
(変異生物を切り裂く音)

最後の一匹!

ほかのみなは大事ないか!怪我人は?

問題ないです。

こっちも大丈夫だよ。

通信装置は。

問題ありません。

これは掘った穴か?……おかしい。

このバケモノ、砂地獣に見えるわね。

こんな見た目して砂地獣?2mぐらいあるのに?

……人生のほとんどを荒野で過ごしてきたが、穴を掘る砂地獣なんぞ見たことがないわい。

……この生き物、身体に源石結晶が見られます。

……うーん……

源石感染によって変異を引き起こしたんじゃないでしょうか?

この付近に移動都市もなし、工場も、鉱山もないのよ、源石感染なんてありえないわ。

じゃあ天災によるものなのでは?

]あなた大自然ナメすぎ。野生動物は私たちよりも遥かに天災を熟知してるのよ、源石感染をどう回避すればいいのかも含めてね。

天災は一都市を丸ごと破壊できるけど、野生動物にはほとんど影響を及ぼさない――

――この大地の淘汰は無情よ、一つの種がもし自分の生き方で源石と共存することができなければ、今日まで生き延びることは不可能よ。

なるほど……想像はできます。一番よく見かけるオリジムシに似たようなものですね、体表の外殻がすべての源石を吸収するおかげで、内部の柔らかい部位は感染せずキレイなままだと。

じゃあ、PRTSの記録にこれと似た事例は?

ないわね、クルビアのキャストアイアン市で起こった漏洩事故でもこんな変異は見られなかったわ。

砂地獣はとても臆病な生き物じゃ、源石変異とて激烈的に性格が変わることはない。

アーツによる影響を除けば、こやつらがこんな攻撃性を見せるはずもない。

警戒を維持、気を緩めるな。

……アーツ?術師の仕業ですか?これ以上この遠征に余計なことは起こらないでほしいものですね。

あまり思い詰めなさんさ、わしらは予定通りに進めればよい。

了解しました。
(無線音)

これは……ロドスからの緊急救援信号?

ほかのロドスの外勤チームから?
(無線音)

……助かっ……やっと応答してくれた!

……た……助けを……支援を求む……

こちらロドスアイランド外勤小隊、聞こえたら応答願います。

こちら……アインタウィル……展望タワー33……

……暴徒……が……

……侵入してきた!

落ち着け!オペレーター、何があった!

信号が悪い、途切れ途切れです。
(無線音)

……救援を……助け……くれ……

……

こりゃ面倒臭いことになったわね。

展望タワー33とは何ですか?

ロドスのセーフハウスのコードネームに聞こえるな。

セーフハウス?任務の報告でここ付近にセーフハウスがあるなんて聞いてないわよ。

……うむ……

ロドスは辺鄙な地域に隠れ家的なセーフハウスを設置することがあるんじゃ、特殊外勤任務用としてな。

しかしその展望タワー33の位置がどこにあるのかがわかりません。

アインタウィル……アインタウィル……

この名前、聞き覚えがある、地図を見せておくれ。

うむ……

恐らくはここじゃ、ラッパ山を東に20kmほど進めばまた違う峡谷がある、そこ付近に小さな町があったはずじゃ。

当時町には小さな井戸があって、そこ付近一帯の貴重な水源じゃった。

だからアインタウィルって呼ばれてるのですか?

じゃあこれからどうするの、計画変更かしら?

このまま夜通しフィアルクンに向かうことということもできます、事務所に連絡させてもらって、支援を求めるとか。

……おそらくそれではセーフハウスのオペレーターがもたんじゃろうな。

おぬしらは引き続きフィアルクンに向かって、どうにかして支援を得てくれ。

わしはアインタウィルに向かって状況を確認する。そこはわしのよく知る土地じゃ、一人で行動したほうが動きやすい。

もし状況がまずければ、わしもフィアルクンに行って合流する。

それは……

私は賛成できません。

ほう?

砂地から現れた変異生物、セーフハウスからのSOS、それらの間に関係があると言えば疑いすぎかもしれませんが、私たちはここサルゴンの荒野では警戒を維持する必要があります。

アインタウィル周囲の状況が不明瞭という条件下、レンジャーさんを一人で行かせるにはあまりにもリスキーです。

私も一緒に行動したほうがいいと思います、状況がまずければお互い対応できますし、いざとなれば相互に援護し合って撤退もできます。

……うむ……

おぬしらの言う通りじゃな。

今回はおぬしらの言うことを聞こう。もうこんな歳じゃ、若い頃のように単独で危険を冒すわけにもいかんな。


こりゃまた醜いモンだな。

醜さとは個人の審美的主観にすぎんよ、君はこの生き物が象徴する真の意味を見るべきだね、コレが進化の過程で見せた無数の可能性を。

秩序というのは自然が我々によって強いられてきた虚構の概念にすぎない、この世の森羅万象は本来ならカオスで無常なのだよ。

(ロシア語)まあもっとも、君のような人が理解してくれるとは期待していないがね、その愚かしい頭脳では生物進化の偉大さを理解できるはずもない。

俺のわかる言語で話してくれ!

