


ヘビーレイン
……私たちについていきたい……?

ヘビーレイン
あなたも分かってると思いますが、私たちからすれば、あなたは相当怪しいんですよ?

サンドソルジャー
そちらの隊員のチェックを済みましたか?

シェーシャ
どうなんだヘビーレイン?

ヘビーレイン
……なにも問題はありませんでした。

ヘビーレイン
けどそれでも信用はできません。

サンドソルジャー
ふむ、それは結構、信用されなくて当然ですね。

ヘビーレイン
目的はなんですか?

サンドソルジャー
私の目的は……目的を見つけることです。

ヘビーレイン
何をわけわかんないことを――

サンドソルジャー
ご存じですか?イバテー地区の王族は――火災で亡くなられたんですよ。

シェーシャ
……二、三年前の出来事だったな。そいつの跡を今継いでいるのはそいつの息子だ、イバテー地区もそれなりの騒ぎが起こった……

シェーシャ
あの火災のおかげで、俺も新しい雇い主を探すハメになった、数か月してやっと新しい仕事にありつけれたんだ、迷惑極まりなかったぜ。

サンドソルジャー
ええ、そうですね、あれは私の最後の獲物でしたよ。

サンドソルジャー
網を張り巡らせ、罠も仕掛けたが、獲物は一向にやってこない、今の私は、とても手持ち無沙汰でしてね。

シェーシャ
――

ヘビーレイン
――あ、あなたは王族を殺したんですか……?

シェーシャ
サルゴンの軍が黙っちゃ――

シェーシャ
――いや、待て、なんで俺たちにそんなことを教えたんだ!?

サンドソルジャー
ほう、さすがは闇市の常連ですね。ええ、あなたたちと私を除いて、王族の死と私に関係があることを知ってる人はいません。

サンドソルジャー
サルゴンの軍に関しては……もう時代が変わりました、イバテー地区を統治してるパーディシャは、この荒んだ土地に見向きもしていませんよ。

サンドソルジャー
おそらく、パーディシャは領主が父だろうとその子供だろうと興味はないのでしょう、そういう私もそうですが。

サンドソルジャー
私はただ彼の死を求めているだけです、簡単な話です。

ヘビーレイン
あなたの目的は何なんですか?

サンドソルジャー
復讐です。

サンドソルジャー
これは答えにしてはあまりにも安直です、だから今までこの答えを口にはしませんでしたよ。この大地にいる人間の大半は何らかの復讐する目標を持っているはずです、敵への、町への、この大地への、ありとあらゆるものに。

サンドソルジャー
二十数年も時が経っても、私はずっと復讐を求めていた。

サンドソルジャー
権力も、地位も、富も、これらはただの付随品、もし必要なら、棄てても構いません。

サンドソルジャー
あるいは、これらすべてを“ロドス”に与えてあげましょうか。

サンドソルジャー
未だかつてない報酬です、どうでしょう?

ヘビーレイン
……

サンドソルジャー
ふふ、どうやらまだ信用してくれそうにありませんね、慎重なお嬢さんだ、以前は軍人をやられていたのですか、サルゴンの軍人を?

ヘビーレイン
――あなたには関係ありません。

サンドソルジャー
ではあなたはどうなのです、若き“橋”よ?あるいは今あなたが名乗っている名前で呼んだほうがいいですか、“シェーシャ”?

シェーシャ
……

ヘビーレイン
シェーシャさん、こいつは信用できません。

シェーシャ
……お前まだすげー肝心なことを隠してるだろ?

サンドソルジャー
む?

サンドソルジャー
ああ……そうだ、そうでした、これを忘れてしまうとは……

サンドソルジャー
あなた方は感染者を治療する医療企業と謳っていましたね……いいでしょう、今しばらくはこの大地にもまだそんな奇想天外な人たちがいると信じてあげましょう。

サンドソルジャー
私は感染者です。

サンドソルジャー
私は王族に匹敵するほどの財も、王族を陥れるほどの人脈も実力もあります。

サンドソルジャー
それらすべてと、治療する機会を交換したい、如何です?

ヘビーレイン
――イカレてる。

サンドソルジャー
同感です。

サンドソルジャー
けど自ら死を求めている人なんているはずもありません。私はこれらすべてを諦めてでも治療をしてもらいたい、それの何が間違っているというのでしょうか?

シェーシャ
いや、ヘビーレインが言ってるのはたぶんソレじゃねぇ。

シェーシャ
自分が感染者だっていうのに、お前はまったく気にしてないのか……?

シェーシャ
ならロドスに何を求めていやがる?

サンドソルジャー
……

サンドソルジャー
いいでしょう、時間もそれほど残されていませんし、腹を割って話しましょう。

サンドソルジャー
私は“ケルシー”を探しています。

サンドソルジャー
彼女は私に多くのことを教えたり、私に道を指し示してくれるかもしれません……けどもちろん、可能性としては、彼女はそのどちらもしてくれないほうが高いでしょう、狡猾に、私にもう一度選択することを突き付けてくる。

サンドソルジャー
しかしそうだったとしても構いません。

サンドソルジャー
あの時の事件に関与していた人物は尽く私が片付けました、もうサルゴンに未練はありません、私はこんな吐き気を催すほどの土地から一刻も早く立ち去りたいのです。

サンドソルジャー
私は新たな始まりを欲しがっていた。

サンドソルジャー
そんなことを思ってる矢先、見逃す人などいると思いますか、自分の目の前に現れた過去の影を?

ヘビーレイン
……ケルシー先生とどういう関係なんですか?

