アークナイツ ストーリー翻訳

【明日方舟】オムニバスストーリー「この地の外で キアーベ 荒野の道は果てしなく」

果てしなく広がる荒野の中、赤髪のヴァルポの男が地面に蹲いながら何かに目を凝らしながらじっと見ていた。

彼からそう遠くない場所に一台の車が止まっている、白髪のループスの男の黒髪のフェリーンが車両の検査に取り掛かっていた。

どうやら三人は同行者のようであり、車もどうやら故障したらしい。

キアーベ
キアーベ

おーい、アオスタ、こっち来いよ。

アオスタ
アオスタ

どうしました?

キアーベ
キアーベ

ここに虫がいるぞ。

キアーベ
キアーベ

お行儀良く一列に並んでやがるぜ。

キアーベ
キアーベ

しかも結構長く続いているぜ、どこまで続いているか見に行ってくるわ。

アオスタ
アオスタ

……かなり元気出たようですね。

キアーベ
キアーベ

ああ、だいぶ良くなったぜ!

アオスタ
アオスタ

しかし、お前自身の身体への判断は信用できません。

キアーベ
キアーベ

お前は俺の母ちゃんかよ!

アオスタ
アオスタ

30分前まで血吐いていたじゃないですか。

キアーベ
キアーベ

はは、だが今はもう吐いてねぇだろ。

キアーベ
キアーベ

あ、やばっ、お前と喋ってる間に、虫がいなくなっちまったじゃねぇか。

アオスタ
アオスタ

まあいい、僕は車の修理に戻りますね。

キアーベ
キアーベ

おう、車の不具合とかわかったか、俺も手伝おうか?

アオスタ
アオスタ

パイプがちょっと故障したせいで、エンジンが動かなくなっただけです。

アオスタ
アオスタ

僕とブローカだけでなんとかなりますから、お前はあちこち動き回らないように。

(車のエンジン音)

稼働音が鳴り響き、ついにエンジンもようやく動き出した。

アオスタ
アオスタ

ふぅ……ブローカ、キアーベを呼び戻してきてください。

ブローカ
ブローカ

わかった。

(ブローカとアオスタが歩き出す)

キアーベ
キアーベ

おーい、ブローカ、誰が一番しょんべんを遠くまで飛ばせるか試合しよーぜ!

ブローカ
ブローカ

……今しょんべんは出ないんだ。

アオスタ
アオスタ

そんな真面目に答えなくていいんですよ、ブローカ。

キアーベ
キアーベ

もったいねぇ、しょんべんするのに最高の天気なのになー。

アオスタ
アオスタ

極寒の場所以外、しょ……用を足すのに適さない天気なんてないと思いますが。

キアーベ
キアーベ

わかってねぇな、アオスタ、こういうのはフィーリングなんだよ!

キアーベ
キアーベ

おぉ、完璧な放物線だ――※シラクーザスラング※!

アオスタ
アオスタ

どうしました?

キアーベ
キアーベ

突然風が吹いて俺様のベリッシモな放物線が俺様の靴にかかっちまった!チクショ、ツいてねぇ。

アオスタ
アオスタ

……もうその辺にして、出発しますよ、日没までに集落を探さないと、今日は荒野で野宿ですよ。

キアーベ
キアーベ

別に悪くねぇじゃねぇかよ荒野ぐらい?

キアーベ
キアーベ

そんなことより、俺まだキャンプしたことないんだよ!今日はキャンプして過ごそうぜ!

アオスタ
アオスタ

荒野は危険です、それに根本的な話をすると、盗んできたこの車にキャンプ用具なんかありません、車で寝るしかないんですよ。

アオスタ
アオスタ

それに、燃料もそろそろ尽きそうなんですよ。

キアーベ
キアーベ

ちぇっ、使えねぇ車だな。

アオスタ
アオスタ

普通街中で暮らす車の主が車にキャンプ用具を用意するとは思いませんが、余分な燃料も。

キアーベ
キアーベ

でもちょっとぐらい用意したってバチは当たらねぇだろ、自分の車がいつキャンプするために盗まれるかもわからねぇんだぞ!

