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【明日方舟】メインストーリー9章14話「風にはためく旗」行動前

5.57p.m. 天気/雨
モナハン町 第十区付近の空き家

"リーダー"
重症感染者

……うっ……

Outcast
Outcast

目が覚めたか。

Outcast
Outcast

君の心肺がひどく損傷してる、呼吸するだけでも激しい痛みを伴うはずだ、あまり喋らないほうがいい。

"リーダー"
重症感染者

ゴホッ、ゴホッゴホッ……

Outcast
Outcast

腹部もほとんど切り裂かれてるな……予想よりも傷がひどい。なぜそれでまだ生きられてるんだ?

Outcast
Outcast

そうか……私は医師専門ではないが、各種族の生理的な構造には少し理解があってね。

Outcast
Outcast

私の仲間が君をヴィーヴルと言っていたが、悪く思わないでくれ、彼はまだ若すぎるからね、君たちの先祖がこの大地を跋扈する巨大な姿を見たことがないんだ。

"リーダー"
重症感染者

ぐあッ――!

Outcast
Outcast

安静にしておけ、身体になんのメリットもないよ。

Outcast
Outcast

君のアーツを見たことがある、だから少し細工をしておいた、この部屋に火を点けようと思っても、そう簡単には燃えないさ。

"リーダー"
重症感染者

……

Outcast
Outcast

面白い表情をするね。私に攻撃できないと知った途端、気が楽になったのかい?

Outcast
Outcast

君の自衛本能よりもすんなりとしている――それが君の奥底に眠っていた本当の感情だね?

"リーダー"
重症感染者

違う……

Outcast
Outcast

どうやら否定から入ることが習慣化してるようだ。

Outcast
Outcast

なりたくもない人を無理やり演じさせられた、君の苦しみが見て取れるよ。

Outcast
Outcast

誰が君を利用してるんだい?八方美人な協力者か、塔の上にいる陰影か、それとも復国を望む遺民たちか?

Outcast
Outcast

いや、まさかね。操り人形によって完璧に率いられてる部隊が、ロンデニウムの監視の下でこうも迅速に躍起できるはずもない。

Outcast
Outcast

――

Outcast
Outcast

君は……表に立たされた影なんだね。

Outcast
Outcast

それってつまり、君を糸で引いてる人物は、君と全く同じ血が流れてるってことかい?

"リーダー"
重症感染者

やめろ……

Outcast
Outcast

これ以上話してほしくないんだね?その人のことを話しただけで、君はそれほどまでに恐れているのかい?

Outcast
Outcast

それもそうか、君だけじゃない、このヴィクトリアも……いや、この大地全土がそれを恐れているからね。

Outcast
Outcast

その人はきっと君とさほど歳の差はないのだろう、しかしこの短時間の間、その人は自分を利用した力を可能な限り手中に収めた。

Outcast
Outcast

となると、予想よりも早く変化が訪れてくるはず……こちらもはやく準備を整えねば。

"リーダー"
重症感染者

お前たちは……ラテラー……ノ……

Outcast
Outcast

私の動機を知る必要なんてないよ。

Outcast
Outcast

君を助けると決めた時、君の正体が何であろうと私は気にしていなかった、今わかったよ、この考えはこれからも変わらないさ。

"リーダー"
重症感染者

お前……は……

Outcast
Outcast

私の正体なんて知らないほうが身のためだよ。

Outcast
Outcast

君が回復したあと、この場所から離れた際も、どうか君を助けた人物のことを生涯誰にも聞かないでおくれ。

Outcast
Outcast

私はここで君を死なせたりはしない、それだけ知っていれば十分だ。

"リーダー"
重症感染者

……

"リーダー"
重症感染者

わかっ……ありが……

Outcast
Outcast

まだ礼を言うにははやい。私にできることは傷口の手当と止血ぐらいだからね。

Outcast
Outcast

君を傷つけたのは最強の感染性を持つ活性源石だ、大量の源石粒子が傷口からすでに君の血液循環機能に入り込んでいる。

Outcast
Outcast

遮断剤を打ってやったが、それでも君の内臓と皮膚で起こる源石結晶の形成を止めることはできないだろう。

Outcast
Outcast

君はもうじき再び高熱の中で失神する、いいことだ、少なくとも急性発作によって生じる内側からくる激痛を軽減してくれる。

Outcast
Outcast

無意識に吐血もするかもしれないから、なるべく君の頭を高い位置に置いていくよ、自分の吐瀉物で窒息しないようにね。

"リーダー"
重症感染者

……うっ……うん……

Outcast
Outcast

君が受ける苦しみはまだまだこれからだ。今後君はもう過去の生活には戻れなくなる。鉱石病は徹底的に君の運命を変えてしまった。

Outcast
Outcast

君に付き添ってきた人たちは君から離れ、さらには敵視してきたり、唾棄してくるかもしれない。君はもはや自分の戦士を導きけなくなるかもしれないし、同胞からも受け入れなくなるかもしれない。

