

闇市商人
おーい、みんな見てくれ、新しい労働者を連れてきたぞ!お前、ボーっとしてないで、さっさとあっち行け。

エリオット
……新しく職人見習いとして来ました、エリオットと――

闇市商人
わかったわかった、無駄口叩いてないで、さっさと働け!

闇市商人
おい、お前、それとお前ら、好きにこいつを使っていいから。こいつはクルビアの高学歴持ちだ、お前んとこの息子よりは扱いやすいと思うぞ。

闇市商人
どうせこいつは後ろ盾も何もないんだ、売られてきた奴隷たちと大差ない、死なない程度に扱ってくれ。

闇市商人
じゃあ死ぬまで働いてくれよな、見習い。

エリオット
……わかりました。


エリオット
……イシン、見てください!

イシン
ほう……驚いた、これはお前が盗んできた鋼材を溶接して作ったものなのか?まっこと芸術品のようだ……

エリオット
そんな鳥肌立つようなことを言わないでください、ちょっと見た目がいい消耗品なだけですよ。

イシン
だがお前もそろそろ休んだほうがいい、骨折した腕が治ってまだ間もないじゃないか……

エリオット
大丈夫ですよ。

エリオット
ところで精錬した源石はどこで手に入るか知ってますか?

イシン
金で解決できぬことなどこの沁礁闇市にはないさ。

エリオット
……期待していますよ。


エリオット
黒いサソリが死にました。

エリオット
中々いい仕事だったんじゃないですか?

イシン
今日……違法で貢物を売ってた小売りから聞いた話なんだが、“サンドソルジャー”が新たに沁礁の主になるらしいな。

イシン
君は自分がなると思っているのかい?エリオット?

エリオット
……あなたは私になってほしいのですか?イシン?

エリオット
私は恩を仇で売るような人ではないさ、あなたは目上の人であり、この十数年、あなたなしでは私は生きて来れませんでした。

イシン
だが今のお前はもうイシンを必要としなくなったな……

エリオット
いいえ……そうとは言い切れませんよ、私たちの関係は奥深いものですからね。

エリオット
文句が言いたいのなら、あの神秘的な女性にでも言ってやってください。

イシン
……ケルシーか……

エリオット
まだ彼女の名前を憶えていたのですね、ここ数年、あなたはどんどん記憶があやふやになってきた、もうほかの色んなことも忘れてしまったのかと思っていましたよ。

イシン
彼女を探したことはあるのかい?

エリオット
ええ。だが成果はありませんでした、私の最も優秀な情報員でさえクルビアで彼女に関する手掛かりは一切見つけられませんでしたよ、しかもあの傭兵企業はあの後すぐに倒産してしまいましたからね。

エリオット
研究所も軍に差し押さえられて、資料もすべて破棄されました、おかげで関与した者は一人も見つけずじまいです……クルビアが奴らを匿っているのでしょう。


サンドソルジャー
イバテーの王族が来週に赤角町を経由するそうです、フッ、なんたる数奇な運命か。

サンドソルジャー
これはいい機会になりま――イシン、眠ってしまったのですか?

イシン
……

イシン
イシンは夢を見ておった……

サンドソルジャー
またあの夢ですか。

イシン
またあの夢だ……ケシクの踏破が凍土と草原を超え、最後に黄砂の地へとやってきた夢だ……

イシン
しかし今回は、今までとは違った……

イシン
パーディシャがわしに語らなかった光景だった……一人の女がいた……ケルシーの……もう一つの姿に……とてもよく似ていた……

サンドソルジャー
そうでしたか。

イシン
彼女はそこにいたんだ。

イシン
はるか昔にケシクの遠征が旧時代を打ち砕いた時から、彼女はそこにいた……

サンドソルジャー
夢ではなんの証明にもなりませんよ、時間を超越し運命を覗き見れるアーツなんてないのですから、あなたが言ったことですよ。

サンドソルジャー
……そうだな、これはただのイシンの夢だ……なんの意味もない夢……ケルシー嬢が彼らと関係があるわけがない……しかしこれは何かの寓意なのだろうか?