アオスタ
アオスタ

じゃあお前は用意するんですか?

キアーベ
キアーベ

うーん……しねぇな。

アオスタ
アオスタ

だったらその口を閉じて出発しますよ。

キアーベ
キアーベ

おう。

ブローカ
ブローカ

出発するのか?

アオスタ
アオスタ

はい。僕が運転します。

キアーベ
キアーベ

なんだよ、今度は俺の番だろ?

アオスタ
アオスタ

お前は休んでください。

キアーベ
キアーベ

アオスタ、最近ますます俺の母ちゃんに似てきたぞ。

アオスタ
アオスタ

……

キアーベ
キアーベ

なぁ、ブローカ、お前もそう思わねぇか?

ブローカ
ブローカ

少しは。

アオスタ
アオスタ

二人とも鉱石病を患っているからじゃないですか。

アオスタ
アオスタ

良好な生活習慣は病状の進行を抑えると聞きます、だから毎日早寝早起きするべきですよ、キアーベ。

キアーベ
キアーベ

勘弁してくれ、お前知ってるか、アオスタ、母ちゃんですらそんなこと言わねぇぞ。

アオスタ
アオスタ

※イェラグ挨拶用語※黙れ。

(車のエンジン音)

そう言ってアオスタはエンジンをかけた。

キアーベ
キアーベ

曲は何を流そっかなぁ……

キアーベ
キアーベ

チッチッ、この車の主結構聞いてんな……おっ、このジャケットいいな、こいつでいいや!

キアーベがかき回して探し出したアルバムをカーオーディオに差し込み、愉快な音楽がスピーカーから奏でられた――

「♪土曜にラクダに跨りながら」
「♪ビッグスターみたいにプレゼントを持ってお前の玄関に現れよう」

キアーベ
キアーベ

(口笛)いい曲じゃねぇか。

アオスタ
アオスタ

確かに。じゃ、行きましょうか。

(車のエンジン音)

キアーベ
キアーベ

そういえばさ、アオスタ。

アオスタ
アオスタ

ん?

キアーベ
キアーベ

今俺たちはどこに向かってるんだ?

アオスタ
アオスタ

出発する前に答えたはずですが。

キアーベ
キアーベ

忘れた。

アオスタ
アオスタ

ただ聞いてなかっただけだと思いますが。

アオスタ
アオスタ

僕たちが逃げ出した時についでに、地図を拝借してきました、今は一番近くにあるロコモティヴァ市に向かっています。

アオスタ
アオスタ

確かあそこのファミリーとウチらのファミリーの勢力は拮抗していたはずです、運が良ければ、そこに加われるでしょうね。

アオスタ
アオスタ

ダメだったとしても少なくとも足をつく場所ができます。

キアーベ
キアーベ

なぁ、シラクーザの西に変な町があるって聞いたぞ、幽霊が出るって噂だ、ちょっと行ってみようぜ。

アオスタ
アオスタ

何言ってるんですか、それがどこにあるのかすら分かっていないんですよ、それにただの都市伝説って可能性もあります。

キアーベ
キアーベ

じゃあほかの十二のファミリーの都市に行ってみねぇか?

キアーベ
キアーベ

チッ、シシリア連盟も十三ファミリーの一つって言うけど、いっつも自分で騒ぎを起こしてやがる、何が連盟だよ、ったく!