そうだな、ミスター・ドラッジ。君の目に映ってるコレが醜いかどうかはさておき、結果に対してあまり満足ではなさそうだね。

でなければ、私の元に来るはずもない。

まだまだ強さが足りねぇよ、先生!あんたのバケモノじゃ領主防衛隊の気を引くには足りねぇぜ!

それは君の愚かな傭兵があまりにも無能すぎるからなんじゃないのかい?

この変異生物はただの兵器だ、コイツらまで戦術を憶えられれば、君の傭兵たちはもはやゴミ箱へポイだと思うがね。

この野郎、ジジイが!頭をひねり取っやるぞ。

やめろ!

(額に手を置く)はぁ。

いいか、先生。

俺があんたの研究を支持しているのはここでゴタゴタを聞くためじゃねぇんだ、あんたは俺のために問題を解決してもらわなきゃならねぇんだ。

あんたの研究が突出してることは認めるさ。

しかしッ!もし俺の親父を倒す手助けにならねぇのなら、あんたもあんたのバケモノたちこそまったく用途のないゴミだ。

俺の堪忍袋だって限界はあるんだぜ。

私の堪忍袋も限界はあるんだがね、そのことならもう何度も君に説明してやっただろ、私の時間を無駄にしないでほしいね。

俺をコケにするか!

この半年間、俺はあんたの「実験」のためにあんたの一生じゃ到底お目にかかれないほどの金額を投資してやったんだ、だが俺はそのリターンをまだ貰っちゃいねェ!

あんたが約束してくれた「残酷で恐ろしい軍隊」とやらはどこだ?

約束してくれた「肝が冷えるほどの力」とやらはどこにあるってんだ?

こんな発光したり、グロテスクに腫れあがった変異生物で俺をおちょくってるのか?

ならどうすれば君を理解してやれるのかね?科学研究の果実は時間をかけて育む必要があるのだ。

科学の進歩が金だけで成熟しきれるのであれば、私はとっくに月に飛んでいるよ。

もういい、もう二日ほどやる、それまでに俺の見たいものを見せるんだ。

(ロシア語)低能が。

今度俺のわからねぇ言葉を使ったら、荒野に放り出すからな、せいぜい自分の創造物と仲良くやるんだな。

放り出されたいのならいつでもな。

(溜息)

死体をもう何体か寄越してくれ。

なんだって?

死体だと言っているのだッ!人の死体だ、貴様という種の死体をッ!誰のでもいい!

もちろん、源石疾病に罹った死体ならなおよしだ。

何に使うつもりだ?

このクソ野郎が、死者を侮辱する気か!

「肝が冷えるほどの力」が欲しいんだろ?

ならそんなクソ以下の「倫理」などドブに捨ててしまえ。

死体を寄越せ、面白いものを見せてやろう。

……

ボス、バイェッレ酋長の大戒律に違反する行為だ、あいつきっとボスをハメるつもりだぜ。

それで不死の軍団を作ってくれるのか?

私は不死の軍団とやらは知らん、しかしこれで私の研究成果に少しだけ期待を持ち直すといいさ

ボス、やっぱり……

黙れ!

ジジイ、よく聞け。

あんたは自分のことを賢くて、用心深く、全知全能だと思い込んでるかもしれねぇ。

だが俺に小細工をしても無駄だ、あんたみたいな連中はこれまでたくさん見てきたからな。

あんたらみたいな連中は、自惚れて死んでいくんだ。

俺があんたにまだ寛容なのはあんたがまだ使えるからってだけだ。

あんたの欲しいものならくれてやる。

だが俺を失望させるなよ、あんただって俺が失望した結末を背負いたくねぇだろ。

ならもう私が言えることなどないな。

幸運を祈ってるよ。

忘れんなよ、誰があんたを生かしてやってるかをな。

もし俺がいなけりゃ、あんたの研究なんざただのクソ同然だった。

俺がいなけりゃ、あんたは半年前にはすでにこの洞窟で腐っていた。

(サルゴン語)クソ野郎が。

お前らはここに残ってこいつを見張っておけ。

へい、ボス。

(ロシア語)低能どもが。貴様らとの会話の一秒一秒が私の貴重な脳細胞への虐殺だ。

コンクリートが造りあげた建物の枠組みは奇妙な形で不規則な岩穴にはめ込まれている。
彼らはここに現れるべきではなかった。
灰色の白い金属の壁の中で、この世界に属さない機器が動きを加速させている。
透明ガラスで作られた培養倉庫には、結合組織に包まれた源石が浮かんでいた。

(ロシア語)源石……

(ロシア語)この世界にはこれほどまでに素晴らしい存在があったとは。

(ロシア語)あの愚かな原住民どもはよもやこの力がもたらす進化を恐れている。

(ロシア語)しかし、ふむ、当然か、連中が恐れるのも頷ける。

(ロシア語)愚者は未知を、力を、進歩を恐れるものだ……

(ロシア語)愚か、まったく愚かだ。
