
よし!そこまで!

どう?痛みはまだ感じる?

いや、万全な状態だ。

腕は完璧に治ったみたいね、風騎士が急に棄権して助かったわ。

お姉ちゃーん!槍の強化終わったよ!

ミノスの加工技術を採用してみたんだけど、源石の伝導率を維持しながら、特殊凝固剤を表面に塗って強度を上げてみたんだ――
と

にかく、この武器があればお姉ちゃんの光はもっと輝くと思うよ!

ハッ、倉庫にある備品とか全部使い果たしたぐらいだからな。

こいつは今まで一番いいや――槍、うん、槍だ、だから安心しな。

ちなみに言うとお前がチャンピオンになった時に使ってた剣は二番目で、持っていったあのハンマーは三番目ぐらいにいいやつだ。

……ありがとう。

フッ、いいってことよ。

……ゾフィア、頼まれた血騎士の試合映像をできるだけ掘り出してきたぞ。

ありがとう、もう時間がないわね。

マーガレット、準備は怠らにように万全にね。マーガレット?

……

……本当にありがとう、私の傍にいてくれて。

……今回の任務で最後になるかもしれないな、モニーク様。

わかってる。

本当に耀騎士を殺るのか?

理事会の判断は一致してないからなんとも。面倒臭いことはプラチナに任せればいい。

……クロガネたちが許可を下ろしたのか?一体なぜ?この先も耀騎士が必ず関わってくるからか?

さあな。もしかしたらクロガネたちは耀騎士になにかしらの脅威を見出したんだろう……理事会もそんな意向があるのなら、ちょうどいい。

理事会からすでに釘を刺されている、クロガネたちが合図を送るまで、こっちもできるだけ下手に動かないほうがいい。

とにかく、今は耀騎士が無事血騎士を倒してくれることに期待しておこう、そうすれば、俺たちの仕事も多少は減る。

……お前から見て、どっちが勝つと思う?

……難しいことを聞くね……

わ、私がメジャーリーグ決勝戦の実況を、ですか!?

データから見た統計結果です、モーブさん。騎士競技におけるあなたの実況は、トップに名が挙がるほど人気ですからね、おめでとうございます。

それに、マリア・ニアールを始め、ニアール姉妹の試合実況はずっとあなたが担当してきました、理事会もそのウリを認めているため、今回もぜひあなたに担当して頂きたいと。

ついこの前発刊された『競技ニュース』はご覧になられましたか?あなたは“光と共にある声”とも称されていて、かなりの有名人となっていますよ。

ほ、ほ、本当ですか!?!?

それと報酬に関してですが……明日そちらの口座を入金致しますね。決勝戦を終えた頃に、また別途お支払います。

ではようやく両親を大騎士領に迎えてもよろしいんでしょうか?

もちろんです、大きな別荘だって買えるはずですよ。

……決勝戦の……チケット?

ロドスは今年のメジャーリーグに多大な貢献をして頂きましたからね、感染者に関する先進的な方案も、色々と学ばせて頂きました。

今年のメジャーリーグの優勝者は、耀騎士と血騎士――二人の感染者によって争われます。

であれば、ロドスにはぜひこの前代未聞の決勝戦を見て頂きたく存じます。

それと……そちらのサルカズのお嬢さんたち、お二人はマーガレット・ニアールの知り合いですものね?

……ご好意感謝します。

ニアールさんは……勝つのでしょうか?

それはぜひご自分の目でお確かめください。

チケットは四枚ですか……

・アーミヤは絶対行かないと。
・ロドスの指導者が欠席しちゃいけない。

ならドクターも一緒に行きましょう!

ドクター様が行かれるのでしたら、引き続き護衛としてお供致します。

ではこの残り二枚は……

ニアールさんの試合にはすごく興味ありますけど、医療班をほったらかしにするわけにはいきませんから――

アーミヤさん、ドクター、どうぞ行ってください!

それとシャイニングさんとナイチンゲールさんも一緒に行けば、ちょうど四枚ぴったりですよ!

そんな、医療班の皆さんを置いていくわけには……

試合シーズンも終わりそうですし、治療が必要な感染者の数も大分減ったので大丈夫ですよ!