アオスタ
アオスタ

そりゃあシシリア連盟は正統で大きなファミリーみたいな組織じゃなく、大小様々なファミリーが集って組織されたものですからね。

アオスタ
アオスタ

ほかのデカいファイミリーが僕たちシシリア連盟の名もない下っ端を気にするはずもありません。

キアーベ
キアーベ

ふんっ、絶対いつかあっちのほうから加入させてくださいって言ってくるからな。

アオスタ
アオスタ

どうせビアンカ市にはしばらく帰れないんです……いや、もしくは永遠に帰れないかもしれません。

アオスタ
アオスタ

それに、トリンファミリーの怒りを買ってしまったんです、ビアンカにはもう僕たちの居場所はありませんよ。

キアーベ
キアーベ

はは、あんだけ逆鱗に触れたんだ、ボスのあの、ペッ、リントンのあのブサイクなツラがどんな表情をしているのか見てみたかったぜ。

アオスタ
アオスタ

……確かに。

キアーベ
キアーベ

ハッ、まあ今更後悔したって遅いしな。

アオスタ
アオスタ

後悔か……別にそこまで思う必要はありませんよ、リントンがクズ野郎なのはま違いありませんから。

アオスタ
アオスタ

僕たちを売りさばいたくせに僕たちを利用して金を稼ごうとするなんて、そんなことさせませんよ。

ブローカ
ブローカ

ああ。俺も後悔はしていない。

キアーベ
キアーベ

ヘッ、この話はもうやめだ、初めての脱獄を新メンバーがファミリーに加入する儀式として扱ってるファミリーがいるらしいな。

キアーベ
キアーベ

んで昨日、俺たちは俺たちの元居たファミリーに歯向かって、そしてそこの都市から逃げ出してきた。

キアーベ
キアーベ

だから今この時をもって、お前らをこの俺様のキアーベファミリーの一員として迎えよう!

キアーベ
キアーベ

アオスタ、お前をファミリーの首席参謀に任命する!

アオスタ
アオスタ

あはは。

キアーベ
キアーベ

そんでブローカ、お前はファミリーの首席用心棒だ!

ブローカ
ブローカ

フッ。

「♪だがアンタは地面に向かってほくそ笑む時の自分の顔を知らねぇ――」
「♪自分のツラが――」
「♪どんだけブサイクなのかをな!」

キアーベ
キアーベ

そういえば、こんだけ走ったのに、人っ子一人見当たらねぇな。

アオスタ
アオスタ

都市の外は集落や村落が少しバラついてるだけで、元から人なんていませんよ。

アオスタ
アオスタ

なぜなら都市でつるめなくなったファミリーが荒野に出て好き勝手暴れまわっていますからね、以前ファミリーのキャラバンに何回かついて行ったことがありますが、毎回しっかり準備してから出かけていましたからね。

アオスタ
アオスタ

今の僕たちみたいななんの準備もなしに荒野に飛び出した人なんて、普通は死あるのみですよ。

キアーベ
キアーベ

ハッ、死あるのみか、上等じゃねぇか。

キアーベ
キアーベ

でも確かに、自動車整備ガレージで働いていた頃にもかなり準備してから出て行ったヤツらを見てきたな。

キアーベ
キアーベ

はぁ、逃げ出す前にもうちょい食うもんを持ってこればよかったな。アオスタ――

アオスタ
アオスタ

トランクに積んである食べ物には触れさせませんよ、あれは非常用なんですから。

キアーベ
キアーベ

チッ。

アオスタ
アオスタ

逃げ出せただけでも万々歳ですよ。

アオスタ
アオスタ

昨晩マンドルラが見張っていなかったら、今頃僕たちは目隠しされながら椅子に縛られ暗い小屋に閉じ込められていたでしょうね。

キアーベ
キアーベ

ブローカ、今度こういうことがあったらもっとたくさん食いもんを持って行くよう俺に言ってくれ。

ブローカ
ブローカ

わかった。

アオスタ
アオスタ

はぁ……もういいや。

キアーベ
キアーベ

しっかし、つまんねぇなぁ、こんなだだっ広い土地があるのに活用できねぇとは。

キアーベ
キアーベ

ここ見ろよ、ここにこ――――――んなにデッカいガレージでも造ってさ、そこで車をイジれたら、最高なのになぁ。

アオスタ
アオスタ

天災を避けなきゃいけないですからね、僕たちじゃどうしようもありませんよ。

キアーベ
キアーベ

はぁ、天災に、鉱石病、この大地はロクなもんじゃねぇな。

キアーベ
キアーベ

ブローカ、なんかおもしろいもんねぇの?

