はぁ……はぁ……
ロドスの医療技術は……確かにこちらと比べて進んでいるな……
各感染者集落に派遣した医療人員も私たちの計画の内に含まれていますから。しかし混戦地区に、一般の医療オペレーターを送るのは、危険すぎますけどね。
すまない、もう……平気だ。この応急処置で十分だ。
敵が退いた。戦場が大きくなった。もうあのアーツが使えない、私ではもうあいつらを探し出せない。
ならこちらの魔族に任せよう、彼らも探すのは得意ではあるからな。
感謝する、ロドスの戦士よ、お前の勇猛果敢な戦いがなければ、こちらの人員の死傷は避けて通れなかった。
さきほど聞いたぞ、ロドスのリーダーよ。コータス、一人でコントロールタワーに攻め込むつもりか?
……はい、でも違います。
説明してくれ。
タルラと対峙するときは、私一人になります。
それにおそらく、龍門からやってきたもう一人の戦士が私を助けてくれるかもしれません……しかし現時点では私一人と仮定します。
一人だけでどうやって彼女を殺すというのだ?お前は大尉などではないのだぞ。
しかし、それは皆さんも同じです。人数が多くなればなるほど、戦闘での自由が利かなくなってしまいます、その上タルラはパトリオットさんよりさらに短時間で戦場を制圧するアーツを得意としています。
私が少人数の小隊を連れて行くのは、コントロールタワー内にまだほかの敵がいる可能性があるからというだけです。
それで足りるのか?
私は私の小隊メンバーを信じています。それに彼らは最も頼りで最も各種状況対応に長けている戦士でもありますから。もしこちらで処理しきれない状況が発生した場合は、そちらにも支援して頂けるよう助けを呼びますので。
我らを決戦から排除しようというのか?
いいえ、今回の戦闘を主導するつもりなど毛頭ありません、でも、盾衛兵さん、遊撃隊には遊撃隊にしか処理できない戦場があるはずです。
我らにコントロールタワーに侵入しようとする敵を阻止させたいのだな。
その通りです。
……アーミヤ、私も行っちゃダメなの?
コントロールタワー外の戦場のほうが安全ですからね。
私たち二人で一緒に戦わせたくないの?二人でタルラに対抗すれば……!
ロスモンティスさん、タルラのアーツには膨大なエネルギーが含まれています、あなたなら色んな物理ダメージの処理も難なくこなしていけるでしょう、しかし、炎ともなると……
でも私……あいつは……あいつはAceを殺した、私の家族をたくさん殺したんだよ!
なんで私が行っちゃダメなの?
……
確かに炎の処理は不得意だけど……私はどうするべき?どうすればいい?昔の私は確かに色々不得意だったけど今は違う!
あなたはタルラが憎いのですね。
そうだよ、そうじゃなかったらなんなの!それともあいつが憎めないの?
ロスモンティスさん……
その問いには答えられません。会ったこともない人を憎むなとも言えません……
でも、ロスモンティスさん……別れる前に、一つだけあなたに命令を下します。
命令?
はい。
命令は絶対遵守って……ケルシー先生が言っていた。エリートオペレーターならなおさら。私は……
うん。
――私たちが出発する前にLogosさんは言っていました、パトリオットの人生の中で強敵と見なされた人は極少数しかいないと……
それに彼は何かの符号、その人の特徴や身に着けていた装備でその人を呼ぶことを好み、逆にその人の名前や種族で呼ぶことを嫌っていました。
しかし彼はあの時、フェリーンとあなたを呼んでいましたよね。
おそらく彼はあなたを認めたんだと思います。
あなたのこともそう呼んでいたよ、あなたをコータスって。何を認めたの?私の人を恐怖させる姿を?私はそんな風には見られたくない。
……でも、たくさんの人が私たちをバケモノとして扱っていたとしたら、パトリオットさんは私たち以上にとてつもなく長い間バケモノ扱いされていたと思います。
私たちの身体には恐ろしいアーツが潜んでいる、それは間違いありません。
しかしそれでもなお彼は私たちを人として見てくれました。私たちを……人間として見てくれたんです。
同類じゃないの?私たちはみんな……恐ろしく、人々から嫌われてきた人たちと同じだよ。
いいえ。ここにいる遊撃隊の戦士たちを見てください、この違うレユニオンのリーダーに追随してきた戦士たちを、私たちの戦士たちを……
良い行いをすれば人々から尊敬される。悪い行いをすれば人々から嫌悪される。
人々は私たちのこれまで行いで私たちの来た道を判断するんです。隊員たちがあなたを庇ったように、盾衛兵がパトリオットを庇ったように、私たちがケルシー先生を信頼しているように。
なのでロスモンティス、私の命令は、死なないこと、皆さんのことも可能な限り死なせないよう守ること。
そして、たとえ私が死んでしまったとしても、コントロールタワーには入らないこと。
アーミヤ!でもあなたは……あなたは私の友だちなのに、あなたを一人に……一人にするわけには!
