。

パトリオット
パトリオット

理念だと?感染者は凍原でおがくずにされ、採掘場で鉱物の滓にされ、集落では罰の示しと見なされ、都市ではよくわからん燃料にされている。

パトリオット
パトリオット

凍原の感染者とて無知でも愚蠢でもない。我々に幻想など必要ない。いかなる理念も現実の前ではただの幻想に過ぎん。

パトリオット
パトリオット

凍原にはまだ採掘場、巡査部隊、愚鈍で怠惰な防衛軍が残っている。物資を獲得できる場所も残っている。

タルラ
タルラ

凍原の物資は遅かれ早かれ消耗しきってしまいます、私たちに物資を開発できる手段がないのも原因ですが。

タルラ
タルラ

我々には長く稼働する移動都市を持っていません、トランスポーターのプロフェッショナルさえも……

パトリオット
パトリオット

都市に向かったところで、得られるものなど一つもない。

タルラ
タルラ

新たな友を得られます。

パトリオット
パトリオット

ではその友とは一体誰だ?

パトリオット
パトリオット

お前の計画の雄大さは認めよう。

パトリオット
パトリオット

それに、お前の企みも、ずば抜けた点があったとしても疑いの余地はない。

パトリオット
パトリオット

だがどれくらいの策略家が凍原に倒れ死したと思う?お前はその理想のために、何ができるかも、何をもって実現できるところなど想像できん。

パトリオット
パトリオット

なぜ先代の皇帝が大地を震え上がらせられたと思う?なぜなら彼はそれに固執していたからだ、遠くぼやけた理想を一度たりとも語らなかったからだ。彼はただそれに向かって歩み続けたからだ。

パトリオット
パトリオット

それゆえお前には不可能だ。

タルラ
タルラ

……

タルラ
タルラ

パトリオット殿!

タルラ
タルラ

私はウルサスの鉄甲に粉砕されるとあなたはおっしゃいました、それは認めます、やつはいずれ必ず我々の元にやってきます。我々はいずれ捕まってしまう。全員逃れられない。

タルラ
タルラ

「なら奴らを来させよう」。そう考えているのですか、パトリオット殿?

タルラ
タルラ

凍原ならあなたによりよい戦場を用意してくれるからですか?

パトリオット
パトリオット

お前は新たな戦場を探し求めているのか?

タルラ
タルラ

私は勝機を探し求めているだけです。

タルラ
タルラ

多くの感染者にとってそれは希望だからです。しかし私やあなたみたいな戦士にとっては、それはただのきっかけに過ぎません。一つの戦略の固執から逃れられるためのきっかけに過ぎません。

タルラ
タルラ

凍原を彷徨うことも結局のところは緩やかな死を迎えることと変わりません……我々が感染者として残されたわずかな命のように。何度でも言います、この点に関してお互いよく理解していたとしても。

パトリオット
パトリオット

――

パトリオット
パトリオット

私の娘はお前に従うかもしれない。

パトリオット
パトリオット

だが私は事実に打ちのめされ失望せず、空理空論にすがる人などを決して信じないがな。

タルラ
タルラ

……

フロストノヴァ
フロストノヴァ

タルラ?どこに行くんだ?

タルラ
タルラ

なんでもない。採掘場に生存者がいないか見てくる。

フロストノヴァ
フロストノヴァ

遊撃隊はすでに撤収し終えて出発した、集落も遷移を始めたぞ。ウルサス軍からの追跡も見当たらない……

フロストノヴァ
フロストノヴァ

父さん?どうかしたのか?

パトリオット
パトリオット

ゴホッ……

パトリオット
パトリオット

ただの咳だ。

ゴソゴソ音

タルラ
タルラ

――

タルラ
タルラ

誰かいるのか?

タルラ
タルラ

……そこにいるのは分かっている。ウルサス軍の人ではないね、木の枝を踏まなかったからね。

タルラ
タルラ

こちらに悪意はない。君たちが感染者でないのであれば、すぐに立ち去ろう、もし助けが必要であれば……

???
???

こ、これ以上近づくな!

???
???

動くな!でないと矢でお前を撃つぞ!

タルラ
タルラ

あ。

???
怯えた子供

か、感染者だ!サーシャ、ぼくのアーツなら感染者をやっつけられるよ……!

???
サーシャ

アーツはダメだ!

???
怯えた子供

でもサーシャ……

???
サーシャ

さ、さっさと消えろ!俺たちは採掘場でものをとっただけだ……人は殺したくない!

???
サーシャ

本当に撃つからな!死んじまっても知らないぞ!!

