(ラファエラの足音)

……
(ユーシャの走る足音)

……
(ユーシャの走る足音)
(ラファエラの足音)

……
(ユーシャの走る足音)

(消えた!?)

(あっちは私に気づいていないはずなのに。)

(普段から偵察対策の訓練でも受けてるのかしら?)

(それとも、コソコソしてないと入れない場所でもあるのかしら?)

(……まあいいわ、先にフェイゼを探しましょう。)

まず、第一戦を突破したチームたちをご紹介。

今大会の第一ラウンドは、全部で十五チームが突破したよ。

チームLUNG wRATh、言わずとも一番熱い的だね。

それとチームグレイフェザー、チームパックマン、チームハニーサマー、チームお問い合わせは5453-46235まで……

お疲れ様です、D.D.D.。

慣れない仕事をさせて本当にごめんなさい。

平気だよ、大物のメンツが掛かってるんだ、とっくに慣れてるよ。

最初は確かに不慣れではあったよ、でもやってみたら、DJやってる時とそう変わらない。

音楽で盛り上げるか、言葉で盛り上げるかの違いだけだよ。

それならいいだけど、もしこれ以上続けられそうになかったら、私がすぐに全部キャンセルしてあげますからね。

ぶっちゃけ、その場の勢いでやってるんだけど、たまに過去の自分じゃ絶対に言わないようなことを口にしちゃう時があるんだよね。

危なっかしい。

だけど、それより、君もあのLUNG wRAThってチームは見たでしょ。

あのチームにいる二人の女性選手は本当にすごい。

ええ、確かにそうですね。

あの二人を見てると、こっちまで思わず身体がウズウズしちゃうよ。

彼女たちに一曲歌ってやりたい気分。

今は特等席で彼女たちの試合を見れる、だからこっちももうしばらく持ちそうだけどね。

あはは、それはよかったわ。
(ホシグマとスワイヤーの足音)

あの、Missy、どうしたんですか、試合が終わったっていうのに余計元気になっちゃって。

ここ数日ウキウキしながらあちこち散策なんかして、ただの街ブラには見えませんね、何があなたをこうまで引き寄せてるんですか?

街ブラならしてるわ、ただ、別の目的があるのよ。

別の目的ですか?

この都市のことを知りたいの。

この都市を知る?そりゃまたなぜ?

この街を囲ってる壁の外は、ボリバル、三つの政府に分割支配されてる国家でしょ。

リターニアのツァインゼッセ政府、クルビアの連邦政府、それとその二つの政府に反抗するために立ち上がったシエルト・ボリビアン。

三つの政府の間では大小様々な摩擦を起こしている、おそらくアタシたちが今ここでのんびりしてる時も絶えずにね。

しかしこの都市は、アタシたちがここに向かう途中で経由したボリバルの都市たちとは似ても似つかないわ。

この都市はもうただ栄えてるって言葉だけじゃ形容しきれない、このアタシでも、こんな贅沢で娯楽に満ちた都市なんて見たことがないんだもの。

あんな国家の中に、どうしてこんな都市があるのか、アンタは気にならないわけ?

正直に言いますと、興味はありますよ、しかしここは龍門じゃありませんので、踏み込むのも野暮です。

アンタね、何でも知ってるくせに、いざ龍門あるいはチェンと関係ないと知ったら、すぐ関心を失くすんだから。

ずっとそうして生きてきたものですので。つまり、Missy、そう説明してくれたということは、何か企んでるはずですね。

もしこの都市に暗い一面があったら、アタシも疑問には思わなかったわ。ただ事実はその逆で、ここは不気味なほど活力に満ちている。

もしどの都市にも心臓というものがあれば、龍門の心臓は生き生きとしていて、紅く健康的な血液が絶えず心臓に送られてきていて、心臓の鼓動を維持してくれている。

しかしこのドッソレスの心臓は、すごく怪しい気配がするの。どす黒くて汚い血液が絶え間なく心臓に流れてきてるのに、ちっとも衰えをみせない。むしろ健康な龍門以上に激しく鼓動しているわ。

あたかも龍門よりも生命力に満ち溢れてるように見える。

これまで龍門は外部勢力の攻撃を受けたことは極僅かというものの、この都市は複雑怪奇な情勢に陥ってるボリバル国内に位置してるのよ。

あまりにもおかしすぎるわ。

おお、それいい例えですね、すごい分かりやすいです。

つまりあなたが気になってる箇所は、本来あるべき姿じゃなく、それに反した姿になった理由、ですね?

