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【明日方舟】レッドパイン「ド派手に行くぜ イヴォナ」

???
テレビの声

地下競技場の死闘をくぐり抜き、予選選抜を二回も勝ち抜き……またもや凄腕の挑戦者が現れました、感染者騎士、“野鬣”騎士のイヴォナ・クルコフスカヤ……

ソーナ
ソーナ

……“野鬣”?

グレイナティ
グレイナティ

どうしました、ソーナ。

???
テレビの声

……しかし、休憩室にてほか参戦された騎士との間で不当な争いが起こってしまい、暴力で解決しようとしたため……

???
テレビの声

……“試合中止”の謹慎処分もあり得るかもしれません……

グレイナティ
グレイナティ

……またですか、感染者騎士のマイナス面だけを報じた報道。

グレイナティ
グレイナティ

“不当な争い”ですか、フッ、そのほかになにがあると言うのでしょう?あんな支離滅裂な場所なんです、勝者に向けた敗者の負け惜しみの遠吠えにすぎませんよ。

グレイナティ
グレイナティ

試合に参加される感染者の騎士からすれば、いつも罵られるだけ罵られているというのに。

ソーナ
ソーナ

さっきの試合映像は見た、カイちゃん?あのクランタの身のこなし……結構すごいわね。

グレイナティ
グレイナティ

確かに技に関しては形しかない貴族とは異なっていました、ただ最強の騎士に達するにはまだまだですけど。

ソーナ
ソーナ

うーん……

グレイナティ
グレイナティ

……彼女を招くつもりですか?

ソーナ
ソーナ

彼女のことなら聞いたことがある……騎士団の中にも彼女を知ってる人がいるからね。

ソーナ
ソーナ

アタシたちが必要としてる人には、「行動班の班長は必ず臨機応変に富んで、人一倍の実力が必要」だって、カイちゃんが言ってたんだからね。

ソーナ
ソーナ

……だからちょっと運試ししようと思ってね。今のところ試合に参加する独立騎士たちは全員代理人によって招致されている、感染者によって組織された騎士団からの招待ならたぶん彼女の気を引けると思うんだ。

ソーナ
ソーナ

予感がするの、彼女はアタシたちが求めていた人材だってね。

グレイナティ
グレイナティ

彼女の実力になのか、それとも私たちに協力してくれるのかのどっちに興味があるんですか?

ソーナ
ソーナ

そんなこと、話してみたらわかるわ。

グレイナティ
グレイナティ

でしたらまず話す機会が必要になります。あなたも聞いたでしょう、商業連合会は彼女に対して“試合停止”処分も考慮すると、ニュースで言ってました、そう簡単にことが進むとは思えません。

グレイナティ
グレイナティ

予選選抜は始まったばかりです、彼女は感染者、しかも予選に上がって来たばかりの独立騎士、誰からも援助されませんよ。

ソーナ
ソーナ

……じゃあもし今回、アタシたちが援助してあげたら?

グレイナティ
グレイナティ

よく考えてください、ソーナ。これはリスキーな賭けです、もし彼女があのまま最後まで突っ切ると決めていたら、いずれ敵対にしなければなりませんよ。

グレイナティ
グレイナティ

ただ……それでも話してみたいと言うのなら、全力で試してる価値はあると思います。今のレッドパイン騎士団にとって、新しい仲間を増やせる機会は一回でも貴重ですから。

ソーナ
ソーナ

やっぱり試してるべきだわ。もし順調に交渉できたら……今の状況からすれば、おそらくだけど、彼女もきっと感染者のためになにかしてくれると思うから。

数日後

(扉が開く音)

イヴォナ
イヴォナ

……チッ、連合会の野郎、誰も事実に耳を貸してくれやしねぇ。最初から公平に裁きたくなかったら、なんで君子面してまでアタシにとやかく言ってきやがるんだ?

イヴォナ
イヴォナ

ッツ~……痛ってぇ、三流貴族のクズどもよりよっぽど警察のほうが強ぇっての。あの警備員に試合でもさせたら、観客も盛り上がるだろうよ……

???
???

出てきた、彼女が出てきたぞ!

(大勢の人がイヴォナに近寄ってくる)

イヴォナ
イヴォナ

あ?

???
新聞記者

野鬣騎士、商業連合会のビルから出てきたということは公式側からすでに制裁が下されたということで間違いないでしょうか?