"リーダー"
重症感染者

……ふッ……

Outcast
Outcast

おや?またその表情を見せてくれたね。鉱石病患者になってしまった未来は君を絶望させず、むしろ釈然とさせた?

Outcast
Outcast

なるほどね。いくら砲撃が突拍子もなく猛烈なものだったとしても、一匹の若き赤い龍を無抵抗のまま地面に這いつくばせる事は出来ないという訳だ。

Outcast
Outcast

君は本来の運命から逃れることを望んでいたんだね、代償を支払うことになろうとも。

Outcast
Outcast

どうやら私は間違っていたな――

Outcast
Outcast

君は君の同族ほど好戦的でない、だが種族が持つ執着と勇気をまだ備えている。

"リーダー"
重症感染者

ああ……!

Outcast
Outcast

眠るといい、もう無理するな。私が傍で見守ってやるから。

"リーダー"
重症感染者

あぶ……

"リーダー"
重症感染者

……ない……

"リーダー"
重症感染者

…………

(重症感染者が倒れる)

Outcast
Outcast

君を守っていることが危ないって?気絶する直前、君はどうにかしてそれを私に伝えようと?

Outcast
Outcast

――

Outcast
Outcast

そうだね。ここはいささか静かすぎる。

Outcast
Outcast

ヤツらにとって君は、単なる捨て駒ではないのだろう。どうやら、計画を変えなければいけないね。

Outcast
Outcast

リスキーだが、ロドスには君が持ってる情報が必要だ……ケルシーなら理解してくれる。

ダブリン兵
ダブリン兵

……ご報告します、未だ見つかりません。

(ダブリン兵が殴られる)

"バーグラー"
“バーグラー”

この役立たずが!

"バーグラー"
“バーグラー”

人一人も見失うとは、とんだ使えない連中だな!

ダブリン兵
ダブリン兵

も、申し訳ありません!

“アーソニスト”
“アーソニスト”

彼女が怪我で倒れているのを見たのは確かなんだね?

ダブリン兵
ダブリン兵

はい……私の部下の哨兵がこの目で見ました、砲弾が落ちてきた時、リーダーはまだ午前に刑を執行した場所の近くに……

"バーグラー"
“バーグラー”

てめぇはあの※ヴィクトリアスラング※がリーダーだってことを知っていてそのザマか!?

"バーグラー"
“バーグラー”

俺たちに加わった時に言ったことを忘れたのか?敵が押し寄せてた途端に自分だけ真っ先に逃げ失せやがって。

ダブリン兵
ダブリン兵

て、敵の動きがはやすぎました、こちらではまったく反応しきれず……

ダブリン兵
ダブリン兵

それと、リーダーに命令されていたんです、一人で静かになりたいから、誰も近づくなと……

"バーグラー"
“バーグラー”

じゃあ俺が死ねと命じたらてめぇは死んでくれるのかよ?

"バーグラー"
“バーグラー”

この※ヴィクトリアスラング※穀潰しが!

“アーソニスト”
“アーソニスト”

そこまでにしろ、この場に殴り殺してもなんの意味もない。

“アーソニスト”
“アーソニスト”

我々が確認すべきことは彼女の生死と、居場所だ。

"バーグラー"
“トキシコロジスト”

……どけ……私が……やる……

“アーソニスト”
“アーソニスト”

チッ、あまり派手にやりすぎるなよ。

"バーグラー"
トキシコロジスト

フッ……

ダブリン兵
ダブリン兵

ちょ、長官!お許しください、うっ……やめ……

ダブリン兵
ダブリン兵

なん……だ……ぐあッ!おえっ――

ダブリン兵
ダブリン兵

は……ははは……

"バーグラー"
トキシコロジスト

彼女は……どこだ……

ダブリン兵
ダブリン兵

倒れた!倒れた!あははははは!倒れてた!爆発で吹っ飛んだ!死んだんだ!