それに、感染者の問題だってドクターがキレイに捌いてくれたじゃないですか?だからしばらくは状況も安定してくると思いますよ――

――もし私がニアールさんで、ずっと一緒に戦ってきた戦友が決勝戦の時に限って傍にいないと知ったら、そりゃもう悲しんじゃいますよ!

……ふふ、それもそうですね。

リズ、ニアールさんが見せてくれる最後の勝利を見てみたいですか?

……はい。

うん。

ではドクター、アーミヤさん、私たちも同行させてください。

……血騎士と耀騎士の決勝戦がいよいよ始まるわね。

どっちが勝っても……チャンピオンは感染者か。

ゼロ号地の内部事情が暴露したことによって、その責任者は下ろされた。そんであんたらは監察会の庇護を得て、見事新しい生活を送れるようになる。

ハッピーエンドじゃないか。

……

――だがそうでもなさそうだな。

今日の新聞を見ても、まだまだ感染者の話題で持ち切りだ。あんたらは無冑盟を撃退し、連合会も退かせた、だが世間における鉱石病への恐怖にはどう対処するんだ?

商業連合会と無冑盟と対抗してきたと言っても、所詮無冑盟は雇われの殺し屋集団で、商業連合会はカジミエーシュの根幹だ。

なあ焔尾騎士、ソーナ。

本当にこれだけでいいのか?

…………

最近思ってることがあるんだ、トーラン。あなたは大騎士領の外からやってきたから、アタシたちより詳しいと思う。

商業連合会を落せば、無冑盟を倒せば、感染者の暮らしは本当によくなるの?

いや……それよりも、商業連合会を倒すなんて……本当にそんなことができるの?
感染者。
鉱石病を患った人々。
騎士。
競技を経て富と地位を得た人々。
(回想)

血のような赤い甲冑を身に纏ったミノス人!嵐の辺境より来た勇士、強力無比なるフォルテ!

それではお迎えしましょう!独立騎士のディカイオポリスです!!

おい、ミノス人、その名前覚えにくいんだよ!

相手の頭をかち割ってやれ!お前ならできるはずだ!

……ふぅ。

それでは、試合開始!

……いいか、ミノス人、お前は感染者だ。

今までそれをひた隠して試合に臨んできたが、今のお前はこの街の地下競技場じゃそれなりの有名人になった。

現に大騎士領にいる騎士団からもお声をかけられている……大金を稼ぐ千載一遇のチャンスだ。

あのビッグネームの騎士団に気に入られれば、一気に出世コースだ!

しかしだな!あの人たちは感染者が騎士になることをよしとしない、今いる小さな場所ならやっていけるかもしれないが、大騎士領にいけばそれも通用しなくなる。

……つまり?

つまりだ!まずは仮契約を結ぶ、それから何試合かして金を稼いだあと、頃合いを見て“負傷”を理由に試合を辞退すればいい……

身体検査なら私が担当者に金を渡して誤魔化しておく、お互い隙のないようにしよう!そうだろ、ディカ……えっと……

……ミノス人でいい。

私の名前を覚える必要はない。

お前のために言うが、覚えやすくてかつ力強い印象を持つ名前に変えたほうがいいと思うぞ。芸名でもなんでもいい、わかったな?

それじゃあ行こうか!共に大騎士領へ!

想像できたでしょうか!なんとこのスーパールーキーが白楓騎士を打ち倒しました!

血のような真っ赤な甲冑を身に纏い、手には血のような真っ赤な刃を持つ!血を凝固して創り上げた恐ろしい武器で、速さを売りにしていた白楓騎士を一撃で仕留めました!

あの比類なきパワーと素質、素晴らしい動体視力、それとすぐさま広告に打ち出せるようなクールな造形!

審判の判定を待つ必要もないでしょう!今回の勝者は紛れもなく――灼斧騎士です!

……はぁ……はぁ……

……

ブフォッ――

め、メジャーリーグだと!?

お前自分が感染者であることを――オホン、ここは人目が多いからよそう……

ダメだ!それは絶対にダメだ、前回のチャンピオンがカジミエーシュから去った理由を忘れたのか!?

