これは驚きました!まさか大勢の観客たちが注目する大乱闘の選抜戦で、こんな出来事が起こったとは!
試合途中から現れた二人がこの選抜戦での勝者となりました!
パンチョさんに聞いてみましょう、この状況をどう思いますか!?
オホン、珍しい事態には発展したな。基本的に、参加者の皆さんには試合ルールを遵守してほしいものだ。
では残念ながら……
ただし。
たまにはこういうことも悪くないな。
おお、ですよね!オホン、では残念ながら、この一件はほかの試合参加者たちにとって悪夢となってしまいました!
ふっ、臨機応変なMCだこと、私たちは失格って言いそびれてたわね。
そうかもな。
どうやら試合会場に誤って入ってしまったらしい。
記憶が正しければ、確か大乱闘選抜戦だったかな。
しかし、皆さん、今大会の主旨は全市民に熱狂をもたらすことにあります。
このお二方は参加手続きを済ませておりませんが、鮮やかに繰り出す技と絶妙なコンビネーションを駆使して大乱戦の会場を最後まで生き残りました!
なんとエキサイティングな展開なのでしょうか!彼女たちのために一番熱い歓声を上げずして何になりましょう!?
絶妙なコンビネーションですって、そうかしら?
そうじゃないほうが助かる。
はぁ……なんでこんなことになったんだ。
父さん、この招待状って……
今年も来ておったのか、諦めが悪い女じゃ。
女?諦めが悪い?
母さんに言うから。
そういうことではない。商業都市連盟のとある市長のことじゃよ、十年ほど前まではあのウェイもまだ自ら出向いてたおったが、今じゃトランスポーターを介して連絡するようになったんじゃ。
彼女は諦めが悪くてな、毎年この時期になるとわしとウェイに来てほしくて手紙を寄越すんじゃ。
商業連盟って……あのクルビアの?
いや、ボリバルのじゃ、お前も聞いたことあるじゃろ、そこの市長を務めてるのが彼女じゃ。
ドッソレスの、カンデラ・サンチェス?
そこの都市って、金を食う場所って聞いたけど……父さんは行かないの?
あんな遠い場所に行って、何をするというんじゃ?この老骨にもう鞭を打ちとうないわい。
それにわしが行ったところで、ウェイが行かなければ意味がなかろうて。
それもそうね、向こうが仲良くしたい相手はきっと龍門長官のウェイさんだろうし、ただウェイさんも公務で忙しいから、行けるわけないか。
父さんも落ち込まないで、あなたが出かけたら、花屋さんの花の面倒は誰が見るのよ、それにおじさんたちの将棋仲間も一人減っちゃうしね。
小娘め、なぜわしとウェイの扱いにそんな差があるんじゃ。
両者ともに貿易協定は結んでおるし、ウェイも行こうと思えば、いつでも行ける、ただヤツは飽きただけじゃ、それにあそこの都市は、ろくなところではない。
ウェイが行かないのであれば、わしも行かん。
わかった。じゃあこの招待状は捨てておくわね。
(携帯のバイブ音)
ん?文月夫人からの電話か?
リンさん、私です。
これはこれは文月夫人、わしに電話とはどんなご用件かのう?
]文月さんからの電話?じゃあ私は失礼するわね……
ユーシャもおられるのですか?ちょうどよかった、彼女とも関係する話がしたかったんです。
ユーシャ、残れ。
はい。
リンさん、あの招待状はそちらにも届いておりますよね?
今年も届いているよ。どうかしたのかな?
私はそこでバカンスでも楽しもうかと思っていたのだけれど、ご存じの通りウェイはああいう人でして、ほら、面倒くさがり屋じゃないですか。
確かにな、しかし夫人には何か別の策があるようじゃのう?
ユーシャちゃんをウェイの代表として向かわせたいんです。
それは……
ウェイならこちらが説得しておきますので、ご心配なく。
それについては、夫人がなんとかしてくれるから、こちらも安心できるのじゃが……
しかし、お言葉じゃが、ユーシャはまだそのような重荷を背負えるような年ごろではない。
父さん、文月さんはなんて言ってるの?