???
新聞記者

休憩室でほか騎士との争いについてどうお考えですか?それは一種の挑発行為と言っても差し支えないでしょうか?

???
新聞記者

感染者騎士であるあなたが、ほかの競技騎士と同じ休憩室を利用されてますが、ルール上ほかの騎士に対する不公平になり得るのではないでしょうか?

イヴォナ
イヴォナ

……うるせぇな!誰だよてめぇら!

???
新聞記者

野鬣騎士、どうかお答えください!それと、一体どういうお世辞で商業連合会から猶予を頂いたのでしょうか……

イヴォナ
イヴォナ

……ああもう、なんなんだよこいつら!

(イヴォナが走り去る)

グレイナティ
グレイナティ

あ、出てきましたよ。

イヴォナ
イヴォナ

はぁ、はぁ……あ?

イヴォナ
イヴォナ

お前……アタシをここで待ってたのか?

グレイナティ
グレイナティ

さっきの騒がしい場面でお分かりかと思いますが、今あなたには幾つかの選択肢しか残されていません。もし……嫌でも別の選択肢を選びたいと言うのであれば別ですが。

グレイナティ
グレイナティ

幸いあなたも分かっていると思いますが、今のあなたはカメラから距離を置けるだけ置いたほうがいい。自己紹介が遅れましたが……

イヴォナ
イヴォナ

いやいい、お前のことは知ってる、大砲使い、それともう一人のサーベル使いも。お前らはザラックでパートナーを組んでる、それに実力も確かなものだ。

グレイナティ
グレイナティ

……ありがとうございます。

イヴォナ
イヴォナ

灰豪、だったな?ここで何の用だ、ケンカか、それともオレを笑いにでも来たか?

グレイナティ
グレイナティ

あなたが直面してる厄介な場面は想像できます、もし必要であれば、こちらが手を貸してあげますが。

イヴォナ
イヴォナ

ほう、たとえば?

グレイナティ
グレイナティ

あなたはあの記者から、それと……ほかになにか企んでいる代理人からの招致を振り切りたいはず、私たちならお断りの返事を出してあげます。

イヴォナ
イヴォナ

お前らは誰だ?

(ソーナが近寄ってくる)

ソーナ
ソーナ

それについてはアタシから。

ソーナ
ソーナ

野鬣騎士、もしすでにこちらの素性を知っているのであれば、話は早いでしょう。

ソーナ
ソーナ

アタシたちは感染者騎士たちの動向に注目していてね、だから、テレビであなたが困ってるのを見かけた時、こちらで少し解決策を考えてあげたんだけど……

イヴォナ
イヴォナ

回りくどいことはいい、難しい話は聞きたくないし、聞いても分かんねぇよ。お前ら、アタシに何の用だ?

ソーナ
ソーナ

……なら単刀直入に言います、アタシたちはレッドパイン騎士団の責任者。もしアタシたちと同じ理念を抱いているのであれば、ぜひアタシたちに加入して頂きたいの。

イヴォナ
イヴォナ

レッドパイン騎士団?聞いたことねぇな。

ソーナ
ソーナ

まだ成立して間もない騎士団だからね、主なメンバーはみんな感染者騎士で……

イヴォナ
イヴォナ

……感染者?

ソーナ
ソーナ

そう。

イヴォナ
イヴォナ

せっかく生き延びて来れた感染者騎士をわざわざ選んで騎士団を結成して、もっと金を稼ごうって算段か?ハッ、いい商売するじゃねぇか。

ソーナ
ソーナ

いやいや!アタシたちはあの感染者騎士を利用して金稼ぎしてる騎士団とは全然違うから、アタシたちが騎士団を設立した目的は、感染者同士の助け合いを促進するためだってば。

イヴォナ
イヴォナ

どうやって?

ソーナ
ソーナ

まずは……騎士競技における感染者騎士の待遇をよくさせるとか、みんなそう願ってる。

ソーナ
ソーナ

ほかの騎士団に加入した感染者騎士がどういう待遇を受けるかなんて周知の事実でしょう、あの高い報酬の背後にはいつもウソがほくそ笑んでる、しかも担保は自分の命。

イヴォナ
イヴォナ

ハッ、感染者まみれの競技場からここまでやってきて、命を賭けなかった日なんざあると思うか?