……耀騎士、マーガレット・ニアールのことか?

そうだ!英雄一族の出身でありながら史上最年少のチャンピオンだという肩書きを持っていたくせに、結局なんの役にも立たずに追放されたんだぞ?

「彼女は感染者だ」って認定されただけで、即カジミエーシュから退場だ、そんでニアール一族も、一気に没落していった。

メジャーリーグに参加するなんて冗談はよせ、大人しく今までのように――

……失礼、灼斧騎士のディカイオポリスさんですか?

そうだ。

えっと、どちら様で……?

あなたは彼の……マネージャーですね?

ええまあ、そんなところですが。

それはよかった、お初お目にかかります。

チャルニーと申します、商業連合会の代弁者を務めている者です。

……ブラッドゴブレット騎士団?

ええ……あなたのために設立した騎士団です。

あなたは感染者です。世論は反対の声を上げておりますが、私はかねてより宥和な態度を取るように努めておりましてね。

今の通り名についてはどうですか?“カジミエーシュの赤いステムグラス”、いずれあなたを指す二つ名になるはずです。

……ステムグラス。私みたいな粗暴な人間にそんな優雅な言葉は似合わんぞ。

まあそうおっしゃらずに。

ほかの騎士メンバーについてですが……もしもの話ではありますが、感染者からなる騎士団の設立もできなくはありません、ただこれからの成果次第ではありますが。

……なぜそこまでのことをする?普通の人間なら、感染者を語るだけも辟易するんじゃないのか?

それゆえに“普通の人間”は大志を成し遂げられないのですよ。

……では……感染者も騎士になれるのなら、耀騎士はなぜ追放されたのだ?

観客たちはそれをどう思ってるのだ?

そのために……私はここにいるのだと思います、ディカイオポリスさん。

史上二番目のメジャーリーグに進出した感染者騎士!ミノス人のディカイオポリス!この二年間で、“カジミエーシュの赤いステムグラス”という名はきっと色んなところからでも皆さんの耳に届いているはずです!

灼斧騎士はポイントにしても人気にしても、その数は増えていくばかりです、真っ赤な甲冑、血潮が迸るほどのパワー!ストレス発散にはうってつけ!まさに本物の騎士と言ったところでしょう!

それでは、彼が迎え撃つ相手もお迎えしましょう、独立騎士のヴィヴィアナ・ドロスト――

……血……騎士?

……ええ、ついさきほど騎士協会があなたの称号を発布致しました。

あなたが提出された……感染者の試合参加制度はとても参考価値があります、現在理事会もすでにその提案を受理する段階に入っています。

あなたとあなたのブラッドゴブレット騎士団が新しい起点となるでしょう。また同時に、この方案は感染者たちにとってもカジミエーシュは彼らを見捨てていないという有力な証拠になり得ます。

それで苛烈していくばかり感染者問題も収まってくれるといいんですがね。

……代弁者、感染者が騎士になったあとでも、差別は受けられるのか?

申し訳ありませんが今までと変わりはないでしょう、確実に言えます。

……いつ何時でも、人々はこの病に対して恐怖を抱いております、もしそんな観念を変えたいのであれば、過激な手段も考慮しなくてはなりません。

病を恐れること自体に間違いはない。

しかし感染者とて被害者だ、感染者騎士とて同じく騎士ではないか。

……被害者であっても、病の源です。騎士の身分についてなら……あなたもご存じのはずでは?

……

医学に従事する人たちだって一度も鉱石病研究の手を止めたことはありませんよ、しかしあまりにも時間をかけすぎた、今の現代医学において、鉱石病に現代の医療技術は通用しないというのが定説です……

しかしいいニュースもあります、それは少なくとも理事会はあなたとあなたの提案について議論したいとお考えになっていることです。

……ああ。

私の騎士団に来るといい。

……お前は……チャンピオン!?

私のところに来れば、まともに暮らしていける。

でも……でも俺たちにそんな実力は……

お前たちに成果は求めんさ……ヤツらにとって、私一人で十分だからな。

……!

はは……本当なら、俺は追放されたあげく、荒野で野垂れ死ぬ運命だった……

でも街に居続けられる上に、チャンピオンの騎士団にも加入できるなんて――

俺にできることならなんだってやるよ!ありがとう、本当にありがとう!

