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【明日方舟】遺塵を歩む WD-8「来れる大雪」行動前

十三年前
8:09p.m. 天気/大雪
ヴィクトリア辺境自治区、ダラム、ヴィンセント荘園

ヴィンセント伯爵
ヴィンセント伯爵

あれは偉大な都市だった、ヴィクトリア人なら誰だろうと一生に一度はあの偉大な都市を拝みに行くべきだと私は思うがね。

柄にもなく風流ぶる男
柄にもなく風流ぶる男

つまり、我らの尊敬すべき公爵たちは依然と結論を出していないと?

ヴィンセント伯爵
ヴィンセント伯爵

そうだ、依然とまだだ、ロンデニウムは依然として“主君なき”都市となっている。

愉快な女貴族
愉快な女貴族

ではあなたはノルマンディー公爵と共にロンデニウムを遊覧されたのですか?

ヴィンセント伯爵
ヴィンセント伯爵

残念ながら、大公爵は以前ロンデニウムへの立ち入り禁止を言い渡されていてね、それに公爵閣下は紳士だ、そのような僭越な行いをするはずもない、私たちはロンデニウム郊外の船舶で晩餐を共にするだけにとどまったよ。

ほろ酔いした商人
ほろ酔いした商人

公爵閣下はどのような英傑だったのかな?

ヴィンセント伯爵
ヴィンセント伯爵

ああ……公爵閣下は本当に温厚で優雅な貴族だったよ、経済と政治にも独自の見解をお持ちだ、それだけじゃない、話によると音楽にも精通しているらしくてね、彼のプライベート収蔵室を見れば彼が芸術にどれだけ崇敬の心をお持ちかがわかるよ。

ヴィンセント伯爵
ヴィンセント伯爵

私たちにはこれほど多くの英傑がいるおかげで、ヴィクトリアは依然と繁栄を極められるのだ!

ケルシー
ケルシー

最高統治者を有さないヴィクトリアでも、十数年もの安定を保持し続けてきた。

ハイジ
ハイジ

しかし実際には、幾つもの大公爵が裏で掣肘し合い、摩擦し合ってきた、それだけじゃなく……

ハイジ
ハイジ

仮にあれほど大勢の貴族が食中毒や狩猟での事故で簡単に亡くなられるのなら、ヴィクトリア貴族による統治はとっくに崩壊しておりますわ。

ケルシー
ケルシー

そして三年前、君の父親もそのようなことに遭遇してしまったんだな。

ハイジ
ハイジ

……ええ。

ケルシー
ケルシー

彼は足を怪我した、ウソではないのだな。

ハイジ
ハイジ

学術でお父様と諍いを起こしたある貴族の方が、宴会の後にお父様に手を出したんですの。

ケルシー
ケルシー

よく偽装できているな。

ハイジ
ハイジ

お父様はちゃんとその兆しを把握しておりましたわ、でも彼はこの事件のせいで情報が滞ることをよしとしませんでしたわ。

ケルシー
ケルシー

今この荘園の中で、トムソンの味方はどのくらいいるんだ?

ハイジ
ハイジ

たくさんいますわ、たとえばさっきあなたと話したあの方たちとか……ついこの前まで、みんなお父様の別荘で顔を合わせておりましたの。

ケルシー
ケルシー

……リチャードは先ほどまで君の父親の悪口をそれなりに言ってたじゃないか。

ハイジ
ハイジ

あはは……たぶんリチャードおじ様は半分本心で言ってるんだと思いますわ……彼とお父様はもう何年も張り合っておりますから……

ケルシー
ケルシー

しかしそれでも彼らは依然と君の父親の傍に集まってくれているんだな、君の父親は素晴らしいリーダーだ。

ハイジ
ハイジ

あなたの指導の賜物ですわ、ケルシー閣下。

ハイジ
ハイジ

誰だって思いもしませんでしたわ……あの時ヴィクトリアにやってきたラテラーノの修道士が、まさか私の最も信頼する指導者になるだなんて。

ケルシー
ケルシー

私たちは同じ目的を持ってるだけだ。

ハイジ
ハイジ

ケルシー様、彼らは、私たちは何事もなく無事でいられますよね?