イヴォナ
イヴォナ

貴族の騎士は負けようが、少なくとも尻尾を挟んで大人しくお家に帰れるかもしれねぇが……

イヴォナ
イヴォナ

感染者はどうだ?名声が欲しければ、あのおっかねぇ地下競技場で死に物狂いで騎士の称号を奪い合わなければいけねぇんだ。

イヴォナ
イヴォナ

それか細々と暮らしていきたいと思っていても、いつまで戦わなければいけないかなんて、全部金を出してくれる連中の言いなりだ。あいつらは血が流れるもんにしか興味ねぇけどな。

イヴォナ
イヴォナ

重傷だけじゃ満足いかねぇ、あのイカレた連中が本当に見たがってるのは――

グレイナティ
グレイナティ

……野鬣、ここでその話はやめましょう。

イヴォナ
イヴォナ

チッ、わかってる、文句ぐらい言わせてくれよな。

イヴォナ
イヴォナ

っとまあ色々うだうだ言ったがすまねぇな、正直に言うが、アタシが今一番必要なのは自分の武器を修理できる場所なんだ。こんなオンボロな槍を持ってちゃ、心配で夜も眠れねぇ。

ソーナ
ソーナ

えっと、まだしばらく武器メンテナンスの職人さんは呼べないけど、専門業者に委託することぐらいなら……

イヴォナ
イヴォナ

なら話を変えるが、お前らに加入したら、アタシはなんかメリットでも得られるのか?

ソーナ
ソーナ

もっちろん、お給料での待遇とか……ギリギリほかの騎士団と同じぐらいだけど。でも、アタシたちの本来の目的は……

イヴォナ
イヴォナ

じゃあ入るぜ。

ソーナ
ソーナ

え?

イヴォナ
イヴォナ

だから、入るっつってんだ。お前らの感染者騎士団がどういうもんかは知らねぇが、少なくともほかの騎士団よりはマシなんだろ。

イヴォナ
イヴォナ

あの感染者じゃない騎士が向けてくる目はムカつくったらありゃしねぇからな。あいつらとなんか組みたくもねぇ。

イヴォナ
イヴォナ

騎士になる前は、生き延びることが一番重要なことだった、何もかも腹を満たせればそれでよかった。騎士になったあとは……まあ大して変わってねぇけど。

イヴォナ
イヴォナ

けどメシにありつけるためにあんな屈辱な思いもしたくはねぇ。お前んとこがもしメシを食わせてもらって、かつあの気持ち悪い貴族騎士の野郎もいないってんなら、しばらくはついて行っても構わねぇぞ。

グレイナティ
グレイナティ

では、見返りとしてなにを……?

イヴォナ
イヴォナ

うーん……

イヴォナ
イヴォナ

(指を出す)

グレイナティ
グレイナティ

三?

イヴォナ
イヴォナ

三日分のメシ代、あと武器を修理する資金だ。三日後に試合が控えてるからな、そん時賞金を貰った時に金を渡したら、お前らと賞金を山分けしてやるよ。

イヴォナ
イヴォナ

商業連合会は何が何でもアタシに保釈金を払わせないと釈放してくれなくてな、それに罰則金もまるでアタシの通帳にいくら金が入ってるか分かってるぐらいにピッタリだしよ――

ソーナ
ソーナ

……あいつらなら、確かに丸分かりね。

イヴォナ
イヴォナ

だから、今のアタシは、一文無しで、腹も減ってるんだ。条件はこれでいいか?

ソーナ
ソーナ

全然問題ないわ。お金もしばらく貸してあげてもいいわよ、そっちの急用が済んだら、あとで騎士団に返しに来ても大丈夫だから。

イヴォナ
イヴォナ

そう来なくっちゃな。なら住所を教えてくれ、明日お前らの敷地を借りて俺の甲冑を砕いた野郎の口に槍をぶち込む練習もしたいんでな――

ソーナ
ソーナ

いいよ、ならアタシが練習相手になってあげる。

イヴォナ
イヴォナ

交渉成立だ、今更ナシはねぇからな。もし破ったら、容赦しねぇぞ!

(イヴォナが立ち去る)

ソーナ
ソーナ

……どうしたの、カイちゃん?ずっとアタシを見つめちゃって。

グレイナティ
グレイナティ

まったく……あんなあっさり金を渡すなんて、加入させたのに、なんでそのまま行かせたんですか?あの様子じゃなんで商業連合会のビルから出られたのかすら分かってないですよ。

ソーナ
ソーナ

あはは、戦闘狂にとってみれば、武器を修理が最優先事項だからね!あんな環境に何日も閉じ込められてたんだよ、お堅い話なんて絶対聞きたくないはずよ。

ソーナ
ソーナ

何より、こっちも彼女に説明してあげる時間はないからね、ちょっと道のついでに声をかけてみただけだよ。このあともっと大事な任務があるんだから……

グレイナティ
グレイナティ

今回の任務はすぐ終わるから、明日約束通り彼女とちゃんと話ができる、と思ってませんよね?