ここは犯罪に寛容で、賭博を奨励している、ここでの生活は贅沢三昧で、淫らに乱れきっている、毎日誰かが一夜で巨万の富を築いたり破産したりしている。

それによって人々はある幻覚を見るようになる――この都市は観光業と娯楽業だけで観光客を誘い招いて都市の主要収入にしているんだってね。

しかし一般的な娯楽業だけじゃ都市を運営することは不可能、だからここはやむを得ず娯楽業へ伸びる犯罪の手を手放し、ロクでもない連中をも誘き寄せた。

結果として、この都市は偽りの、不安定な繁栄を手に入れたわけ。

これで筋が通るはずよ。

でも本当にそれだけかしら?

うーん……ちょっと疑いすぎじゃないですかね。

なんですって!?

でも確かに、あなたみたいなお嬢様からすれば、この都市の運営形式は普通じゃないし、かなり野蛮に見えるんでしょう。

けど小官からすれば結構親しみやすい感じがしますよ。

あなたも知っての通り、極東もボリバルとどっこいどっこいです、外はドンパチ騒いでるのに中に引き籠もってるお偉い方はちっとも見向きもしない、そんなこと日常茶飯事です。

この都市と小官が知るあの都市とでは本質上区別はありません。

あ、でも言われてみれば、娯楽業と観光業だけで支えられてる都市は確かにありえませんね。

極東だってそんな都市ありませんよ。

だからやっぱり教えてください、Missy、あなたの発見を。

もうそんな気分じゃないわ。

お願いしますよ、Missy、小官が悪かったですから。

すいませーん、えっとこの、夏限定かき氷を一つ、こちらのお嬢さんに。

かしこまりました。

ほらほら、Missy、機嫌直してくださいよ。

ふん。アタシたちが街に入った時のことまだ憶えてる?

あなたが持ってたカードをチラッと見せただけで街に入れたことですか?

あれはこっちが事前に用意したものよ、この都市は龍門と貿易協定を結んでいる、だから直接自分のカードを使って入れたのよ。

いや、アタシのことじゃなくて、ほかの人よ。

あ、確か見ずぼらしい人たちが数人街に入ろうとして、警備員に止められたあと、入っていきましたね。

しかも警備員もご親切に、道案内までしていました。

それからダウンタウンの郊外、工場とかたくさん見なかった?

見ましたね。

あれがそうよ。

おお、なるほど、ボリバルみたいなところの政治情勢は、毎日コロコロ変わってる、貿易だけで生活必需品を賄うにはあまりにもリスクが高い。

だからこの都市は自分のライフラインを必ず自分で握る必要がある。

そしてあそこの工場で働いてる人たちは、その見ずぼらしい人たちだったってことですね。

その通り、数日前バーでチラッと聞いてみたんだけど、そこの工場で働いてる人たちの給料はとても高いらしいのよ。

だからほかの都市から遠路はるばる、戦火を潜り抜けてでもここに来て稼ぎに来る人たちはたくさんいる。

そしてこの都市で安定して暮らせるようになったら、外と比べて金持ちになったとも言えるってわけですね。

ええ、ただ連邦政府やリターニア政府の下での稼ぎとは比べ物にならないけど、それでもここでの仕事は安全性で勝ってる。

あはは、路地裏でリンチされることと戦場で死ぬことを比べても、どっちが安全かなんて言えませんよ。

話を逸らさないで。そのあと過去のニュースとか調べたんだけど、この都市の娯楽産業はボリバルでも有名だった、しかも酒類、コーヒー、砂糖に関しては、全ボリバルでトップに位置していたわ。

ボリバル全土よ、連邦政府だろうが、リターニア政府だろうが、ましてはシエルト・ボリビアンだろうが、あそこの大物たちはみんなこぞってドッソレスでこれらを買いこんでいる。

ボリバル内だけの話じゃない、アタシもよく実家でボリバル産のテキーラやコーヒーを見る、産出地がどこだったかは憶えてないけど、でもここの工場のマークだけは絶対見たことがあるわ。

警備員たちの装備も新しいし、気力に満ちていましたもんね……

つまり、娯楽業と観光業以外にも、この都市は無視できないほどの嗜好品産業をぎっちりと掌握してるってことですね。

あなたの言いたいことは分かりました、この街は表面では混乱してるように見えるが、実際基盤は非常に安定している、龍門のような秩序ある都市になれるポテンシャルをここは持ってるんですね。

面白い、小官も興味が湧いてきました。

それでよく疑い過ぎって言ってくれたわね。

スーお嬢様はさすがいい目利きをしてらっしゃる、小官みたいな無名の一兵卒なんかと比べて物にならないような慧眼をお持ちじゃないですか?だから気に留めないでくださいませ。