お前は俺たちの救世主だ、血騎士!血騎士万歳!

血騎士万歳!
血騎士万歳!血騎士万歳!

……行こう。

血騎士を一目見に来ただけでいいんですか?

一目見ただけで十分よ。

アタシたちにはまだ進まなきゃならない道があるんだから。

信じられません!目の前に起こったこれは事実なのでしょうか!!

今まで長い間試合実況に務めてきましたがこんな状況は初めてです!!国民院がこの乱入騒ぎをどう対処するかはわかりませんが、目下の試合に影響が及ぶことはないでしょう!!

……

……あれが、耀騎士……

何をしに戻ってきたのだ?
(回想終了)

ここは相変わらず忙しないな。

決勝進出おめでとうございます、血騎士様。

耀騎士との決勝も間近ですね、その時には、チャンピオン式典もここで行われ、チャンピオン自らご自身の肖像画をここに掲げてもらいます――

もちろん、あなたは一度チャンピオンになられたのですから、過程はご存じかと。

メジャーリーグは開催されるたびにその規模を膨らませているが、お前たちが増やした追加試合制度も、式典も、好かん。

……申し訳ありません。

耀騎士の肖像画は戻したのか?

はい。騎士協会が耀騎士の身分を承認しましたので、もう一度カジミエーシュのチャンピオンに返り咲きました。

……あの、一つお聞きしてもよろしいですか?

もちろんだ、代弁者。

同じ感染者として、耀騎士のことをどう思っておりますか?

……彼女は偉大な失敗者だったさ。

ほう?

偉大さは、彼女の抗争に、彼女に意志に、彼女の実力にある。

そして失敗は……彼女は何も成し遂げられなかったことにある。

信念を示すにしても、栄誉も守るにしても、結局最後に彼女は一族を巻き込んでまで、追放されるに至った。

誰一人守ってやれることもないまま、な。

あまり彼女のことを認めていないようですね?

……それとこれとは別だ、代弁者。

彼女に他者の認めなど必要か?

……
(大歓声)

……決勝戦!決勝戦のチケットだ!

血騎士と耀騎士……どういう試合になるかまったく見当もつかないぜ!

あらあら、これがカジミエーシュトップクラスの騎士祭典ですの?やはり噂に聞くほどですわね。

一体どんな騎士同士の戦いが見れるのかしら?

はは、ここは騎士の国、驚きは欠けないさ、マダム。今はそれを楽しみに待つとしようじゃないか。

試合開始まであと30分だぞ!

観客の人数は膨大だ、おい、Cエリアは誘導の準備にかかれ!Iエリアの入場は最後だ!

あっ!申し訳ありません、人があまりにも多くて――

……構わん。
(企業職員と左腕騎士がぶつかる)

……配置は終わったか?よし。

マルキェヴィッチの言ったことを忘れるなよ、耀騎士が勝とうが負けようが、試合を終えた後には例の言葉を付け加えろ。

……ロドス?あの人たちも競技場に来ているのか?ふむ、監察会名義で……まあいい。

警備は今まで以上に厳重に頼む、それと征戦騎士たちの動向にも目を離さないように――

――

あの、マギーさん?ほかに注意事項はございますか?

すまない……少しだけ失礼する。

……ミス・ドロスト。

……マギーさん。

お久しぶりですね、私になにかご用ですか?

……その……

……
「失望させてしまって申し訳ない。」
またその言葉を言い出せなかった。
マギーは手を探らせながら、自分のやるせなさを少しでも紛らわそうとしていた。
けど結局は諦めた。

……試合を楽しんで頂けると幸いです。

……

――(古い言語)若き狩人が、天途へ向かう♪

――(古い言語)夢より出でて、黄金の彼方へと向かわん♪
――夢より出でて、黄金の彼方へと向かわん♪
肉親の血に染まった戟を携え♪
月明かりの悲しみに暮れる♪
黒夜が彼の目を遮るまで♪
骨の塔が心中に聳え立つまで♪
毒ニンジンが朦朧とした故郷を押さえつけるまで♪
ああ、狩人は灰燼で火を留めた♪
ああ、狩人の魂が泉の中で眠りに落ちる♪
弓は灯台から射られた♪かがり火と黎明が矢になった♪
骨壺は死を振り撒いた♪父は今も木の下で白繭を解く♪

……

……

間に合ったぁ、でも、ひ、人が多すぎます……!テレビ中継を見た時から予想はついていましたが……
(アーミヤが人とぶつかる)

キャッ……!

