

銃?傭兵だぁ?

なにバカなことを言ってやがんだ。

全部マジなんだって、ボス!連中は大型の銃器を持っていた、ジャーマンもやられちまったんだ!

大型の銃器を所持した傭兵ねぇ?サンクタか?

俺たちは任務を失敗した、あの四人のサンクタのせいでって、俺にそう言いたいのか?

……ッ……

あいつらはサンクタじゃなかった……たぶん?

サンクタじゃないのに大型銃器を持った傭兵ねぇ?

ウソをつくんなら、もう少しリアリティを増してから言え。

こいつが言ってることは全部本当だ。

どういう意味だ?

全部本当だと言ったんだ、あの武装してた連中はサンクタではない。

ジャーマンはキレイに頭を吹っ飛ばされた、だが弓やクロスボウの矢ではなかった、サルカズはあんなモノにやられるほどやわじゃない。

あいつらはお前の計画内にはなかった対象だ。

この前結んだ契約にはあんな全身武装して銃火器を所持した傭兵を相手にするとは書いてなかった、旦那、上乗せしてくれ。

その傭兵は今どこにいる?

もう感染者区域にはいない、俺たちの人が今調べている、大きな動きは見せなかったから、きっとまだ町周辺に潜んでいるはずだ。

……

あのクソジジイの状況はどうなっている?

お前の親父の手下はみな手強い、特にお前の妹がな。

こっちも衛兵を数人ヤったが、邸宅の防衛線を突破するには至らなかった。

お前んとこの科学者のバケモノはいい仕事をしてくれている、だがお前が集めた術師連中はてんで役立たずだ、バケモノ共の多くが無意味な損害を被っている。

あいつらは俺が雇える術師の中じゃ一番マシな部類だ。

そっちのボスに術師を寄越してもらうんだな、ダメなら文句を言っても無駄だ。

ならそっちの科学者にもっとバケモノを作らせてくれ。

あるいは戦術は替えるのはどうだ、強行突破で邸宅を攻略するのは無理だ。お前ん家はもはや要塞そのもの、妹も楽な相手じゃないからな。

クソジジイはどうしてる?まだ家に引きこもってるのか?

お前の親父なんざ見てもいない、終始表には出てこなかったぞ。

ははは……だろうな。

そうだろうなァッ!

このまま邸宅を見張ってろ、何かあったら俺に知らせるんだ。

さっき俺が言った「戦術を替える」についてなんだが、するなら早めに頼むぜ。

サルカズの直感が訴えているんだ。引きずればするほど、どんどん綻びが出てくるってな。

予備プランならある、だがそれを実行するには時間が必要だ。


私は自分の実験結果には非常に自信を持っている、だがその表情を見るに、君にそんな類似体験はないようだね。

さあ、言ってくれ、またどのフェーズに不満があるのかね?

もっと進捗を早めろ。

無意味な催促以外に、もう少し建設的な意見を出してくれないかね?

死体は十分に寄越しただろうが、あと少なくとも二十体のバケモノが必要なんだよこっちは。

変異体。

あ?

この「バケモノ」は源石変異体と言う、この子らにも名前があるのだよ。

激変体だろうが、変異体だろうが、そんなことはどうだっていい。

こっちはもっとバケモノが必要だって言ってんだ。

この前たくさんやっただろう、もう全部死なせたのか?

気になるのだが……君の部下たちはどうやって変異体を操っているのだ?君たちの「アーツ」とやらで?

それは何だね?超能力か?神秘学的なものか?魔法か?原理は一体どうなってるんだ?

さあ、私の好奇心を満たしてくれ、君の手下のその「術師」とやらと話がしたい。

自分の仕事に集中しろ、先生よ。

今はアーツによそ見してる時じゃねぇんだ。

ことを終えれば、好きなだけ自分の研究をすればいい。

(ロシア語)君のやっていることはあまり賛同できないがね。

しかし時間と言えば、君に言ってやったかな?君も時間は残されていないぞ。

どういう意味だ?

この源石変異体の寿命は一週間ももたない。何をするにしても、早めに行動したほうがいいぞ。

またなんか仕掛けやがったのかッ!