……お前をウェイの代表としてドッソレスに行ってほしいとのことだ。
行きたい。
ユーシャ。
……
行きたい。
リンさん?
仕方ない、可愛い娘が遊びに行きたいと言っておるんじゃ、父親としてそれを止める理由などなかろう?
ユーシャを遣わせよう。
よかった。じゃあユーシャちゃんも遠出の準備をしておいてね。
わかりました。
(通話が切れる音)
ユーシャ。
父さん、ちゃんとお土産買ってくるからね。
はあ、お前ってヤツは。
わかった、決まったことじゃ、支度しておきなさい。今回は遠出じゃ、母さんにも手伝ってもらえ。
わかった。
(ユーシャの去る足音)
文月夫人のことだ、きっと酔翁の意は酒にあらずなんじゃろう、バカンス……もしやチェンに関することか?
まあよい、考えても無駄じゃな、若者たちを愛しておられるご婦人のことじゃ、ユーシャに何かが起こるはずもなかろう。
そんなことより……はぁ。
愛しき娘も留めておけんな。
文月、ユーシャの件は君がやったのか?
そうです。
……
いいじゃないですか、どうせ相手はあなたと話し合おうと思ってるわけではないんですし、ただ単に私たちをバカンスへ招致したいだけなんですから。
本当はフェイゼを向かわせたかったんだろう?
そうですよ、言っときますけど誤魔化すつもりはありませんから。
ユーシャを私の代表として遣わせれば、フェイゼは心置きなく遊べるということか、しかしだな……
チャンちゃんは今ロドスに所属しております、彼らのことは信用していますが、ちゃんと暮らせてるかまでは知りません。
チェンちゃんの今の立場ではあなたの代表は務まらないことぐらい私も理解しております、その代わりユーシャちゃんがきっとうまく片付けてくれるはずですから、それでいいじゃないですか。
鼠王の娘は必ずしも鼠王になれるわけではない。
けどあの子にその意志があるのであれば、チャンスを与えてあげましょうよ、掴めるかどうかは、彼女次第ですけどね。
それとも、ウェイ長官は私みたいなか弱い女子が犯した僭越を咎めるおつもりですか?
こういう判断はいつも君の意見に従ってきただろう、だがな……
君もカンデラ、あの女と会ったことがあるだろ、フェイゼもユーシャも、まだ若すぎる、相手になれん。
あなたねぇ、いつも私は心配し過ぎと言ってくるくせに、一番心配してるのはあなたじゃないですか。
その性格を少しでも直していたら、チェンちゃんも少しはあなたと仲良くできたというのに。
今はそういう話ではないだろ、文月。
はぁ、自分の力でドッソレスをボリバルのような場所で根を張り尚且つその名を広げたんです、そりゃ只者じゃありませんよ。
あなたと一緒にそこに行ったことがないわけでもないんですから私も分かりますよ、あそこは、あなたじゃ絶対に考えられないような都市ですものね。
こんな都市を建てて、尚且つ龍門長官の角度とあなた自身の角度から見れば、彼女を憚るのも当然ですね。
君もそう思っているのならなぜ……
けどね、あなたたちみたいなお偉いさんは、いっつもお互いいがみ合ってばっかり、何かを考えるにしても、ほかの人を見てもみんな同じ。
言っておきますけど、私があのカンデラさんを見た時の第一印象は、いいことも悪いことも、色んなことに手を出してる、けどチェンちゃんやユーシャちゃんみたいな子供たちを傷つけることは絶対にしない人といった感じでした。
あなたはあの子たちが彼女から悪い影響を受けるんじゃないかって心配してるけど、私からすれば、むしろリフレッシュできると思ってるんです。
……
それでも心配でしたら、まだユーシャちゃんは出発してませんし、チェンちゃんに渡す手紙も出してませんので、まだ間に合いますよ。
……
もうわかった、君の好きにしたまえ。
さっき路上でロドスの人を見かけたが、まさか彼らもシエスタに来ているのか……
あとで確認しておくか。
(ノック音)
誰だ?