口だけは達者なんだから。

しかし、Missy、小官の経験に言わせると、あなたが求めてる答えはもっと簡単なものだと思いますよ。

どんな人であれ、自分の制御から超えた混乱要素を許す支配者なんてこの世にはいませんよ。


つまり、この街には強大でクレイジーな支配者がいるということです。

アタシも同じ結論よ。

この都市の市長は、カンデラ・サンチェス。

龍門とドッソレスの貿易はアタシん家も一枚噛んでるけど、あの人に関してはこちらも完全に理解しきってない、この街のこともね。

だから気になるの、一体どういう人なのか、なぜ自分の都市をこんな姿にしたのか。

じゃあ直接聞いてみたらいいじゃないですか、ご自分の正体を明かしたら、きっと手厚くもてなしてくれるはずですよ。

いやよ、言葉じゃ人を騙せても、行った事実はそうじゃないもの。

もう行きましょう、まだまだたくさん回りたいところがあるんだから。

今日は郊外にある工場を見に行きたいの、だから急ぐわよ。
(スワイヤーの歩く足音)

お待たせしました、ご注文のかき氷です。

ちょっと待ってください、Missy、かき氷来ちゃいましたよ。

まったく、あの人ったら、たまにチェンとそっくり、せっかちなんだから。

まあいい、私が頂くとしよう。

Missy、待ってくださいよ!
(ホシグマの走る足音)

……

(あの緑色の髪、それに角……ホシグマか?)

なにボーっとしてるのよ。

いや、旧友を見かけたようでな。

龍門人?どこよ?

人が多すぎて、すぐに見えなくなった。気にするな、あいつがここにいるはずもない、きっと私の見間違いだろう。

それよりお前、自分から会う時間を決めておいて、肝心な本人が現れないとはどういうことだ?

ちょっと遠回りしたのよ。とりあえず入りましょう。

ここのバーってお前があの時騒いでたところじゃないか?

今はもう私のシマよ、いいから入って。

姐さんじゃないですか、なにかご用でも?

……

ひとまず二人っきりにさせて、こいつと相談したいことがあるから。

かしこまりました!

あとウィスキーを一杯頂戴。

私は炭酸水でいい。

かしこまりました。

で、話ってなんだ。

まさかただ私と酒を飲みたいとは言わないだろうな。

試合中にあるチームを追跡した、アイツら試合中にあの住宅地に結構な量の爆弾を仕込んでたみたい。

アイツらの会話を聞くに、あと少なくとも三から四つのチームに分かれて同じことをしてるわ。

さっきと話が……

なるほど、エルネストを疑ってるんだな。

あなたは違うの?

同じだ、向こうの行動規模は小さくない、ミス・カンデラの耳に届いたのも一度っきりじゃないはずだ。

きっと誰かが情報操作を仲介しているんだろう、エルネストの疑いは小さくない、それに彼じゃなくとも、ほかにいるはずだ。

私一人だけじゃ全部確認しきれなかったけど、一個だけ爆弾を手に入れたわ。

見てみる?

……遠慮しておく。

どのチームだ?

グレイフェザー。

そこだったのか?

私も予想外だったわ。

……つまり、彼女らは組織的に、計画的にとある計画を進めているということか。

しかも爆弾まで持ち出したとなれば、もはや一般的な計画ではないな。

どうするつもり?

先にミス・カンデラに知らせたほうがいい。

本当にそれでいいの?

どういう意味だ。

まさか知らないわけじゃないでしょうね、チェン・フェイゼ、この街の煌びやかな外見がどのようにして支えられてるのかを。

ミス・カンデラはここの市長として、ここで起こってる何もかもを野放しにしてるのよ。

こんな街に、あんな人々、本当にあなたが救うに値すると思ってるの?

……爆弾を設置してる連中を見て見ぬフリをすれば、私たちはもうひと試合参加できる、見なかったことにすればいい、とでも言いたいのか。

いいえその逆よ、チェン・フェイゼ。

私はここがどんな街なのか、どう変わっていくのかなんてどうでもいい。

けど私はウェイ長官の代表としてここに来た、私が気にしてるのはウェイ長官へのイメージだけ。

だから私からすれば、初めっからミス・カンデラの委任を完遂することしか眼中にないわ。

それよりもこっちは、あなたのそのパンパンに膨れ上がった正義感が溢れ出ていずれ私と対峙するんじゃないかが心配だわ。
チェンは咄嗟に顔を上げ、真っすぐユーシャを見た。