???
怯えた子供

サーシャ……で、でもさっき……

タルラ
タルラ

……

タルラ
タルラ

お前たちもう何日も食ってないだろう?

サーシャ
サーシャ

お前には関係ない!

タルラ
タルラ

軍が駐在している採掘場の付近だから、火を起こすことも出来なかったのだろう。

タルラ
タルラ

……ふるいをかける小麦みたいに震えているじゃないか。

怯えた子供
怯えた子供

うぅ……

サーシャ
サーシャ

クソッ。

タルラ
タルラ

怖がる必要はない。

タルラは木の枝を一本手に取った。
彼女はその木の枝をそーっと二人の子供に手渡し、木の枝は内から外に向かって火花を散らした。

[怯えた子供]わぁ……

サーシャ
サーシャ

お前……

タルラ
タルラ

少しは温まるだろ。

タルラ
タルラ

そうさ、私も感染者だ。

アリーナ
アリーナ

なるほどね。

アリーナ
アリーナ

そうしてサーシャとイーノを見つけたわけね……あの子たち今でもほかの人に昔のことを話してくれないのよね。

タルラ
タルラ

もし私が彼らを見つけなかったら、きっとこの先長くはなかっただろう。

タルラ
タルラ

パトリオットが私を否定したあとに起こったいいことなんて、これ一つだけだったよ。

アリーナ
アリーナ

じゃあ今日のあれはどういうこと?

タルラ
タルラ

……訓練中に私のアーツが隣にかけてあったフロストノヴァのマントにかかちゃって。ぶっ殺してやるってさ。

アリーナ
アリーナ

じゃああとで絶対縫い直してあげるって約束したのね?

タルラ
タルラ

そのことなんだけどさ、アリーナ……

アリーナ
アリーナ

分かったわよ。私が縫ってあげる、あなたに任せても針に糸を通すこともままならないだろうし。

タルラ
タルラ

私のチームに入ってくれないか?君の口先が加われば、パトリオットを説得できる可能性も高くなるはずだ。

アリーナ
アリーナ

言ったでしょ、タルラ……この前も言ったはずよ。遊撃隊に私のアーツは効かないわ。

アリーナ
アリーナ

血に染まることは構わない、でもこっちから人を傷つけたくはないの。あなただって今後治安維持隊としか対峙しないとは限らないのよ。

タルラ
タルラ

それだとあの時君を連れてきてしまったことで……君に申し訳がつかないよ。

アリーナ
アリーナ

あ、それわざと言ったでしょ、そうでしょ?

タルラ
タルラ

違っ、私はただ……

アリーナ
アリーナ

間違わないで、私は自分の意志であなたについていったんだからね。

アリーナ
アリーナ

今までついてきたのは、たった一つの理由のためだけ、それは……タルラ、あなたが忘れちゃうかもしれないから。

タルラ
タルラ

忘れるって何を?

アリーナ
アリーナ

自分のなすべきことが何なのかよ。

タルラ
タルラ

私は今までずっと感染者の未来のために努力してきたじゃないか。

アリーナ
アリーナ

最初はそうは言ってなかったわ。

タルラ
タルラ

……

アリーナ
アリーナ

タルラ、人は変わる。

アリーナ
アリーナ

でももし私たちがずっと抱き続けてきたものを一つ一つ捨てたとしたら、あるいは新しい何かに換えたら、ある時、もう何も抱いていなかったとしたらどうする?

タルラ
タルラ

そりゃあ次々とやってくる戦いや各種状況の変化の中で、方針は随時変えるさ。凝り固まった思考は私たちを弱めてしまうからね。

アリーナ
アリーナ

じゃああなたが抱き続けているものは何?

タルラ
タルラ

――

アリーナ
アリーナ

感染者は普通の人と同じことの証明?それとも、普通の人が感染者と同じことの証明?

タルラ
タルラ

それって何が違うの?

アリーナ
アリーナ

感染者しかいない世の中だったら、誰が普通の人なの?私たちはすべての人に鉱石病を患わせたいのか、それとも徹底的にその普通の人たちと隔離したいのか?

アリーナ
アリーナ

もし普通の人しかいない世の中で、感染者がいないのであれば……鉱石病に感染した人がいてもそれは普通の人だし、感染してなくても普通の人。

アリーナ
アリーナ

神民も、先民も、村の農民たちも、都市に住んでいる人たちも、みんな普通の人であるべきなのよ。

アリーナ
アリーナ

タルラ、家族のところに帰りたい?

タルラ
タルラ

私の家族は君たちしかいないよ。

アリーナ
アリーナ

もう。違うってば。

アリーナ
アリーナ

もし私たちの身体にある鉱石病を取り除くことができたとしたら……家に帰れると思う?