ケルシー
ケルシー

……ハイジ。

ケルシー
ケルシー

それは君自身の目で確かめくれ。もし本当にこの大地を歩みたいのであれば、文明の虚像にもう目がくらませられることがないのであれば……君は自分で確かめるべきだ。

ケルシー
ケルシー

慰めの言葉に意味なんてない、君はもう成長したからな。

ヴィンセント伯爵
ヴィンセント伯爵

しかし、三流の小貴族やゴロツキチンピラ連中から、不愉快な噂話を聞いたよ……

愉快な女貴族
愉快な女貴族

あら、それで機嫌を損なわれたのかしら?伯爵閣下?

ヴィンセント伯爵
ヴィンセント伯爵

そうだな……見ての通り、各大公爵の礼譲と譲歩が今の平和と繁栄をもたらしてくれている。

ヴィンセント伯爵
ヴィンセント伯爵

しかし認めたくはないが、たとえクルビアにいるあの野蛮な裏切者ども、奴らでも分かる、ヴィクトリアが君主を持たなくなって久しいとな。

柄にもなく風流ぶる男
柄にもなく風流ぶる男

それがなんだと言うのかね?だったらそれは我らが自分たちのやり方で……強くなったという説明になってるじゃないか?

ヴィンセント伯爵
ヴィンセント伯爵

君の言う通りだ、リチャード、しかしこんな声もあったよ、純粋ながら、自分たちの目的を抱いている人々が集まって、荒唐無稽な問いを持ち出してきたんだ……

ヴィンセント伯爵
ヴィンセント伯爵

彼らはこんなことも言っていたよ、ヴィクトリアは新たな王を渇望する必要など本当にあるのか、とね。

ハイジ
ハイジ

みんな、ヴィンセント叔父様は頼りなさ過ぎるって言ってましたわ……

ハイジ
ハイジ

私たちは辺境に身を置きながら、現状に甘んじている……どう見ても今は明らかに権益を得られる大チャンスのはずなのに、ヴィンセント叔父様ったら自分の荘園でパーティを開くばかり。

ハイジ
ハイジ

今回のロンデニウム遠征も、実質的な成果は得られませんでしたわ。

ケルシー
ケルシー

だが君の父親はそうは思っていない、トムソンは過激な風潮で頭に血が上るほど愚かではないさ。

ハイジ
ハイジ

けど大人たちはいつもお父様にそういったことを打ち明けておりますのよ。

ケルシー
ケルシー

正真正銘の大公爵の引見を受けられる愚かな貴族などいないさ。

ケルシー
ケルシー

君は、ノルマンディー公爵は本当にヴィンセントに脅迫じみた条件を突きつけなかったと思ってるのか?

ケルシー
ケルシー

辺境に身を置き、土地は広いが人は疎ら、つまりこの誰も手を出そうとしないダラムは未だどの大勢力の影響下にも置かれていないことを意味する。

ハイジ
ハイジ

……ヴィンセント叔父様は……

ケルシー
ケルシー

ただ歌やダンスしか知らないような貴族だろうと、このダラムの平和を維持するために尽力している。たとえここの平和が……触れれば破けてしまうほどの脆いものだったとしてもな。

ケルシー
ケルシー

適度な傲慢や中庸は彼の考えを覆い隠してくれる、彼の真の意図を推し量れる人も極々少数だ。

ケルシー
ケルシー

トムソンが本当に肝も据わってない眼識もない伯爵にこれほどの信頼を寄せるはずもないだろ、彼らは互いに違う道を歩んでるように見えるが、行きつく先は同じだ。

ハイジ
ハイジ

……へへ……そう言ってもらえると、良かったです。

ハイジ
ハイジ

ケルシー、その二通の手紙を読まなくていいのですか?

ケルシー
ケルシー

ロンデニウムからダラムは、ほぼヴィクトリアを横切るほどの距離だ。

ケルシー
ケルシー

この手紙がどれだけの人の手に渡り、またどれだけ自分たちが身を置いてる事件の全貌を知ってる人がいると思う?