ダブリン兵
ダブリン兵

死ん……

(ダブリン兵が倒れる)

“アーソニスト”
“アーソニスト”

……派手にやるなと言ったはずだが?

"バーグラー"
トキシコロジスト

量が……少し多かった……憶えて……おこう……

"バーグラー"
“バーグラー”

※ヴィクトリアスラング※気色悪ぃな、これから人で薬を試すような変態野郎のてめぇから距離を置かねぇと。

“アーソニスト”
“アーソニスト”

彼がウソを言ってなかったことを知れたのは幸いだったな。

“アーソニスト”
“アーソニスト”

彼女は先ほどまでここで倒れていた、しかも重傷を負ってるらしい、致命傷にもなり得るほどの傷だ。

"バーグラー"
“バーグラー”

そんな傷を負ったヤツがどこに行けるってんだよ?爆弾で地面に埋もれちまったってか?

“アーソニスト”
“アーソニスト”

もう一度街をまるごと吹っ飛ばしても私は構わんよ。

"バーグラー"
“バーグラー”

……てめぇ吹っ飛ばすならよ、せめて一声かけてからやれよな!

(“アカウンタント”が近寄ってくる)

"バーグラー"
“アカウンタント”

吹っ飛ばす?誰がそんなこと言ったんです?

“アーソニスト”
“アーソニスト”

一つの街どころか、たとえ都市を丸焼きにしてでも、人を見つけ出さなければならん。

"バーグラー"
“アカウンタント”

我々の中にあなたのようなヴィクトリア軍同様に愚かしい人がいるからこそ、この都市の占領価値も急速に下がりつつあるんですよ。

“アーソニスト”
“アーソニスト”

じゃあどうしろと?

“アーソニスト”
“アーソニスト”

もし彼女が我々の監視下で姿をくらましたことを首領に知られれば、誰がその責任を背負うんだ?

"オラター"
“オラター”

首領の怒りの炎だけ唯一恐るるに足りるものではない。

"オラター"
“オラター”

みなも考えてみよ、我ら多くの兵士と協力者の目に映る彼女は、ダブリンそのものだ。

"オラター"
“オラター”

仮に彼女が我々の手から逃れたとしよう、それで彼女を得た者が敵だろうと悪巧みを考えてる“友”だろうと、我々がむごい結果を迎えることに変わりはない。

"バーグラー"
“バーグラー”

※ヴィクトリアスラング※思い出したぜ、あの女……俺たちが考えてる策も把握してやがった!

“アーソニスト”
“アーソニスト”

……

“アーソニスト”
“アーソニスト”

聞くが、あの二人の女……彼女たちはこの情報をキャッチしてると思うか?

"バーグラー"
“アカウンタント”

あの二人なら会議が終わった後にいなくなりましたよ、おそらく情報はまだ耳に届いていないかと。

"バーグラー"
“バーグラー”

マンドレイクは一番あいつを嫌ってやがるんだ、知ったとしても構うはずがねぇ。

“アーソニスト”
“アーソニスト”

アヘモニー……彼女は本当にこちら側の人間なのか?

"オラター"
“オラター”

言葉に気を付けたまえ、我々はみな首領のお傍に立たれている。

"バーグラー"
“バーグラー”

なんとでも言え、アヘモニーに手を出すってんなら勝手にやってろ、マンドレイクはいい女だ、そいつまで巻き込むんじゃねぇぞ。

"オラター"
“オラター”

そんなことするわけがないだろ、わが友よ?彼女も我々と密にある良き戦友だ。我々と同じく、彼女も首領の前で才と忠義を示したいと望んでいる。

"バーグラー"
“アカウンタント”

アヘモニーがマンドレイクに何を話したかは知りませんが、急にマンドレイクが彼女に対して従順になりましてね、たいそう嬉しそうでしたよ、何かいいことでもあったんでしょうか。

“アーソニスト”
“アーソニスト”

通信施設を占領しに行っただけだ、次の都市を慌てて攻略するよりは確実だろ?

"バーグラー"
“アカウンタント”

……首領は今になっても我々の計画に賛同してくださらないですね。

"オラター"
“オラター”

我々に過ちを犯してないことを証明できる限り、あの方の賛同を得られる機会ならいくらでもある。

"バーグラー"
“バーグラー”

ってことは、人探しは続行ってことか?