これは代償だよ、まったく辛抱がない君への代償だ。

君はこの変異体たちを迅速に製造したいのか、それともパワーを強めたいのか、はたまた完全無欠でいたいのかのどれだね?

世の中そんないいこと尽くめだと本気で信じているのかい?

……

言ったはずだ、俺に小細工はするなと、先生よ。

私は忙しいんだ、君とふざけ合う時間などないさ。

そんなに不満があるのなら、君が作ればいいじゃないか、君の聡明な頭脳を働かせて、私みたいな専門員でも短時間で解決できない遺伝子工学の問題を解決してみたまえ。

だがもちろん、私にもっと材料を、時間を寄越し、君のつまらん「お家騒動」に華を添えてやってもいいんだぞ。

科学とは常に公平なのだよ、君はそのどれかを選ぶしかない。

口先ばかり言ってんじゃあない。

仕事を続けろ、学者。もし失敗したら、絶対許さねぇからな。

失敗の代償は惨い死だ、それもとてつもないヤツのな。俺はやるつったらやるからな。

ははは、そう言われてしまえば、もうこちらに返す口もないじゃないか?

幸運を祈ってるよ、わが友よ。


あちこちで煙が立ち込めて、そこら中で狼藉が働かされている、近づかなくてもおおよその状況はわかるね。

まさか現地の騒動がこんな規模だったなんて……

やみくもに介入したら一大事だね。

ただいま戻りました。

おお、状況はどうじゃった?

……何もかもめちゃくちゃでした、町の北側の邸宅付近でずっと乱闘が続いています、その片方がどうやら傭兵のようでした。

ほかの場所はもっとひどかったです、どこを見ても血しぶきと半壊した家屋ばかりでした。

……感染した砂地獣が街中で暴れまわっていたんです、それなりの数で。

こんな事態まで発展してるのに、サルゴンの政府武装組織は何をしてるんですか?酋長の軍隊は?

北側の邸宅で統一された装備を纏った衛兵がいましたが、ほかのサルゴン兵は見かけませんでした。

この規模の騒乱が二日も続いたら、あのセーフハウスのオペレーターももう……

望みは薄いだろうね。

結論を下すにはまだ早い。

……それともう一つ、セーフハウスを見つけました。

何者かがセーフハウスを防衛していました、しかしロドスの人じゃありません。

セーフハウスは傭兵に占領されたのか?

いえ……おそらく違うかと、一般の傭兵には見えませんでした。

彼らは非常に専門的な防衛陣地を展開していました、待ち伏せの火力ポイントも、トラップも、惹きつける餌のどれも揃っています。

それに一番重要なのが、セーフハウス内は町民で占めていたことです。

町民?じゃあ陣地防衛してる人たちは何者なんですか?

見たところあなたのご同僚かと、銃器を持っていましたので。

銃器?BSWの傭兵ですか?

彼らの明確な識別ロゴは見かけませんでしたので、BSWの傭兵とはまだ断定できませんが。

身分識別を抹消された専門武装員……それに銃器を携えていたと。

うっ……頭が。

町には各種異なる勢力が混在しておる。

じゃが強盗などの類は除いていいじゃろう。

酋長の軍隊もいないとすれば、戦争ということでもなかろう。

ここの状況はわしが思っていた以上に……複雑じゃな。

騒乱のさなかで町民を保護してた人たちが悪党じゃなければいいのですが。

もしかしたら交渉の余地もあるかもしれないわよ?

慎重に行こう、ヤツらが町民を保護していた点のみで判断したとしても、様々な異なる可能性があるからのう。

わしも話が通じるような相手でいてほしいわい。


どう?

ダメだ、まったくわからん。

こいつ、ただのプリント基板に見るが、俺の知ってる基板とあまりにもかけ離れている。

俺に一か月の時間と、説明書を持たせてくれれば、もしかすると解明できるかもしれんがな。

まあいい、俺はやはり屋上で見張りを続ける、ずっとしゃがんでて腰が痛いのなんの。

お疲れ様、Lord。

終わった?