・アーミヤ、手を取って。
・迷子にならないよう、もっとくっつこう。

はい……

ドクター、こちらへ。

ナイチンゲールさんも気を付けてくださいね……
(大歓声)

大騎士領時刻が午後八時を回りました!ようこそ第二十四回カジミエーシュメジャーリーグ大会の試合会場へ!いつものビッグマウスのモーブでございます!

無数の挑戦と奮闘、無数の勝利と挫折、今宵のカジミエーシュは三年の時を経て!新たなチャンピオンを迎えようとしております!

今宵はカジミエーシュの眠れぬ夜を迎えることでしょう!今宵、新たな伝説と英雄が誕生します!

クルビア、ヴィクトリア、リターニアなど様々な国から多くの騎士競技ファンたちがこの試合を注目しております!

また今晩の試合は、この一夜にしてすでに多くの記録の数字を更新していきました!試合の最多観戦人数!累計最多入場人数!そしても一日の最多売上額も!

――しかしそんなことよりも、一番重要なことがございます!ここにおられるラッキーな皆さん!今宵は、あのミノスの戦女神すら見劣りしてしまうほどの出来事が行われます!

それは即ち、カジミエーシュでこの二十年を経て初めて!チャンピオン同士の決勝が行われることです!

チャンピオン同士!カジミエーシュで最も実力のある大騎士の二人!!会場へこられたラッキーな皆さんにおかれましては、これから行われる試合を一瞬たりとも見逃さないようにお願い申し上げます!

なぜなら、皆さんはカジミエーシュ騎士競技の歴史においてもっとも偉大な瞬間に立たれているためです!

もはや対戦相手を改めて紹介する必要もないでしょう!しかし、規則というものがございますので、あと何分かお時間を頂いて私から紹介をさせて頂きます!ではまずはご紹介するのは――

スカーレットグラス騎士団所属、メジャーリーグの現チャンピオン、“カジミエーシュの赤いステムグラス”と謳われた、血騎士――ディカイオポリスぅぅ!
血色の鎧が陰から浮かび上がり、スポットライトの下に現れた。
歓声に応えることはせず、英雄はただじっと会場に立ち、土のぬくもりと空気の湿気を感じ取っていた。
少しだけ首を仰ぐ血騎士、目を突き刺すほど眩しいライトから、微かに夜が見えた。

……

血騎士!血騎士!

血騎士!血騎士!

……血騎士、あの方が感染者騎士制度を造り上げた大騎士ですか。

あんな戦士だったとは……予想外です。

……この歓声、鼓膜が破れんばかりですね。

シャイニング、なぜ彼は英雄と称されているのですか……?

・彼についてはあまり知らないが、英雄と呼ばれるには相応しい人物だ。
・……
・ニアールの相手である以上、強敵であるのは間違いないな。

そしてその相手は!

若きレジェンド、英雄の嗣子、その身に無数の伝説を背負い、一度は王座に辿りつくも、瞬く間に追放され、多くの人々の心に蟠りを残していきました!

しかしそんなことは関係ありません!メジャーリーグ史上もっとも若いこのチャンピオンは、最短で大騎士称号を獲得し、独立騎士として王座に輝きました――

今でも囁かれる伝説が、今私たちの目の前に姿を現します!光り輝くペガサスをお迎えしましょう、耀騎士!マーガレット――ニアールぅぅ!

……

……

二人の感染者、二人のチャンピオン、二人の大騎士!今宵の試合は必ず歴史に刻まれることでしょう!きっとここにいる全員を驚愕させるような熱き戦いが繰り広がること間違いなしです!

それでは開始の宣言を上げさせてもらいます!