"オラター"
“オラター”

町をひっくり返してでも見つけ出すんだ。

"バーグラー"
“バーグラー”

わぁったよ。ならグダグダ言ってねぇで、捜索するぞ。

"バーグラー"
“アカウンタント”

お待ちください、先に“プリズナー”を起こしに行きましょう。

"バーグラー"
“バーグラー”

あ?俺たち五人もいれば十分だろ、まだ足りねぇってか?

"バーグラー"
“アカウンタント”

私たちの約束を忘れないで頂きたい、いかなる功績も必ず平等で分配されなければいけません。

"バーグラー"
“バーグラー”

……なんなんだよてめぇ、お仲間すらお会計の項目かよ。

"バーグラー"
“バーグラー”

そんなに知られたくないってんなら、この情報を知ってる下っ端たちはどう処理すんだよ?

"オラター"
“オラター”

もちろん連れて行く、なにせ、人探しだ、人手は多いに越したことはない。

"バーグラー"
“バーグラー”

見つかったあとは……

"オラター"
“オラター”

どうするかはみな分かってるはずだ。

"オラター"
“オラター”

何人たりともダブリンから逃れることはできん――

"オラター"
“オラター”

ダブリンの秘密を垣間見ることも、な。

ジェニー
ジェニー

この包帯はもう処分しないと――

志願者の青年
志願者の青年

でもそれもう俺が洗ったヤツだが……

ジェニー
ジェニー

洗っても無駄なんだよ、この箱にある物資はもう地上にある源石に汚染されてる、粉塵が完璧に除去できた保証なんてできない。

志願者の青年
志願者の青年

はぁ、ジェニー、あんたの言ってることは正しいけどよ、でもマジで今はなんも足りてないんだ。

志願者の青年
志願者の青年

あっちを見てみろ、また何人かひどい怪我を負った人が運び込まれちまってる……

ジェニー
ジェニー

あの人たちって……

志願者の青年
志願者の青年

そいつらを知ってるのか?

ジェニー
ジェニー

……うん、昔に……ちょっとね。

ジェニー
ジェニー

でも彼らはきっと私を見たくもないんだと思う。

ジェニー
ジェニー

彼らの手当は君に任せるよ、私は診療所を見てくる、もしかしたらまだ物資が見つかるかもしれないし。

志願者の青年
志願者の青年

ジェニー、見ろ、誰か来た!

(ダブリン兵が駆け寄ってくる)

ダブリン兵
ダブリン兵

そこをどけ!

ジェニー
ジェニー

…………

志願者の青年
志願者の青年

旦那、俺たちを助けにきたんですかい?

ダブリン兵
ダブリン兵

邪魔をするな。

悲しむ女性
悲しむ女性

待って、あなた……ローナン?

ダブリン兵
ダブリン兵

……

ダブリン兵
ダブリン兵

隈なく探せ、どこも漏らすんじゃないぞ!いいか、この近くは路地が多い、人が隠れるには絶好な場所だからな!

悲しむ女性
悲しむ女性

ローナン、あなた何やってるの?私たちよ、服装を着替えたら近所や友だちに赤の他人のフリをしちゃってどうしたの?

ダブリン兵
ダブリン兵

……俺にはまだ重要な任務があるんだ、これ以上俺を引っ張ってグダグダ言ってると、手を上げるぞ!

悲しむ女性
悲しむ女性

クレイグが怪我をしたの、お願い手を貸して、この子がずっとあなたを手伝ってあげたことに免じて……

ダブリン兵
ダブリン兵

訳の分からんことを言ってるんじゃないぞ!?

(ダブリン兵が悲しむ女性を突き倒す)

悲しむ女性
悲しむ女性

キャッ……うぅ……

ジェニー
ジェニー

(彼女の背中、ひどい怪我をしてる……)

ジェニー
ジェニー

(それに、彼女の子供、クレイグくん……頭も傷を負ってる。)

ジェニー
ジェニー

(はやく止血してあげないといけない、でも私は彼女らから嫌われてる……)

ダブリン兵
ダブリン兵

見つかったか?

ダブリン兵
ダブリン兵

本当にそれらしい人間は隠れていないんだな?

ジェニー
ジェニー

(人を探してる?)

ダブリン兵
ダブリン兵

……いいや、ダメだ、ここはゴチャゴチャと人でごった返している、もし俺たちが去ったら、すぐにまた潜り込まれるだろう、それでは示しがつかん。

ジェニー
ジェニー

(もしかして……Outcastさんが助けに行った人を探してる?)

ジェニー
ジェニー

(それじゃ彼女が危ない……)

ジェニー
ジェニー

(私もここを離れないと。)

ダブリン兵
ダブリン兵

おい、お前たち、立て、全員ここから移動するんだ!