タルラ
タルラ

君と同じ考えだよ、それは不可能だ。

タルラ
タルラ

凍原と今の生活は私たちを徹底的に変えてしまった。感染者はもう自分たちの過去の生活に戻ることはできない。

アリーナ
アリーナ

タルラ、あなたは今でも自分は感染者であることを誇りに思っている?

タルラ
タルラ

どうしてそんなことを聞くの?

アリーナ
アリーナ

アーツロッドを使わなくてもアーツが使えるから?私たちの命がこれほど短いものだから?それともこんなにたくさんの困難に遭遇しても、必ず乗り越えて生きていくと決心しているから?

アリーナ
アリーナ

タルラ、あなたならどれを選ぶ?

タルラ
タルラ

選ぶ必要なんてないよ、アリーナ。

タルラ
タルラ

一人の感染者として、それだけでも誇りだよ。だってこの大地はまだ私を殺せそうにないからね。

タルラ
タルラ

ついでに言うと、私が公平を追い求めていることにも理由なんて必要ないよ。だって私たちは公平を追い求めて当然だからね。

タルラ
タルラ

もしこの大地がそれを与えてくれないのであれば、大地から奪い取ってやればいいだけの話だよ。

アリーナ
アリーナ

あなたってば本当に勇敢な人ね。

タルラ
タルラ

笑わないでよ。

アリーナ
アリーナ

そんな、笑ってなんかないわ。

タルラ
タルラ

うん、でもきっと私だけじゃなく……自分たちの運命に抗おうと決心してくれた人たちはみんな勇敢な人だと、私は思うな。

アリーナ
アリーナ

ならあなたはきっと――

アリーナ
アリーナ

うーん。

タルラ
タルラ

きっと?

アリーナ
アリーナ

この運命はクソみたいだって思てるはずでしょ。

タルラ
タルラ

そりゃあもちろんさ。

アリーナ
アリーナ

でも私はそうは思わないわ、タルラ。

タルラ
タルラ

……また真逆のことを言ってる、アリーナ。

アリーナ
アリーナ

そうじゃないわ……私が言いたいのは、私がここに座れるのも、あなたとこうして雑談できるのも、集落の外は私たちの戦士が守ってくれていることを知れたのも、全部その運命のおかげだって話。

タルラ
タルラ

そんなこと言っちゃダメだよ。運命はよく人を妬むんだ。君がそんなことを言った暁には、運命が君の言っていたことを全部奪ってしまうかもしれないんだよ。

アリーナ
アリーナ

でも私は運命なんて信じないわ、タルラ。

タルラ
タルラ

運命を変えられるから?

アリーナ
アリーナ

運命は目に見えないからよ。

アリーナ
アリーナ

タルラ、見えるもの触れるものは全部そこにあるものなのよ。

アリーナ
アリーナ

自分が今縫ってるマントは触れられる。蝋燭の火は見えるし、手に持ってる針も見える。

アリーナ
アリーナ

感染者の子供たちの笑顔は見えるし、美味しそうに焼きあがった野菜から上がってきた白い湯気だって見える。

アリーナ
アリーナ

雪も見えるし、夜空にある二つの月が舞う軽やかなステップも見える。

アリーナ
アリーナ

でも一部の人々はそれすらも見えないのよ。

アリーナ
アリーナ

タルラ、もしある日私たちみんながあなたの傍から消えてしまってとしても、あなたは戦い続けられる?

タルラ
タルラ

何の話?

アリーナ
アリーナ

いつか起こる話よ。そのときになっても、あなたはこの運命と抗うことに価値はあると思える?

アリーナ
アリーナ

こんなのはもううんざりだ、もう何もできっこないって、考え始める?

タルラ
タルラ

もしパトリオットが私に何かを教えたのであれば、どれだけ些細なものでも私はすでに習得した、とっくに習得したさ。

タルラ
タルラ

決してこうべを垂れないことをね。

タルラ
タルラ

あれが私を嘲笑う限り、絶対に灰になるまで燃やし尽くしてやるってね。

アリーナ
アリーナ

バカね、タルラ。よぼよぼの老人以下ね。

タルラ
タルラ

ちょっと!