イシン
最後に、イシンはあのパーディシャに会えたよ。

サンドソルジャー
ほう、なら今回あなたの主はあなたに何を語ってくれたのですか、老忠臣よ?

イシン
彼は……

イシン
彼は夢の中で……イシンに……サルゴンの方角を教えてくれた……

イシン
……

イシン
お前は王族の部隊を待ち伏せするつもりなのだな。

サンドソルジャー
ええ。

サンドソルジャー
もしかして、かつてのサルゴン貴族の寵臣だったあなたは、私の王族への不敬を阻止するというのですか?

イシン
――不敬だと?

サンドソルジャー
ええ。

イシン
奴らは腐っておる上に、無能だ、意味もなく血族を殺めることや、無辜なるサルゴン人たちを争いに巻き込むことしか知らん……

イシン
奴らは沁礁の地を踏みしめていながら、最も低俗な悪事しか働かん、イシンがそのような連中に……敬意を表するわけがなかろう?

イシン
奴らには代償を支払ってもらう、イシンはサルゴンの栄光を復興させたいが、あんな穀潰しの力を借りて達成しようとは思っておらん!

イシン
イシンは……そうだ……イシンはあの黄金の町を探しにいかなくてはならんのだ!

サンドソルジャー
珍しく激昂していますね、落ち着いて――

イシン
……時は満ちた。

イシン
行くがいい、坊や、火を点けに行くのだ、お前の復讐を完遂するために。

イシン
風が落ち着き、あの永遠の町が砂風から顔を覗かせた時を待とう……イシンはその時を待とう、そしてそこに行くのだ……


シェーシャ
……ここだ。

パッセンジャー
ありがとうございます。

シェーシャ
言っとくが、まずはノックをしろ。

シェーシャ
変な企みを考えるんじゃねぇぞ、エリートオペレーターの先輩たちを舐めてかかると痛い目に遭うからな。

シェーシャ
入りな。

パッセンジャー
……

ケルシー
……

パッセンジャー
……

ケルシー
どうやら、あの金貨は確実に君の手に渡ったようだな。

ケルシー
イシンは元気か?

パッセンジャー
……彼なら黄砂の中に消えていきましたよ、三年前の月明かりがあった夜に。

パッセンジャー
時間。時間は彼みたいなサヴラすらも削り落としてしまう、危うく彼を数多ある神話や陰謀の中で供述されている怪異の古の者かと思ってしまいそうでしたよ。

パッセンジャー
そして時間は私をも今みたいな顔にしてしまった。過去に憎しみに満ちていた顔に。

パッセンジャー
しかしあなたは……何一つ変わっていませんね。

ケルシー
君はまだあの“サンドソルジャー”なのか?

パッセンジャー
ここに入職する時に言いましたよ、あれはすべて過去となった、今の私は新たな名を持つようになった。

ケルシー
……自分を誤魔化すことはできても、私には通用しないぞ。

パッセンジャー
そうでしょうね、あなたはいつだって自分は正しいと思っていますものね。そして不幸にも、あなたはたくさん的中させてきた。

ケルシー
相変わらずいい記憶力を持っているな、エリオット。

パッセンジャー
……その名で私を呼ばないでください。秘密をひた隠すこれらのコードネームはそのために存在しているのでは?

フォリニック
先生――あ、すみません、お客様がいらっしゃってたのですか?

ケルシー
構わないよ。

パッセンジャー
どうぞお構いなく。

フォリニック
……そうですか……

フォリニック
ヴィクトリアの連絡所にいるトランスポーターから荷物が届いていましたよ、それに少々特殊で、ロドス宛てではなく、先生宛てでした、後方勤務部がすでにスキャンしてチャックしてくれました、中身はメッセージ保存装置のようです。

フォリニック
差出人は……ハイジ・トムソンさん。お知り合いでしょうか?

