
クソ野郎が。

ボス、これからどうするんだ?

ボス、やはりまずは撤退したほうがいい。

撤退だぁ?俺はまだ負けてねぇんだぞ。

領主衛兵隊はすでに全員片付けた、残るは次の反撃のためのチャンスを待つだけだ。

あのロドスの傭兵が何人いようと、俺の相手じゃねぇ。

あの科学者はどうした?

なんで誰もいないんだ?

なんか匂うな。

一体どこに行っちまったんだ?

どうやら順調そうには行ってないようだね、ドラッジ。

当ててみようか、君は私の強力な創造物をもってしても、成功できなかった。

正直に言うがまったくの期待通りだったよ。

お前の捻じ曲がった話を聞く時間なんざこっちにはねぇんだ。

では今まで通り、また新しいおもちゃを欲しがりにきたか、どうりで君は自分の父親から好かれていないわけだ。

黙れ、今必要なのは……

君は私に話しかけているのかね、ドラッジ?

ならせめて「お願いします」という言葉を付け加えてもらわねばな。

なんだとォ?

君は私に助けを求めているのだろ、それが人にものを頼む時の態度かね?

おちょくってんのか?

これが冗談に聞こえるか?

てめぇ、このクソジジイが、死にてぇらしいな。
(何かが刺さる音)

あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!

何なんだ!何なんだこれ!

俺の頭が!俺の頭が破裂する……俺の……

てめぇ!何をしやがった!

君たちごときのチンピラはね、ただ力を持て余してるだけで、素質も何も備わっていないんだよ。

そして君だ、ドラッジ、君は本当に思っているのか、こんな低能なバカ共だけで、科学者をここに閉じ込められると?

さあ、私たちのスポンサー様をなだめてやりなさい。

ガァ……

グァ……

何なんだそれはァ!

忘れたのかい?君の手下だったものだよ。

もっとも、今の彼らはより強く、そしてより利口になったがね。

君もじきに彼らに加われるさ。

なんでてめぇはそいつらを操れるんだ、アーツを持っていないてめぇにッ!

アーツがなかれば彼らを操れないと思っているのかい?君たちという人はどうしてそんなに思考が凝り固まってるのやら。

君はなぜいわゆる「アーツ」は「感染生物」を操れるのかを考えたことがあるかね。

まあもっとも、君みたいな知能ではその答えを導き出すことは不可能だと思うがね。
イカレた科学者が白衣の袖を巻き上げた。
その腕には大きく腫れあがった源石の腫瘤が鼓動していた。
まるで別の生き物かのように。

彼らの一部分になれれば、自ずとこの生物たちとも交流することができる、仲良くやらせてもらっているよ。

……本当に救いようがねぇイカレた野郎だぜ。

俺はトゥーラ一族の人だ、トゥーラ一族の神民の血脈を受け継いでいるんだぞ。

バイエル酋長の領土で貴族を殺してみろ、てめぇも死ぬぞ。

酋長?貴族?血脈だと?

クク……

ははははははは。

中々面白いことを言うね、ミスター・ドラッジ。

だがそのネタはいささか流行りが過ぎていると思うぞ。

「我は畜生を軽蔑せず、ただ傲慢なる王冠を憎悪するのみ。」

私の祖国では、人々は主教を焼き殺し、国王を絞首し、皇帝の首を刎ね、過去からある一切の権力を踏みつぶし、いわゆる王侯貴族などをもはや恐れることはなくなった。

何が酋長だ、何が血脈だ。

君など私の眼中にすらない。

君の臭い毛皮なども、あの鉱石病患者たちに剥いでやったほうがまだマシだ。

そういえば君はあの鉱石病患者たちのことを何と呼んでいたんだったかな?

ああそうだ、感染者。

感染者は私の実験のために貢献してくれた、しかし君はどうなんだね?