ハイジ
ハイジ

それはもうたくさん――

ケルシー
ケルシー

労働者、新聞配達の子供、ポップコーン売りや公園の庭師にも至る。だが彼らは手紙に書かれてる内容すら理解できていないんだ、ましてやこの文字たちが最終的に何と関係があるのかすらもな。

ケルシー
ケルシー

だが今この手紙は無事トムソンの手に渡り、そして彼の手から私に渡った。

ケルシー
ケルシー

なら何も心配することはない。

ハイジ
ハイジ

……そうですか……

ハイジ
ハイジ

けどもう一通は?あれは“カズデル”から……

ケルシー
ケルシー

……サルカズのトランスポーターが最後にその手でトムソンに渡したものだ。

ケルシー
ケルシー

彼にはトムソンへの連絡方法を教えたんだが、本来の計画に従うのであれば、彼は自らの手で私に手紙を届けるべきだった。

ハイジ
ハイジ

うん……でもそのサルカズはヴィクトリアに到着した時にはもう……

ハイジ
ハイジ

お父様はサルカズの英雄の死を弔う方法を知りませんでしたわ、だから私たちの慣例に従って火葬をして、移動都市の航路に撒いてあげましたの。

ケルシー
ケルシー

……私の口から彼の本名は言えん、だが少なくとも、彼はトランスポーターの身分として死んだ、私が彼の物語を彼の故郷へと持ち帰ろう。

ケルシー
ケルシー

彼が忘れ去られることはないさ。

ハイジ
ハイジ

……ケルシー、あなたは誰に対してもそういう風に接してますの?

ケルシー
ケルシー

なぜ急にそれを聞くんだ?

ハイジ
ハイジ

いえ、ただちょっと……へっ……へっ……

ハイジ
ハイジ

へくちっ!

ハイジ
ハイジ

あ!す、すみません、はしたないですわね……!

ケルシー
ケルシー

雪がまた強くなったな、中に入ろう。

ケルシー
ケルシー

この宴会が終わった後、トムソンを訪ねるよ。

ハイジ
ハイジ

きっと、お父様も喜ばれると思いますわ。

ハイジ
ハイジ

……

ハイジ
ハイジ

わたくしはあなたの腕に手を通したほうがよろしいのでしょうか?そうすればほかの人たちから疑われずに済むと思いますし。

ケルシー
ケルシー

その必要があると思っているのなら。

ハイジ
ハイジ

では……へへ、わたくしより背が高いのですね。

ケルシー
ケルシー

まだまだ成長期じゃないか、ハイジ。

ハイジ
ハイジ

外をご覧、ケルシー、すごい雪ですわ。こんな大雪は久しぶりに見ましたわ。

ケルシー
ケルシー

そうだな、大雪が来る。

ハイジは思った、どれだけの雲を引きちぎればこれほど激しい雪を振るい落とせるのだろうか?

白い雪は四方を飛び交い、風に吹き荒らされながらまた空へと舞い上がった。

淡い黄色のランプの光が届かない場所は、すでに靄がかかり、町を覆っていた。

今夜は星も月明かりもない。

解き放たれた黒い波が浜辺を駆けてきた。

シュコー――フゥ――

ハイジ
ハイジ

ケルシー?

ケルシー
ケルシー

……

ケルシー
ケルシー

…………

ケルシー
ケルシー

……黒い雪だ。

ハイジ
ハイジ

え?わたくしには見えませんが……

ケルシー
ケルシー

ハイジ、仲間全員に知らせろ、痕跡を残さず宴会現場を制御しておけと。

ケルシー
ケルシー

少しだけ時間をくれ。誰も裏庭には……近づけさせるな。

ハイジ
ハイジ

それは構いませんが……急にどうしたんですの?

ケルシー
ケルシー

敵が来た。

ハイジ
ハイジ

なっ……?

ハイジ
ハイジ

辺境とはいえ、ここはヴィクトリアの伯爵の荘園ですのよ、誰だろうと勝手に――

ケルシー
ケルシー

――ハイジ、もし私が荘園に戻らなかったら、君は父親と共に真実を隠蔽しておくんだ。

ケルシー
ケルシー

もうこの事件に首を突っ込むな。

ハイジ
ハイジ

しかし――

ケルシー
ケルシー

これは警告だ、命令でもある。

ハイジ
ハイジ

――!