ソーナ
ソーナ

こっちは早めに対策するしかできないからね。ただもし今夜、あの人たちが都市部の感染者を釈放してくれるのであれば……

グレイナティ
グレイナティ

寝言は寝てから言ってください。

ソーナ
ソーナ

……分かってる。だから、アタシたちには今これをやらなければならない。野鬣の件なら、あとでちゃんとしておくから。

グレイナティ
グレイナティ

……もういいです。しかしソーナ、あなたの直感通りでした、野鬣は確かに面白い人でしたね。

ソーナ
ソーナ

あら?どうして?

グレイナティ
グレイナティ

彼女が考えてることは昔の私のと……とてもよく似ています。真っすぐすぎるところもありますが……少なくとも余計なことは考えていない。

ソーナ
ソーナ

ぷはは、あなたたちが通じ合えるのなら、それはなにより。

翌日
廃棄されたオフィスビルのロビー

イヴォナ
イヴォナ

……

イヴォナ
イヴォナ

……

イヴォナ
イヴォナ

間違ってないよな……こんなボロっちい場所が……本当に騎士団の拠点なのか?

イヴォナ
イヴォナ

まあいいや、違ったら違ったで。とりあえず入って聞いてみるか……

 

イヴォナ
イヴォナ

……おーい、焔尾騎士か灰豪騎士はいるか――

レッドパイン団員
レッドパイン団員

……団長をお探しか?

イヴォナ
イヴォナ

ああ、入団しにきたぜ。

レッドパイン団員
レッドパイン団員

まさか本当に人が入団してくるなんて……ただ生憎、二人ともさっき出かけたばっかだ……その荷物はなんだ?

イヴォナ
イヴォナ

こっちが聞きたいだが、なんでここはこんな素寒貧なんだ?ソファーすら見当たらねぇぞ?

レッドパイン団員
レッドパイン団員

騎士の賞金は豪華とは言うが……団長たちがほとんど賞金を感染者に宛がってるんだ。

イヴォナ
イヴォナ

ほう、そうかそうか。まあオレはついさっき大家に追い出されてな、それで自分の騎士団に身を寄せてもらうしかねぇんだ。

レッドパイン団員
レッドパイン団員

……とりあえず荷物を置いてくれ、あとの処置は団長が戻って来たからだ。

イヴォナ
イヴォナ

そういえば、あいつらは毎日そんな忙しそうにしてんのか?どっかで鍛錬でもしてんのか?

レッドパイン団員
レッドパイン団員

]色々事務の分野でも交渉しに行く必要があるんだ。

レッドパイン団員
レッドパイン団員

感染者騎士で構成された騎士団の審査はますます厳しくなるばかりでな、だから焔尾騎士と灰豪騎士はよく監察会と大騎士領の職員に呼び出されるんだ。

イヴォナ
イヴォナ

ヘッ、あの役立たずたちにか。アタシはてっきり、入団儀式の時にご馳走でも食えると期待していたのによ。あの灰豪ってやつ結構飲めそうな感じだったし。

イヴォナ
イヴォナ

そういえば灰豪、あいつの大砲はどこに置いてあんだ?どういう武器かずっと見たかったんだ、“ドカーン”って撃っただけで、あの威力なんだからよ……

レッドパイン団員
レッドパイン団員

えっと、武器なら……たぶん実家に置いてあるんじゃないか。

イヴォナ
イヴォナ

ウソだ。

レッドパイン団員
レッドパイン団員

え?いやウソなんか……

イヴォナ
イヴォナ

お前なんかオレに隠してるだろ。

イヴォナ
イヴォナ

なんだ、アタシに焔尾と灰豪の居場所を教えてくれねぇのか?あいつらは絶対騎士競技以外のことで忙しくしてるはずだ、昨日話してた時からオレは察していたさ。

レッドパイン団員
レッドパイン団員

……団長からは確かに入団してくる人が来ると言われたが、それ以降のことは俺の口からじゃ言えない。

イヴォナ
イヴォナ

もしお前の口から言えねぇことがあるんなら、なんでアタシが来る前に出かけなかったんだ?