それでもダメです!ロスモンティス。約束します。
必ず生きて帰ってくると約束します。
なので、誰が何を言おうと、私に何かが起きたと誰が言おうと、自分の責務を全うしてください、私たちの目標の達成を最優先にしてください。
全員生き残ることを最優先に。
この命令は、この場にいる皆さんに下したものでもあります。
絶対に生き残ること。
チェルノボーグ救出作戦は、命の救出でもあるのです。
中心街潜入作戦も、命の救出のためです。
「あることで命を喜んで投げ捨てよう」とは言いません、絶対。
命は尊く、とても大事なものです、みなさんそれぞれのものです。
誰であろうと、誰一人、私たちのためにその命を浪費していい人なんていません。
……必要な犠牲なんてこの世にはないのです。
そんな言い訳は、絶対に間違っています。
Guardさん!
……聞いてたよ、アーミヤ……ロドスのリーダー。
それはレユニオンにとっても同じことですから。
――
コータス!
はい。何でしょうか。
ここは我らに任せるがいい。フェリーン、行くぞ!この子ウサギに理想の戦場を与えてやれ。
あぁ……アーミヤぁ……
絶対ですからね。
……
分かった。絶対に守る。
うん、ありがとう。
アーミヤ小隊の皆さん、私について来てください!
皆さん、生きていたらまたお会いしましょう!
また会おう……
また会おう!
じゃあ私たちは、私たちのやるべきことに集中しよう。
なら、遊撃隊のやり方で進もう。
我らの戦場はこんなちっぽけな場所で留まるわけがない!さあ来い!ここの街区を、ずべて我らの戦場と化そう!
ロドスアイランド、行くぞ!
うん!
もう一度言ってくれ、チェン警司。
あれだけ繰り返してまだ足りないと?
十分理解しているとも。自分の耳を疑ってしまうほどにな。
チェン警司、これは君の職権の範囲外のことだ。
国が弁える法はあるというのに、道理がないとはな。
君はヴィクトリア王立前衛学校で一体何を学んできたのだ?堅実にあたれ、理想に縋りすぎるなと教わらなかったのか?
私はもう卒業した。今の私はすでに龍門に奉仕する一警察員だ。
ではもう一度言おう、よく聞いておけ、「私は近衛局への加入に志願する、従って、今後は特別督査チームに加入したい」。
私がこの都市を守ろう、そして綺麗さっぱり掃除もしてやる。そうすればあんな出来事も二度と起こらなくなる。
あんな出来事とは?
健忘症が酷くなったのか、それともわざとバカのフリをしているのか?
口の利き方に気を付けたまえ、チェン警司。
申し訳ありませんでした、長官。
ウェイ長官、私が言いたいのは十年も前から、龍門は外部勢力の侵入に遭遇してきました、市民の誘拐とそれに伴う失踪事件も相次いでいます。
私が近衛局に加入すれば、引き続き失踪人物たちのさらなる調査を行うよう龍門を動かしてみせます。
チェン……君は理解していないからそんなことが言えるんだ。
きちんと理解しております、サー。
反対はしない。ではこうしよう、もしこれ以上続けられなくなったときは、私に報告したまえ。
ではチェン警司、近衛局で何年務めるつもりだね?
……
彼のその問いには答えなかった。
これほど長い年月が経とうと、私が考えてるのはいつも一つだ、あと何年務められる?あと何年務めればいい?
ただ今になって分かったのは、この答えは、私が決められるものではなかったのだと。
最近赤霄剣を振るう手がますます鈍くなってきた。私はいつになったら、絶影は影を追いかけていることでも、決して手を手放さないことでもなく、二度と振り返れないことを理解できるのだろうか?
「涙峰の剣、棄つと思わば即棄てん」