ブローカ
ブローカ

……読むか?

アオスタ
アオスタ

なんだそりゃ?

ブローカ
ブローカ

俺がさっき読み終わった小説だ。

キアーベ
キアーベ

どういう話だ?

ブローカ
ブローカ

二人の恋人が両家の矛盾によって最終的に離ればなれになってしまう話だ。

ブローカ
ブローカ

……結構感動するぞ。

キアーベ
キアーベ

いやいい、なんでそんな本持ってるんだよ。

ブローカ
ブローカ

アオスタに車を走らせてる間は退屈になるって言われたからな。

キアーベ
キアーベ

なぁ、ブローカ、ずっと前から気になってたんだがよ、お前ってそういうのが好きなのか?

ブローカ
ブローカ

好きというわけではない、ただ暇だから読んでるだけだ、結構いいぞ。

キアーベ
キアーベ

そうかよ。なぁ、それで思ったんだけどさ、アオスタ、お前彼女できたことあるか?

アオスタ
アオスタ

……ないです。

キアーベ
キアーベ

ブローカは?

ブローカ
ブローカ

ない。

キアーベ
キアーベ

なんだよ、まあ俺もねぇけど。恋愛するってどういうことなんだろうな。

キアーベ
キアーベ

なぁ、アオスタ、まさかお前もこういう本が好きなのか?

アオスタ
アオスタ

僕は政治とか歴史についての本のほうが好きですけどね。

キアーベ
キアーベ

チッ、聞かなきゃよかったぜ、その二つの単語を聞いただけで眠たくなっちまう。

「♪彼女はヴィクトリアバンドでハーモニカを吹いていた。」
「♪だがクルビアの男を愛してしまった。」

キアーベ
キアーベ

なぁ、なんか面白いこととか――ん?

キアーベ
キアーベ

おい、アオスタ、あそこを見ろ。

アオスタ
アオスタ

あれは……

商人
商人

お願いします、私には養わなければいけない母も、子供もいるんで……

???
強盗のボス

どけ、俺様だって同じだ。

???
強盗のボス

余計なことを言うと口を縫い合わすぞ、俺様を怒らせたらてめぇの身体に穴を開けてやるからな!

商人
商人

うぅ……

キアーベ
キアーベ

おい、アオスタ、ブローカ、いいことを思いついたぞ。

アオスタ
アオスタ

あいつに加わって一緒に強盗するだけは言わないでくださいね。

キアーベ
キアーベ

あ?あの強盗をやっつけたあと、商人から物資を少しだけ頂戴するだけだっての。

キアーベ
キアーベ

どうだ、いい策だろ?

キアーベ
キアーベ

いや、お前の言ったそれも悪くねぇな。

アオスタ
アオスタ

いや、そっちのプランにしてください。

キアーベ
キアーベ

いいのか?

アオスタ
アオスタ

いいですよ。

アオスタ
アオスタ

……分けてくれないんだったら、こっちがまた奪えばいいだけの話です。

キアーベ
キアーベ

よっしゃ!そんじゃ、全速前進だ、あのクズどもをぶっ飛ばしてやれ!ブローカ、仕事だぜ!

ブローカ
ブローカ

わかった。

(車で強盗達に突っ込む)

???
強盗A

ボス、あっちから何かが来ます!

???
強盗のボス

なんだ!?

(キアーベが強盗を殴る)

キアーベ
キアーベ

オラァ、這いつくばれや!

???
強盗B

ふんッ!

(強盗Bがキアーベを押し倒す)

キアーベ
キアーベ

チッ。

アオスタ
アオスタ

(小声)僕がスキを作ります、そのスキに……

商人
商人

(小声)は、はい。

アオスタ
アオスタ

それと、ブローカ、お前は……

ブローカ
ブローカ

わかった、努力はしよう。

???
強盗A

なにコソコソ話してやがんだ!