レッドパイン団員
レッドパイン団員

それは……

イヴォナ
イヴォナ

きっとなにか急用にでも遭ったんだろ、だからここにいねぇ。そんぐらい急いでることだ、十中八九ロクなことじゃないだろうよ。

レッドパイン団員
レッドパイン団員

……

イヴォナ
イヴォナ

ハッ、やっぱりか。

イヴォナ
イヴォナ

だろうな、オレに用があっただけじゃ声をかけるはずもねぇ。お前ら本当はもっとおっかねぇことをしてるんだろ?

レッドパイン団員
レッドパイン団員

焔尾と灰豪、もし彼女らの選択が間違っていなかったら……彼女たちは、いや、俺たちは確かにお前の力を借りたいと思っているさ。

レッドパイン団員
レッドパイン団員

そうだ、例の件も……彼女たちが保釈金を渡したのも、お前を助けるためだったんだろう。

イヴォナ
イヴォナ

……なんだって?

レッドパイン団員
レッドパイン団員

二人ともお前に知られるわけにはいかなかったんだ。団員の全員が全員団長の考えを支持してるわけじゃないからな、だってただニュースでお前のことを見て、お前を釈放するため、すぐ直談判しに行ったんだから。

レッドパイン団員
レッドパイン団員

取引があった以上、自ずと条件だって生まれる……

イヴォナ
イヴォナ

待った。アタシはあいつらに借りを作りたくねぇんだ、もし本当にお前の言う通りなら、アタシはすげー怒るからな、だってそれだったらアタシにもこの一件について責任があるんだからよ。

イヴォナ
イヴォナ

そんで、彼女たちはどこに行った?

レッドパイン団員
レッドパイン団員

……感染者が集団で暮らしてる地域へ向かった、そいつらを捕まえる連中が来る前にみんなを疎開させるために。

レッドパイン団員
レッドパイン団員

……ちょっと待て、野鬣!

イヴォナ
イヴォナ

まだなんかあんのかよ?

レッドパイン団員
レッドパイン団員

焔尾と灰豪は、二人ともすごく優しい人なんだ、正直な騎士でもある、お前を招きたいと思ったのは、お前は俺たちと同じだって二人が認めたからだと思う……

レッドパイン団員
レッドパイン団員

ただの感染者騎士ではなく、カジミエーシュにいる感染者たちの現状を変えようとしてる人として。

イヴォナ
イヴォナ

どういう意味だそりゃ?

レッドパイン団員
レッドパイン団員

お前が……彼女たちがしてることを見れば、分かるさ。

???
???

そしてそして――その相手は――

ソーナ
ソーナ

大丈夫、私の後ろに隠れてて……

(ハンターの走り回る足音)

ハンター
ハンター

出てこい、感染者!もう逃げられねぇぞ!

???
感染者の子供

うぅ……ごめんなさい……ぼく……悪い人じゃないのに……なんで連れて行かれるの…

ソーナ
ソーナ

大丈夫、アタシがこいつらを追っ払ってあげるから。君はちゃんと隠れてるんだよ?

???
感染者の子供

うん……お姉ちゃん、ぼ、ぼく怖いよ……お父さんとお母さん……どこにいるの……

ソーナ
ソーナ

……アタシが守ってあげるからね、お父さんとお母さんが君を守ってくれたように。だからアタシを信じてもらえるかな?アタシがいいよと言うまで出てきちゃダメだからね、そしたらまた新しい場所を探して暮らそう。

???
感染者の子供

お姉ちゃん……お家に帰りたい……

ソーナ
ソーナ

……ちょっと静かにしててね。

(ハンターが走り回る)

???
感染者の子供

うん……

(ハンターが走り去る)

ソーナ
ソーナ

よし。

ソーナ
ソーナ

ふぅ、さあ――

イヴォナ
イヴォナ

よお。

ソーナ
ソーナ

うわぁッ!?あなた――

ソーナ
ソーナ

……野鬣?

イヴォナ
イヴォナ

ほんの手がかりですぐお前を見つけられたぜ、あの灰色のザラックよりも速いはずだ、すげーだろ?

ソーナ
ソーナ

……やっぱり来ちゃったか。

イヴォナ
イヴォナ

このガキを守ってたのか?こいつも感染者なのか?