ケルシー
ケルシー

達者でな。

(ケルシーが走り去る足音)

ケルシー
ケルシー

……

ケルシー
ケルシー

サーミとウルサスよりも北にある、サルゴンよりも南にある、あの人類未踏の地……

ケルシー
ケルシー

そこに住まう邪悪な魔物、バケモノ、あれらが通常の生物なのかすら判明できてないが、建国して久しい諸国よりもさらに古より存在している。

ケルシー
ケルシー

人類は長い間それらと対抗してきた、これは明確に心に留めておくべき数多の命題の一つと言えよう。

ケルシー
ケルシー

……今日に至るまでのな。

ケルシー
ケルシー

人はもうすでに己の国家を主宰することができた。

ケルシー
ケルシー

古のサルゴン王は強大なケシクと意気投合し、夢魘のカガンは人類文明が未だに踏み入れなかった地の征服を決意した。

ケルシー
ケルシー

あれは偉大な結果の一つだった、もはや人ならざる脅威がサルゴン文明の国土に踏み入ることはなくなったからだ。

ケルシー
ケルシー

サーミは無数の巫術と犠牲をもって雪祀を造り上げた、巫女たちは一代また一代と国境外の敵と対抗する過程で自我を失っていった。

ケルシー
ケルシー

そしてウルサス――君たちは最も強大な少数精鋭をもってそれらを引き裂いた。重装甲を身に纏ったウェンディゴ、あるいは戦争術師の精鋭を用いて。

ケルシー
ケルシー

野心に満ちた帝国だ。君たちはそれらを引き裂いただけではとどまらなかった。

ケルシー
ケルシー

君たちはあの人ならざる物が残した力の破片をも利用したのだ。

ケルシー
ケルシー

……姿を見せろ。

ケルシー
ケルシー

ウルサスの意志によってこの地にやってきたのだろう。

ケルシー
ケルシー

だが君はヴィクトリアの強大な力を見くびっているのでないか、君は邪悪な魔物の気配を帯びている、己の責務の所在を考えたことはあるか?

ケルシー
ケルシー

魔物に心を呑み込まれてしまったとは言わないでくれよ、近衛兵。

ランプの光が届かない暗闇が一瞬だけ蠢き、そこから何かが歩を踏み出した。

皇帝の利刃
皇帝の利刃

お前から恐怖の匂いがするぞ、反逆者よ。

ケルシー
ケルシー

私を見つけ出すのにえらく時間がかかったじゃないか。

皇帝の利刃
皇帝の利刃

……反乱の余波が我が身を縛っていなければ、とっくに主君を殺めた大罪人であるお前を追いかけていたさ。

皇帝の利刃
皇帝の利刃

無能どもがお前を見逃してしまった、何たる恥辱か。奴らにはすでに刑を執行しておいた。

ケルシー
ケルシー

もう一度君に言ってやったほうがいいな、雪は都市を丸ごと覆い尽くせるが、近衛兵の足跡を揉み消すことはできない。

ケルシー
ケルシー

君は今ヴィクトリアにいる。そして私の背後数百メートル先は、ヴィクトリアの伯爵の荘園だ。

ケルシー
ケルシー

君は自分の行いの結末を理解できて――

皇帝の利刃
皇帝の利刃

――結末?

皇帝の利刃
皇帝の利刃

その軟弱な脅迫をしても無駄だ、我が双脚が踏みしめる地、そこが即ちウルサスの偉大なる国土なり。

皇帝の利刃
皇帝の利刃

お前が“邪悪な魔物”という言葉を口にするまで、お前は私と対話する資格すらなかったのだぞ、反逆者よ。だが少しばかりした後、なぜお前がその暗黒の秘密を知ってるのかが判明する……

皇帝の利刃
皇帝の利刃

お前は“邪悪な魔物”への理解があるだけで対話できる余地を築けるとでも思ってるのか?ウルサスの大公を殺めた大罪を背負い、暗き秘密を知ってるお前ごときが。

皇帝の利刃
皇帝の利刃

シュー……その罪の多さで、お前は万死にも値する。

皇帝の利刃
皇帝の利刃

……どうやら話し合いはしばらく無理そうだ。

皇帝の利刃
皇帝の利刃

だがそれは……君が現状をそう評価しているだけに過ぎない。

皇帝の利刃
皇帝の利刃

異形の類よ、貴様の牙を呼び出せ!

皇帝の利刃
皇帝の利刃

私の目は誤魔化されんぞ!