志願者の青年
志願者の青年

旦那、負傷者が多すぎます、みんな動けそうにありませんよ……

ダブリン兵
ダブリン兵

動けなくとも動くんだよ!

ダブリン兵
ダブリン兵

誰か、この鉱石病患者どもを全員この街から放り出すんだ!こいつらが爆発しないように気を付けろよ、外にある源石結晶塊よりもおっかないんだからな!

ダブリン兵
ダブリン兵

たとえば、ここにいる顔中血まみれのガキとかがそうだ――

クレイグ
クレイグ

うぅ……あがッ……お母……さん……

悲しむ女性
悲しむ女性

クレイグ、クレイグッ!やめて、その子を連れて行かないで、お願いッ!

志願者の青年
志願者の青年

あんた、手を貸さないどころか、ここにいる人らを殺そうってのか?

ダブリン兵
ダブリン兵

人聞きの悪いことを言うな?みんなタラト人なんだろ、ならタラト人のために少しぐらい犠牲になったっていいじゃないか?

志願者の青年
志願者の青年

ローナン、この前もそんなことを言ったから、俺たちはシアーシャを失ったんだぞ!

ジェニー
ジェニー

(……シアーシャ!?)

ジェニー
ジェニー

(あの人が……あいつがシアーシャを売った……)

ジェニー
ジェニー

(それからあいつらは彼女を……彼女を……)

ジェニー
ジェニー

(あいつはシアーシャの命と引き換えにあの衣装に袖を通したのね……!)

ダブリン兵
ダブリン兵

あいつは俺たちの信頼を裏切ったからああなったんだ……死んで当然だ!

ダブリン兵
ダブリン兵

首領の偉大さと抗う意味も知らない人間なんざ、相応しい結末など一つしかない――もし協力しないのなら、今度はお前らの番だ!

ジェニー
ジェニー

……もういい。

志願者の青年
志願者の青年

ジェニー?あんた……もう行くんじゃなかったのか?

ダブリン兵
ダブリン兵

誰だお前は?いや待て、見覚えがあるぞ……タラト人ではないな?

ジェニー
ジェニー

もうこれ以上喋らないで。

ジェニー
ジェニー

そんなことを軽々しく口にしないで。他人に代わって犠牲の決断を下せる人間なんていないんだよ。

ダブリン兵
ダブリン兵

お前手に何を持って……旗!?

ダブリン兵
ダブリン兵

お、お前はヴィクトリア軍人!

ジェニー
ジェニー

……ヴィクトリア軍人?

ジェニー
ジェニー

……

ジェニー
ジェニー

いいえ、もう違うわ。

ジェニー
ジェニー

ただ、もしここにいる無関係な命を踏みにじろうとするのであれば、私はあなたの敵になる。

ダブリン兵
ダブリン兵

……無関係だと?こいつらが何をしたかも分かってないくせに、よく無関係だと言えたもんだな?

ダブリン兵
ダブリン兵

このガキも、ここにいる連中も……キレイな手をしてる人間がいると思うか?

ジェニー
ジェニー

じゃあ……あなたはどうなの?

ジェニー
ジェニー

あなたは自分の同胞を利用してその地位を手に入れた途端、態度を一変させここの人たちを逆に虐げに来た……誰があなた裁いてくれるの?

ダブリン兵
ダブリン兵

お前の大義名分など知ったこっちゃない、誰に見せびらかしてるんだ?おい、さっさとこいつを追い出せ!それとこのヴィクトリア軍の逃亡兵と一緒につるんでる感染者だ、全員囲め、こいつらは処分されるべき人間だからな!

悲しむ女性
悲しむ女性

お願い、助けて、助けて……

(ジェニーが剣を振りかざす)

ジェニー
ジェニー

これ以上進ませない。

ダブリン兵
ダブリン兵

なんのつもりだ?そこをどけ!

ダブリン兵
ダブリン兵

どこに行ってもその旗を持ってるということは、大して能のない兵なんだろうな?

ジェニー
ジェニー

私に能があってもなくても、これ以上の悪は許さない。

ダブリン兵
ダブリン兵

頭おかしいんじゃないのか?お前はこいつらの何なんだ?こいつらに利用されることを甘んじて受け入れてんのか?そこまでバカなのかお前は?