サンドソルジャー
ふむ……話せば長くなりますよ。

サンドソルジャー
彼女は私の命の恩人です。感謝していますよ、心の底から。

ヘビーレイン
私たちに決定権は……

シェーシャ
……三年前、イバテーの王族が旅路の途中で発生した大火事で亡くなった、町もその大火事で何もかも焼き尽くされた、そいつの息子が反乱を起こし、ほかの連中と王位継承を争った。

シェーシャ
全部お前の仕業だったのか。

サンドソルジャー
その通りです。

シェーシャ
なぜだ?

サンドソルジャー
いやなに、昔の話です、私はただ元から隙間だからだった哀れな親子関係に小さな……楔を差し込んだだけです。

サンドソルジャー
なぜそんなことを?

シェーシャ
……手がかりを探しているんだ、あんたのおかげで、俺はイバテー地区の調査を終えなきゃならなくなったぜ。

サンドソルジャー
ほう……手がかり。

サンドソルジャー
でしたら私を信用するきっかけになり得るかもしれませんね、言ってみてください、力になれるといいのですが。

シェーシャ
人を探してるんだ、クルビアの軍事実験の責任者をな。

サンドソルジャー
クルビアの企業を調査しているのですか、それはまたどうして?

シェーシャ
……俺が最も尊敬していた人が滑稽な事故で亡くなったからだ。

サンドソルジャー
それが本当にただの事故だったとしたら?

シェーシャ
だとしても……真実が知りたい。それにあの連中が俺の兄貴の死で出世した理由にはならねぇだろ?

ヘビーレイン
……シェーシャさん。

シェーシャ
わかってる、これは俺個人の問題だ……だがせっかくのチャンスなんだ、そうだろ、“サンドソルジャー”。

サンドソルジャー
ふふ、オホン、失礼。

サンドソルジャー
なんの話だったかな?

サンドソルジャー
人は生きてる限り、復讐が必要だ、相手がどんなであろうと、執念が深かろうが浅かろうがね。復讐は人生における一つの永遠なテーマですからね。

サンドソルジャー
もしあなた方が私をロドスで治療を受けることを許可してくれるのでしたら、この一件の調査を引き受けても構いません。もちろん、さきほどまで言ってたすべての取引が含まれますが。

サンドソルジャー
ドアの外に置いてある荷物の十倍もの仕事量だったとしても、私にかかれば造作もない、ましてや廉価で、仕事も丁寧ときた、製薬会社にとって、これ以上得することはないと思いますが?

ヘビーレイン
……シェーシャさん、申し訳ないけど、あなたの個人的な要求のために取引を引き受けちゃダメですよ。

シェーシャ
もちろん分かってるさ……ただ俺は……

サンドソルジャー
そうだ……忘れるところでした、最近物忘れが激しくてね。

サンドソルジャー
あのイシンが予言を残していたんです、一度も信じたことはありませんが。けど今になって考え直すと、あの予言の意味はおそらく、ただ交渉と交流の一種だったんでしょう。

サンドソルジャー
フッ、予言か……凡人が時間と対等でいられるはずもない。そんな便利なアーツなんてあるわけがないというのに。

シェーシャ
……予言?

サンドソルジャー
残念ながらイシンはもういません、まあいい、彼女がまだこの約束を憶えていればいいのですが。

サンドソルジャー
彼女はあなた方に……金貨を一枚多く渡しませんでしたか?

サンドソルジャー
サルゴンの古い金貨を。

ヘビーレイン
……!

ロドスオペレーター
ヘビーレイン、シェーシャ、事態発生だ。

サンドソルジャー
……

シェーシャ
慌てるな、どうした?

ロドスオペレーター
……怪しい連中がたくさん現れた。この町に向かってきている。

サンドソルジャー
忠告しますが、ロクな連中じゃありませんよ。

ロドスオペレーター
えっと、それに向かってくるスピードが速い、今逃げればまだ間に合うが、これ以上躊躇すれば、交戦は免れないぞ。

ロドスオペレーター
十五分だ、俺たちに残された時間は十五分だ、隊長、副隊長、早めに頼むぜ。

ヘビーレイン
――あなたの仲間ですか?

サンドソルジャー
まさか、今の私は独り身だ。マシーン以上に信頼できない人ですよ。

サンドソルジャー
ただ、おそらく彼らは私目当てで来たのでしょうね。

シェーシャ
――チクショウ、ハメやがったな!

サンドソルジャー
私の脱出を手伝うか、あるいは一緒に世間知らずなあの殺し屋を対処するか。

サンドソルジャー
どちらを選びます?

ヘビーレイン
……

ロドスオペレーター
ど、どうすりゃいいんだ?

サンドソルジャー
そちらの判断に従いますよ。

シェーシャ
チッ、この野郎――

シェーシャ
――最後に一つだけ聞く、なんであの町を焼いた?王族一人を暗殺するだけだろ、なんで関係ない大勢の人を巻き込む必要があった?

シェーシャ
それなのに一般人に避難する猶予も与えていた――本当にただあの町を燃やしたかっただけなのか?赤角町はお前のシマからかなり遠くあったはずだろ?一体何がしたい――

サンドソルジャー
そんなに目的が重要ですか?

シェーシャ
――お前が本当にイカレた野郎なのかあるいは戦争狂いなのかどうかを見極めるためだ。

サンドソルジャー
ふむ、なるほど、だがあなたでは理解できないと思いますよ、私が燃やしたのは過去ですから。

シェーシャ
それもあんたの復讐か?

サンドソルジャー
いいや……

サンドソルジャー
時期遅れの火葬なだけです。