チェン様、ご休息の時にお邪魔して、申し訳ない。
シラユキか?なんでここにいるんだ?
夫人から手紙を預かり申した、火急とのこと。
龍門でなにかあったのか!?
否、手紙をお読みになればお分かりになる。
……手紙は?
ここに。
……招待状も入っている?それより手紙だ。
チェンちゃん、お久しぶりです。ロドスで元気に過ごせてますか?ちゃんとご飯も食べていますか?
相変わらず心配性な人だな。
実はこうなんです。手紙と一緒に招待状が入っています、ボリバルのとある都市の市長さんが私たち夫婦に送ったものです。ただ私たちは時間が合わないため、ウェイと話し合った後、あなたには私たちの代わりにその都市に行ってもらいたいんです。
……
その都市はドッソレスと言います、あなたも聞いたことがあるでしょう、そこには巨大な人工の湖と、たくさんの娯楽施設がある、バカンスリゾートとなっています。いつもロドスで四方八方行き来してるあなたを思うとさぞかし疲れも溜まってることでしょう、なのでこれを機に羽を伸ばしてください。
ロドスのほうは私が説明しておきますので、心配はいりません。 フミヅキより
いや……もう休暇の真っ最中なんだが。
夫人はそのことをご存じないかと。
それもそうか。ドッソレスか……シラユキ、ここからどれぐらい離れてるか分かるか?
その都市はボリバル北西に位置する、今から出発すれば、15日ほど必要。
招待状には日時が書かれていないから、いつ行ってもいいようだな……
向かわれるのか?
……文月さんのご好意だ、断る理由もないだろ、場所を変えてバカンスするようなもんだしな。
シラユキが夫人に代わってチェン様に御礼申し上げる。
何度も言っただろ、今の私たちは同じオペレーターなんだ、だから様付けはやめろ。
シラユキの答えは変わらぬ、変えられぬ、チェン様はチェン様なり。
はぁ、もう好きにしろ。
一緒に来るのか?
否、シラユキは別の任務があるゆえ、御免。
わかった、なら私一人での出発のようだな。
それと、私が向かう時に知った、ドクター及び一部のオペレーターも任務終了後こちらの街へ着いたとのこと、チェン様においては、彼らに会ってからの出発もあり。
ん?じゃあさっきのは見間違いじゃなかったのか……
でもいい、どうせロドスに戻れば会えるんだ。
それも確かに、ではこれにて……
そうすぐに帰るな、一晩残る時間ぐらいはあるだろ?今晩一緒にメシでも食べて、明日一緒に出発しよう。
……承知した。
やっとついた、ここがドッソレスか……
噂通り、ここに着いたら、自分がボリバルにいることすら忘れてしまいそうだな。
とりあえず、さきに……
(護衛の足音)
チェン・フェイゼさんでいらっしゃいますね?
はい。そちらは……
市長様のご命令で税関にてお迎えに上がりました。
私はただバカンスに来ただけだ。そこまでしなくてもいい。
いえ、チェン様がご到着されたら市長様にご通達と仰せられておりますので、少々お待ちください。
こちら二番関税、チェン・フェイゼ様をお迎え致しました。
……はい、はい、承知致しました。
では私どもといらしてください、市長様がお会いになられたいと。
はぁ、わかった。
ではお入りくださいませ、チェン様。
(チェンの足音)
……
(???の足音)
チェン・フェイゼさん、あなたが先に到着したのね。
以前から龍門近衛局特別督察隊の隊長は才色兼備と聞いたけど、やはり噂通りの人だったわね。
おま……あなたがこの都市の市長、サンチェスさんですね?
