
これは驚いた、チェン選手、まずは路地に入り囲まれてたミヅキ選手を助けたかと思えば、今度は路地でほかの選手たちとドンパチ繰り広げてるよ。

ほかの選手もチームLUNG wRAThを最大の脅威と見たらしい、言葉を交わさずとも連携し始めた。

しかしだとしても、チェン選手はまったく恐れず、むしろ連中と戦うことを選んだ。

まったく見てて爽快な戦いだね!

だが路地のもう一方も忘れちゃいけない、リン選手との戦いだ!

路地の中で激しい戦いを繰り広げてるチェン選手と違って、リン選手は路地の入口で技を何発かかましただけで現場に駆け付けたほかのチームを尻込みさせた。

今回のグランプリで、果たしてこの二人に勝てるチームは存在するのだろうか!?

はは、やっぱりあの二人は単独で行動したほうがいいですね。

ねえ、Missy、チェンとリンさんがやりあったら、どっちが勝つと思います?

そんなこと聞いてどうするのよ?

かなり気になりましてね、すごいヤツを二人一緒にしたら、普通どっちが勝つんだろうかって誰でも考えるじゃないですか。

そんなこと考えるのアンタだけでしょ!

とにかくアタシには分からないわ、今日みたいにあの女が本気を出したところなんてここ数年アタシも初めて見たんだから。

え?リンさんと仲良しじゃありませんでしたっけ、なのに見たことがないとは。

誰が仲良しよ、いっつも胡散臭そうにして、電話しようにもほとんど通じないあの女なんかと。

それに仲良くなったら相手の本気具合を確かめなきゃならないって誰が言ったのよ。

それも確かに、どうやら小官がチェンと一緒に居すぎてそういうのに慣れちゃったんでしょうね。チェンが今の小官に勝とうと思ってもあの剣だけじゃ太刀打ちできないと思いますけどね。

みんながみんなアンタら二人みたいだと思わないでちょうだい。

それに、知らないほうがよっぽどマシだわ、アイツが本気を出した暁にはこっちが逮捕しなきゃならなくなるかもしれないもの。

確かに、鼠王の娘ですもんね。

いや、でもそうとも言い切れませんよ、完全な悪人でもないんですし。

小官が龍門に来てつるんでた当初なんか……

言わなくて結構、鼠王に会ったことないわけじゃあるまいし、アンタに言われなくとも知ってるわよ。

あ、ならよかったです。

それより、さっき“つるんでた”って言ったわね。

おっと、スーお嬢様の目の前ではしたない言葉を使ってしまいました、口が悪くて申し訳ありません。

ふん。

それでアンタとチェンはアイツの本気を見たことがあるって言うの?

ないからあなたに聞いたんじゃないですか、チェンも見たことないと思いますよ。

それと一点についてはあなたの言う通りです、リンさんが小官みたいな連中に手を出さなくてよかったですよ、じゃなきゃ職務を全うしてたと思います。

ならいいわ。

だから小官も思いもしませんでしたよ、まさかチェンと彼女が手を組むとはね。

長生きも悪いことばかりじゃありませんね。

でさっきの話に戻りますけど、どっちが勝つと思います?

考えるのも面倒臭いだわ。

そうですか、じゃあ自分で考えてみます。

小官からすれば、チェンがもし剣を握ってたら、リンさんは彼女との間合いを詰められませんね。

そして、リンさんがいざ間合いに入り込んでしまったら、チェンの負けです。

案外チェンって雑魚なのね。

そうでもないですよ、チェンの実力は相当なものです、擒拿(きんな)術とか、関節技とか、小官らが訓練してた時はいつも彼女の成績が一番よかったじゃないですか。

ほらさっきのあれも、銃の狙いも悪くありません。

ただチェンの得意分野はやっぱり剣術ですからね。

つまりユーシャの実力はチェンの剣術に相当すると。

そんな感じです。

チェン・フェイゼ、ヒーローごっこは楽しかった?

そうでもない、お前に心配される筋合いもない。

申し訳ありませんでした、チェンさん、俺……

言ったはずだ、君はそこで待っていればいいと、だから気に病むな。

助けてくれてありがと。

礼には及ばない。

でも、なんでボクを助けてくれたの?

なんでもなにも、見かけたらから、助けただけだ。

そうなんだ、お姉さんいい人だね。

じゃあはい、これあげる。

これは……銅金?

うん、これを持ってたからさっき囲まれたんだと思う。

俺たちにくれてもいいのか?

いいよ、また探せばいいんだし。

それにボク、元からそんなに試合とか気にしてないんだ、チェンお姉さんみたいないい人と巡り合えただけでも、すごく満足だよ。

先に言っておくけど、今の騒ぎで多くのチームに嗅ぎ付けられたわ、お喋りするのは結構だけど、あんまりその場に留まらないほうがいいわよ。

じゃあお先に失礼するね、バイバイ~。
(ミヅキが去る足音)

私たちも行こう。

ついでに聞くけど、ヒーローごっこしたほかに何か収穫はあった?

銅金は収穫に入らないのか?

まあそれでもいいわ。

そっちは?

……特になにも。

じゃあ、続ける?それとももう渡す?

とりあえず続けよう。

わかった。

やあみんな、つい先ほどこちらに二十個ある銅金が全部提出された情報が入ってきた。

つまり、第一ラウンドはこれにて無事終了。

ではこれより、投票コーナーを始めようか。

投票コーナーは数時間設けられる、締め切りになった後、メインステージにて第一ラウンドを突破したチームを紹介するから、こうご期待!

……やっと終わった。

これから観客たちによる投票コーナーが始まります、でもお二人の今の人気なら、問題はないでしょう。

そうね。

けどリンさんも危険分子に関連する手がかりは見つからなかったようですね?

こっちは見つからなかったわ。

じゃあそういう連中は存在しないとも言えるんじゃないでしょうか。

そうかもね。

フェイゼ、このあと暇?

なんだ?

ツラ貸しなさい。