なんとチームLUNG wRATh、大会側が配置した伏兵たちに包囲されてしまった。
混戦のさなか、エルネスト選手は殿を務め、彼のキーを受け取った二人はその場を後にして先へ進んだ。
エルネスト選手の実力もそこそこだが、敵のほうは多勢に無勢、倒されるのも時間の問題!
しかし逆に二人のほうはというと、包囲網を突破したが、前方は依然と伏兵だらけだ、見事脱出することはできるのだろうか?
おや?彼女らが道路横にある店のドアをこじ開けて入っていったぞ!
ここは……
エルネストが経営してる店ですね。
なるほど、どうやらエルネスト選手がキーを二人に渡したのは自分の店に避難させるためだったようだ。
しかし、こんな事で逃げ切れるのだろうか?
ちょっと待った、映像、少しプレイバック!
なるほど、別の角度で見ると一目瞭然だ、この店には裏口があったんだ。
そしてその裏口は大通りに通じてる小道があるのが見てわかる、しかし妨害してくるほかの連中に道の在処はバレていない!
これはチームLUNG wRAThのチャンスになるか、それとも――
(爆発音)
D.D.D.がまだ実況していた間に、モニターの中で、エルネストの武器屋から大きな爆発音が響いた。
こ、ここここれは一体なにが起こったのだろうか?
ミス・カンデラ、あれはあなたが設置した罠なんですか?
私が仮に設置していたら、店が一つ吹き飛ぶだけじゃ収まりませんよ。
では……これはまさかエルネスト選手がこうすると知ったほかのチームたちが仕掛けた罠なのだろうか!?
もしそうだとしたら、チームLUNG wRAThは完璧にハメられたとも言える!
チームLUNG wRATh、ここで万事休すか!
ひどい……チェンさんもリンさんも大丈夫でしょうか?
大丈夫です、二人ともああいう環境に長くつるんでましたから、あの程度ならどうってことありませんよ。
ただまあ……こういう大会ですからなにか仕掛けてきてもおかしいとは思いませんが、それにしちゃ狙われ過ぎですね。
チェンは誰のご厄介を買ってしまったのでしょうかね。
……チッ、こいつ、なんでだ、全然敵わねぇ。
あれ……あっちって確かチェンお姉さんたちが向かった方向だよね。
ちょっと様子見てこよっと。
(ミヅキの走る足音)
……フェイゼ、生きてる?
ゴホッ、ゴホッ、死ぬわけないだろ。
ならよかった。ロードバイクは?
もうない。
そっちは?
なんとか。
どうやら、相手は今のところ私たちを殺すつもりはないらしいわね。
ただ……
お生憎様、出口が塞がれてしまったわ。
そりゃお生憎様だな。
どうする?
とにかくここから脱出する、どうもこうもないだろ。
誰がやったのかって、聞いてるのよ。
……お互いいい直感をしているようだな。
そうね。エルネストもそろそろ隠す気なくなってるみたい。
けど変だとは思わないの?もし私が彼だったら、こんなことしないわ。
絶体絶命って人じゃないとこんな自分の墓穴を掘る方法なんてしないもの。
であれば、彼じゃない可能性があるな。
それはありえないわ。
なら、自分はもう後がないと私たちに思い込ませているのかもな。
……
ユーシャは眉をチョンっと弾かせ、会話を続けなかった。
そうだ、ミス・カンデラにこのことはもう伝えた?
もちろん。
なんて言った?
一切手は出さない……ですか。
ええ、チェンさん、あなたは賢い、だから分かるはずよ。
今こちらから爆弾を捜査しに行ったら、黒幕に私はそいつらの陰謀を察知したって教えてるようなものじゃない?
わかりました。
いいのよ、チェンさん、あなたもリンさんもよく頑張ってくれた。
正直に言うと私、あなたたちが何か調べ出してくれるとは最初から微塵も期待していなかったのよ、あははは。
なんとも思っていないようですね?
もちろんよ、チェンさん。
だからあなたもあんまり気に留めなくていいのよ。
あなたもリンさんもグランプリで存分に発揮してくれてる、こんなことを考えるより、チャンピオンでも狙ってみたらどうかしら、そしたらウェイも鼻が高くなるわよ、あははは。
考えておきます。
お前も想像つくだろ。
そうね。
そんなことより、どうやって脱出する?
特別督察隊隊長は任務に出向いた時、怒りのあまり家をみじん斬りにできると聞いたことがあるけど、一つ見せてくれないかしら?
……家ならなんでも斬れるわけではない。この家屋は明らかに非常に硬い建築材料で建てられている。
お前の砂を操るアーツでどかすことはできないのか?
父さんじゃあるまいし、こうも塞がれちゃあ、アーツを使っても時間がかかるわよ。
ならやっぱり私がやってみよう。
いいえ結構。ほかの方法を思いついたから。
なんだ?
これなんだと思う?
……爆弾?
私が第一ラウンドで見つけた爆弾のことまだ憶えてる?
ミス・カンデラに大規模捜査をさせることは叶わなかったけど、私が接収した舎弟たちに泥棒を装ってもらって住宅地で可能な限り盗ってきてくれたわ。
泥棒?
そ、泥棒。警備員にちょーっと金を渡して、大きな騒ぎを起こさないかぎり、誰も構って来やしないわ。
……
リン・ユーシャ。
なに。
道は違えど、私はずっとお前とリンさんを尊敬していた。
スラム街はお前たちなしでは支えきれない、その点は私も理解している。
だからなに?
罪を興じることは決して許さん。
……チェン・フェイゼ、自分に罪を被せようとする人なんてこの世にはいないのよ。
どきなさい、爆弾を設置するから。