カジミエーシュ第二十四回メジャーリーグ大会決勝戦!今ここに――

――開幕ぅ!!!

……

……

な、なんということでしょう!?血騎士がいきなり兜を外しました!ああいった行いは、勝負が決まった時でしか見られないはずですが――

なにを……

耀騎士、ここでお前に会えて嬉しく思うぞ。

こちらもだ。

多くの者はお前の行いに理解を示していないが、私にはわかる。

お前は灯台を築き上げようとしいる。自分ではこの時代を壊すことはできないと理解しているために――たとえ破壊できたとしても、無意味ではあるがな。

そのために、お前は自らの光で他者の道を照らそうとしている、跪かされている人々を立ち上がらせ、圧制されてる者たちに自ら運命を決める選択肢を与えようとしているのだな。

……

素晴らしい献身的な精神だ、耀騎士。お前の目からは理想がもたらすと言われる濁りがまったく見えない。

多くの英雄は、みなそんな正しいことをしようと試みてきた、だがそのほとんどはその焦りから失敗するか、自己満足のためにしか行われてこなかった。

……そうとは限らない、私も驚かされたよ。

カジミエーシュへ戻って来たら、信念を抱いてる騎士をたくさん見た。

彼らはまだこの時代で我を忘れてなどいない、私は彼らから、栄誉の輝きが見えたのだ。

……美徳ならいつだって存在するさ、この街もそこまで落ちぶれてはいない、しかしだ――

――その美徳がこの街を変えることはない。

私はただ証明したいだけだ、この腐った騎士の舞台の上で。

今でも騎士は存在するという証明を。

あの輝かしかった栄誉と正義は、今もここに残っていると――

――そうだな、その栄誉と永木はまるで輝く宝石のようだった、そんなお前はその宝石に光を当て、他者にもう一度拾わせようとしている。

だがそこがお前のもっとも浅はかな一面だ、マーガレット。

奉仕も、犠牲も、義のために戦うことも、もちろん崇高な行うと言えよう、感服すらしているさ。

だがそんな騎士の精神だけでは、この複雑化した時代を救うことなど叶わんのだ。

……
(血騎士が兜を被る)

お前は弱者に金槌を渡し、その者たちに壁の壊し方を教えたが、家の築き方を教えなかった。

あるいは――その者たちに新しい道を行くことを教えなかった、本来ならもっと多くの選択肢があったにも関わらずに、だ。
(斬撃音)

くぅっ――!

血騎士が突如と一撃を繰り出しました!耀騎士のほうがリーチでは勝っているのにも関わらずにです!なのに――いや待った!

あれは血のアーツです!さきほどの一撃を食らわせたあと、続け様に左手から血の矛が――!?
(斬撃音)

――

(防いだ――?)

次はこちらの番だ!
(斬撃音)

くっ!

光です!耀騎士がアーツを放ちました!アーツにはアーツをぶつける――しかし眩しすぎて何が何だか――っとそんなこと言ってる間も、二人が交わっていく!

……アーツの加減具合と、瞬時に展開する絶妙なコントロール、驚きました。

並大抵の訓練では成し遂げられない技です……騎士競技から培ってきた技ではありませんね……

軍との戦いからでしょうか?それとも獣たちとの無数の死闘から?

やはり私の言った通りですね、マーガレットさん、あなたはまるで天に昇る太陽のようです。
(武器と武器がぶつかり合う)

――耀騎士、お前はどの戦いにおいても、それこそ夢魘や燭騎士においても、今みたいに冷静でいるのか?

その顔、試合でお前のそのような顔を見るのは初めてだ――

お前――
(武器と武器がぶつかり合う)

――今の気持ちか?

自分で想像してたのよりもスッキリしているよ、血騎士。

……

……もし私がまたここに戻って、何も変わっていない腐ったままの景色を目にしたら動揺するのではないかと、自分でも想像したことはある。

だが、私は一つの考えに辿りついた。

それより、その話は一旦置いておこう。

……同感だ。
二人の騎士の視線が交わる。
甲冑の下で力が蠢き、両者の心に強く訴えかけていた。
今は結論や未来の話を議論する場合ではない。
今は、勝負を決める時なのだ。
(戦闘音)