なにが言いたい?
ユーシャも動じず、同様に真っすぐ目線を彼女に返した。

私が言いたいのは、会ったこともない人たちにあたかも感情を抱いてるように偽るのはやめなさいって言ってるのよ、チェン・フェイゼ。

あなたはこの街のいざこざに首を突っ込む資格なんてない、ましてや私を責める資格すらもね。
“パリン”とひと鳴り、拳と掌が交わさった音が静かなバーで響き渡った。
チェンの拳はユーシャの顔で紙一重に止まった、ユーシャの手にキツく防がれたのだ。

……

……
二人の顔は止水のように平静だった、しかし眼の底にあった気迫はそれぞれの決意を露にしていた。
近くにいたカジノのオーナーからすれば、二人の沈黙はまるで無形の炎が燃えてるように見えた、その炎はますます激しさを増し、いつでも周囲の人たちを巻き込めるほどであった。
彼は思わず自分がこの店を改装するにあたってどれだけの費用を費やしたか、またどこの改装費用のほうが安かったか思い出し始めたのだ。
しかし、その炎は彼が思っていた火山噴火のような炸裂を起こすことはなかった。
しばらくの沈黙の後、チェンは拳を引っ込み、ユーシャも手を引いた。

それで罪から逃れられる理由にはならん。

罪から逃れるつもりなんてない。

いつか必ずお前を逮捕してやる。

フッ。

なにを以て私を逮捕するのですか、元、龍門特別督察隊隊長の、チェン・フェイゼさん?

大義だ。

正義よりはマシに聞こえるわね、もし本当にその日が来るのなら、大人しく首を洗って待ってるわ。

ほかに何かあるか?

ないわ、あなたが何をしようがこっちは手出ししない、私は私のやり方で進めてもらうわ、用件はさっき言ったヤツだけ。

この件を知ってる人は少なければ少ないほうがいい、だがどうであれ、せめてミス・カンデラに一声かけるべきだ。

ミス・カンデラに伝えても、彼女にできることはそうないわよ。

相手の目的はまだ分からない、今直接捜査や逮捕に出るにしても、相手を驚かせるだけだわ。

それと、携帯は使わないでちょうだい。

お前に言われる必要などあると思うか?

フッ、それもそうね、サツの一番得意としてることは盗聴だもの。

どうやらもう一回やりたいらしいな。

そんな気分じゃない。

ということで、あなたはミス・カンデラに伝えるといいわ、私はまだ別件があるから。

いいだろう。

……まさかあなたと協力する日がやってくるとはね。

こっちのセリフだ。

大して力もないくせに、いつもあの見てくれを維持して誰に見せようとしてる、か……フッ。
(ノック音)

今日はもう店じまいですよ。

釣り竿を買いに来ました。

入ってくれ。

お兄ちゃん、毎日合言葉を変えないでもらえるかな、憶えるの面倒臭いんだけど。

それは無理な相談だな。

ラファエラ、警戒心を緩めちゃダメだ、前回のあの過失をただの軍備品の密輸入にでっち上げるのにどれだけ大変な思いをしたか分かるか?

もしミス・カンデラに少しでも嗅ぎつけられていたら、俺たちはとっくにゲームオーバーだったんだぞ。

やると決めたからには、最後までやり通さないと。

はぁ、わかったよ。

別に叱ってるわけじゃないんだ。お前はよくボケっとしてるけど、やるべきことはちゃんとこなしてくれてる。

俺が叱ってるのはあの事の重大さをよくわかってないバカたちだよ。

この街は愉快だよ、だが愉快だけで、どうやってボリバルで安定するって言うんだ。

でも結局私のことボケっとしてるって言ってるじゃん……

まさか違うって言うのかい、俺のかわいい妹ちゃん。

フン。

実を言うと、さっきまで後をつけられてたみたい。

本当か?

わからない、けどそんな感じする。

参加してるほかの連中にも言っておこう、普段も気を付けろって。

……いやいいや、あの連中は任務以外ならここに住んでる人たちと大差ない、調べられることもないだろう。

とにかく、任務の進捗具合はどうだ?

住宅地の爆弾設置はもう完了したよ。

見つかってない?

途中お兄ちゃんのチームの紫色した髪の毛の人に見つかったけど、お兄ちゃんの言う通り衝突はせず、回避したよ。

……相手の反応は?