ソーナ
ソーナ

そうよ。

イヴォナ
イヴォナ

なんだ、ガキをこんな場所に匿ってたのか?相手はハンターが五人もいるんだぞ、そのうちの一人にでも見つかっちまったら、追いかけても間に合わねぇよ。

ソーナ
ソーナ

今は……今はまだ人手が足りないから、こうするしかないの。

イヴォナ
イヴォナ

ふーん、じゃあ、お前らの本当の活動はこれだったんだな?

ソーナ
ソーナ

……うっ、まあ見ての通り。

イヴォナ
イヴォナ

感染者騎士の身分を利用して、本当はもっと大勢の感染者を助けたいんだろ?

ソーナ
ソーナ

……そうよ。

イヴォナ
イヴォナ

ハッ……つまり、お前らが感染者の騎士だけに声をかけてたのは、感染者同士でしか分かり合えないからだろ。

イヴォナ
イヴォナ

みんなで一つの秘密を、一つ願いを守る、そいつがたとえ……あの競技騎士と歯向かう形になろうが、そうだろ?

ソーナ
ソーナ

そうよ、野鬣、今は時間が惜しいの、ちゃんと説明してやれそうにないわ、もし断りたいのであれば……

イヴォナ
イヴォナ

なんでだよ?アタシは超クールだと思ってるけど。

ソーナ
ソーナ

え?

イヴォナ
イヴォナ

そうだよな、時間が惜しいんだもんな。だがその前に、焔尾、もう一回きちんと正式めいた形でアタシを誘ってくれ。

ソーナ
ソーナ

それってつまり……アタシたちと一緒に行動してくれるってこと?

イヴォナ
イヴォナ

ハッ、アタシはお前らとは違うとでも?

ソーナ
ソーナ

そっか……ならわかった。

ソーナ
ソーナ

野鬣、レッドパイン騎士団の一員となり、感染者騎士として共に助け合い、共に団結し、感染者のために己のすべてを捧げてくれる?

イヴォナ
イヴォナ

……

ソーナ
ソーナ

野鬣?ごめん、もしかして白けちゃったかな、アタシがこんな真面目なことを言うなんておかしいよね……

イヴォナ
イヴォナ

イヴォナだ。

イヴォナ
イヴォナ

野鬣騎士の、イヴォナ・クルコフスカヤだ。

ソーナ
ソーナ

……ふふ、じゃあ、アタシのことはソーナと呼んでね。

イヴォナ
イヴォナ

よく聞け、ソーナ。このアタシ、イヴォナは今日からレッドパイン騎士団に加わり、騎士として、栄誉を勝ち取り、アタシたちの理想に遂げてやる。

イヴォナ
イヴォナ

アタシの理想はな――ソーナ、もしレッドパイン騎士団が感染者の現状を変えられるのなら、今目の前にいるこいつらを守ってやれるのなら……アタシはお前らと命を張ってもいいぜ。

ソーナ
ソーナ

命を張るか……うん、今からしてみれば、そんな感じね。

イヴォナ
イヴォナ

だが命を張るのは今じゃねぇ。このガキを一人にさせるわけにはいかねぇからな。お前は団長だ、誰かにこんな裏路地でこんなことやってるとこを見られたらまずい。

イヴォナ
イヴォナ

先にはやくそのガキを送ってやれ、ここはアタシが受け持つ。

イヴォナ
イヴォナ

見とけよ、アタシの本当の実力を――いや違うな、お前らは先に行け、ここはアタシがなんとかする!

イヴォナ
イヴォナ

ほらさっさと行きな、お前がガキを送り届けたころには、こっちもお前んとこに向かってるだろうからよ。

ソーナ
ソーナ

……わかった。イヴォナ、くれぐれも騒ぎにしないでね。無事片付けたら、本当のレッドパイン騎士団の拠点で落ち合おう!

イヴォナ
イヴォナ

楽勝よ。

(ソーナがグレナティの元に駆け寄ってくる)

ソーナ
ソーナ

ふぅ……カイちゃん、お待たせ……

グレイナティ
グレイナティ

お疲れ様です、ソーナ。もう終わりましたか?

ソーナ
ソーナ

しばらくは片付いたわ。カイちゃん、イヴォナ……野鬣は?