ジェニー
ジェニー

私は……

クレイグ
クレイグ

……うっ……がはッ……

ジェニー
ジェニー

ええ、私はタラト語を話せない。

ジェニー
ジェニー

だからあなたたちが普段から過ごしてきた暮らしを本当の意味で体験することはできない。

ジェニー
ジェニー

今の私は鉱石病にも罹っていない。

ジェニー
ジェニー

でも……

ジェニー
ジェニー

この二年余り、私は毎日あなたたちの街を駆け巡ってきた。

ジェニー
ジェニー

あなたたちの泣き声を、あなたたちの笑い声を聞いてきた。

ジェニー
ジェニー

ずっとはっきりしていたよ、私たちはみんな同じ、生きた人間なんだって。

ジェニー
ジェニー

人である以上、間違いは必ず起こす。そして間違いを犯した人は、止めなければならない、裁かれなければならない、良心の呵責に苛まれなければならない――

ジェニー
ジェニー

けど、その人の運命を決める人も、決して恩義を忘れた悪党に成り下がってはならない。

悲しむ女性
悲しむ女性

あなた……私たちを守ってくれるの?私たちが憎くないの?

ジェニー
ジェニー

……ちっとも憎くないと言えば……ウソになる。

ジェニー
ジェニー

けどもう目を背いたりはしない……私たちの間に確固たる隔たりがあることに対して。クレイグくんが過ちを犯したことも事実、どんな悪だろうと私は庇うつもりはない。

ジェニー
ジェニー

けどある人から教わった――目の前の悪だけは、止めなければいけないって。

ジェニー
ジェニー

たとえどちら側にいようとね、それが今私のすべきこと。

悲しむ女性
悲しむ女性

あ……ありがとう……

クレイグ
クレイグ

……あ……

ジェニー
ジェニー

大丈夫よ、クレイグくん、手を放して。

ジェニー
ジェニー

過去の私が相応しき戦士だったろうとなかったろうと、逃げようと決めたあの時から、もう戦う覚悟はできているよ。

ジェニー
ジェニー

それよりも君の傷……

ジェニー
ジェニー

(ビリッ――)

ジェニー
ジェニー

忘れるとこだったよ、私はもうこの旗よりも清潔なものは持ってない、だから今こそこの旗の一番の使いどころだね。

ジェニーは旗の端をちぎって優しく男の子の負傷した頭に巻き付けた。

クレイグ
クレイグ

うぅ……ごっ……ごめんなさいっ……お……お姉さん……

ジェニー
ジェニー

クレイグくん、また後で話そうね、今はしっかり寝ること。

ジェニー
ジェニー

さて、ダブリン兵、そろそろここから立ち去ってもらおうか――

ジェニー
ジェニー

それと、去る前に、シアーシャにしたことへのツケを払ってもらうから。

ダブリン兵
ダブリン兵

お前一人でか?

ジェニー
ジェニー

私一人だけだろうと。

志願者の青年
怒り悲しむ成年

……俺たちもだ。

比較的軽い怪我で済んだ人たちがぞろぞろと各所から姿を現した、一人また一人と、旗を握りしめるジェニーの背後へと集まってきた。

ダブリン兵
ダブリン兵

お前ら――一体なんの真似だ?

ダブリン兵
ダブリン兵

ダブリン兵に歯向かうつもりか?オブライエン、お前は俺たちと一緒にそいつを捕らえるべきだ、ダミアンがどうやって死んだか忘れたのか!

志願者の青年
怒り悲しむ成年

いいや、ローナン、ダミアンのことなら忘れてないさ、だが……シアーシャのことも忘れちゃいねぇ。

志願者の青年
怒り悲しむ成年

確かに俺たちは多くの過ちを犯してきた……俺の目は節穴じゃねぇから、今この時、誰が一番俺たちに手を差し伸べてくれた人ぐらいかはわかってるつもりだ。

ダブリン兵
ダブリン兵

だがそいつはタラト人じゃないんだぞ!

ジェニー
ジェニー

あなた、みんなの目つきが分かるよね?

ジェニー
ジェニー

少なくとも、今、私たちは同じ側に立っているんだよ。

ダブリン兵
ダブリン兵

……救いようのないアホどもが!その愚かな選択をしたことを悔やみながらここで死んだな!

ジェニー
ジェニー

みんな怪我に気を付けて、無茶は厳禁だよ。

ジェニー
ジェニー

この悪党どもなら安心して私に任せて。

ジェニー
ジェニー

この戦い、私が……

ジェニー
ジェニー

いいえ、私たちが必ず勝つ!

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