ケルシー
ケルシー

……Mon3tr。

Mon3tr
Mon3tr

(せわしない嘶き)

ケルシー
ケルシー

Mon3tr、油断するな。

ケルシー
ケルシー

彼は普通の人間ではない。

皇帝の利刃
皇帝の利刃

庭に隠された……装置なのか?いや……あれは、一種の生物なのか……シュー……

皇帝の利刃
皇帝の利刃

貴様は“魔物”の存在を知っている、そして今、ウルサスの最も深遠なる叡智ですら知り得ないバケモノをも侍らすか……

皇帝の利刃
皇帝の利刃

おそらくだが、貴様が犯した数々の罪はすでに私の予想の範疇を超えているやもしれん。

ケルシー
ケルシー

それかもしくは、私は一人の近衛兵を、震え上がらせているのかもしれんな。

皇帝の利刃
皇帝の利刃

……シュー。

皇帝の利刃
皇帝の利刃

否定はしない、反逆者。

皇帝の利刃
皇帝の利刃

だがますます気になってきたぞ、一体何によって貴様みたいな人を祖国を裏切るようにさせたのか……いや、違うな、おそらく、こちらが貴様の全貌を解き明かすには至らなかった疎かな調査をしたからか。

皇帝の利刃
皇帝の利刃

どうやらそうかもしれん、サーミに逃げ込んだあの罪人たちより、貴様は確かに手強い。

皇帝の利刃
皇帝の利刃

だが誤解するな……貴様を殺すことなど、依然と容易い。

ケルシー
ケルシー

……ここの空間を染めている?

皇帝の利刃
皇帝の利刃

そうだ、だがよそ者に言われる必要はない。

(斬撃音とMon3trが弾く音)

ケルシー
ケルシー

――Mon3tr!

Mon3tr
Mon3tr

(悲鳴)――

皇帝の利刃
皇帝の利刃

シュー……何という硬さだ

皇帝の利刃
皇帝の利刃

仮に貴様の肉体もこれほどの強度を誇っているのであれば、こちらでは確かに手の出しようがないな。

ケルシー
ケルシー

Mon3tr、戻れ、深追いはするな。

ケルシー
ケルシー

あの黒い霧を避けろ。あれはただの霧ではない。

ケルシー
ケルシー

それどころかあれは通常のアーツの範疇を超えている……どうやら私は長い間帝国の利刃と接触できていなかったようだ、凄まじい進歩だな。

皇帝の利刃
皇帝の利刃

……

皇帝の利刃
皇帝の利刃

貴様、我らの秘密をそこまで知っているのか……?

皇帝の利刃
皇帝の利刃

古の儀式によるものだ、ああ、あの得道者と自ら謳う狂った助祭でないと、貴様らに邪悪な魔物を纏う資格などないからな。

ケルシー
ケルシー

君は……

ケルシー
ケルシー

君はあの落日峡谷の生存者なのか。

皇帝の利刃
皇帝の利刃

シュー……!

ケルシー
ケルシー

帝国の意志はそれほど多くの顔を持たない、だが君は確かにほかとは少し異なる、少なくとも、君の歳は若くないはずだ。

ケルシー
ケルシー

お互い命を賭けてまで殺し合うべきじゃない、近衛兵。私がすべき唯一のことは、君たちがすべきだったのにしなかったことだと、君なら理解してるはずだ。

皇帝の利刃
皇帝の利刃

権力の帰属を履き違えるな、反逆者、貴様はいつからサンクトペテルブルクの法と権威を代表するようになったのだ?

ケルシー
ケルシー

もし君はあの反乱を体験したのなら、近衛兵、君のほうがもっと理解してるはずだ。帝国の盛衰はいつ尊厳と体裁で左右されたことがある?

皇帝の利刃
皇帝の利刃

……

ケルシー
ケルシー

それに、先帝はひと時でも……心の底からヴィクトリアを軽視したことがあるか?

皇帝の利刃
皇帝の利刃

……

皇帝の利刃
皇帝の利刃

貴様を侮るべきじゃなかったな、反逆者。

皇帝の利刃
皇帝の利刃

最後に一回だけ機会を与えよう。貴様の知ってる秘密を言え、さすれば体裁ある死を与えよう。

ケルシー
ケルシー

すまないが、自身の意志と無関係な死はどんなであれ、体裁は存在しない。

ケルシー
ケルシー

Mon3tr。

Mon3tr
Mon3tr

(嬉しそうな咆哮)

皇帝の利刃
皇帝の利刃

シュー……フゥ。

膨れ上がる恐怖。利刃は利刃を抜いた。ウルサスの意志を執行するために。

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