この通信機の内部構造はどれも見たことがない技術ばかりだったよ。

修理は諦めていいと思うわ。

見た目からじゃそうは見えないけどね、ただの発信機にしか見えないわ。

この前のバン同様、この世界のエネルギー基盤はすごく特殊、どんな技術でもその基礎はこの源石ってものらら来てるらしい。

アンタらまだその発信機を研究してたのか。

源石通信設備はとても複雑な技術を使っているんだ、今までずっとロドスから派遣されたエンジニア術師がメンテナンスしてくれたからな、直せないのも無理はない。

以前この機械で救援の連絡が取れたって言ってたわよね?

まあな……だが本当に取れたかどうかはわからねぇ。

あの暴徒たちがセーフハウスに攻めてきた時、慌てふためいて通信機を起動したんだが、喋る間もなく連中に侵入されちまった。

当時は状況があまりにも緊迫してたからな、俺もはっきりと喋れなくて……もしかすると通信を受け取ったロドス側はまるっきり何を言ってたのかわかってないのかもしれないな。

それで援軍が来なかったのね。

俺は最初から援軍なんて期待していなかったけどね。

アンタらは全然緊張してないんだな。

緊張していないというより、支援のない作戦なんて、私たちは慣れているから。

はぁ、思い返すと、アンタらがもし一歩でも遅れていたら、俺の余生はずっと車椅子での生活だったかもしれないな。

もしかしたら直接棺桶に寝かされてたかもな、車椅子すら必要ねぇや。

だからアンタらには感謝してるよ。

遠慮しないで、あなたも街の人たちは助けたじゃない。

いや、そう言うのはちょっと違うな、なんせ感染者の救治はロドスの本業だからな、ははは……

……俺はただ門番してるだけの後方勤務予備オペレーターなだけだ。

救治……だからここには医療物資が置かれているの?

けどここにある武器は何に使うの?

あー、それはだな……

ロドスの本業は製薬だが、実はセーフハウスの役割は医療や救護の提供じゃないんだ。

セーフハウスの役割は主に外勤戦闘人員への物資補給、予備武器の提供とかなんだ。


ふーん……

ねぇ?これは何?

グレネードランチャーか何かか?

グレネード?

見せてちょうだい。

いいねぇ、これは地雷か?

種類もたくさんあるな。

……最初はここの人たちって火器は扱えないって思っていたわ。

このグレネードランチャーの構造もちょっと変わってるわね。

薬嚢がないグレネードか、まさか空気圧縮で発射するタイプか?

これを見て、油圧バネのタイプもあるわ。

気を付けてくれ!その箱の中身は全部源石爆発物なんだ、危ないぞ!

オックフェンさん、ここに銃の弾薬はあるかしら?

じゅう……銃器のことか?あー、つまりエッチング弾薬はないかってか?

そんな高価なモノ、セーフハウスにゃ普通用意されてないよ、ロドスで銃を扱う人はかなり少数だからな。

この爆薬だけど、使っていいかしら?

……はぁ……

なら気を付けてくれよ、源石爆薬はどれもすげー危ないからな。

今までなら、それらは戦闘専門のオペレーターしか扱っちゃいけない品物なんだ。

しかしアンタらは見るからにこれらを扱いなれているっぽいし、俺もとやかくは言わねぇよ。

感謝するわ。

これはなんだ?変なパーツがゴロゴロしてるけど?

それはアーツユニット用の予備パーツだ、壊さないでくれよ。

アーツユニット……

きっとあの「アーツ」って呼ばれてるものだよ。

アーツって、火の玉とか投げてきた技術のこと?

それを説明し出すと複雑だなぁ、俺は術師じゃないからな。

それとアーツの種類は千差万別だ、術師たちもそれぞれ得意分野が違う。

じゃあさっき話してたエンジニア術師ってものその一種かしら?

なんだ?アンタらアーツを知らないのか?

それはぁ……私たちちょっと世間を知らな過ぎてね。

そんなことあるかよ?アンタらは銃を持ってるじゃないか、なら術師だろ?

アーツを扱えない銃火器使用者だって?へっ、こりゃ珍しいこともあるもんだな。


あ、オックフェンさん、足はまだ治ってませんよ、まだ歩いちゃダメですって。

大丈夫大丈夫、松葉杖があるんだ、二三歩程度なら平気だよ。

先生、下の病人たちの様子はどうだった?

ほとんどの人の怪我の状態は安定してきました、ここの医療設備のおかげですね。

顔色が悪いわね、大丈夫?