グレイナティ
グレイナティ

ジェミーと一緒に話してたように……

イヴォナ
イヴォナ

ここだ、とっくに帰ってきてるよ。ジェミーから酒を譲って飲もうとしたんだが、あいつ全然いい酒持ってねぇんだわ。

グレイナティ
グレイナティ

ではこうしましょう、賞金をもらったあと、私が一杯付き合ってあげますよ。

イヴォナ
イヴォナ

ハッ、そいつはいいな。

ソーナ
ソーナ

あ、じゃあアタシも行く。

グレイナティ
グレイナティ

あなたは結構です。

ソーナ
ソーナ

えぇ?なんで!まさかあなたたちもうアタシの悪口とか言い合える仲になったわけ?

グレイナティ
グレイナティ

酒を飲む余裕なんてあるんですか?騎士協会から山のように書類が届てるのに……

ソーナ
ソーナ

あっ……それ思い出させないで……

グレイナティ
グレイナティ

私たちはただ愚痴を話すだけです。それに、ソーナは酒にあんまり強くないですし、バーで夜通し飲むのも嫌いじゃないですか。

ソーナ
ソーナ

うぅ……確かに。そういうイベントだったら、二人だけで行ってちょうだい。

ソーナ
ソーナ

そうだ、イヴォナ、もし時間が空いてるのなら、ちょっと教えたいことがあるんだ、レッドパイン騎士団の計画の一部についてなんだけど……

イヴォナ
イヴォナ

あれのことだろ、さっきグレイナティから聞かされたぞ。

イヴォナ
イヴォナ

裏で行ってる感染者と感染者騎士の救助、それと稼いだ賞金を使ってより大勢の感染者に合法的な身分を獲得すること……

ソーナ
ソーナ

もうそこまで知っていたのね……それで、どう思う?

イヴォナ
イヴォナ

オレが稼げる賞金なら、全部お前らにくれてやるよ。オレは征戦騎士になるために訓練を受けてきたんだ、だからこの生業で大金を稼ぐつもりなんざさらさらねぇ。それに……チッ。

イヴォナ
イヴォナ

それより詳細な計画についてだが、いまいちよくわかんなかった。

グレイナティ
グレイナティ

……

イヴォナ
イヴォナ

グレイナティが言ってたぜ、レッドパイン騎士団が感染者のために何をするか、どうするべきかは……全部ソーナが決めたことだってな。

イヴォナ
イヴォナ

だから今わかったよ、ソーナはそういうことを考えながら行動に移せる人だってな、お前すげーよ。

ソーナ
ソーナ

いや――それほどでも、えへへ……

イヴォナ
イヴォナ

アタシもとっくの昔っから感染者のためになにかしてやりてぇって思ってたんだ……血騎士みたいにな!あいつも中々やってくれたからな。

ソーナ
ソーナ

血騎士は騎士競技のルールを根本的に変えたからね、だからアタシたち……レッドパイン騎士団はもっと人員を増やして、もっと大きな力を作って、感染者のためにもっと多くのことをしてあげなくちゃ。

イヴォナ
イヴォナ

なら否が応でも加わってやるぜ。

イヴォナ
イヴォナ

ソーナ、そうと決まれば、アタシはずっとお前についていく。お前のやってることは正しいって信じてるから、どんな困難だろうがアタシが切り拓いてやるよ。

イヴォナ
イヴォナ

しかしまあ、アタシが今抱えてる問題を解決してくれるってんなら、もっと拝んでやってもいいぜ。

ソーナ
ソーナ

へへ、あなたの信頼を勝ち取れるのなら、なんだってやってあげるわよ。それでなにを手伝ってほしいの?

ソーナ
ソーナ

……えっと、なにこれ?

イヴォナ
イヴォナ

オレのペットだ。

ソーナ
ソーナ

ペっ……ペット?

???
???

……

ソーナ
ソーナ

ペットかぁ……えっと……結構かわいいね!イヴォナ、どこで拾ってきたの?

イヴォナ
イヴォナ

ははッ、たまたまゴミ溜めを通りかかった時に見つけてな、まだ使いそうだなと思って。そういえば、ソーナ、お前いい技師とか知らねぇか?

ソーナ
ソーナ

技師?どのジャンルかは知らないけど……

ソーナ
ソーナ

あ、機械が分かる人なら都市部にいるわよ。

イヴォナ
イヴォナ

この前武器のメンテナンス師を連れてくるだけであんな時間かかったのに、なんでこんなマシンを知ってる人はすぐ見つかるんだよ、どうなってやがんだ?

ソーナ
ソーナ

あはは……あの人ならあなたの武器にも興味示すと思うわよ、一緒に行こうか?