アリーナ
アリーナ

そんなことを言って馬鹿に見えないのは老人だけよ。

アリーナ
アリーナ

その人がどれだけ老いてもまだそんなことを考えているということは、あまりにも多くのことに遭遇してしまったからよ。

アリーナ
アリーナ

大地がその人の身に残した残酷な傷痕を残してしまった以上その人はもう安寧な暮らしを送ることはできないわ。

アリーナ
アリーナ

……そんな人は過去の砂漠に生きてるようなものよ。もし私だったら、一歩踏み出す勇気もないわ。

アリーナ
アリーナ

もし私がそれほど老齢な上にそれほど頑固だったら、私がこれまで歩いてきた道は過去のすべてで自分を串刺しにするようなもの。

アリーナ
アリーナ

それに、その記憶と過去の砂漠の中で、自分が未だに前に進めている証明ができるなんて想像できないわ。

アリーナ
アリーナ

またどれほど強靭な精神がないと、過去とは異なる一歩を、新たな一歩を踏み出せるようになれるわけ?

タルラ
タルラ

それって彼のことを指しているんだよね。

アリーナ
アリーナ

言ったじゃない、彼のことは何となく知ってるけど、パトリオットさんのことは本当によく知らないの。それに一言も彼だって言ってなかったわよ。

アリーナ
アリーナ

あなたが彼と思うのだったら、はぁ、彼でいいわ。

アリーナ
アリーナ

仮にパトリオットさんだったら……

タルラ
タルラ

代入早いなぁ。

アリーナ
アリーナ

オホン。

アリーナ
アリーナ

彼らみたいな年老いた戦士と違って、若者というのは忘れることや、諦めること、自分を許すこともできるの。

タルラ
タルラ

つまり、私は目に見えているものだけのために戦っているって言いたいの?それとも、それは間違っているって言いたいの?

アリーナ
アリーナ

あなたと一緒に村を逃げ出したときに私に言ったことに比べて、それはあまりにも浅はかだわ。

アリーナ
アリーナ

この数年で、あなたは確かに立派なリーダーになった。でもだからといってすべていいことずくめではないわ、あなただって自分をこんなところで立ち止まるわけにはいかないでしょ?

アリーナ
アリーナ

「より多くの暴力がないと広がらない正義など、正義と言えるか?」

アリーナ
アリーナ

その言葉には随分と悩まされたわ。ここ数年ずっとそのことについて考えてた。答えはまだ出せてないけど、ずっとずっと考えてきた。

タルラ
タルラ

それは良かった、じゃあさっき話してた運命とか抗うとか一旦全部忘れよう。それでアリーナ先生、今日は私に何を教えてくれるんですか?

アリーナ
アリーナ

ふふ。あなたフロストノヴァにもそんな適当な喋り方してるでしょ?

タルラ
タルラ

冗談はよしてくれ。そんなこと言ったらフロストノヴァに口を氷漬けにされるぞ。

アリーナ
アリーナ

あなただったら、タルラ、あなたもしかして勝てる敵にしか戦いを挑んでないでしょうね?

アリーナ
アリーナ

治安維持隊に、採掘場の監視員、私たちの後をつける召集兵に、ウルサスの医学大臣……これらに勝てても、それは勝利と言えるかしら?

アリーナ
アリーナ

これらはとてつもない悪、だけど、それらに勝利しないといけないのかしら?

タルラ
タルラ

どうやらアリーナ先生は私に見えないものとも戦ってほしいそうだ。じゃあ私はどうやればそれらに勝てるの?

アリーナ
アリーナ

それらはあなたが受け入れられるもの、温かさとか、食べ物とか、寝床とか、それといずれ触れるものとは根本的に違うものよ。

アリーナ
アリーナ

この戦いに結果はないと思うわ、勝利できるとも思えない。

タルラ
タルラ

もうこれ以上受け入れるつもりはないよ。あまりに遠い出来事は嘘と変わりないからね。

タルラ
タルラ

永遠に勝てないのであれば、戦い続ける必要なんてある?

アリーナ
アリーナ

さっき聞いたじゃない?そのときになっても、あなたはこの運命と抗うことに価値はあると思うかって?

アリーナ
アリーナ

それすらも過去になったときは、あなたは自分の敵すら見失ってしまうわ。そしてあなたは未来が見えない人々と同じ敵を持つようになる。

アリーナ
アリーナ

……その時こそが、本当の戦いの始まりよ。

タルラ
タルラ

――

タルラ
タルラ

その精神とか、敵意とか、ウルサス人と私たちに刻まれたものか。

タルラ
タルラ

――つまり皇帝のことか?