一晩徹夜しただけなんで、問題ありません。

もっと休んだほうがいいわ、この中の唯一の医者が倒れてしまったら、それこそ本末転倒よ。

安心してください、気を付けますから。

アーツの話に戻るんだが。

その、まじないを唱えて、それからパァって光った後に病気が治るアーツとかはないのか?

プッ……

何言ってるんですか、あははは……

ないのか?じゃあ飲んだら傷口が癒えるような治療薬とかは?それもないのか?

そんなモンSF小説にしかないよ。

傷を治療できるアーツはあるにはありますが、そういったアーツは極めて習得が難しいんです。

そのアーツを習得したいのであれば、使用者はまず全面的な医学知識の習得と、各種族の身体構造への理解などが必要になります……

そのため、ほとんどの医療アーツの使用者は止血かあるいは傷口の癒着加速程度のことしかできません。

こういったアーツは手術台ではすごく重宝するんですが、ぼくの経験からすると、本当の治療の代用には使えませんけどね。

先生、アンタもアーツが使えるのか?

少しぐらいなら……でも大したものでもありませんよ。

そこはリアリティなくてもいいんだがなぁ……はぁ。

魔法がある世界なのにこんなに不便だなんて。

ちょっと待て、お前さっきSF小説って言ったか?

ちょっとお前たちの世界のSF小説がどんなモンなのか気になっちまったよ。

もっと大きい町なら書店はあるよな?歴史本は?値段は高いか?

こりゃワクワクしてきたぜ。

アンタら本当に変なヤツらだな。

どっから来たんだ?クルビアか?それともヴィクトリア?

言葉の訛りからして数十年前のヴィクトリア人に聞こえるが……

これは……俺もどう答えてやっていいかわからないな。

コーエンさんたちはすごく遠いところから来たらしいんですよ、そこは鉱石病すらないんですって。

なんだって??

……そうね。

鉱石病がない国って、それホントか?

鉱石病がなければ、感染者もいない、ってことは感染者に対する差別もないってことじゃねぇか、大地にいる人々は皆平等、恨み憎しみも最初からないってことかよ?

ウッソだろ、なんちゅーパラダイスだよ?

……

……

はぁ……

……そうか、アンタらの表情を見ればわかる、聞かなかったことにしてくれ……
(銃撃音)

!

敵襲!


状況を報告!

これはまだ第一波だ、連中が囲ってくるぞ。

この前の進攻はただの斥候だったんだ。

さらに多くの敵が接近!

トラップは?

作動に問題なし!

爆発物を詰め込んどいて。

ブリッツ、左翼に警戒、連中に包囲を許さないで。

了解。

Lord、弾薬を節約して!

問題ない、あっちから来させる。

四方を警戒、奇襲をさせないように!

そいつらの実力を見させてもらうわよ。

来るぞ!

発砲は控えて……もっと近づけさせるのよ。
(爆発音)

九時の方向!
(銃撃音)

Lord、真正面、敵がまた起き上がったわ!
(発砲音)

エネミーダウン!

あの角が生えたデカブツは厄介よ、頭を狙って!

アッシュ!あっちを見て!

!?

なんなのアレ!

Lord、危ないッ!
(爆発音)

※ロシアスラング※!

アレキサンドルッ!!

平気だ!

俺のことはいい!防衛線を死守しろ!

何なんのよアレ……

あの奇形の人型生物に警戒!軽量の遮蔽物には隠れないでッ!!


専門的な陣地展開、あの四人は只者じゃないな。

銃器の音も……いや……この激しい爆裂音、速射型の大型銃器か。

……包囲されていますね。

襲撃してる連中と邸宅を襲った傭兵は同一集団です、間違いありません。

……あのバケモノ、龍門での戦闘を思い出します。

「宿主」と「牧群」のことね。

けどそれとは違うわね。

大型銃器を扱う傭兵と見たこともない獣を操って戦う傭兵か……

形勢が変化しておる、パワーバランスがもうすぐ崩れてしまうな。

……どうしますか?

悩む必要はない、戦闘準備じゃ。

あのバケモノを操ってる輩は見るからに善の類ではない、手加減は無用じゃ。

……了解しました。