ええ、私はカンデラ・サンチェス、ドッソレスの市長よ。
……達者な炎国語ですね。
ウェイさんとは長い間仲良くさせて頂いていてね、ただ残念ながら十年ほど前から来てくれなくなったの、おかげでせっかく習得した炎国語も見せ場がなくなってしまったわ。
サンチェスさん、今回私がここに来たのはあくまでバカンスです、誰かの代表ではありませんよ。
名前、カンデラで結構よ、あなたさえよければ、さんと呼んでもいいのよ、ウェイ総督とは義兄妹の契りを交わした仲なんだから。
結構です、サン……カンデラさん。
あははは。
その話口調、それと目に眉毛、若い頃のウェイ総督そっくりね。
けど、当時の彼は、あなたより三割増しハンサムだったわ。
……私とウェイ総督はなんの関係もありませんので。
大丈夫、分かってるわ。
安心して、姪っ子ちゃん、フミヅキ夫人から先に聞かされてるわ、あなたは誰かの代表を務めてないから、気を負わなくても結構よ。
存分にリフレッシュしてちょうだい、私がいる限り、この都市であなたに危害を加えられるモノなんてないんだから。
ご好意感謝します。
……それとさっき、私が先に着いたと言いましたけど、それってほかの人もいるってことですか?
そうそうそうなのよ、奇遇よね、彼女は龍門から、あなたはシエスタから出発したってのに、同じ日に到着するのよ。
その人は誰ですか?
ん?
ああ、なるほど、どうやら文月さんから教えてもらってないようね、遅かれ早かれ知ることにはなるわ。
チェンさん、あなたも知ってると思うけど、私やウェイ総督みたいな身分になっちゃうと、こちらが面倒と思っても、形式通りにやらないといけないことがあるのよ。
実際、ウェイ総督が適当に代表を送っても私は気にしないのだけれど、うーん……適当すぎはよくないかな、あなたぐらいがちょうどいいわ、だから私は今あなたを接待してるようにその人のことも接待しなきゃならないの。
だってそんなことしなくてもいいのにね、ウェイ総督ご夫妻と鼠王をバカンスとして招待しただけなんだもの。
けどそれでも彼は弁えた、私もね。
彼本人は来なくていいけど、適当に誰かを寄越しに来るのはご法度、じゃないと、龍門総督のドッソレス市長へ無礼を働くことになるからね。
そんなことしたら明日にでも龍門とドッソレスの新聞で似たようなニュースをたくさん見るようになると思うし、色んなことも必要なしに面倒になってくるのよ。
つまり、ウェイ総督は自身を代表する人物も同時に送って来たということですね。
その通り。
それはホシグマという人ですか?いや、それともスワイヤー……
どれも違うわ。
じゃあそれは……
カンデラ様、ご到着されました。
ほら、噂をすれば。
(ユーシャの足音)
ドッソレス市長のカンデラ・サンチェス様、龍門総督のウェイ長官を代表して謹んで……
リン・ユーシャ!?
チェン・フェイゼ!?
なぜここに!?
……そうか、なるほど、どうりでフミヅキさんが私を指名したわけね。
……お前がウェイの代表か。
お二人ともお知り合いのようね、それはそれで助かるわ。
元同級生なだけです。
友だちの友だちなだけです、親睦はそんなに深くないですけど。
じゃあこれを機にここで改めて仲良くなれるわね?
それは置いといて、リンさん。
チェンさんと同じく、あなたも私のことは名前で呼んでも構わないのよ、そんな畏まらなくていいのに。
あなたがウェイ総督の代表として来たとしても、あんまり深く考えなくてもいいし、気も負わなくても大丈夫。
あなたの仕事はとても簡単、私が誇りに思うこの街を存分に楽しむこと。
……分かりました。
あ、でも二つお願いがあるわ。
なんでしょうか。
一つ、二人とも頭脳明晰で武芸に通じていて、とてもすごいことをした人って聞いたわ。
だから、二人にサプライズを用意してあげたの。
サプライズ?
けどそれより先に、二人とも、この街で夏の期間に行われる最も盛り上がるイベントのことは知ってる?
今行われてるサマーフェスティバルですか?