向こうもつき纏ってこなかったよ。

俺のところにも来なかったし、まだ気づかれていないようだな……

いや、確信はできない、彼女はチェンさんより明らかに俺を信用してない、発覚してもあえて俺に隠してる可能性もある。

だがバレたとしても、あっちも迂闊には動けないはず……

はぁ、あの二人ったら一緒に行動してくれないから一度に二人とも監視できないんだよな、面倒くさい。
(無線音)

俺だ。
どんなご用件で。

もし市長が試合区域に対して捜査の動きを見せたら、すぐ俺の親父に知らせろ。
了解。

ふぅ、ひとまずはこれでいいか。

試合結果を見たぞ、計四十チームのうち俺たちの仲間は十二チーム、突破したのは九チーム、想定内だな。

うん、もしあの青い髪の毛のヤツが邪魔しなかったら、もう二チームぐらい片付けられたのに。

比較的あからさまな銅金を餌にほかのチームを釣って片付ける、それで俺たちのチームの突破確率を上げるなんてもとから安定した方法じゃないんだ、今のこの結果だけでも十分だよ。

第一ラウンドを突破できたのなら、第二ラウンドはほかチームの妨害に徹すればいい。

なんせ第二ラウンドはミス・カンデラの手下があちこちの近道に潜伏してるからな、元から爆弾を設置するには適さないステージだよ。

それに第二ラウンド後に船に上がったチームの中で、俺たちの身内じゃない連中は少なければ少ないほどいい、これが俺たちの第二ラウンドにあたっての目的だ、忘れてないだろうな。

もう、バカ扱いしないでってば、お兄ちゃん。

念には念を、だよ。

そうだ、せっかく来たんだ、今の内に伝えておこう、計画変更だ。

どうしたの、あの外国人二人がそんなにすごいの?

そう、あの二人、予想以上に手強くてね。

あの二人も片付ける?

いやいい。

一つ目、コストに対してリターンが低すぎる。

二つ目……彼女たちはいい人だ。

いい人?

そう、いい人だ。

もし今彼女らと知り合っていなかったら、説得してまで俺たちの味方につけさせたいと思うほどにね。

してくれるの?

さあな。だがもう今じゃ不可能だ。

だから彼女らが船に上がったら親父がリスクに晒されると俺は判断した、なるべく余計なことを起こして彼女らを引き留める必要がある。

結果から言うと、俺は船に上がれないかもしれない、そん時は陸からお前たちをサポートするよ。

私も手伝おうか?

必要になったら声をかけるよ、とりあえず今はそれだけ知っていればいい。

わかった。

少し軽い話でもしようか。

そういえば、ラファエラ、お前もこの街で何年も過ごしてきたが、ドッソレスって名前の由来はもう知ってるか?

うん?聞いたことないかな……でも、双日の町って言われてるんだし、二つの太陽からなんじゃないかな。

その通り。じゃあもういっちょ、二つの太陽ってどーれだ?

うーん……空にある太陽?

これは分かりやすいね、顔を上げれば見えるしな。

二つ目は……水に映った太陽?

いいね、てっきり分からないって言うと思ってたよ。

この街の海は、空にある太陽を懐に収めたんだ。

だってパパから聞いたことあるもん。

じゃあ、この街はもう少しでトレッソレス、三つ日の町って名前になりそうなったことは知ってるかな?

え?三つ日の町?

そう、もういっちょ考えてみて、三つ目の太陽ってなんだろう?

三つ目……

もしかして市長?

あははは、確かにそういう説もあるね、ミス・カンデラはこの街の太陽みたいな人だ、この街がこうでいられるのも、彼女のおかげだしね。

けど外れだ。

え?違うの?

市長はすごくプライドが高い人だけど、太陽と比べたりはしない、太陽の上に自分を置いてるからね。

あの人が自分とほか二つの太陽を同列に並べることなんてすると思う?三つの太陽はすべて私のものだって、彼女は言うだろうね。

じゃあ三つ目の太陽ってなんなの?

答えは簡単だよ、お前の親父の船にある。

あの人は私の養父、お兄ちゃんのお父さんでしょ……え、もしかしてあの純金でできたかわいい彫像のこと?

あはは、正解。あれがこの街の三つ目の太陽だ。

噂によると、みんなあの手この手でミス・カンデラを説得させたらしいよ。

……

なんかつまんないー。

この街に面白いものなんてあるわけないだろ。

でも、お兄ちゃんはここの生活を満喫してるように見えるけど。

満喫してるように見えるの?

違うの?

ここ数年市長の手伝いをしてて楽しそうに見えるけど。

もし俺がそうだとしたら、なんでまた親父に協力なんかしたんだよ?

さあ。私はずっとしないと思ってたよ。

……はぁ、お前の直感はいつも当たるもんだな。

さっきボケっとしてるって言ったくせに。

あははは。

まあとにかく、試合の準備をしてきな。