ブローカ
ブローカ

???
強盗のボス

どけぇ!

(殴打音)

???
強盗のボス

チッ、中々やるな、おい、こいつを囲め!

???
強盗C

へい!

ブローカ
ブローカ

ふんッ!

アオスタ
アオスタ

……

???
強盗のボス

おいモヤシ野郎、なに逃げてんだ!

(殴打音)

アオスタ
アオスタ

今です!

商人
商人

は、はいぃ!

アオスタの誘いにより、強盗たちは一時的に商人の存在を忘れていた、そして商人はアオスタの合図により、そのスキに車に乗り込んだ。
そして、エンジンが鳴り響き、車は埃を巻き上げ瞬く間に走り去っていった。

???
強盗のボス

※シラクーザ挨拶用語※、このクソ野郎どもがァァァ!!!

キアーベ
キアーベ

おいちょっと待て、俺たちの物資はどうすんだよ?

アオスタ
アオスタ

そういう話は逃げ切ってからにしてください!

商人が強盗たちの注意を引いているうちに、アオスタたちも自分たちの車に乗り込みエンジンを起動させた。

(車のエンジン音)

アオスタ
アオスタ

キアーベ、乗れ!

キアーベ
キアーベ

おう!

キアーベが反応するよりも先に、アオスタが先んじて車両を動かし強盗たちの中に突っ込んでいった。
これに関してキアーベはすでに慣れっこである、二人を避けたあと、車が加速していないうちに、ドアノブに掴まり車内へと乗り込んだ。

???
強盗A

逃げるなァ!

アオスタ
アオスタ

ブローカ!

(ブローカが車に飛び乗る)

ブローカも勢いよく手のドリルを振るい傍の強盗を退けたあと、アオスタが運転する車が傍をよぎったと同時に車内へと乗り込んだ。

アオスタ
アオスタ

しっかり掴まっててください!

???
強盗A

チッ、逃がすな!

強盗たちは三人の乗る車を足止めしようとしていたが、すでに動き出した車がそう簡単に止まれはしない。
ついに、三人の車は見事強盗たちの包囲を抜け出し、地平線へと駆け抜けていった。

???
強盗のボス

なにボケっとしてるんだ!?お前、お前、そしてお前、あの商人を追え、残りはあのクソ野郎三人を追え!

???
強盗のボス

今日という今日はこの荒野でぶっ殺してやる!

???
強盗

へい!

キアーベ
キアーベ

ワァオ、アオスタ、見ろよ、追っかけてきやがったぜ!

アオスタ
アオスタ

分かってます!シートベルトをつけてください、スピードを上げますよ!

(車のエンジン音)

「♪手を上げ 腹に乗せろ」
「♪呼吸を失うな 思いっきり飛べ」
「♪てめぇを人々へ溶け込ませろ すべては始まったばかりだ」

(車のエンジン音)

アオスタはスピードを限界まで速めたが、強盗たちは依然と後ろに食らいついていた。

キアーベ
キアーベ

諦めの悪いヤツらだな、は――ゲホッゲホッ。

アオスタ
アオスタ

キアーベ、連中を見るために頭を外に出すのはやめてください、窓閉めますよ。

アオスタ
アオスタ

ブローカ、中に引っ込ませてください。

ブローカ
ブローカ

ああ。

キアーベ
キアーベ

ゲホッゲホゲホッ――なんだよ!?

ブローカ
ブローカ

アオスタが頭を外に出すなと。

アオスタ
アオスタ

どうしたんですかキアーベ、急に咳なんか出して?

キアーベ
キアーベ

さあな、たぶん風でむせちまったんだろ。

アオスタ
アオスタ

それだといいんですが。

アオスタ
アオスタ

いいニュースと悪いニュースがあるますけど、どっちから聞きたいですか?