君のその身分などなんの役にも立たん、その浅はかな視野も言葉が出ないほどだ。

役立たずのガラクタめ。

君ごときの卑劣で愚かなものが、よくもまあ「貴族」と名乗れるものだ。

君に「他者より高貴な」部分があるとでもいうのかね。

しかし心配はいらないよ、君の腐った価値観と私のとは違う……私は科学者だ、私が追い求めているのは客観的存在における真理だけだ。

何を考えていやがる?

科学は全ての人にとって平等だ、自分の出生で変わることはない。

貴族も、平民も、手術台で横になり、メスが皮膚を切り裂けば、誰だろうとその人の価値と貢献は等しくなる。

君の場合だと、科学にその身を捧げれば、あるいは今より多少なりとも高貴になれるはずだぞ。

誇りに思うといい。

この恥知らずの裏切り者がァッ!

裏切り?裏切り者とな?

ははははははははは……

君は自分の妹を陰で陥れ、自分の家族を裏切ったじゃないか。外国の傭兵と結託し自分の父の財産を奪い、君を生み君を育ててくれた国を裏切ったじゃないか。

それでよくも私に向かって裏切者と言えるな?

てめぇはもう逃げられねぇ、俺の後ろについてる連中のやり方を全く知らねぇんだな。

てめぇのこの半年間の研究資金は全てそいつらから提供されたものだ、今ここで俺を裏切るってことは、そいつらを裏切るようなもんだ。

ヴォルヴォドコチンスキーは絶対にてめぇを許さねぇ、あいつらはてめぇを見つけ出し、そして殺すッ!

もう逃げられねぇぞ。

その問題なら的確に対処しておこう、心配には及ばんよ。

さらばだ、愚かなる者よ。

なにその恰好?

領主の倉庫から見つけた、結構気に入ってる。

……お似合いね。

今まで聞いてきた中で一番とち狂った作戦計画だ。

だが説得力はある。

なぜ源石爆発を起こせばそのバケモノたちを地下からおびき寄せられると知っているんだ?

先生のおかげで、気付けたことだとしか言いようがない。

あのバケモノたちは常に術師の指示に従っていた、あの夜を除いてな。そこで気づいたんだ、あの夜、コントロールを失ったバケモノたちはあちこちに飛び散った源石の破片を追い掛けまわっていた。

つまり今回は成功すると君は思っているのか?

これも賭けではあるけどな。

この源石エンジンはどこで手に入れたものなんだ?

……これはだな……以前にも色々ゴタゴタがあって、とにかく俺たちはそれで車を一台手に入れた。

……なんだかすごく見覚えがある車ですね。

……この車両ってまさか私たちが置いて行ったヤツなんじゃない?

今更そんな些細なことを気にするな、フフ。

では鉱坑の部分は一体?

俺たちが捕らえた傭兵が基本的に何でも吐いてくれた、お前の弟さんのモンスターファームは鉱坑の奥にある。おそらくまだ放棄していない可能性が大だ。

なるほど……

俺たちがここでバケモノたちをおびき出し、コーエンたちがそのスキに鉱坑を木端微塵に爆破する。

簡単だろ。

簡単そうには聞こえませんが……

聞くからに想定外も多く、慎重さに欠ける計画じゃな。

じゃがこういう計画は好きじゃ、戦うことが唯一の解決方法じゃからな。

レンジャーさんがそう言うんでしたら……

よし、みんな――作戦準備だ。

もしこの計画が通用すれば、源石エンジンを点火したあと、必ず大量のバケモノが突っ込んでくる。

苦しい戦いになるはずだ。

ロドスのみんなには感謝する……ここに残ってくれてありがとう。

気にしないで、汚染生物を片付けるのが私の本職だから。

この仕事に給料は出ないけど?

もううるさいわね!

……感謝する……どう君たちに謝意を示せばいいものか……

礼なら、またあとじゃ。

よし、質問がないというのならば――
改造された源石エンジンが唸りを上げ、激しく火花と濃い煙を巻き起こした。

来た……

……

にしても多すぎない?

一体何匹いるんだ?百は超えてるんじゃないの?

いや、それ以上かもな……

ああ……後ろにまだまだ控えている。

コーエンたちが順調に遂行してくれるのを期待するしかないな。