その通り。
周知の通り、ドッソレス最大の特徴は、街が囲んでいる“海”、それとその海に浮かぶこの客船よ。
この船は私が多くの心血を注いでやっとイベリアの技術を復元した傑作なの。
船頭の彫刻もですか?
あははは、あれはただの個人的な趣味よ。
ドッソレスの“海”は、北に果てしなく広がってる正真正銘の海から水を引っ張ってきたの。
水は長い間放置したら、汚れるし、臭くなるでしょ、だから毎年少なくとも二回は水を交換するの。
それと夏は、水遊びする人が最も多い時期でしょ、だから、私たちはその時期に一回換水するの。
本来なら換水って地味な作業だし、お客様たちの貴重な娯楽の時間を少なくとも一日は無駄にしちゃうわけじゃない。
だからといって、お客様たちを汚い海水で遊ばせるわけにもいかない、ドッソレスに汚名を着せることになるからね。
なので、トライアスロン大会が生まれたってわけ。
もし具体的な競技内容に興味があれば、あとで教えてあげるわ。
あと大会の優勝者には、自ら水門のスイッチを押せるというこの街の栄誉を獲得できるわ。
本来なら面倒臭い作業を盛り上がるフェスに変えたってことですか……
あははは、そんな感じかな。
本心を言うと、大会が開催される前に義姪っ子の二人が来てくれて嬉しく思ってるのよ。
チェンさんはこっちに来る前は、シエスタで休暇を過ぎしていたらしいわね?
はい。
あの街の音楽フェスはどうだった?
……音楽のことはよく知りませんが、盛り上がりはしました。
ふふ、あそこの市長とは一回会ったことがある、彼も自分の街のために全身全霊を尽くしていたわ。
ただ、あの人はね、本質からして街の主に相応しい人じゃないのよね。
それに、所詮は音楽フェス、私のサマーフェスとは比べ物にならないもの、あははは!
二人とも相当いい腕してるようだし、もし興味があれば、大会に参加しちゃってもいいのよ。
あ、間違っていなかったら、選抜期間がもうそろそろ終わりそうなのよね、参加するなら早めに行動したほうがいいわよ。
もし今年の大会であなた達のチームが優勝したら、ウェイ総督も鼻が高くなるし、こちらも特別なプレゼントを用意してあげるわ。
チームの話はともかく、参戦なら、考えておきます。
それより、さっき言ってたサプライズというのは?
あら、すっかり忘れちゃってたわ。二人へのサプライズはこの大会に関するものよ。
おおよそ先週だったかしら、私の部下が爆発物と源石回路基板の密輸入を摘発したのよ。
大体のことには目を瞑ってるけど、こういう事件は許しちゃいないの、二人も憶えておいてね。
私たちはそんなことしませんよ。
あははは、そりゃそうよね、冗談よ。
本来なら、ただの武器密輸入なんてちっとも面白くないでしょ、でも、あなたたちも知っての通り、大会が目前なのよね。
つまり人手が足りないってことですか、それにこのタイミングでの武器密輸入……
大会で何か起こそうとしてるのでしょうか、グレーゾーンから調べて見たらどうでしょう。
二人とも流石ね、どうやら二人にこのサプライズを用意しておいて正解だったわ、興味を持ってくれて何よりよ。
とにかく、二人とももし休暇中に刺激が足りないと思ったら、バカンスついでに捜査でもしてみたらどうかしら?
バカンスついでに……捜査?
ええ、特にあなた、チェンさん、あなたみたいな人は捜査を一番楽しんでるはずでしょ。
……ご自分の街が脅威に晒される心配はしていないのですか?