キアーベ
キアーベ

悪いニュースから。

アオスタ
アオスタ

燃料がもうすぐ尽きそうです。

キアーベ
キアーベ

ハッ、そんでいいニュースは?

アオスタ
アオスタ

いいニュースは、燃料が底をつく前に、あいつらから逃げきれそうです。

キアーベ
キアーベ

おっ、もうここから移動都市の壁が見えるぞ。

アオスタ
アオスタ

ええ、おそらくあれがロコモティヴァ市でしょうね。

キアーベ
キアーベ

ヒュー、結構立派じゃねぇか、俺たちがいたビアンカよりもよっぽど貫禄が――ゲホッゲホゲッ。

アオスタ
アオスタ

キアーベ、本当に大丈夫ですか?

キアーベ
キアーベ

大丈夫だ大丈夫だ。

アオスタ
アオスタ

……じゃあお前も一緒に車を押してください、見た感じ近いですけど、歩いていったら一日はかかると思いますよ。

キアーベ
キアーベ

燃料も底をついたというのに、こいつを持って行ってどうすんだよ?普通に歩いて行ったほうが速いだろ。

アオスタ
アオスタ

実は燃料はあと少しだけ残っています、都市に近づいた時やあいつらが追い詰めてきた時に使おうと。

アオスタ
アオスタ

それに、こいつは今僕たちの一番値の張る資産なんですよ、手ぶらで知らない都市で食い繋げられるとでも思ってるんですか?

キアーベ
キアーベ

(口笛)わーったよ。

不満げな表情をしていたキアーベだが、彼も車の端に行き、二人と一緒に車を押し始めた。

キアーベ
キアーベ

なぁ、アオスタ、オーディオつけて音楽流すぐらいなら別にいいだろ、そんなに燃料食うわけじゃねぇんだし。

アオスタ
アオスタ

……それなら別にいいですけど。

キアーベ
キアーベ

よっしゃ、へへ、どれどれ――今度はこいつにしよう!

「♪ハロー、光よ、私の古い友よ」
「♪また君と一緒に語りたい」

キアーベ
キアーベ

チッ、全然盛り上がんねぇ。

アオスタ
アオスタ

僕はわりと好きですけどね。

ブローカ
ブローカ

俺もそう思う。

キアーベ
キアーベ

わーったよ、二人とも好きならこれでいいよ。

キアーベ
キアーベ

なぁ、そういえば、アオスタ、俺たちがどうやって知り合ったかまだ憶えているか?

アオスタ
アオスタ

え?憶えていますけど。

アオスタ
アオスタ

当時お前は車の修理人で、僕のファミリーの人と騒ぎを起こしたから、お前を片付けるため僕が送られましたよね。

キアーベ
キアーベ

へへ、そんで俺たちは殺し合いのうちに気が合って、そんでダチになったんだよな。

アオスタ
アオスタ

フッ。

キアーベ
キアーベ

ゲホッゲホッゲホッ。

アオスタ
アオスタ

おい。

キアーベ
キアーベ

平気だ。ブローカはどうなんだ、お前も憶えているか?

ブローカ
ブローカ

当然だ、忘れるはずもない、俺はお前たち二人に救われたからな。

キアーベ
キアーベ

はは、そうだったな、お前ってヤツはホントバカだよな、自分のファミリーに売られちまったことも知らなかったなんてよ。

ブローカ
ブローカ

ああ。

アオスタ
アオスタ

……だとしたら、僕たちもう知り合って結構経ちますね。

キアーベ
キアーベ

そうだな、ゲホッゲホッ。

アオスタ
アオスタ

キアーベ。やっぱり車で休んでてください、無理は禁物ですよ、僕とブローカが車を押しますから。

キアーベ
キアーベ

フンッ、無理なんかしてねぇよ。

キアーベ
キアーベ

ブローカ、俺たち二人は同じ時期に鉱石病をもらったはずだったよな?