イヴォナ
イヴォナ

いや、自分でこいつらを連れて行くよ、お前とグレイナティはまだほかにやることあんだろ、ならそっちに集中してくれ。それでその技師ってのはどこにいるんだ?

レッドパイン団員
感染者技師の騎士

……なるほど。こういう精巧な作りと内部構造をしてるのか……

イヴォナ
イヴォナ

どうだ、まだ使えそうか?この武器はもう長い間連れ添ってきた相棒だからな。

レッドパイン団員
感染者技師の騎士

いや理解に苦しむ……仮にお前がそこまで実力があるのなら、どうしてあの時商業連合会のビルから出てきた時、槍の外殻が使えないぐらい破損させたんだ?

イヴォナ
イヴォナ

知りてぇのか?

レッドパイン団員
感染者技師の騎士

大袈裟に誇張された話じゃないのなら、聞いてみたいまであるな。主に武器の使用原理についてだが。

イヴォナ
イヴォナ

ハッ、じゃあどっから話せばいいかな――

イヴォナ
イヴォナ

アタシがまだ征戦騎士になるために訓練期間を送ってた時、この槍は戦場で敵をぶっ殺して、後ろにいる味方のために道を切り拓くための設計されていたんだ。

イヴォナ
イヴォナ

アタシの槍が受ける衝撃や任務は並大抵の一般人じゃ受けきれねぇ品物でな、使える回数も限られてくる。

イヴォナ
イヴォナ

だから道が切り拓かれたあと、アタシはサブ用の槍に切り替えるんだ。

イヴォナ
イヴォナ

だから、競技場に行っちまったあとでも、アタシは一度もこのメインの槍を折ったことはねぇ。

レッドパイン団員
感染者技師の騎士

つまり……お前は全力を出したことはない、誰かの命を奪うつもりもないってことか?

イヴォナ
イヴォナ

あの薄汚ねぇ地下競技場では……

イヴォナ
イヴォナ

いくら指図を喚いてこようが、モニターに指示の字幕が出ようが、いつもアタシに容赦なく相手を仕留めさせようとしてくるんだ、ほかの感染者たちがピクリとも動かなくなるまで勝利とは言えなかった……

イヴォナ
イヴォナ

だがアタシは一度も相手を重傷になるまで半殺しにしたことはねぇよ。

イヴォナ
イヴォナ

だがアタシがせっかく競技騎士になった頃、競技場の休憩室であの貴族どもがアタシに言いやがったんだ……

イヴォナ
イヴォナ

アタシはもう長い間地に足をついていなかったからな、槍を取り出して、あの薄情者どもの心臓に狙いを定めてやったんだ――

イヴォナ
イヴォナ

お前もわかるだろ、あの時アタシはマジで串刺しにしようと思ってたぜ。

レッドパイン団員
感染者技師の騎士

よく言ってくれた、スカッとするよ!

イヴォナ
イヴォナ

スカッとしてないで、はやくアタシのペットも診てやってくれよ!

レッドパイン団員
感染者技師の騎士

ああ、そうだったな……

レッドパイン団員
感染者技師の騎士

診てみたが、こいつはレイジアン工業の古いタイプだ……起動したいのならそう難しい話じゃない。

レッドパイン団員
感染者技師の騎士

だが使える機能は限られてくるな、おそらくあんまりお前の指示には従ってくれないだろう。

イヴォナ
イヴォナ

こいつが自分の名前を知ってくれさえすればいい。

レッドパイン団員
感染者技師の騎士

名前?なんて名づけるんだ?

イヴォナ
イヴォナ

とっく考えてきたぜ――ジャスティスナイト号だ、使えるペットだったらいいんだけどな。

レッドパイン団員
感染者技師の騎士

こいつの本来の仕事は援護射撃だと思うが。

イヴォナ
イヴォナ

ならちょうどいいじゃねぇか、代わりにザコを蹴散らしてくれるんだからよ。しかしつまんねぇ機能だな、もう少しなんとかなんねぇのか?

レッドパイン団員
感染者技師の騎士

それならこいつがほかのモードに変えられるかどうか次第だな……

イヴォナ
イヴォナ

ほかのパーツで組み直す必要があるってことか?じゃあまた今度でいいや。とりあえず、起動できねぇか?

レッドパイン団員
感染者技師の騎士

診てみよう……

(機械の駆動音)

イヴォナ
イヴォナ

おお、動きやがった。

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