心配?チェンさん、それは違うわ。
私がいる限り、誰だろうとこの街を脅かすことはできないわ。
このサプライズに関しては頭の隅っこに置いといて、バカンスや大会を楽しんでもらっても結構よ。
もしこの一件で何か事件が起こったとしても、二人に責任はこれっぽっちもないから。
さっき言ったように、これは二人のために特別に用意したもの、バカンスを盛り上げるちょっとした余興なだけだから。
……
……わかりました。
よろしい。それともう一つ。
本当なら二人には私がこの手で築き上げたドッソレスの輝かしい実績たちを語ってあげたかったのよね……
でも、生憎ウェイ総督は来てくれなかったから、私自ら二人をもてなしても気を遣わせちゃうしね。
だから、二人にはガイドを用意してあげたわ。
アーネスト、いらっしゃい。
(アーネストの足音)
ミス・カンデラ。
この子は私の部下で最もお利口な外交官よ、名前はエルネスト。
お二方、ご機嫌よう。
彼も炎国語が達者よ、あでも、この街で話されてるのはほとんどヴィクトリア語とリターニア語だから、困ったら彼に翻訳してもらってね。
いえ、どちらも話せますので。
……私も。
ほう、それは上々。
それとこの街について分からないこと、たとえば大会の具体的なスケジュールとかに関しては、彼に聞いてね、大丈夫よね、エルネスト?
お任せください。
分かりました。
ありがとうございます。
もちろん、このおバカさんにムカついたら、いつでも私に報告してもいいのよ、あははは。
さ、私はまだほかのお客人と面会しなきゃいけないから、先に失礼させてもらうわ、あとのことは若者たちで盛り上がってね。
ありがとうございました、ミス・カンデラ。
(カンデラが去っていく足音)
……
……
こんなお美しいレディたちと出会えて光栄に思います、俺はこの都市の国際貿易管理部門の副主任を務めています、エルネスト・サラスと言います。
どうぞエルネストとお呼びください。
ようこそドッソレスへ。
もしこの街について知りたいことがあったりどこか観光しに行きたいのであれば、遠慮なく俺に申し付けてください。
ミス・カンデラからはお二方を至れり尽くせりおもてなししろと仰せつかっておりますので。
お構いなく。
同じく。
あはは、ではまず、お二人の携帯はすでにこちらのネットに繋がっておりますので、自由に通信やネットができますよ。
こちらは俺とミス・カンデラの連絡番号です、何かあったら直接かけてください。
それと、これは市長からお二人に用意されたカードです。
この街での購入はすべてこのカードをお使い頂ければと思います、金額に上限はありませんし、すべて市政府が負担致します。
どうぞ好きなように。
そこまでしなくても結構だ。
この街の最初のおもてなしみたいなものですから、とりあえずお受け取りください。
それから……二人だけでお話したいようですので、俺はとりあえず失礼しますね。
けどあとでお二人をご宿泊されるホテルに案内しないといけないので、下で待ってます、話し終えたら、俺のところまで来てくださいね。
……わかったわ。
(エルネストの去る足音)
……
……
久しぶりね、チェン・フェイゼ。
久しぶりだな、リン・ユーシャ。
最後に会ったのはいつだったかしら?
さあな、一年前のスワイヤーの誕生日会だったか?
その時は行ってないわ。
そうか、なら私の思い違いだ。
一昨年の同窓会じゃないかしら。
ああ、そうだったな。
元気そうね、フミヅキさんも喜ぶわよ。
そうだな。
スワイヤーは元気か?
ホシグマから聞いてないの?
今の彼女は代理みたいなことをやってるわよ、それもそれなりに、もうしばらくしたらあなたの席に座れるかもね。
それはいい。あいつはあの性格さえ引っ込んでおけば、重任も背負っていけるはずだ。
どうでしょうね、引っ込めたらスワイヤーとは呼べないわ。
それもそうか。
……
……
一つ聞きたいことがある。
なにかしら。
なぜあいつに手を貸した。
……
チェンさんとユーシャさん、申し訳ない、一回船を着岸させたいんで、船を降りるかそれともしばらく船にいるかお伺いしたいです。
(エルネストの足音)
まだお話されたいのであれば、別の部屋を用意し……
もしかして俺まずいタイミングに来ちゃいました?
ちょうどいいタイミングだったわよ。
ホテルまでお願いね。
あ、はい。
……
チェンさん?
行こう。