ブローカ
ブローカ

さあな。

アオスタ
アオスタ

たぶん違うと思います、お前たちはほぼ同時期に検査して発覚しただけですから。

アオスタ
アオスタ

ブローカは確か何者かによってオリジウム製品で傷をつけられた罹ったんでしょう。

アオスタ
アオスタ

お前に関しては、普段から防護措置なんか全然施そうとしませんでしたからね、いつ罹ってもおかしくないですよ。

キアーベ
キアーベ

へいへいへい。

キアーベ
キアーベ

ゲホッゲホッ、アオスタ、ずっと俺たちと一緒にいると、いつかお前までこれに罹っちまうぞ。

アオスタ
アオスタ

そうでしょうね。

アオスタ
アオスタ

でも罹ったとしても別に嫌だとは思いませんよ。

キアーベ
キアーベ

あ?なんでだよ?

アオスタ
アオスタ

二人が苦しんでるところをただ見てるだけよりマシですから。

キアーベ
キアーベ

あははは、さっすが俺のブラザーだぜ。

アオスタ
アオスタ

ホント今日は無駄口が多いですね、やっぱり車で横になっててください。

キアーベ
キアーベ

ゲホッゲホッ。

キアーベ
キアーベ

アオスタ、俺自分の嫌いなものリストにこれも加えとくわ。

アオスタ
アオスタ

何をです?

キアーベ
キアーベ

鉱石病だよ。

アオスタ
アオスタ

……ブローカ、キアーベを車にぶち込んでください。

ブローカ
ブローカ

わかった。

今までずっと寡黙だったブローカが話を聞いて近づき、キアーベを抱え上げ車の後部座席に座らせた、そしてまた元の位置に戻り車を押す作業に戻った。
車の中で横になっているキアーベは、太陽が眩しすぎるのか、腕で両目を遮った。

キアーベ
キアーベ

ヘッ、こんな病のせいで、俺たちはリントンのクソ野郎にゴミのように捨てられちまった。

キアーベ
キアーベ

おまけに咳も止まらなくなっちまった。

キアーベ
キアーベ

アオスタ、俺たちが十三ファミリーの頭領になった暁には、俺が絶対この鉱石病を解決してやるよ。

アオスタ
アオスタ

……ええ、その時になったらたくさんの専門医を呼んでこの病を研究させたり、もしくはすごい病院を探して、そこに金を渡して研究させましょう。

キアーベ
キアーベ

ハッ、そいつぁいい。そんで俺様はもっとでけぇ病院を作って、罹っちまって見下されてきたヤツらを全員そこにぶち込んで治してやるんだ。

キアーベ
キアーベ

ついでにそいつらをいい目で見ていない連中も片付けてやる。

ブローカ
ブローカ

俺も手伝おう。

キアーベ
キアーベ

ハッ、もちろん手伝ってもらうさ、アオスタもだぞ、忘れんなよ、お前らは俺の首席参謀と用心棒なんだからな。

アオスタ
アオスタ

ええ。キアーベ、もう話はいいですから。ちゃんと休んでください。

キアーベ
キアーベ

ゲホッゲホッ。

キアーベ
キアーベ

なぁ、アオスタ。

アオスタ
アオスタ

……なんです?

キアーベ
キアーベ

荒野で死ぬってのはどうなんだろうな?

アオスタ
アオスタ

は?

アオスタ
アオスタ

何を言ってるんですか。

アオスタ
アオスタ

十三ファミリーの頭領になるんでしょ?こんなところで死んでたまりますか。

キアーベ
キアーベ

へへ、そうだよな。

キアーベ
キアーベ

でもじっくり考えてみたんだ、荒野で死ぬのも別に悪くねぇなって。

キアーベ
キアーベ

いくら偉大なヤツでも死んじまったら墓の中だ、荒野で死ぬことと数百万もする床で死ぬことになんの違いがあるんだよ?