アリーナ
アリーナ

皇帝はそれの一種の姿かもしれないわね。

アリーナ
アリーナ

人々が武器を下ろさない限り、この戦いは終わらないわ。

タルラ
タルラ

私はそうは思わない。人々が武器を持って自分たちを虐げてきたものを滅ぼすことこそが正義だ。

アリーナ
アリーナ

そうね。でもこの戦いに、終わりはないと私は思うわ。

アリーナ
アリーナ

リターニアとヴィクトリアの本を、パトリオットさんのおかげで、結構読んだわ。その中に好きな言葉があったの……

アリーナ
アリーナ

「我々の戦争とは己と向き合うための戦争だ。」ってね。

アリーナ
アリーナ

そうよ、タルラ、あなたたちは今手に握っている剣を下ろそうとしない――

タルラ
タルラ

……だから君も縫う針を止めないんだね。

アリーナ
アリーナ

今日の授業はここでおしまい!もうあなたに教えることはないわ。

アリーナ
アリーナ

子供たちが今すべきことは勉強よ。あの子たちには明日を生きるための知識が必要だから。

アリーナ
アリーナ

タルラ……コシチェイはあなたを聖人に仕立て上げようとしたけど、人である以上過ちを犯さないことなんて無理よ。

アリーナ
アリーナ

転んでしまったらまた立ち上がればいいだけの話。でももし彼があなたに転ぶことを許していないのであれば……

アリーナ
アリーナ

気を付けて進むしかないわ。

アリーナ
アリーナ

パトリオットと対面するときも一緒よ、実を言うと私、あなたと彼を同じタイプの人として見ているのよ。

アリーナ
アリーナ

二人とも自分の考えに固執しすぎだわ、それにあの元気で小さな命たちに、どっちが正しくてどっちが間違っていることなんて今は言えないわ。

タルラ
タルラ

いいや、アリーナ。私は自分ですら信じられないことを為すことなってできないよ。

アリーナ
アリーナ

そうね、コシチェイに言われたことだもんね。

タルラ
タルラ

彼を滅ぼすことは不可能だって言い草だね?

アリーナ
アリーナ

あれは一種の思想だから。思想を滅ぼすことなんて私たちにはできないわ……

アリーナ
アリーナ

でもちょっぴり自信はあるわよ。

タルラ
タルラ

なんの自信?

アリーナ
アリーナ

もしそのときになっても私たちがまだあなたの傍にいるとしたら、絶対あなたを連れ戻してあげるから。

アリーナ
アリーナ

コシチェイのアーツがどんなものであろうと、私たちならきっとそれを破いてみせる。私たちならきっとできる。

アリーナ
アリーナ

この戦いは、文字と言葉から始まった、そして次からは、表情一つで始まるわ。今この時から始まるわ。

アリーナ
アリーナ

どのキノコなら食べられるかとか、家畜はどう飼うべきかとか、風邪をひいたらどうすれば早く治るかとかね。

アリーナ
アリーナ

私たちなら負けないわ。

タルラ
タルラ

ふふ。

アリーナ
アリーナ

あなたもきっとパトリオットを説得できるわ。

タルラ
タルラ

少々厳しいけど応援として受け取るよ。

アリーナ
アリーナ

はい、縫い終わったわ。彼女に渡してあげてね。

アリーナ
アリーナ

すごくこのマントを大事にしてることが縫ってて分かったわ。軍で生産されたものらしいわね。中に三着で外にも三着重なっている、見るからにサイズが大きいわね。

タルラ
タルラ

きっと軍が支給したマントなんだよ。もしかしたら……

アリーナ
アリーナ

あ。

タルラ
タルラ

……

アリーナ
アリーナ

……パトリオットさんが戦い続ける原因の一つが、分かっちゃったかもね。

タルラ
タルラ

ありがとう、アリーナ。

タルラ
タルラ

……ちょっと待って!

アリーナ
アリーナ

どうしたの?明日の授業の準備をしないといけないんだけど。お絵描きの授業だから、みんな楽しみにしているわ。

タルラ
タルラ

今度またブラシを持ってきてあげるよ。

アリーナ
アリーナ

それと、それとね……聞きたいんだけど、君は本当に……フロストノヴァたちと顔を合わせないつもりなの?

アリーナ
アリーナ

戦士たちですらこちらに感染者教師が数人いることを知っているのに、君は自分を隠蔽しすぎているというかなんというか……

アリーナ
アリーナ

今じゃないわ、タルラ。

アリーナ
アリーナ

あなたの言う感染者の理想が実現したときになれば、自然とお互い顔を合わせるようになるわ。

アリーナ
アリーナ

それに、私たちはみんな戦士なのよ、ただ戦ってる場所が違うだけ。いずれお互い顔を合わせるようになるわ、そうでしょ?

タルラ
タルラ

そうだね、アリーナ。アリーナも感染者の立派な戦士だもんね。

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