ケルシー
必要な情報通達だ、そこに置いておいてくれ。

フォリニック
わかりました……ではごゆっくり。

パッセンジャー
新たな陰謀ですか、ん?

ケルシー
言葉使いに気を付けろ。君はまだ我々の正式なオペレーターではないが、すでに契約にはサインしているはずだ。

パッセンジャー
まるで“行動顧問”が言いそうなセリフですね。

パッセンジャー
ケルシー、あなたはイシンに方向を指し示してくれた、彼はその恩義にとても感謝していましたよ、彼が新たな道に踏み入った時まで。

パッセンジャー
あなたたちが分かち合っていたあの栄誉とやらは私にはわかりません、けど今、私はサルゴンでことを終えました、もうこの大地ともなんの繋がりはありません……

パッセンジャー
ならおそらく、私にも新たな方向を指し示してくれるのでしょう、違いますか?

ケルシー
……だがその前に、一人のメンバーに会ってもらう。

パッセンジャー
あなたのことですしてっきり私を傍に括り付けるのかと思ってましたよ、その人が新しいパートナーですか?

ケルシー
いいや。

ケルシー
君の指揮官だ。

パッセンジャー
ロドスの指揮官ですか?まさか……フッ、まさかあなたにも信頼しうる対象がいたのですね?それは期待できそうです。

パッセンジャー
……ケルシー。

パッセンジャー
あなたは途方もない時を流浪してきた、なら今度はここでどのくらい留まるつもりなのですか?

ケルシー
君がそれを問う権利はない。

パッセンジャー
ごもっとも、当然ですね。答えたくないのであればそのように、今のあなたは私の上司でもありますからね。

パッセンジャー
しかしもしここもあなたにとって偽りの居場所であり、その身分の偽りなのであれば、ここでその効力を私に発揮してもあまり意味はないと思いますが――

パッセンジャー
なんせ私があなたに利用されたのは何も初めてではありませんからね?

ケルシー
……疑問に思ってるのなら好きにしろ。

パッセンジャー
こちらにはほんの少しの承諾があればいいのです。私をここに招いたあの“ケルシー”は、もしかすると数日後、数か月後、数年後以内に、また忽然とここから消えていなくなるのだろうか?

パッセンジャー
彼女はまた突如と旅路を歩み始め、ほかの人たちでは理解しかねることをし始め、この大地で自分の目的のために奔走するのでしょうか?

パッセンジャー
どうなんです?

ケルシー
もしその答えが君のロドスへの忠誠心を左右するようなものならば、私もお互いの協力関係を見直してもいいだろうな。

パッセンジャー
私が必要なのは答えだけです。答えを出すことなんてあなたにとって難しいことじゃないはず、それで私を騙すのであっても黙認してあげましょう。

ケルシー
そんなに答えが必要なのであれば、幾千万個言ってやってもいいぞ。

パッセンジャー
では適当に一つだけ選んでもらって構いません。

ケルシー
……

ケルシー
私は――


ケルシー
Dr.●●、ここにいたか。

プレイヤー
・おはよう、ケルシー。・……・何か用か?

ケルシー
クロージャが物資補給を終わらせてくれた、だが現地で少し突発事態が発生して君に対処してもらわないといけない、アーミヤが先に向かっていてる。

ケルシー
あの子をあまり待たせてやるな、彼女は最近努力しているんだ、彼女が君を必要としている時に傍にいてやってくれ。

ケルシー
……もちろん、君自身もだが。

ケルシー
あまり自分を無理させるな、ロドスも君を必要としているからな。

プレイヤー
・えっと、ありがとう?・……・わかった。

ケルシー
これから私は臨時診察に向かわねばならない、締めの作業は君とアーミヤに任せる。

ケルシー
もし順調にいけば、日が暮れる前にロドス全艦に通達してくれ――

ケルシー
――出航だ、とな。