
あれ、番組の内部回線が繋がらないぞ?

これって……ハッキングされた?
(無線音)

十年前、私は連邦政府とツァインゼッセ政府を追い出せば、ボリバルは平和を獲得すると信じていた。

だから私はシエルト・ボリビアンのために命を賭けて戦い続けた。

だがその結果、三千もいた私の仲間たちは私のせいで死んでしまった、もし私の兄が命を引き換えにしてくれなければ、私もあの日に銃殺されていただろう。

その日から、私は理解したのだ。

連邦政府も、ツァインゼッセ政府の貴族どもも、シエルト・ボリビアンたちも、本当にボリバルを救おうと考えてるヤツなど誰もいなかった、ヤツらは戦争がしたいだけだったのだ。

ヤツらがいくら戦おうと、ボリバルは救われないのだと。

だから私は逃げた、この都市に逃げて来た。

それから、この救いようがない国に、こんな救いようがない都市があることも知った。

カンデラ・サンチェスは、ヤツら以上に救いようのない人だ。

ヤツはこの救いようのない地にボリバルにある全都市を足しても腐りきってる都市を築き上げた。

ヤツはその中で、自分の傍に引きずり込んだほかの連中と一緒に悦に浸かっている。

誰もがヤツに引きずり込まれ、なに不自由なく真っ当な日々を送っている。

この都市の下でどれだけ悪臭をした人の血が流れ、どれだけ腐った肉を食らう飢えた獣が飼っているのかまったく理解していないにも関わらずにだ。

ヤツはこの地に住まう人々の血肉を啜りながら生きている、彼らの生死に微塵の関心も寄せずに。

こんなクソ食らえな都市も、ここで悦に耽っている貴様らも死ぬべきだ!!!

グランプリはもうじき終わる。

そしたら私が、この都市を奪う。

誰もこの国を救わないと言うのであれば、私が救う。

……

君の父親が今回の首謀者だったんだな。

私たちがなにかを察知するかもしれないと気付いた時、君は私たちの目を君自身に向かわせることを選んだ。

そうすれば、私たちが本当のことを暴いたとしても、君は後ろにいる人のための時間稼ぎになれる。

はい。これで俺は勝ったとは言いませんよ、チェンさん、元からフェアな勝負じゃないんですから。

あなたたちは来るのが遅すぎた、ミス・カンデラの委託を受けるには忙しすぎたのです。

最後の善意です、チェンさん、リンさんと一緒に投降してください。

もし手を引いてくれるのであれば、絶対お二人に危害を加えないと約束します。

ここで起こったことはあなたたちと無関係だ、こんな白も黒もないことに首を突っ込む必要なんてないんですよ。

それはできない。

この船は俺たちがすでに占拠しました、反抗するのであれば、あなたもリンさんも死んじゃいますよ。

私の古い馴染がこんなことを言ってくれた、一度しこたま殴られないと、昔のそいつみたいに、私は自分の執念がいかに幼稚なただの妄執に過ぎないことに気付かないんだとな。

今でもはっきりと分かってないんだ、どれが貫いていい執念で、どれが現実を見ない妄執なのかを。

だがあいつも分かってると思う、そんなことで諦めるなんて、チェン・フェイゼじゃないとな。

さあかかってこい、こっちは急いでるんだ。

なあ、あれってパンチョさんだったよな?なにを言ってたんだ?

さあ、なにかの特別な演出なんじゃない?
(爆発音)

なんだこの爆発音は!?

第一ラウンドの地区からみたい!ほら見て、あそこに煙が!

おいおいおい、ウソだろ、パンチョさんマジでおっ始めるつもりか!?

ミス・カンデラ、市内と郊外で混乱を引き起こしてる不明勢力が多数出現しました。

……やれやれ、そう来たか、パンチョ。

ミス・カンデラ、安全な場所に避難してください。

避難?何を言う、ここは一等席よ、どこにも行かないわ。

市内に突然現れた連中は適当にあしらっておけばいい、どうせ彼らの目的は私なんだから。

あ、住民たちの避難はしなさいね、ただ、先に市境を封鎖して、彼らには自分の住所に戻ってもらいましょう。

それからそうねぇ、スタッフを保護してちょうだい。

ただし。

パーティの準備をさせておいて、グランプリの中継放送もね。

彼らをしっかり守るのよ、私のグランプリを台無しにしないように、わかった?

承知致しました。

あそうそう、新しいドローンも調達しておいて、船にあるヤツはたぶん壊されちゃったから、こんな面白い出来事、見逃すわけにはいかないでしょ?

ちょっと、勘弁してくださいよ、こっちはただ休暇しに来ただけなんですよ、なんでこんな目に遭わなきゃならないんですか?

まあ、ボリバルらしいっちゃらしいですけど。

文句言ってないで、なんとか考えなさい。

Missy、今の小官たちはただの観光客なんですよ、首を突っ込むべきじゃありません。

ここにチェンがいても、同じことが言えるわけ?

そりゃ言えますよ、ただ答えならあなたも知っての通りですけど。

ならアタシの答えも一緒よ。

わかりました、今の小官が言えるのは、反対はしません。

ロドスは……チッ、シデロカさんがちょうど飲み物を買いに行っちゃってますね、ちょっと見てきます。

それよりあの二人が今まだ船に残ってるのよ、無関心を装って逃げるわけないしょ!

小官は別にあの二人のことは心配してませんけどね。

それに、今の小官たちは部外者です、他人事のように思えても無理はありません、ただこうした事件が起こってるんですから、チェンとリンさんが何も把握していないとは思えません。

今は船の状況が分からないんですから、チェンたちを助けるにはあまり現実的ではありません、それよりも小官たちの手が及ぶことをしましょう。

……

……

チッ、こっちが両手で飲み物を持ってる時に奇襲してくるなんて。

(こんなことが起こるなんて想定外だった。)

(相手は組織的のようだ、ビーチも今じゃ混乱状態に陥ってる。)

(武器は今手元にない、戦いづらいな、先にホシグマさんたちと合流するか……)

一斉にかかるぞ。

わかった。

チッ!
(ホシグマの走る足音)

シデロカさん!
(ホシグマが観光客を倒す音)

ありがとうございます、ホシグマさん。

なんの。それより、あなた今隊長ですよね、ならさっきの状況も耳に届いていると思います、この状況、ロドスはどうするつもりですか?

今の私は休暇中ですので、ただの観光客に過ぎません、手を貸しても何も言われないと思いますよ。

あはは、そう言うと思いましたよ、では一緒に行きましょう。

そうだ。

レッド、今どこにいるの?
(無線音)

わからない。シデロカ、人が多い、血の匂いもする。

わかった。じゃあ今すぐビーチに来て。

エイヤフィヤトラさんとススーロさんを守ってほしいんだ。

わかった。

ん?

どうしました?

あそこにいる連中……撤退してるように見えませんね……

彼らが向かってる方向って……市長さんのところ!?

行きましょう、シデロカさん、あいつらを止めないと!