キアーベ
キアーベ

石ころを何個か見つけて、穴掘って、そん中に入って、目を閉じる。

キアーベ
キアーベ

バンッ――――そんで死者の出来上がり。

キアーベ
キアーベ

悪くねぇとは思うけどなぁ。

アオスタ
アオスタ

ちょっと待ってください、キアーベ、一体何を言ってるんですか?

キアーベ
キアーベ

俺が言いてぇのは、今日の空は、クソ※シラクーザ感嘆言葉※青いなぁ――

「♪私を果てしない荒野に、埋めてちょうだい。」
「♪あぁ友よまた会いましょう、また会いましょう、会いま――」

蓄電池の容量が尽きたのか、カーオーディオから流れていた音楽も突然止んだ。

アオスタ
アオスタ

キアーベ、キアーベ!?

アオスタ
アオスタ

ここで死んではダメですよ!?

アオスタ
アオスタ

ブローカ、車に乗ってください、付近に集落がないか探してみます、最悪診てもらえる人が……

キアーベ
キアーベ

すぅ……すぅ……

アオスタ
アオスタ

……

ブローカ
ブローカ

アオスタ、寝てるだけだ。

アオスタ
アオスタ

……この野郎。

アオスタ
アオスタ

でも、キアーベの容態は決して楽観視できません、感染者を治療してくれる医者を探してあげればいいんですが……

ロドスオペレーター
ロドスオペレーター

おーい、アンタらの車なんか故障でもしてるのか、助けは必要か?

ジェイ
ジェイ

へい、刺身三人前でやす。

キアーベ
キアーベ

はは、やっと来たか。

アオスタ
アオスタ

ありがとうございます。

ブローカ
ブローカ

どうも。

ジェイ
ジェイ

つまり、キアーベさんたちはあの時ロドスに助けられたからロドスにやってきたんですかい?

アオスタ
アオスタ

いえ、あのオペレーターはルーラーというコードネームでして、ルーラーさんが僕たちをロコモティヴァ市にあるロドスの事務所に連れて行ってもらって、その後そこに駐在していた医療オペレーターにキアーベを治療してもらったんです。

キアーベ
キアーベ

んめぇ、ジェイの料理はやっぱ最高だぜ。

ジェイ
ジェイ

ありがとうございやす。そのままロドスの加入したのかと思っていやした。

キアーベ
キアーベ

入れるわけねぇよ、あん時はまだお互いのこと知らねぇし、薬と交換するために、アオスタはあの車を差し出しちまった、あん時はロドスは詐欺グループかと思ってたぜ。

ジェイ
ジェイ

はは。

キアーベ
キアーベ

でもロドスの薬はよく効いたぜ、なぁ、ブローカ。

ブローカ
ブローカ

確かにな。

アオスタ
アオスタ

僕たちがどうやってロドスに加入したかでしたら、簡単に言うと、キアーベがロコモティヴァ市にあるファミリーのボスのひんしゃくを買って、僕たちはまた追われる身になった。

アオスタ
アオスタ

そしてまた、ルーラーさんに助けられた。

アオスタ
アオスタ

そして彼が推薦してくれたおかげで、僕たちはロドスに入ったというわけです。

ジェイ
ジェイ

なるほど。

キアーベ
キアーベ

へッ、言っとくが、アオスタ、あれは俺のせいじゃねぇからな。

アオスタ
アオスタ

わかってますよ。

ジェイ
ジェイ

また新しいお話があるようですね。

キアーベ
キアーベ

へへ、ジェイのあんちゃんはまだ時間はあるか?あったらたっぷり聞かせてやるよ。

ジェイ
ジェイ

もう夜中ですし、明日も別に任務もありやせんから、龍門からもってきた酒をもってきやす、飲みながら話ましょうや。

キアーベ
キアーベ

はは、そいつぁいい。

キアーベ
キアーベ

あの夜、俺とアオスタがちょうど……

真夜中の食堂で、男たちの物語がまた一つ始まったのであった……

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